アコースティックギターを選ぶうえで「弾きやすさ」という観点は大切です。
そこで、こちらの記事では世界的に有名な「ギブソン」「マーチン」「テイラー」の三種のブランドを、私の所有経験から弾きやすさ、そして作曲・弾き語り、などの点から比較してみます。
私が所有していたモデルのみに対するあくまで主観的な評価ですが、参考にしてもらえるとありがたいです。
※以下のページでは、アコギの選び方についても解説しています。
失敗しないアコギの選び方 アコギ歴25年・買ったアコギ9本の私が解説する「アコギ選びのポイント」
目次
今回比較するアコギ
今回比較するアコギは、私が過去に所有したことのある下記三つのモデルです。
- Gibson (ギブソン)J-50
- Martin (マーチン)D-28
- R.Taylor (R.テイラー)Style3
まず初めに結論をいうと、この中で私が一番弾きやすいと感じるのは「テイラー」のアコギです。
以下はその主な理由です。
- ネックがエレキギター的に薄くて細くて握りやすい
- 音のバランスが取れている
- ペグが安定している・回り具合がスムーズ
- さまざまな曲調に似合うサウンドの良さ
- エレアコ仕様
より詳しくは、後程ご説明しています。
では、これ以降はそれぞれのモデルについて、ひとつずつ詳しく解説していきます。
Gibson (ギブソン)J-50
まず最初にご紹介するのがギブソンの「J-50」です。
「アコギといえば」で真っ先に思い浮かぶブランドがこのギブソン。
下の画像で抱えているのがそれです。
ギブソンのアコギといえば「J-45」が有名ですが、J-50はそのマイナーチェンジ版みたいなものです。
このモデルは確か1969年製で、ヴィンテージギターとして26万円くらいで購入しました。
トータルで7年くらい弾きまくって、ライブやレコーディングなどでこのギターのサウンドを味わい尽くしました。
見た目
J-50を含む、ギブソン「J」シリーズにあるこの「J」は「ジャンボ」の意味です。
見た目にはいわゆる普通のフォークギター的な佇まいですが、抱えるとそれなりに「ジャンボ」な感じがあります。
大きいというより「厚みがある」というようなイメージですね。
塗装・パーツ類
この木目調の外観はJ-50ならではのもので、「ナチュラルフィニッシュ」と呼ばれています。
これがJ-45になるとサンバーストになったり、最近のモデルだとブラックやワインレッドなどの単色になったりします。
また大きいピックガードも特徴的で、これを見ると「あ、J-45(またはJ-50)だ」と判別できます。
そしてブリッジも他のアコギではあまり見られない形になっていて、この形のサドルは「アジャスタブル・サドル」というような名前で呼ばれています。
左右のネジを回すことで弦高が調節できます。
(この仕様は年代にもよるもので、ストレートなサドルが採用されているモデルもありますね)
このブリッジが当時のJ-50ならではのサウンドを生み出す要のような部分です。
サウンドや演奏に対する感想
サウンドについて
J-50を含むギブソンのアコギ全般は、「中域が際立つ」というような言葉で表現されることが多いです。
これは「きらびやかで透き通るサウンド」というより「骨太で野蛮なサウンド」である、というようなことを言い表しています。
実際に弾いてみると、確かに中域に特徴があって、抽象的な表現ですが「ガーン!」というような、力強いサウンドだと感じられます。
もちろん低域も出ているんですが、中域混じりの低域、というか、深いだけの低音ではなくて、そこにロック的な荒々しさがあるようなイメージです。
また、前述のアジャスタブル・サドルのせいもあって音の伸びがあまりなく、それがよく言われる「ザクザク」というような歯切れの良いストロークの雰囲気を生み出します。
そのため高音も、繊細で伸びやかというよりは音が太くて輪郭がハッキリしている印象です。
当時の私はミディアムゲージの弦を張って、より野太い音で弾くのが好きでした。
演奏感について
私が所有していたJ-50のネックは「ナローネック」という、エレキギターに近い細めのネックでした。
とは言え、極端に薄くて細いものではなくそれなりに厚みもあるので、握りはしっかりしています。
この握りもギブソンのギターらしいもので、このネックを「ボッテリしてる」という理由から苦手だという人もいます。
私の場合は、他のアコギをあまり知らない状態でこのJ-50を手に入れたので「こういうものだ」という感覚で弾いていましたし、むしろ弾きやすいと思っていました。
この辺りの操作性は人それぞれだと思います。
ギター本体のバランスはそんなに良い方ではなかったように記憶しています…。このあたりは、おそらくヴィンテージギターだったので調整ができていなかっただけですね(笑)。
どちらにしても、綺麗に「シャラーン…」とギターを弾くというより、豪快な「鳴り」を楽しむように弾きこなす、というような感じです。
弾き語りとの相性
サウンドの特性上、ストロークでガシガシ弾くスタイルには合っていると思います。
また、サウンドにも力強さがあるのでどちらかと言うとロック向けかもしれません。
バラード的でしっとりした曲ももちろん弾けますが、100%綺麗で透き通るような方向のサウンドには持っていきづらいと思います。
Martin (マーチン)D-28
二本目のギターはマーチンの「D-28」です。
当時の写真が無いのですが、おおむね下記のような感じです。
20代後半当時の私は、前述のJ-50を作曲やライブで飽きる程弾いて、そのうちサウンドや操作性がなんとなく物足りなくなってきます。
そこで、「ギブソンは弾いた→じゃあ次はマーチンだ」という短絡的な発想から、乗り換えを検討し始めます。
候補に挙がったのが、ポール・マッカートニーも愛用していたこの「D-28」で、いろいろと考えた挙句、思い切ってそちらに乗り換えることになりました。
購入したのは、いわゆるヴィンテージではない現行モデルで、値段は20万円弱くらいだったように記憶しています。
だいたい5年くらいは弾いたと思います…が、個人的にはJ-50に比べてそこまで愛着が持てませんでした。
その理由は…、後述します。
見た目
D-28は伝統的な「ドレッドノート」の形を持ったアコギです。
古くからあるマーチンのアコギは、大きくこちらの「D」から始まるモデルと、あと「000」から始まるモデルに分かれます。
「000」のモデルは「トリプルオー」というように呼ばれていますが、そちらはドレッドノートの形ではなく、もうちょっとくびれが大きい形が一般的。
サイズもこちらに比べてやや小さい印象があります。
反面で、このD-28は古くからある「フォークギター!」というような見た目で、実際に抱えるとそれなりに大きさがあります。
同じ系統にある「D-18」と比べると見た目はそっくりなのですが、本体に使われている木材が若干違うため背面から見た色合いが少し異なります。
塗装・パーツ類
マーチンのアコギは、基本的にナチュラルな塗装のものばかりです。
木材の自然な色が出ていて好きなのですが、中にはこの「全部同じな感じ」が嫌だという人もいます。
ペグは、私が持っていたモデルはグローバー製だったように記憶していますが、なかなかしっかりしていました。
そのペグもそうですが、塗装も丁寧で綺麗だし、ブリッジやナットなども精密に組み込まれているし、とにかく作りがきちんとしているギター、という印象を持ちました。
サウンドや演奏に対する感想
サウンドについて
マーチンのアコギの音を形容するときによく使われるのが「鈴鳴り」という言葉。
その通り、確かにサウンドはコロコロと鈴のように気持ちよく鳴ってくれます。
前述のJ-50が中域に特徴のあるサウンドだとしたら、D-28は中高域が目立つサウンドで、特に高音は透き通るように響きます。
そもそも楽器としてのレスポンスが良くて、弾いたものがすぐに音になるような印象があります。
音がポンポンと前に飛ぶように、爪弾いていて気持ちいいギターというか、とにかくずっと弾いていたいギターです。
また、マーチンのアコギは「ドンシャリ」なサウンドだ、という言い方もよくされていますが、これは「ドン」と低音が鳴って、「シャリーン」と高音も鳴る、という意味。
要は「低音から高音まで幅広く鳴る」または「低音と高音に特徴がある=中域が控えめ」というようなサウンドであることを指します。
確かに低音もバッチリ出ていて、フィンガーピッキングにも耐えられるサウンドです。
(このギターでビートルズの「ブラックバード」を弾くと…、あの音がします)
演奏感について
個人的にこの「演奏感」というやつが一番の問題だったのですが、このD-28は本当にいいギターなんですが、悲しいことにネックの形状が自分には合いませんでした。
当時の私はJ-50で慣れていたのもあったのか丸いネックが握りやすくて好みだったのですが、マーチンのネックの形状は少し三角な感じで、それによりネック裏の部分が手の平に刺さるように感じられました。
それゆえに、サウンドは気持ちよくてずっと弾いていたい魅力があるんですが、長く弾いているとネックで手が痛くなってしまう、という弊害がありました。
店での試奏の時は短い時間だったので、気付けなかったんですね…。。ひとつ勉強になりました。
ただこの点も個人差があると思っていて、このマーチンのネックが「手の平にしっかりハマって握りやすい」という理由から好みだとする人がいるのも事実です。
このあたりの感覚は人それぞれだと思います。
私の場合はやっぱりだめで、音が最高だっただけにネックの形状で弾く気がなくなってしまうのはとても残念でした。
弾き語りとの相性
私のアコギの弾き方は、基本的にストロークを多用するものです。
かついろいろなスタイルのストロークをやるのですが、D-28がそれに合わなかった、というのもこのギターを手放した理由のひとつです。
なんというか、やっぱりフィンガーピッキングに合うギターなんだと思います。
または、ストロークでも正統派なスタイルというか、カントリー的なものが似合います。
なのでそのような音楽性や、(力強いというよりも)スマートで軽快なストロークをするような音楽をやる方には最適なギターだと感じます。
女性アーティストにはこのギターがお勧めですね。
R.Taylor (R.テイラー)Style 3
最後にご紹介するのがR.テイラーの「Style 3」というモデルです。
D-28に対して愛着が持てなかった私は、その後しばらくいろいろなギターを試奏しつつ長い検討期間に入り、結果的にこのギターに行き着きました。
世界的に有名なアコギブランドと言えば、1990年代あたりまでは「ギブソン」「マーチン」の二つ。
そんな中で、1990年代後半くらいから主に海外にて新世代のアコギブランドとして「テイラー」が急激にシェアを広げていきます。
テイラーのギターは基本的にエレアコ仕様で、ネックがエレキギターのように薄くて弾きやすく、さらに本体も丈夫、作りも丁寧、というのがその触れ込みでした。
個人的には半信半疑でしたが、中古屋で巡り逢ったこのギターを弾いた時になんともいえない愛着のようなものが沸いて、一気にファンになってしまいました。
テイラーの中でもちょっといいテイラー
私が所有しているのは、通常の「テイラーギターズ」の中でも精鋭チーム制作の「R.テイラー」というブランドのもの。
フェンダーでいう「カスタムショップ」みたいな感じですかね。
カッタウェイ仕様ではないですが、こう見えてエレアコです。ボディ側面にコントロール部分もなくて、9Vの電池をサウンドホール内に取り付ける作りになっています。
価格は中古で30万円くらいでした。
見た目
ボディの形状はいわゆるドレッドノートタイプで、マーチンのD-28に近いかなと感じます。
ボディサイズはそこそこありますね。
塗装・パーツ類
塗装はナチュラルフィニッシュで、サウンドホールの周りにちょっとしたキラキラが入っている程度です。
この部分は個人的にそこまで気に入ってないのですが(笑)、あまりに普通な外観なのでこのくらいはいいのかなという気もします。
ペグはゴトー製でかなり安定しています。
マーチンD-28のグローバーのペグも安定していましたが、あちらはやや硬めなイメージ。こちらはそれより柔らかめです。
前述のJ-50はヴィンテージでペグがやや不安定だったので、このあたりは現行モデルならではの良さかなと思います。
チューニングに対して年々シビアになっているので、改めてアコギを選ぶ際にこの「ペグがしっかりしている」ということも必須の条件になっていました。
サウンドや演奏に対する感想
サウンドについて
サウンドは、ギブソン的な中低域サウンドというより、どちらかというとマーチン的な性格を持っていると思います。
とは言え中域が弱いかといわれるとそんなこともなくて、バランスが取れた音だと感じます。
実際にこのアコギを使って何曲かレコーディングをしていますが、バンドサウンドのなかでもしっかり聴こえますし、しっとりした曲もいけます。
もちろんソロで弾いても綺麗に響いて心地いいです。
後発ブランドなので、「ギブソン」「マーチン」の良いとこ取りをしているようにも感じますね。
ギター本体のレスポンスもD-28同様に良くて、前に音が飛んでいくようなイメージです。
エレアコはコンタクトピックアップによるもので、プラグインした時のサウンドもナチュラルです。
外部のプリアンプで積極的に音作りをしていけます。
演奏感について
マーチンのD-28で問題となっていたネックの形状は、このギターを選ぶにあたってかなりシビアに確認したポイントでもあります。
前述した通り「エレキギターのように握りやすいネック」という点は評判どおりで、確かに弾きやすく、長時間弾いても疲れにくいです。
またサウンドのバランスも良くて、各弦がスムーズに振動することでストロークも安定します。
ドレッドノートタイプなので、女性には若干ボディが大きめで抱えるのが大変かもしれません。
弾き語りとの相性
既に述べた通り、サウンドは「ギブソン」「マーチン」の良いとこ取りをしたようなものであるため、オールラウンドに活躍してくれます。
ストレートなフォーク風の楽曲から、ちょっと激しめのストローク、フィンガーピッキングまで、幅広い曲調に対応できます。
私が個人的にいろいろなタイプの曲を作り演奏するので、これまでJ-50、D-28と弾いてきて結果的にこのギターが一番自分の音楽性に合ってると感じています。
曲調と同じく、男声ボーカル・女声ボーカルどちらにも馴染んでくれるサウンドは使い勝手が良くて、弾き語り女子にテイラーユーザーが多いのはそういう理由からかなとも思えます。
また案外見逃せないのが「エレアコ仕様」という点で、ライブなどでこれがやっぱり重宝します。
総合的に考えて、テイラーのアコギはレコーディングやライブなど、現場で使える1本になり得るはずです。
まとめ
ここまで、アコギ三大ブランド「ギブソン」「マーチン」「テイラー」のうち所有経験のあるモデルについて比較をしてきました。
もちろん、どのブランドが良い・悪いというのは一概に言えないところですが、自分自身の音楽性に合わせて愛着の持てるアコギが選べると素敵ですね。
またこれ以外にも、ギブソンには「J-200」や「ハミングバード」などがあり、マーチンには「000」シリーズがあったりテイラーの「V-Class」シリーズなども気になります。
こちらの記事を参考に、是非みなさんもいろいろと弾き比べて、ブランドそれぞれの演奏感・サウンド等の違いを体感してみて下さい。
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