初心者が音楽理論を習得するにあたり、「何をどの順番で、どこまで学べばいいか?」という点は特に気になるところです。
こちらでは、それらを体系的にまとめた「音楽理論学習の見取り図」のようなものを解説します。
これから音楽理論を学んでいこうと思っている方は、是非こちらの記事を一読のうえ、学習の参考にしてみてください。
※以下ページでは、「音楽理論学習に役立つ本」についてもご紹介しています。
音楽理論本おすすめ9選|作曲にも演奏にも使える音楽理論の知識を書籍で身に付ける
目次
習得すべき音楽理論の概要
ポップス・ロックの作曲に活用できる音楽理論は、主に「コードに関する知識」と「スケールに関する知識」です。
中でも「コードに関する知識」は、作曲を意図的に操りながら進めていくために欠かすことができません。
また「スケールに関する知識」は、その習得を補完するために活用していきます。
下記は、効率的な音楽理論学習の順番をレベル別の概要としてまとめた一覧です。
- メジャースケール
- ダイアトニックコード
- スリーコード
- 代理コード
- ノンダイアトニックコード基礎
- セブンスコード
- 転調
- ノンダイアトニックコード応用
- テンションコード
- オンコード(分数コード)
- マイナーキーとマイナースケール
- 各種スケール(モード)
- モーダルインターチェンジ
これ以降は、それぞれの項目についてご説明していきます。
初級音楽理論
音楽理論学習の初心者を対象とした初級の段階では、「コードとは?」「スケールとは?」という点から始めていきます。
そこから、最終的に自分の意図した通りコードを繋げていけるようになるまでを目指します。
下記は、習得して行く項目とその詳細です。
1. メジャースケール
音楽理論学習のスタート地点となるのがこの「メジャースケール」の概念です。
これから習得しようとしている音楽理論のすべては、ピアノの鍵盤、すなわち「ドレミファソラシド」という土台の上にあるものです。
この「ドレミファソラシド」の並びのことを「メジャースケール」と呼びますが、理論の習得はまずここから始まります。
メジャースケールの並び方や、キーの概念などをこの段階で把握します。
「メジャースケール」解説記事

「スケール」に関する記事

2. ダイアトニックコード
次に、すべてのコード進行の土台となる「ダイアトニックコード」について学びます。
ダイアトニックコードは、前述したメジャースケールの概念をコードに流用したものです。
ポップス・ロックの作曲において、コード進行はダイアトニックコードをもとに作られます。
ここでは「ダイアトニックコードはどのような概念により成り立っているのか」、そして「そこにはどのようなコードが含まれるのか」を学びます。
「ダイアトニックコード」解説記事


3. スリーコード
次に習得するのが、ダイアトニックコードの中で基本となる「スリーコード」を使ったコード進行の概念です。
「スリーコード」というコードのグループがあり、それをどのような観点で扱っていけばいいか、というようなことを習得します。
これにより、それまで単体として把握されていた「コード」を繋げ、ストーリーを作っていくことができるようになります。
「スリーコード」解説記事

4. 代理コード
初級編の最後として「代理コード」について習得します。
これはダイアトニックコード内の「スリーコード以外のコード」を指すものです。
それらの扱い方を覚えることで、ダイアトニックコード内のすべてのコードが扱えるようになります。
「代理コード」解説記事

初級音楽理論勉強会on動画

中級音楽理論
初級音楽理論の学習を終えた「中級」のステップでは、初級で把握することができたコード進行の基本的な概念をさらにどのように応用していけばいいか、という点について学んでいきます。
1. ノンダイアトニックコード基礎
まず、中級の知識として「ダイアトニックコードに無いコードをどのような観点から導入すればいいか」という点を習得します。
これには「基礎的な手法」と「応用的な手法」があり、この段階では主に基礎的な手法に主軸を置いて学習します。
習得する手法の種類には、下記のようなものがあります。
- セカンダリードミナント
- サブドミナントマイナー
- フラット系コード
- クリシェ
- ディミニッシュコード
- フラットファイブ
ひとつひとつの手法を理論的な裏付けをもとに把握していくことで、それを意図的な利用につなげていきます。
習得すべき手法が多くあるため、通常この部分の学習には多くの時間を使います。
「ノンダイアトニックコード」解説記事

「セカンダリードミナント」解説記事

「サブドミナントマイナー」解説記事


「フラット系コード」解説記事

「クリシェ」解説記事

「ディミニッシュコード」解説記事

「フラットファイブ」解説記事

2. セブンスコード
コードそのものの響きを豊かにする「セブンスコード」の概念をここで習得します。
これまでは主にコード同士のつながりについて習得してきましたが、ここではコードそのものの構成音をどのように増やしていくか、という点について理解を深めます。
セブンスコードについて把握することで、コード自体が持つ響きを操ることができるようになります。
また、コード構成音が増えることによってメロディラインの選択肢も増えるため、メロディ作りにも柔軟に対応できるようになっていきます。
「セブンスコード」解説記事

3. 転調
さらに、このステップではキー自体を変える技術である「転調」についても習得します。
そもそも調とはどのようなものか、という点から始まり、それを切り替えるための手段までを習得します。
転調の概念は、個性的な曲展開を演出する際に必要となるものです。
ここまでを通して、初心者のレベルを超えて、より柔軟なコード進行の構築に対応できるようになっていきます。
「転調」解説記事

転調パターンの解説記事

上級音楽理論
上級のステップでは、これまでのさらに上をいく高度な理論を習得します。
扱う内容には、主に以下のようなものがあります。
1. ノンダイアトニックコード応用
「基礎編」として習得したノンダイアトニックコードには収まりきらなかった、応用的な知識を習得します。
それらは主に下記のようなものです。
- 裏コード
- 経過コード
- 変化和音
反面で、その活用方法を理解することでインパクトのあるコードの構成を組み立てることができるようになります。
「裏コード」解説記事

2. テンションコード
中級で習得した「セブンスコード」の概念の先にあるのがこの「テンションコード」の概念です。
テンションの成り立ちと、テンションコードの一般的な使用仕方を学ぶことで、より華やかなサウンドを持ったコードを扱っていくことができます。
ジャズやR&Bなどに代表される、都会的なサウンドを持った曲調にも対応していけるようになります。
「テンションコード」解説記事

3. 分数コード(オンコード、スラッシュコード)
テンションコードと同じく、コードに音を加えていく手法として習得するのが「分数コード(オンコード、スラッシュコード)」の概念です。
分数コードは主にアレンジに関連する手法ですが、それも踏まえたうえで、編曲的側面からコードを組み立てていくことを目指します。
この手法も「テンションコード」と同じくサウンドを豊かにしていくためのものです。
また、一部の分数コードは難しい概念を必要とせずに手軽に使用することもできるため、初級や中級の段階で別途学習していくことも可能です。
「分数コード(オンコード、スラッシュコード)」解説記事

ここまで来れば、特にコード理論については「かなりのスペシャリスト」と言える状態です。
作曲においても、幅広い理論の知識を活用しながら、目指すべき曲調に合った手法を意図的に選択して行けるようになります。
番外編
ここまでを経た時点で、さらに番外編として下記の事項についても学習を進めます。
マイナーキーとマイナースケール、マイナーダイアトニックコード
ここまでに習得した知識は「メジャーキー」を前提としていました。
その上で、ここでは「マイナーキー」についても習得していきます。
マイナーの概念は、メジャーの延長に位置するものとして把握した方が理解しやすいです。
そのため、ここまでの学習内容を活用しながら、「それらをマイナーとして解釈した場合どのようになるか」という観点で捉えると無駄がありません。
また、マイナーキーには「マイナースケール」の理解が欠かせないため、それらもあわせて習得します。
メロディをマイナースケールによって構築し、そこから派生したマイナーキーのコード類によってコード進行を作り上げていくことができるようになります。
「マイナースケール」解説記事


他マイナーダイアトニックコードの解説記事

各種スケール(モード)
番外編としてさらに理解すべきなのが、この「各種スケール」の知識です。
これらは「モード」とも呼ばれます。
また「モーダルインターチェンジ」の手法を使ってコードやメロディを組み立てる際の基礎となる知識でもあります。
この概念は編曲の際にも活用することができます。
モーダルインターチェンジ
前述した「マイナーキー」と同様に、ここまでに学んだ「メジャースケールを土台とした理論の知識」を発展させ、その土台を変えるのが「モーダルインターチェンジ」の概念です。
モードそのものに関する学習から連続して学ぶことで、より理解を深めることができます。
これによりさらに特徴的なコード進行や、より柔軟なメロディ構築が可能になります。
「モーダルインターチェンジ」解説記事

補足
音楽理論の理解を深めるために最も効果的なのが、「既存の曲でそれら手法の実例を確認する」という行為です。
私はこれを「コード進行の分析」などと呼んでいます。
以下のページでは、その点についても詳しく解説しています。
コード進行分析(アナライズ)の方法|手順とコツ・注意点などの解説(キー判別、理論的解釈など)
解説のまとめ
ここまで「音楽理論学習の見取り図」について解説しました。
特に初心者の段階では、学ぶべきことがあまりにも多いと感じて音楽理論学習に対し尻込みしてしまうものです。
ポイントとなるのは、この見取り図にあるように「適切な段階を踏む」ということです。
前提となる知識が何もない段階で、例えば「テンションコード」と言われても、「へ~そういう手法があるんだ」という程度で終わってしまうはずです。
適切なステップを経て少しずつ理解していけば、その手法が意味するところと、それが曲に対してどのような効果を与えるかをしっかりと体感できるはずです。
またそれぞれの知識はただ覚えるだけではなく、実際の作曲の中に随時活用していくことも大切です。
実際に使ってみることで、初めてそのサウンドや使い勝手が理解できるものです。
オリジナル曲への積極的な活用を通して、お気に入りの手法も見つかるはずです。
是非この「音楽理論学習の見取り図」を参考に、理論の習得を前向きに進めていってください。
関連ページ
音楽理論の学習を含む「作曲」そのものの勉強方法についてご興味のある方は、以下のページも参考にしてみて下さい。
【作曲を独学で進めるときの勉強方法】これをやれば作曲は上手くなる!「上達に欠かせない5つの柱」とは?