耳コピが作曲上達に効く理由 なぜ音を聴き取るだけの作業が作曲につながるのか

作曲上達に効果のある行為として、「耳コピ(耳コピー、音源を聴いて内容を明らかにする行為)」はよく知られているもののひとつだといえます。

こちらでは、

なぜ耳コピが作曲上達につながるのか?

という点と、メロディおよびコード耳コピのコツについて解説していきます。

※当記事はこちらのポッドキャストの内容を編集/再構成したものです。

耳コピは作曲の疑似体験

こちらで述べている「耳コピ」とは、具体的には、

  • メロディラインを実音(音名)として明らかにする
  • コードをコードネームとして明らかにする
  • 楽曲全体の構造や展開の具合を明らかにする

などの行為を指すものです。

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サウンド面に特化すると、ステレオ音源の左右どちらにどんな音が配置されているか、またそれぞれの音がどんな音色で、どのような音量バランスでミックスされているかを明らかにする作業も「耳コピ」のひとつです。

これらは「音を捉えて描写すること」であり、

  • 音感やリズム感
  • 聴き取った音を音名やコードネーム等に置き換える音楽的な知識

などを駆使しながらその内容を再現する(=描写する)こと、およびそれを「実際に聴くことができる音楽」を使ってやる行為が「耳コピ」の作業そのものだといえます。

そしてこれは、いわば「作曲の疑似体験」のようなものとしても解釈できます。

つまり、作曲が

  1. 頭の中で音楽をイメージする
  2. イメージできた音を実際の音として捉える
  3. 音を音名やコードネームに置き換える

という順序に沿って行われるものであるため、やっていることのほとんどはそのまま耳コピに通じています

より簡単にいえば、

  • 「実際の音源」を聴いて音を描写する行為=耳コピ
  • 「頭の中でイメージできた音」を捉えて描写する行為=作曲

だということです。

「音を描写する」という行為に違いはないため、耳コピによる「音楽の描写の練習」がそのまま作曲の感覚を養うことにつながります

これらを踏まえると、「なぜ耳コピが作曲上達に効果的か?」という点が理解できるはずです。

作曲を補強するもの

もちろん、作曲を上達させるのは作曲の行為そのものです。

作ることを通して作曲は上手くなるため、その点を心に留めつつ、それを補強するための練習として耳コピを取り入れていけると理想的です

上記で述べた通り、「音の描写力を磨く」ということを目的として、耳コピに取り組んでみて下さい。

メロディおよびコード耳コピのコツ

メロディの耳コピ

耳コピを実施するうえで、一番簡単なのは「メロディラインをそのまま音名にする」というやり方です。

歌は当然のごとく歌声が一番目立つように作られているため、根本的に音源として聴き取りやすく、また単音であれば聴いた音をそのまま音名に置き換えるだけであるため、やることもシンプルです。

現在はDTMがあるため、聴き取った音をそのままデータとして打ち込んで再現するのが、耳コピの記録という意味で最も直接的で、かつ打ち込んだ音をそのまま再生できるという点を踏まえると便利です。

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DTMのピアノロール画面は音の関係やリズムの構造が把握しづらいため、楽譜に書き込める場合にはそちらもあわせて活用できると望ましいです。

また、DTMや楽譜を使わずとも、ピアノやギターを使って音名を明らかにできたら、それをそのまま「ドードミソー…」のように、直接ノートなどに書き起こしてもよいでしょう。

コードの耳コピ

コードの耳コピは、メロディの耳コピに比べて難易度がより高いといえます。

そもそも、コードを耳コピするうえではその構造についてある程度理解を深めておく必要があり、具体的には、

  • 複数の音が重なることでコード(和音)になる、ということ
  • ルート音をもとに、どのような音程を持つ音が重なることでどんなコードができあがるか
  • 各コードの種類や響きの特徴

などを知っておくことで、それらをコード耳コピの目安とすることができます。

また、実際の音楽におけるコード/コード進行(ハーモニー)は、

  1. コードの大部分がきちんと音源として確認できる
  2. コードの一部しか音源として確認できない
  3. コード(和音)として音源が組み立てられていない=旋律が絡み合うような音楽になっている

などのように、その状態が細分化されます。

特に音源が「2」「3」の状態にある場合、音楽を吟味したうえでそこから「コードに置き換えると…」という発想をもとに、自分なりにコードを組み立てる感覚が求められます。

これらを踏まえると、まずメロディの耳コピを通して作業自体に慣れたうえで、並行してコードについて理解を深めつつ、段階的にコードの耳コピに取り組むことをおすすめします。

耳コピの題材について

また上記に関連する点として、根本的に、

「耳コピに適した音源/耳コピに適さない音源」

があることも事実です。

例えば、耳コピに慣れていないうちから、すでに述べたような「旋律が絡み合うような音楽」をその題材として選んでしまうと、「音を聴き取って描写する」という作業以上に、聴いた音を自分なりに解釈して構造をイメージすることが求められてしまいます。

それには、音楽理論の知識や、一般的な音楽のパターンなどを経験を通して知っておく必要があるため、作曲初心者の練習としてはやはり不向きだといえます

それを踏まえ、耳コピに慣れないうちは、一般的なポップス・ロックの曲でボーカルと伴奏の存在がきちんと確認できるような音源を題材として選べると理想的です。

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特にヒット曲などを題材に選ぶと、耳コピを通して明らかにしたコード進行とネットのコード譜サイトなどを照らし合わせて、答え合わせをすることもできるため便利です。

まとめ

以下は、ここまでに述べた内容のまとめです。

  • 耳コピは音の描写力をつけるための練習になる
  • 実際の音楽を描写するのが耳コピ、頭の中でイメージできる音を描写するのが作曲
  • メロディの耳コピから始めて、コードについて別途理解を深めながら徐々にコード耳コピへとステップアップするのがおすすめ
  • 耳コピに適した音楽を題材として選ぶのがポイント

単に音を聴き取って明らかにするだけの耳コピは、一見するとクリエイティブな行為につながらないと思えてしまいがちです。

しかし、すでに解説した通り「音楽の描写力を磨く」という点から作曲上達に対して耳コピはとても効果があるため、作曲する感覚を伸ばすためにぜひ取り組んでみて欲しいです。

古いフォークソングなどは耳コピの題材としておすすめです。

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