こちらでは「転調」に関する知識として、そもそも「『転調』とは何か?」ということと、転調を実施するときの基礎知識となる「調の種類」について解説していきます。
あわせて記事最後では動画による解説も行います。
※転調の種類や、その具体的な実施方法、転調の実例などについては、下記をご参照ください。
転調(2)転調の種類|一時的な転調と本格的な転調について
転調(3)転調の方法|ピボットコードやドミナントモーションの活用
【作曲】転調パターンのまとめ|ポップス・ロックでよくある転調のアイディアについて
「同主調転調」の解説(同じ中心音を持つマイナーorメジャーへの転調)
「短3度転調」の詳細と実例について|同主調平行調または平行調同主調への転調
「半音転調」「全音転調」の考察(使われる音を大きく変える転調、曲終盤において雰囲気を変える手法)
「転調」の概要
そもそも「転調」とはなにか?
「転調」とは「『調』を『転換』させること」を表す言葉です。
曲は一般的に「調」という「一定の音の集まり」を中心として成り立っていることがほとんどで、「調」には「メジャー(長調)」が12個、「マイナー(短調)」が12個存在します。
通常、曲の中では冒頭から末尾までひとつの「調」が扱われるところ、「転調」の概念によってそれを例えば曲の途中で
「Cメジャーキー」→「Gメジャーキー」
のように切り替えることができます。
それにより独特な雰囲気が生まれますが、このあたりをきちんと理解するには、「調」というものがどのように成り立っているかを把握しておく必要があります。
「調(キー)」について
※関連ページ
「キー(音楽)」についての解説|キー=「中心音」と「まとまりのある音のグループ」を意味する言葉
「調(キー)」についての詳しい解説は上記ページでも行っていますが、そもそも音楽で扱われる音にはピアノの鍵盤でいう「白鍵=7個」「黒鍵=5個」の、計12種類しか存在していません。

白鍵7個+黒鍵5個=計12個
また、それらは実際のところ以下図のように等間隔で並んでおり、それぞれが等しい価値を持っています。
それゆえに、全12音をただ適当に使うと音楽は「単なる音の羅列」になってしまい、ぐちゃぐちゃなものに感じられてしまいます。
そのため、ほとんどの音楽では全12音のうちから特にまとまりが感じられる7音を選び、それらを主体として曲が組み立てられます。
この「まとまりが感じられる7音」をどう選ぶかが、ここでテーマとしている「調(キー)」を意味するものです。
「まとまった雰囲気」を感じさせる「スケール」
上記で述べている「まとまりが感じられる7音」は、
- ひとつの中心音
- それに紐づく他6個の音
によって成り立ちます。
※関連ページ
「スケール」とはなにか?|音楽を作るための「音の並び方」について
この7音は全12音のうちからルールに沿って選ばれたもので、その中でも多くの人にとって最も馴染み深いのが、
ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ
です。
みなさんがご存知のとおり「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の音階からはどことなく統一感のある雰囲気が感じられるものですが、これは以下図のように
- 「中心音=ド」
- それに紐づく「一定のルール(並び方)によって選ばれた6音」
によって成り立つものです。
この「一定のルール(並び方)」を「メジャースケール(長音階)」などと呼びます。
※関連ページ
メジャースケールの内容とその覚え方、割り出し方、なぜ必要なのか?について
また、メジャースケールに次ぐもう一つの並べ方は「マイナースケール(短音階)」などと呼ばれます。
※関連ページ
マイナースケールの解説(ハーモニックマイナー・メロディックマイナーを含む三種について)
ページ冒頭でも述べた通り「調(キー)」には大きく
- メジャー(長調)
- マイナー(短調)
の二種類が存在していますが、これらは
- 「メジャースケール(長音階)」を扱う調=メジャー(長調)
- 「マイナースケール(短音階)」を扱う調=マイナー(短調)
として分類できます。
「スケール」は枠組み
こちらで述べている「スケール」は、あくまでも
「まとまりを感じる音の並び方(選び方)」
であるため、中心音が変わってもその枠組みさえ維持されていれば同じようにまとまりを感じることができます。
つまり、前述した「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」が
中心音「ド」から始めたメジャースケール(まとまりを感じる並び方)=Cメジャースケール
だったように、同じ観点から
- 中心音「ソ」から始めたメジャースケール=Gメジャースケール
- 中心音「ファ」から始めたメジャースケール=Fメジャースケール
などが作れてしまう、ということです。
これらは、言い方を変えれば
- 「ソ」から始めた「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の雰囲気
- 「ファ」から始めた「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の雰囲気
として解釈できます。
中心音が変わると7音のメンバーが変わる
この7音は「メジャースケール」という並び方を前提として選ばれるため、中心音が変わることで必然的にそのメンバーも変わります。
以下は、それを視覚的に表した動画です。
ここで話を元に戻すと、こちらで取り上げている「調(キー)」とは、つまるところ「どのスケールを使うか?」を指す言葉です。
簡単にいえば、例えば
- Gメジャースケールを使う曲=キーGメジャー
- Fメジャースケールを使う曲=キーFメジャー
になるということです。
以下は、各メジャーキーに使われるそれぞれの音を一覧にした表です。
この表からも、それぞれのキー(メジャースケール)における7音が微妙に異なっていることがわかります。
結局のところ「転調」とは?
ここまでを踏まえると、結局のところ「転調」とは
- 中心音を変えること
- 中心音に紐づく音のグループを変えること
だといえます。
転調が実施されることによってそこまでの曲展開とは違った雰囲気が感じられるようになるのは、これらの理由からです。
「転調とは何か?」と考える時には、まず大まかに
「曲の中で主に使われる音のメンバーを変えること」
として認識して下さい。
「調」と、その代表的な種類
ここからは転調を実施する際の実用的な知識として、調の種類を関係性の深いものに絞り整理します。
主調
まず曲が持っている「調」を「主調(しゅちょう)」と呼びます。
「キー=Cメジャー」という前提がある場合、すなわち主調は「Cメジャー」であり、それ以外の各調はこれを軸として割り出していきます。
※こちらでは、わかりやすく「主調=Cメジャー」として話を進めていきます。
属調と下属調
主調「Cメジャー」で使用される「Cメジャースケール」の五番目の音は「ソ(G)」となりますが、その音を中心音としたメジャースケール(Gメジャースケール)が使用されるキー(Gメジャー)を「属調(ぞくちょう)」と呼びます。
また四番目の音「ファ(F)」を中心音としたメジャースケール(Fメジャースケール)が使用されるキー(Fメジャー)を「下属調(かぞくちょう)」と呼びます。
これら「属調」「下属調」は、「主調」と最も馴染み深い調であるとされており、これはコードの基本がスリーコード「C、F、G(I、IV、V)」になるのと同じである、と覚えると理解しやすいはずです。
※関連ページ
ダイアトニックコードとスリーコード(成り立ちとコードの役割などについて)
平行調
「Cメジャースケール」を六番目の音「ラ」から並び替えただけのスケール「ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ、ソ」(Aマイナースケール)が使用されるキー(Aマイナー)を「平行調(へいこうちょう)」と呼びます。
同主調
「主調=Cメジャー」と同じく「ド」を中心音とした「マイナースケール」を使用する「Cマイナー」というキーが存在します。
そのキーを「同主調(どうしゅちょう)」と呼びます。
※関連ページ
「同主調転調」の解説(同じ中心音を持つマイナーorメジャーへの転調)
他
「Cメジャー」に対する「Aマイナー」のように、「マイナースケール=メジャースケール六番目の音から並び替えただけのもの」は「キー=Gメジャー」や「キー=Fメジャー」にも存在します。
これらはそれぞれ
- 「Gメジャー」=「Eマイナー」
- 「Fメジャー」=「Dマイナー」
となりますが、「属調」「下属調」それぞれの「平行調」であることから
- 「Eマイナー=属調平行調(ぞくちょうへいこうちょう)」
- 「Dマイナー=下属調平行調(かぞくちょうへいこうちょう)」
と呼びます。
調の種類(まとめ)
各調の呼び名を改めて整理すると下記のようになります。
- 属調「Gメジャー」
- 下属調「Fメジャー」
- 平行調「Aマイナー」
- 同主調「Cマイナー」
- 属調平行調「Eマイナー」
- 下属調平行調「Dマイナー」
例えば、ページ冒頭で述べた
「Cメジャー」→「Gメジャー」
への転調は関係調への転調、として解釈できます。
これら関係調は音使いが大きく変わらないため、転調の際リスナーに違和感無く受け入れられるものとされています。
また調が関係調から離れるほどにもとある調と比べて使われる音の種類が変わるため、その調への転調は大きな意外性を生みます。
それと同時に、音使いが変わる分扱いづらいものとされています。
動画で解説
「文章ではよくわからない!」という方のために、下記動画でも調とその種類について解説しています。
是非参考にしてみてください。
まとめ
以下はここまでのまとめです。
- 「転調」とは「調の転換」のことで、それはすなわち「『中心音』と『音のグループ』を変えること」を意味する
- 「主調」に馴染み深い調を「関係調」と呼ぶ
- 関係調への転調は音の変化が少ない、それ以外の調への転調は音の変化が大きい
ポップス・ロックにおいて「属調」「下属調」のような言葉が使われる局面は少ないですが、主調に対してどんな調がそれにあたるのか、という点をしっかりと理解しておくことが大切です。

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