こちらでは、コード進行の技法のひとつである「セカンダリードミナントコード」について、「そもそもセカンダリードミナントコードとは何か?」という観点から解説していきます。
また記事後半では、セカンダリードミナントコードの覚え方や「セカンダリードミナントコードをコード進行の中でどのように使用するのか?」という点についてもあわせて考えていきます。
ページの最後では動画で音を出しながら解説もしていますので、そちらもあわせてご覧いただくとさらに理解が深まるはずです。
目次
セカンダリードミナントコードの概要
※「ダイアトニックコード」や「ドミナントセブンスコード」についてご存じない方は、以下のページを事前に確認いただくとこれ以降の内容を理解しやすくなるかと思います。
ダイアトニックコードとスリーコード(成り立ちとコードの役割などについて)
ドミナントセブンスとドミナントモーションについて|コード進行を操る重要な働き
「セカンダリードミナントコード」は、ダイアトニックコードではないコード(ノンダイアトニックコード)として、ポップスやロックにおいて頻繁に活用されています。
キー=Cでいう「G7 → C」というコード進行(ダイアトニックコード内の「V7 → I」)は、「G7」(V7)の不安定な響きが「C」(I)という安定した響きに解決するため、強い結びつきを持ったコード進行として扱われます。
この概念を「C」以外(ダイアトニックコード内の「I」以外)のコードに活用して導き出されるコードが「セカンダリードミナントコード」です。
セカンダリードミナントコードの成り立ち
「V7 → I」(キー=Cでいう「G7 → C」)というコードの動きは非常に結びつきが強いため、例えば「C」というコードがあった場合「Cがあるならその直前にG7があっていいよね」という解釈が通用します。
セカンダリードミナントコードはこの発想をもとにしていて、例えば「Fがあったら?」「Gがあったら?」という風にいろいろなコードを「V7 → I」の「I」と捉えてその直前にある「V7」を導きます。
下記はセカンダリードミナントコードの成り立ちの例です。
例:「Cダイアトニックコード」の「Dm」(IIm)に対するセカンダリードミナントコードを導く
- まず、セカンダリードミナントコードはすべてをメジャーコードを前提として考えることができるため、この場合の「Dm」は「D」とします。
- 次に「D」を「I」と捉えるため、「D」を「I」に持つ「D ダイアトニックコード」を明らかにします。
- 「Dダイアトニックコード」の「V7」は「A7」であるため「DがあるならA7があっていいよね」という解釈が成立します。
- 本来の目的に戻し、これにより「DmがあるならA7があっていいよね」ということにつながり、この「A7」が、「Dm」 のセカンダリードミナントコードである、と特定できます。
※本来「Dm」のセカンダリードミナントコードは「『キー=Dm』の五番目のコード」として考えるべきですが、こちらではわかりやすさを優先して「D」と捉える方法をとっています。
今回の例である「Cダイアトニックコード」では「Am」は六番目のコード(VIm)となっているため、上記で求めることができた「A7」は「VI7」というように表記します。
「Cダイアトニックコード」のセカンダリードミナントコード一覧
上記手順によって「Cダイアトニックコード」内の「I」以外のすべてのコードに対してセカンダリードミナントコードを求め、一覧化したものが以下の表です。
この表からわかるとおり、「A7」「B7」「C7」「D7」「E7」「F#7」という六つのコードが導き出されました。
これらのコードは本来の「Cダイアトニックコード」には無いコードですが、前述の「〇〇があるならXXがあってもいい」という解釈から、同じようにコード進行の中で活用することができます。
また表に記載されている通り、一覧の中でも「IIIm」「VIIm-5」に対するセカンダリードミナントコードは使用頻度が低くポップスやロックではあまり見かけられません。
セカンダリードミナントコードの覚え方と使用方法
セカンダリードミナントコードの覚え方
上記表にまとめられているように、セカンダリードミナントコードはキーの中の「I7」「II7」「III7」「#IV7」「VI7」「VII7」であると言い換えることができます。
そのうえで、すでに述べたように「IIIm」「VIIm-5」に対するセカンダリードミナントコードは使用頻度が低いため、それらを省くとセカンダリードミナントコードとして使うことができる(よく使われる)のは「I7」「II7」「III7」「VI7」であると定義できます。
このうち
- 「C(I)」「Dm(IIm)」「Em(IIIm)」「Am(VIm)」
- 「C7」「D7」「E7」「A7」
セカンダリードミナントコードの使用場所
セカンダリードミナントコードは「V7 → I」の概念を活用した「V7」の部分にあたるコードであるため、一般的に「I」のコードとセットで扱われます。
下記はセカンダリードミナントコードを使用したコード進行の例です。
- C → A7 → Dm → G(I → VI7 → IIm → V)
反面でセカンダリードミナントコードは「仮のI」に結びつかない形で使用されることも頻繁にあります。
下記はその例です。
- C → A7 → F → G(I → VI7 → IV → V)
セカンダリードミナントコードはその響きにより「仮のI」が連想されるため、この例の場合「Dmが来るかな」→「来なかった」という裏切りのような感覚をリスナーにあたえることもできます。
解説のまとめ
ここまでセカンダリードミナントコードについて解説してきました。
以下はそのまとめです。
- セカンダリードミナントコードとして「I7」「II7」「III7」「VI7」が使用できる。
- 上記コードは他コードと同じようにコード進行の次なる一手として平等に使用できる。
- 使用の際には「V7 → I」とした場合における「I」に結びつけることを検討する。また「I」ではないコードに結びつけて使用しても構わない。
「I7」「II7」「III7」「VI7」は原則として「仮のI」に結びつくように使用すべきですが、そうではない使用も認められていることを考えるとコード進行の次なる一手として柔軟に活用できると捉えて支障ありません。
そのうえで、使用する際には「仮のI」への進行を検討するようにして、状況に応じてそれを裏切る構成も検討できます。

動画で解説
「文章ではよくわからない!」という方のために、以下の動画でもセカンダリードミナントコードについて実演を交え解説しています。
是非参考にしてみてください。
音楽理論について詳しく知る
