モーダルインターチェンジの解説(モーダルインターチェンジとは何か?その使用方法や効果など)

こちらでは、作曲や演奏に活用される「モーダルインターチェンジ」という言葉の意味や、その使用方法、効果などについて解説していきます。

(あわせて、それを理解するために欠かせない「モード」についても触れていきます)

モーダルインターチェンジを通して、メロディやコードの新たなアプローチや、音楽の捉え方を習得してみて下さい。

モーダルインターチェンジの概要

モーダルインターチェンジ(modal interchange)とは、「モードの(modal)」+「交換(interchange)」という意味を持つ言葉です。

平たくいえば「『モード ※後述』を変えること」を指しており、それによってコード進行やメロディに個性的なアプローチを取り入れることの全般を表すためにこの言葉が使われます。

「モード」について

モーダルインターチェンジを理解するうえで欠かせないのが「モード」の知識です。

「モード」とは日本語で「旋法(せんぽう)」とも訳され、広い意味で「音の並び方」や「音階の構造」のことを指します。

モードとして最も有名なのが、「教会旋法(きょうかいせんぽう・チャーチモード)」と呼ばれる七つのモードです。

教会旋法を形作るのは「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」で、この起点となる音を変えることで七つのモードが作られます。

具体的には、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」を「レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」としたり「ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ」のようにしながら、モードを作ります。

「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」自体が七つの音によって成り立っているため、起点となる音もそれら七つとなり、結果的に七つのモードが出来上がります。

以下は、それらをわかりやすく把握するために、鍵盤を横一列で並べて図にしたものです。

この図にある通り、それぞれは「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の配置をひとつずつずらしていくような感覚で作っていくことができます。

たったそれだけなのに、七つそれぞれで実にいろいろな音の並び方になっていることがわかるはずです、

七つのモードそれぞれが違った音の並び方を持つ

ピアノの鍵盤を見るとわかるとおり、そもそも1オクターブ内には12個の音が存在しています。(白鍵=7個、黒鍵=5個)

「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」は、その全12音のうちから「ド」を起点として1音(黒鍵)を挟んで「レ」→また1音を挟んで「ミ」→隣の「ファ」…、というように、いびつな規則で音が選ばれています。※上記図の1

そのため、それをもとに「レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」、「ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ」…と起点を変えていくと、それぞれが違った音の配置を持つことになります。

これをよりわかりやすく把握するため、前述の図から音名を抜いて「何番目の音=度数」のみ表記したものを以下に示します。

これらのうち、既に述べた通り一番上にある1の配置は「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の並び方であり、これはいわゆる「メジャースケール」を指します。

※関連ページ
メジャースケールの内容とその覚え方、割り出し方、なぜ必要なのか?について

その他を含め七つすべてを見比べても同じ音の並び方になっているものはなく、すべてが違っていることがわかります。

これが、一般的に「モーダルインターチェンジ」の前提として語られる「モード=教会旋法=七つのモード」を表すものです。

「モード(教会旋法)とは何か?」と考える時、まず鍵盤を横一列に並べた「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の配置(=メジャースケール、上記図の1)を思い出し、そのうえで「それをレから始めた場合は?」「ミから始めた場合は?」という観点から並べ替えた「七つの音の並び方(上記図の1~7)」をイメージするようにして下さい。

※厳密には、教会旋法以外にも沢山のモードが存在しています。反面で、ポップス・ロックにおける「モーダルインターチェンジ」は教会旋法を前提とすることが多いため、こちらではそれを前提として解説を進めていきます。

モードとは「音の並び方」のこと

ここで注意すべきは、モードが「音の並び方のことを指す」という点です。

上記「度数の図」で確認したように、「全12音の中からどう音を選択するか」という音の配置のことを指してモードという言葉が使われます。

そのため、例えば「レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」の構造(上記図の2)を「ド」から始めることもできてしまいます。

以下は、それを実施した図です。

この図にある通り、まず「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」を「レ」から始めることで「レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」という音の並び方が出来上がります。

そのうえで、これを度数のみとして(配置の構造のみを)表した場合、本来の「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ(1)」の構造と見比べると「III」と「VII」の位置に違いが生まれていることがわかります。

具体的には「2のモードは、1のモードにおける『III』と『VII』が半音下がった配置になっている」ということです。

そのため、2のモードを「ド」から始める場合には、「ミ」と「シ」にフラットが付くことになります。

結果的に「レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」の構造を、中心音(起点)を「ド」として表すと「ド・レ・ミ♭・ファ・ソ・ラ・シ♭」となるのです。

結局のところ「モーダルインターチェンジ」とは?

ここで話を元に戻すと、「モーダルインターチェンジ」とは「モードを変えること」であり、それはすなわち「音の並び方(メンバー)を変えること」を意味します。

例えば、通常「キー=C」という場合、メロディには「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」が使われますが、これは中心音を「ド」として、上記でいう1のモードによって音を並べたものです。

そのうえで、この例でいう中心音「ド」を残し、並び方(モード)のみを変えるのが、ポップス・ロック等で一般的に語られる「モーダルインターチェンジ」の概念です。

前述の例において、「2のモード」を「ド」から始めたのがそれにあたります。

すなわち、「1のモード」が「2のモード」に変わることで、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」という音使いが、「ド・レ・ミ♭・ファ・ソ・ラ・シ♭」になるのです。

音使いが変わることで、メロディやコードには違ったアプローチが検討できるようになります。

七つのモードによるさまざまな音で、意外性のある展開を提示できる

もちろん、教会旋法を前提とする場合モードは前述のとおり全部で七種類あるため、同じ「中心音=ド」でも、それぞれによっていろいろな音の並び方が生まれます。

以下はそれを把握するために、七つのモード全てを「ド」から始めた図です。

これらを見ると、同じ中心音「ド」でも、モードが変わるだけでいろいろな音の並び方が生まれていることがわかります。

モーダルインターチェンジによって、例えば「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の7音を主要な音としていた曲が、ある部分で「ド・レ・ミ♭・ファ・ソ・ラ♭・シ♭(上記6のモード)」を主要な音として展開し始めたら、リスナーは「なんだか雰囲気が変わった」と感じるはずです。

土台となる音のメンバーが変わることでメロディはもちろん、ハーモニー(コードやコード進行)にも違いが生まれます。

ポップス・ロック等におけるモーダルインターチェンジはそのような効果を狙って行われるものです。

教会旋法にある各モードの名前

実は、ここまでにご紹介している1~7のモードには名前があります。

以下はその一覧です。

  • 1のモード

    「アイオニアン(イオニアン)・モード」

  • 2のモード

    「ドリアン・モード」

  • 3のモード

    「フリジアン・モード」

  • 4のモード

    「リディアン・モード」

  • 5のモード

    「ミクソリディアン・モード」

  • 6のモード

    「エオリアン・モード」

  • 7のモード

    「ロクリアン・モード」

※なお、こちらではわかりやすさを優先するためにこれらの名称をあえて使わず、前述した「1~7のモード」という言い回しを活用していきます。

モーダルインターチェンジの実践

ここまでを通してモーダルインターチェンジの概要がある程度把握できたところで、ここからはモーダルインターチェンジを曲の中でどのように実施するか、そしてそれによって曲にどのような効果をもたらすことができるか、という点をより具体的に考えていきます。

モーダルインターチェンジの実施方法

ポップス・ロックにおけるモーダルインターチェンジは、一般的に曲の一部分のみに対して行われます。

すなわち、曲の全体は通常と同じく「メジャースケール=前述1のモード」の音で組み立てつつ、ある一部分だけを例えば「6のモード」の音使いにする、ということです。

曲中のわずか数小節を別のモードと捉えることもあれば、ある程度の長さを設けて、その部分でモーダルインターチェンジをしっかりと実施するパターンもあります。

転調との違い

この「一部分のみを違った音使いにする」という手法で思い起こされるのが、「部分的な転調」です。

※関連ページ
転調(1)転調の概要(転調とは中心音とそのグループを変えること)と調の種類

転調とは、例えば「キー=C」を「キー=F」にするように、「調」そのものを変える手法を指します。

これは、「メジャースケール」という音の並び方を変えずに、中心音である「ド」を「ファ」に変えることを意味するため、モーダルインターチェンジとはまた違った効果を生みます。

モーダルインターチェンジを考える際に、この点を混同しないように注意しましょう。

モーダルインターチェンジによるメロディへの効果

お伝えしているとおり、モーダルインターチェンジを行うことによって、中心音をそのままに、使われる音のメンバーを変えることができます

以下はその例として、改めて前述の(中心音ドの)「1のモード」と「6のモード」を比較した図です。

既にお伝えしたとおり、この例における「1のモード」から「6のモード」に変わることは、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」という音使いが「ド・レ・ミ♭・ファ・ソ・ラ♭・シ♭」になることを意味します。

そのため、曲の中で「1のモード→6のモード」というモーダルインターチェンジを行った場合、例えば

「ド・レ・ド・シー」
というメロディを
「ド・レ・ド・シ♭ー」
という風に歌うことも検討できるようになります。

これはとてもシンプルな例ですが、モーダルインターチェンジによるメロディへの効果は突き詰めるとこのようなものだと理解して下さい。

モーダルインターチェンジによるハーモニー(コード進行)への効果

モーダルインターチェンジによって変わる音使いは、もちろんコードにも効果をもたらします。

一般的な曲におけるメジャースケールの音使いは「メジャーダイアトニックコード」を使ったコード進行につながりますが、その土台(メジャースケール=前述1のモード)を変えるのがモーダルインターチェンジであるため、そこから出来上がるコードも必然的に変わることになるのです

※関連ページ
ダイアトニックコードとスリーコード(成り立ちとコードの役割などについて)

以下は、前述の(中心音ドの)「1のモード」と「6のモード」によって成り立つコードを比較した図です。

上記例における1のモードは「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」であるため、そこからは「Cダイアトニックコード」の七つのコードが生まれています。

一方、その中心音「ド」を残して「6のモード」に変えた場合、音使いは「ド・レ・ミ♭・ファ・ソ・ラ♭・シ♭」になるため、例えば

「ド・ミ・ソ」=C
というコードも
「ド・ミ♭・ソ」=Cm
になるのです。

これが、モーダルインターチェンジによるコードへの効果です。

モーダルインターチェンジによりノンダイアトニックコードを導くことができる

例えば「キー=C」の曲のある部分で、前述の例の通り「1のモード→6のモード」というモーダルインターチェンジが行われた場合、

「C → F → G」
という流れで進んでいたコード進行を
「(C → F → G)→ A♭ → B♭」
のように進めることが出来るようになります。

この例における「A♭」「B♭」は、「6のモード」によって導き出されたコードです。

これらはもとの「キー=C」における「Cダイアトニックコード」に無いコードであるため、リスナーはそこから「異質な響きが登場した」と感じることになります。

すなわち、モーダルインターチェンジによってノンダイアトニックコードを導くことが出来るようになる、ということです。

また、このように「モーダルインターチェンジによって本来無いコードを導くこと」を、「コードを借用する」と表現することがあります。

ノンダイアトニックコードをモーダルインターチェンジで後付けすることもある

実際のところ上記は逆説的にも捉えられています。

より簡単にいえば、「使ってみたら心地よかったノンダイアトニックコードをモーダルインターチェンジで理論的に解釈している」というような見方もされている、ということです。

例えば、ノンダイアトニックコードとして広く用いられている「サブドミナントマイナー」は、ダイアトニックコードにある「IV」を「IVm」としたものですが、これもモーダルインターチェンジによって導かれたコードのひとつとされます。

※関連ページ
サブドミナントマイナーの概要と使い方(その代理コードや終止への活用もあわせて解説します)

「キー=C」を例にとると、「Cダイアトニックコード」における「IV」は「F」であり、それをサブドミナントマイナーにすると「Fm」になります。

一方で、前述した(中心音ドの)「6のモード」によるコード一覧(下記)を改めて見ると、そこには「Fm」が存在していることがわかります。

これらを整理すると、この「サブドミナントマイナー」の「IVm(キー=CにおけるFm)」は

  1. 「IV」をマイナーにしたもの
  2. 中心音「ド」のまま、音の並び方を「6のモード」にしたことで導かれたもの

という二つの捉え方ができてしまう、ということになります。

例えば、「キー=C」の曲の中で「Fm」を初めて使った人がいたとして、その人が「モーダルインターチェンジで『Fm』が使えるから…」という観点からこのコードを導いたか、といわれると、少し疑わしい気もします。

それよりも、「『F』をマイナーにしてみようかな」という軽い気持ちで使った、と考える方がより自然です。

そこから「なぜ『Fm』が使えるのか?」という議論に発展した際に、それをモーダルインターチェンジによって解釈した、とも考えられます。

「後付けとして『モーダルインターチェンジ』という概念を用いて理論的に解釈している」、と述べたのはこのようなことを意味します。

モーダルインターチェンジによって、メジャーダイアトニックコードに無いさまざまなコードを連想することができますが、この例のように、ノンダイアトニックコードの理論的解釈の為にそれらが活用されている、という見方もできるでしょう。

まとめ

ここまでモーダルインターチェンジの解説として、その概要やモードの成り立ち、モーダルインターチェンジの実施方法と効果などについて解説してきました。

以下はそのまとめです。

  • モーダルインターチェンジとは「『モード=音の並び方』を変えること」
  • 「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の起点を変えると七つのモードが出来上がる
  • モードは「音の並び方」を意味する
  • モーダルインターチェンジによって、中心音を残し音の並び方を変えることで音使いを変えることができる
  • モーダルインターチェンジを活用して、メロディとコードに個性的なアプローチを検討できる
  • コードの理論的解釈の為にモーダルインターチェンジが後付けされている、という見方もできる

モーダルインターチェンジは、広い意味で「メロディやコードを独創的に組み立てるための概念」と捉えることができます。

またこちらでは割愛していますが、お伝えした通りモードには教会旋法以外にもさまざまな種類があり、実際の曲ではモーダルインターチェンジの手法も柔軟な発想によって活用されています。

そのような意味から、仕組みを理解したうえで自分なりに使用方法を模索したリ、既存の曲をモーダルインターチェンジの観点から分析してみることが、その理解を深める意味で大切だといえるでしょう。

モーダルインターチェンジは奥が深いです。