【作曲】転調パターンのまとめ|ポップス・ロックでよくある転調のアイディアについて

転調(=キーを変えること)は曲に刺激的な展開を生み出してくれます。

反面で、キーは楽曲の統一感をつかさどるものでもあるため、それを変えてしまうという行為は思っている以上に難しいものです。

また、無計画な転調で曲がぐちゃぐちゃになってしまったという人も多いのではないでしょうか。

「ではどうやって転調を実施すればいいのか?」といえば、そこにはいろいろなやり方があります。

こちらのページではそんな転調のパターンについて、具体例を挙げながらご紹介していきます。

転調のおさらい

パターン紹介の前に、転調について簡単におさらいしておきます。

※「転調」について、詳しくは以下のページでも解説しています。
転調(1)転調の概要(転調とは中心音とそのグループを変えること)と調の種類

調=キーについて

転調とは冒頭で述べた通り「キー(調)を変えること」を指します。

では、この「キー」とは何かといえば、それは

どんな音を中心音として、どんな音を主に使うか

を定義するものです。

ここで基礎知識として必要になるのが「メジャースケール」「マイナースケール」の概念です。

メジャースケールの内容とその覚え方、割り出し方、なぜ必要なのか?について マイナースケールの解説(ハーモニックマイナー・メロディックマイナーを含む三種について)

楽曲の多くは「メジャーキー(長調)」または「マイナーキー(短調)」のどちらかによって成り立っていることが多く、それらの元になるのが上記の「メジャースケール」「マイナースケール」です。

つまり、楽曲中の音使いとして

  • 「メジャースケール」を主に使う曲=メジャーキー
  • 「マイナースケール」を主に使う曲=マイナーキー

になる、ということです。

転調とは、「中心音」と「主に使う音」を変えること

また、音には全部で12個の種類があります。(以下鍵盤の図にあるように、「白鍵=7個」「黒鍵=5個」の計12個)

それぞれを中心音にした「メジャースケール」「マイナースケール」があるため、

  • 12個のメジャースケール
  • 12個のマイナースケール

によって、

  • 12個のメジャーキー
  • 12個のマイナーキー

が存在することになります。

ここで話を「転調」に戻すと、既に述べた通りそれは「キーを変えること」であるため、それを言い換えると

転調=キーを変えること
=「中心音」と「主に使う音」を変えること

として解釈することができます。

つまり、転調によって曲の中で使われる音のメンバーや音使いが変わり、それによって楽曲から受ける印象や曲の持つ雰囲気が変わる、ということです。

転調のパターンを考える際には、まずこの点を前提として意識するようにして下さい。

転調パターンの実例1:楽曲終盤における半音~全音程度高いキーへの転調

転調を最も明確に、かつ手軽に実施できるのが、楽曲の終盤で半音、または全音程度高いキーに切り替えるやり方です。

例「Everything」

以下の楽曲「Everything(MISIA)」はその例です。

この動画における5分35秒あたりが、転調の実施ポイントです。

本作は冒頭から「キー=D♭(C#)」で展開し、終盤の間奏を挟んだこの部分で突然「キー=D」に転調します。

つまり、「D♭」から「D」へと半音高いキーに転調していることになります。

例「地上の星」

また、以下「地上の星(中島みゆき)」はそのもう一つの例です。

動画の3分36秒あたりにに転調の実施ポイントがあります。

こちらの楽曲は「キー=Dマイナー」で始まり、上記部分より後は「キー=D#マイナー」に転調しています

こちらも「Everything」と同じく、半音高いキーへの転調です。

使われる音がガラッと変わる

ページ冒頭で述べた通り、転調によって「中心音」と「主に使われる音」が変わります。

中でも上記二例にあるような半音の転調ではその「主に使われる音」が大きく変わるため、リスナーに強いインパクトを与えることができます

以下はそれを理解するため、「Everything」における「D♭」と「D」それぞれのキーにて主に使われる「D♭メジャースケール」「Dメジャースケール」の音を比較したものです。

D♭メジャースケール
レ♭・ミ♭・ファ・ソ♭・ラ♭・シ♭・ド
Dメジャースケール
レ・ミ・ファ#・ソ・ラ・シ・ド#

それぞれを見比べると、共通する音が一つもないことがわかります

これは、つまり「キー=D♭」から「D」へ転調することによって

「レ♭ーミ♭ーファ~」

のような音階だったメロディが、

「レーミーファ#~」

と変わることを意味します。

これによってリスナーに新鮮な雰囲気を感じてもらうことができますが、上記例のようにこの種の転調が楽曲終盤によく活用されれるのはそのためです

突然転調することが多い

また、楽曲終盤における半音~全音程度高いキーへの転調は、それらしい流れをあえて盛り込まず、上記例のように突然行われることが多いです。

そのパターンは、大きく以下の二つに分かれます。

  1. 前触れが無く突然転調するもの
  2. 転調後のキーにおけるドミナントコード(V)などを短く挟むもの

上記(1)は、あえて転調の前触れを無くすところに意味があり、それによって「雰囲気が変わった」ということを強くリスナーに感じてもらうことができます

前述した「Everything」では、こちらの手法が活用されています。

また(2)はそれをやや緩和させるものです。

転調後のキーのドミナントコード(V)を先に提示することで、結びつきの強い「V→I」という流れをリスナーに予感させ、それを転調の推進力にすることができます。

「地上の星」ではこのやり方にならって、転調の実施ポイントに「A#7」が配置されています。

それによって、リスナーは

「A#7→D#m(V7→Im)」

という流れが予感でき、そこから転調後のキーである「D#マイナー」へとスムーズに展開させることができています

キーを戻さなくて済む

また転調を考える際には

  • 元のキーに戻す=一時的転調
  • 元のキーに戻さない=本格的転調

という観点も必要となりますが、上記のように扱われる音が大きく変わるほど、必然的に元の調へ戻すことが難しくなります

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もちろん突然転調を実施したように、突然元のキーへ戻すこともできます。しかし、そのような曲構成はリスナーを混乱させる原因にもなってしまいます。

反面で、楽曲終盤の転調であればそのまま(キーを戻さずに)曲を終えることもできるため、これらの転調が曲のエンディング付近によく活用されるのはそのような理由によるものとも解釈することができます。

転調パターンの実例2:楽曲途中での半音~全音程度高いキーへの転調

半音~全音高いキーへの転調は、稀に楽曲の途中に行われることもあります。

この場合、主にサビなどで音使いを大きく変えることを目的とするケースが多いです。

例「ZERO」

以下はその例となる楽曲「ZERO(B’z)」です。

この動画における2分12秒あたりからサビが始まりますが、本作は冒頭から「キー=Aマイナー」で展開し、サビで「キー=Bマイナー」へと転調する構成となっています。

つまり「Aマイナー」から「Bマイナー」へと、全音高いキーへ転調が実施されている、ということです。

同じく大きく音使いが変わり、それがインパクトとなる

前述した「Everything」「地上の星」と同じく、こちらでも転調によりその音使いは変わります。

以下は「キー=Aマイナー」と「Bマイナー」のもとになる、「Aマイナースケール」と「Bマイナースケール」を比較したものです。(ナチュラルマイナー)

Aマイナースケール
ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ
Bマイナースケール
シ・ド#・レ・ミ・ファ#・ソ・ラ

それぞれのキーにはいくつかの共通音が含まれますが、二つの音に違いが生まれていることがわかります。

サビでの転調は場面転換をより明確にする

既にご紹介した楽曲終盤での転調が「リスナーに新鮮な雰囲気を感じ取ってもらうこと」を目的としていたのに対し、楽曲途中にあるサビなどで実施される転調には「場面転換を明確にする」という効果を狙うものが多いです。

そもそも、「A→B」などとブロックが展開してきた中で新たな「サビ」が登場すると、リスナーはそこから「場面が切り替わった」と感じます。

そのうえで、さらに「転調=中心音と音使いを変える」という効果を盛り込むことによって、その場面転換をより強烈なものにし、サビをより強く印象付けることができるのです。

転調パターンの実例3:楽曲途中での「平行調同主調」または「同主調平行調」への転調

上記「ZERO」での例のように、サビにおける転調には他にもいくつかのパターンがあります。

中でも「平行調同主調」または「同主調平行調」への転調はその最もポピュラーなものです。

「平行調同主調」「同主調平行調」のおさらい

ページ冒頭でご紹介した転調を解説したページでも述べているように、「キー」には軸となるキーを「主調」としたうえでいくつかの捉え方があります。

「平行調」「同主調」とは?

「平行調」はその種類のひとつで、それは主に以下のようなキーを指します。

平行調
  • メジャー主調(メジャースケール)における音使いのうち、六番目の音を中心音としたマイナーキー
  • マイナー主調(マイナースケール)における音使いのうち、三番目の音を中心音としたメジャーキー

つまり、「Cメジャー」「Aマイナー」を例にあげると、平行調は

  • 「主調=Cメジャー」に対する「Aマイナー」
  • 「主調=Aマイナー」に対する「Cメジャー」

のことを意味します。

あわせて、「同主調」とは

  • 同じ中心音を持つ「メジャーキー」または「マイナーキー」

のことで、これを「Cメジャー」で表すと

  • 「Cメジャー」に対する「Cマイナー」
  • 「Cマイナー」に対する「Cメジャー」

となります。

「平行調同主調」「同主調平行調」は「平行調」と「同主調」を掛け合わせたもの

ここで取り上げている「平行調同主調」「同主調平行調」とは、それらを掛け合わせたものです。

それぞれは「平行調の同主調」「同主調の平行調」を意味しますが、これを前述した「Cメジャー」で考えるなら

  • 「Cメジャー」の平行調=「Aマイナー」
  • 「Aマイナー」の同主調=「Aメジャー」

となるため、そこから

「Cメジャー」の平行調同主調=「Aメジャー」

を導くことができます。

同じく、「同主調平行調」は

  • 「Cメジャー」の同主調=「Cマイナー」
  • 「Cマイナー」の平行調=「E♭メジャー」

という流れから

「Cメジャー」の同主調平行調=「E♭メジャー」

だとわかります。

※関連ページ
「短3度転調」の詳細と実例について|同主調平行調または平行調同主調への転調

例「ALONE」

以下は、サビで上記の「平行調同主調」への転調を実施している例「ALONE(B’z)」です。

動画の1分29秒あたりからサビが始まります。

こちらの楽曲では、

  • Aメロ・Bメロ=Cメジャー
  • サビ=Aメジャー

によって構成されており、これは上記「平行調同主調」の解説で例として挙げた

「Cメジャー」の平行調同主調=「Aメジャー」

と同じです。

扱いやすく、適度にインパクトを与えられる

既に述べたように、この「平行調同主調」「同主調平行調」は二つキーを掛け合わせるような発想によって導かれたものです。

そのため、適度に音使いが近く、そのうえで適度に関係の薄いキーへの転調となり、扱いやすく、かつインパクトを与えられるものとして広く活用されています。

まとめ

ここまで転調のパターンについて、実例を挙げながらご紹介してきました。

パターンのまとめは以下の通りです。

  • 楽曲終盤における半音~全音程度高いキーへの転調
  • 楽曲途中での半音~全音程度高いキーへの転調
  • 楽曲途中での「平行調同主調」または「同主調平行調」への転調

また、既存の楽曲ではこれ以外にもさまざまなアイディアによって転調が実施されています。

曲分析を通して転調の理解を深め、自分なりのやり方でオリジナル曲に組み込んでみて下さい。

インパクトをどう与えるか?が転調を実施する際のポイントとなります。