私は16歳から現在まで25年以上作曲を続けていますが、その中で中級者の頃に一度「伸び悩み」を経験しています。
結果としてその状態は打開することができたのですが、そこにはいろいろな試行錯誤がありました。
こちらのページでは当時の私と同じような悩みを抱えているあなたにむけて、
「作曲中級者がそのさらに上を目指すためにやるべきこと」
と題して、いくつか解説をしていきます。
是非、これらを作曲上達に役立てていただきたいです。
目次
作曲中級者だった私がやったことの概要
作曲中級者だった私が、その壁を乗り越えるためにやったことは以下の5つです。
- 音楽理論を基礎からしっかりと学んだ
- 作曲の方法論を体系的に身につけた
- 上記を踏まえた曲分析を習慣にした
- 音楽をそれまで以上に幅広く聴くようにした
- 1~4を土台として曲作りを継続させた
これらは、私が提唱している「作曲の上達に欠かせない5つの柱」と同じものです。
※関連ページ
【作曲を独学で進めるときの勉強方法】これをやれば作曲は上手くなる!「上達に欠かせない5つの柱」とは?
上記ページでは「初心者が独学で作曲を上達させるために必要なこと」という前提で解説を行っていますが、私は当時何年も(何曲も)作曲を経験している状態で改めてこれらに取り組みました。
結果として中級者特有の伸び悩みを打開することができました。
現在同じような状況にあるあなたも、これらに取り組むことでおのずと悩みは解消されていくはずです。
これ以降で、それぞれについて私の経験も踏まえつつ詳しく解説していきます。
1. 音楽理論を基礎からしっかりと学ぶ
作曲中級者がその壁を打ち破るためにまず初めに取り組むべきは、「音楽理論の基礎」を学ぶことです。
そもそも私は完全なる独学で作曲を始めており、当時はコードやスケールに関する理論的な知識をほとんど持たず、完全に感覚のみで作曲を行っていました。
作曲中級者の方の中にも、その頃の私と同じように
「なんとなく、見よう見まねで作曲を始めてここまで何年も続けることができた」
という人はきっと多いはずです。
「行き当たりばったり」を改善させる
では、なぜ音楽理論を基礎から学ぶことがそんなに大切かといえば、それは
行き当たりばったりの作業が減り、筋道を立てて作曲を行えるようになるから
という点に尽きます。
「理論」というとものすごく堅苦しいものに感じられてしまいますが、つまるところそれらは「既存の曲における成功事例を体系的にまとめたもの」であり、簡単にいえば「曲作りの取扱説明書」のようなものです。
この部分を、作曲中級者=もう既に何曲も作っている状態において改めて学ぶことで、主にコード進行やメロディの扱い方をいちから捉え直すことができます。
結果として、作業がその「取扱説明書」に沿ったものになり、上記で述べた通り筋道を立てて作曲を進めていけるようになるのです。
感覚を理論で整理する
また、「中級者が音楽理論の基礎を改めて学ぶこと」をおすすめするもうひとつの理由は、
感覚的にやっていることが理論によって整理されるから
で、これも私の実体験からいえることです。
多くの作曲中級者は
- なんとなくこんなコード進行が気持ちいい
- このコードにはなんとなくこんなメロディが似合う
という観点で感覚的に作曲を行っているものですが、それらのほとんどは理論によってなんらかの解釈ができます。
経験によって捉えているそれらの情報を、改めて体系づけられた「音楽理論」として整理することで、
「ああ、この部分はそういう理論によって成り立っていたんだ」
という観点から、初心者が未経験の状態でその理論を学ぶのに比べてより深く理解することができるようになるのです。
この「音楽理論の学習」については、以下のページにてさらに詳しく解説しています。

2. 作曲の方法論を体系的に身につける
次にやるべきこととして挙げたのが「作曲の方法論を身につけること」ですが、これも上記「音楽理論」と同じく、「感覚的な作業」を「筋道を立てて行う作業」に変えるためのものです。
作曲の方法論=良い曲にするための方法
上記で述べた「音楽理論」が主にコードやスケールに関する知識を指していたのに対し、この「作曲の方法論」とはそれ以外にあたる、作曲の根本的な進め方に関するものです。
※関連ページ
音楽理論より大切かもしれない「作曲の方法論」という概念について
「作曲の方法論」として、具体的に挙げられるのは以下のような知識です。
- 作曲進め方、順番
- Aメロ、Bメロ等ブロックのつなげ方、組み立て方
- 効果的な曲展開の方法
- サビを目立たせるための手法
- 音域に関する知識
- 曲調に関する知識
これらは平たくいえば「良い曲にするための方法」のようなもので、これらを「音楽理論」と同じく体系づけることで、きちんとした裏付けをもとに作曲を進めていくことができるようになります。
音楽理論以上に重要な概念
多くの作曲経験者(中級者)にとって、音楽理論以上にこの「作曲の方法論」に関する意識は低いものです。
上記で挙げたような知識のほとんどは経験や感覚によって身につけられているもので、それらをきちんと「取扱説明書」のように整理して捉えている人はほとんどいないはずです。
反面で、メロディやコードの扱い方以上に、
- 作曲をどう進めるべきか?
- 曲をどのように展開させるのが効果的か?
などの概念は作曲を行うにあたり重要で、それらを論理的に整理しておくほど作業は確信を持ったものに変わります。
すなわち音楽理論と同じように、作曲の進め方や曲構成の面においても「行き当たりばったり」の作業が減るのです。
3. 「音楽理論や作曲方法論を踏まえた曲分析」を習慣にする
次に、上記で述べた「音楽理論」「作曲方法論」の二点を知識として身につけたうえで、それをより実用的なものにすることができるのがここで挙げている「曲分析」への取り組みです。
理論的・方法論的な観点からの分析
「曲分析」は、作曲の上達を目指すうえで私が最も重要だと考えている行為です。
そもそも、多くの作曲中級者は既に自分なりの方法で既存の曲を読み解き、分析の視点でそれらに接しているはずです。
ここではそこに「音楽理論」と「作曲方法論」の観点を取り入れ、その実例を確認するような感覚で曲分析に取り組むことを目的とします。
知識を実用的な手法にする
そもそも、「音楽理論」も「作曲方法論」も元をたどれば既存の曲にその実例があり、それらが情報として整理されたものにすぎません。
整理された知識を知るだけではなく、その「使われ方」を確認することで初めて知識が「実用的な手法」になるのです。
曲分析について、詳しくは以下のページにて解説しています。
「曲分析」を習慣にすると作曲が上達する、というお話(曲分析の概要や効果などについて)
4. 音楽をそれまで以上に幅広く聴く
作曲中級者の伸び悩みを解決するうえで、曲分析に関連するものとしてここで挙げている「音楽を幅広く聴くこと」ももちろん大切です。
聴いてこなかった曲に触れる
これは、純粋に
インプットの量を増やすことによってアウトプット(作る曲)の質を高める
というところにつながるものです。
作曲中級者と呼べるレベルにある人は一般的にリスナー以上に多くの曲を聴き込んでいるはずですが、ここではその幅をさらに広げ、それまでに自分が聴いてこなかったような曲に触れることを目的とします。
音楽のインプットについて、以下のページにて詳しく解説しています。
作曲の上達につながる音楽の聴き方(いろいろな音楽を幅広くインプットし、アウトプットの質を上げる)
5. 1~4を土台として曲作りを継続さる
最後のひとつにあたるのが、「曲作りの継続」です。
つまるところすべての行動はこの部分に集約されるのですが、これを継続させることができるか否かが中級者の壁を越えられるかどうかにかかっているといっても過言ではありません。
すべての取り組みを土台とした曲作り
ポイントとなるのは、これまでに挙げた
- 音楽理論
- 作曲の方法論
- 曲分析
- 曲を幅広く聴く
という4点をすべて曲作りに集約させる、ということです。
ただなんとなく曲作りを続けるのではなく、学んだ知識を活用したり曲分析によって得た教訓をもとに作曲を行うと、それまでになかった新たな曲調や、より高度な技術を曲に盛り込むことができるようになります。
その頃には、もう「作曲中級者」というレベルから次のステージ向けて動き出し、自分が気付かないうちにかなりハイレベルな作曲に取り組めるようになっているはずです。
まとめ:「上達のサイクルを回す」ということ
ここまでに述べた5つの取り組みは一度やって終わりということではなく、サイクルを回すように継続して取り組むものです。
また、既に述べているようにそれぞれは別々にやるものではなく、相乗効果を狙い、以下の例のようにお互いを掛け合わせて行うべきです。
- 音楽理論の学習→曲分析で確認
- 作曲方法論の学習→曲分析で確認
- 曲を聴く→気になった部分を理論的に解釈してみる
- 曲を聴く→魅力的な曲展開を調べて方法論に加える
これらを通して、作曲上達に必要な取り組みがわかれば、あとはそれをひたすら追求するのみです。
それによって中級者のレベルを徐々に抜け出て、より柔軟に作曲を扱えるようになっていくはずです。
曲作りの経験があり、さらにある程度のことが感覚的に理解できている中級者だからこそやれることがあります。
是非前向きな気持ちで、さらに上を目指してほしいです。
作曲が上達する「曲分析」について知る
