コード進行のアレンジ例 「F→G→C」を理論的な解釈によって発展させる

先日以下の投稿をしました。

例えば「F→G→C」から

 

Dm→G→C
F→G→Am
F→D♭7→C
F→Dm7onG→C

 

などが発想できて、さらに

 

D7→G→C
F→Fm→C
F→Dm7-5→C
F→A♭→C
F→B♭→C

 

なども。装飾すれば

 

Dm7→G7→CM7
FM7→G7→Am7
F7→D♭7→C7
FM7→Dm7onG→CM7
D7(9)→G7(♭13)→CM7(9)
Dm7→Dm7-5→CM7

 

などが作れます。

ここで述べている通り、「F→G→C」のようなシンプルなコード進行もやり方次第でいろいろな構成へと発展させることができます

こちらのページでは、それぞれのアレンジ案について簡単に解説を加えてみます。

元になるコード進行

まず初めに、アレンジ元になるコード進行を改めて整理します。

ここで取り上げているのは、

F→G→C

というコードのつながりで、ここでのキーは「Cメジャー」を前提としています。

この「F」「G」「C」の三つのコードは、Cメジャーキーにおける「スリーコード」と呼ばれるもので、それぞれが

  • 「F」=少し不安定(サブドミナント)
  • 「G」=不安定(ドミナント)
  • 「C」=安定(トニック)

という響きの特徴を持っています。

▼関連ページ ダイアトニックコードとスリーコード(概要や成り立ち、コードの役割などについて)

「C」のコードはCメジャーキーにおける主和音と呼ばれるコードで、そのキーを象徴するような響きを持っており、一方で「G」のコードはそれと対照的なものです。

つまり、この「F→G→C」というコードの流れは、

少し不安定→不安定→安定

という雰囲気の変化によって、キーを象徴する主和音の「C」へと回帰するような構成だと解釈することができます。

各種アレンジの解説

これ以降は、冒頭で挙げた投稿に沿って「F→G→C」というコード進行を元にした各アレンジ案、およびアレンジする際の発想の仕方などについて解説していきます。

1.「F→G→C」⇒「Dm→G→C」

コード進行アレンジ案としてひとつ目に挙げているのが、「F→G→C」における「F」を「Dm」へと置き換え、

「F→G→C」⇒「Dm→G→C」

とアレンジするかたちです。

ダイアトニックコード内にある、

  • IV(4番目のコード、キー=Cメジャーにおける「F」)
  • IIm(2番目のコード、キー=Cメジャーにおける「Dm」)

のそれぞれは似た響きを持っており、「代理コード」という呼び名によって双方を置き換えて活用することが多いです。

▼関連ページ 代理コードについて マイナーコードをスリーコードのかわりに活用する

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ダイアトニックコード内においてはスリーコードがより主要なコードとして扱われるため、一般的には「IV」に対する「IIm」を「代理コード」(または代理マイナー)などと呼びます

単なるスリーコードの構成に「Dm」によるマイナーの響きが加わり、サウンドがやや豊かになります。

2.「F→G→C」⇒「F→G→Am」

次に挙げているアレンジ案も「1」と同じ発想の仕方で、こちらでは「C」を「Am」に置き換えて、

「F→G→C」⇒「F→G→Am」

としています。

これは、ダイアトニックコードにおける

  • I(1番目のコード、キー=Cメジャーにおける「C」)
  • VIm(6番目のコード、キー=Cメジャーにおける「Am」)

のそれぞれが似た響きを持っていることで成り立つ、代理コードの組み合わせによるものです。

ここでも「Dm」の例と同じく、マイナーコードによって響きに変化が生まれています

偽終止へのアレンジ

元のコード進行にある「~G→C」という流れは、主和音「C」へきちんと回帰する構成として「全終止」という呼び名によって頻繁に扱われます。

こちらでの例のように、それを「~G→Am」とアレンジするやり方は

主和音「C」へと回帰すると見せかけて「Am」へ進行した

というような印象を聴き手に与えます。

このようなコードの構成は、終止の分類上、「偽終止(ぎしゅうし)」などと呼ばれます。

▼関連ページ 終止の詳細とその種類(全終止・偽終止・アーメン終止・サブドミナントマイナー終止など)

3.「F→G→C」⇒「F→D♭7→C」

次に挙げているのは、ドミナントコードの「G」を「D♭7」に置き換え、

「F→G→C」⇒「F→D♭7→C」

としたアレンジ案ですが、これも前述した「代理コード」の発想に近いものだといえます。

そもそも、一般的にドミナントコード「V」はより不安定な響きを強める狙いから「V7」(この例でいう「G7」)として表現されることが多いです。※ドミナントセブンス

そのうえで、この「V7」と「♭II7(この例でいう「D♭7」)が共に似た響きを持っていることから、

「V7」≒「♭II7」

という関係によって、「♭II7」がドミナントコードからの置き換えのコードとして頻繁に扱われます。

この「♭II7」のコードは、ポピュラー系の音楽用語で「裏コード」などと呼ばれます。

▼関連ページ 裏コードについて ドミナントコードの代理ができるコードを解説

4.「F→G→C」⇒「F→Dm7onG→C」

次に挙げたアレンジ案は、「G」を「Dm7onG」に置き換え、

「F→G→C」⇒「F→Dm7onG→C」

と変化を加えたものです。

この「IIm7onV(Dm7onG)」も、前述した裏コードのようにドミナントコードからの置き換えとしてよく扱われ、

「IIm7(Dm7)を主体としつつ、ベース音のみがV(G)になる」

という構造を持ちます。

「IIm7」というサブドミナントの響きを持つコードに、ドミナントのベース(V)が加わっていることから、「ドミナントの特性を少し弱めたようなコード」とも解釈されます。

さらには、このコードは「V7sus4」(この例でいう「G7sus4」)の置き換えとしても扱われることがあります。

▼関連ページ 分数コード (オンコード、スラッシュコード)詳細と主な種類、代表的な活用方法などについて 「sus4」(サスフォー)コードの成り立ちと活用方法(3度の音を持たない特殊なコード)

5.「F→G→C」⇒「D7→G→C」

ページ冒頭でご紹介した投稿では、このアレンジ案以降をよりハイレベルなものとして分類しています

こちらでは、元のコード進行にあった「F」を「D7」に差し換えて、

「F→G→C」⇒「D7→G→C」

とアレンジしています。

ここでの「D7(II7)」は「セカンダリードミナントコード」と呼ばれるもので、中でも「II7」は「V=ドミナントコード」につながるセカンダリードミナントコードとして、「ダブルドミナント」という呼ばれ方でも扱われます。

▼関連ページ セカンダリードミナントコード 成り立ちとその表記などをわかりやすく解説します ダブルドミナント ドッペルドミナント II7コード=ドミナントにつながるドミナント の詳細と使用例の解説

このアレンジ例では、元々あったコード(この例でいう「F」)を無くしてしまうようにドミナントコード(V)の直前に「D7」が挿入されていますが、元の状態を残したまま、

F→D7→G→C

のように挿入されることもあります。

6.「F→G→C」⇒「F→Fm→C」

次に挙げたのは、サブドミナントのコードをマイナーコードに変形させて、

「F→G→C」⇒「F→Fm→C」

という流れを作ったアレンジ案です。

ここでの「Fm」は「サブドミナントマイナーコード」と呼ばれるもので、本来のサブドミナントコード「IV」(この例でいう「F」)からの発展形としてよく扱われます。

呼び名の通り、通常の「IV」と同じくサブドミナントの役割を持つため、ここで挙げているように「F→Fm」とつなげて活用したり、また直接コードを置き換えて、

「F→G→C」⇒「Fm→G→C」

のようにアレンジすることもあります。

▼関連ページ サブドミナントマイナーコード その概要と使い方 代理コード/終止部分への活用など

7.「F→G→C」⇒「F→Dm7-5→C」

次に挙げたアレンジ案でも前述したものと同じくサブドミナントマイナーコードを活用しており、ここでは「Fm」の代わりに「Dm7-5」を使って、

「F→G→C」⇒「F→Dm7-5→C」

という構成にしています。

このように、サブドミナントマイナーコード(IVm)はいろいろなコードに置き換えて活用されることもあります

8.「F→G→C」⇒「F→A♭→C」

次の案もサブドミナントマイナーコードの派生型といえるもので、ここでは「♭VI」(この例でいう「A♭」)を活用して、

「F→G→C」⇒「F→A♭→C」

とアレンジしています。

この「♭VI」は本来のサブドミナントマイナー「IVm」に近い響きを持っていることからその代理コードとして解釈されますが、同主調のマイナーキー(この例でいうCマイナーキー)から借用されたコードとして自由な発想で扱われることもあります。

9.「F→G→C」⇒「F→B♭→C」

次に挙げているアレンジ案では「♭VII」(この例でいう「B♭」)を活用して、

「F→G→C」⇒「F→B♭→C」

のように変化を加えています。

この「♭VII(B♭)」も前述した「♭VI(A♭)」と同じく同主調のマイナーキーにおいて扱われるコードで、ここに「♭III」(この例でいう「E♭」)を加えた、

「♭III」「♭VI」「♭VII」

の三つがそれぞれ同じ系統に分類されます。

この「♭VII」は、この例において「B♭→C」(「♭VII」→「I」)というかたちになってるように、主和音「I」につなげて活用されることが多いです。

▼関連ページ フラット系三種のノンダイアトニックコード 同主調マイナーからの借用

10.「F→G→C」⇒「Dm7→G7→CM7」

ページ冒頭の投稿でも述べている通り、これ以降のアレンジ案はいわば装飾的なものです。

こちらで挙げている、

「F→G→C」⇒「Dm7→G7→CM7」

というアレンジでは「F」を「Dm」に置き換えるやり方を土台として、そこからさらに各コードをセブンスコードへと発展させています。

キーの音のみを使って作られたコードのグループである「ダイアトニックコード」には、三つの構成音からなる「三和音」版と、そこに7度の音を加えた「セブンス(四和音)」版が存在しています。

「三和音に7度を加えただけ」という構造によって三和音の持つ響きや機能が維持され、この例のように装飾的な観点からアレンジに活用することができます

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ダイアトニックコードのセブンス版では、キーのスケール(この例でいうCメジャースケール)を前提として7度の音が加えられ、コードによって「M7」または「7」のどちらかがつくことになります。

▼関連ページ セブンスコードの解説 コードに「7度」の音を含む四和音、その成り立ちと詳細について

11.「F→G→C」⇒「FM7→G7→Am7」

こちらの案も、前述したセブンス版ダイアトニックコードによるアレンジのひとつです。

こちらでは、既にご紹介した「F→G→Am」というアレンジを土台にしながら、

「F→G→C」⇒「FM7→G7→Am7」

というかたちで、それらをセブンスコードによって装飾しています。

12.「F→G→C」⇒「F7→D♭7→C7」

こちらは、裏コードを活用したアレンジ案の「F→D♭7→C」を土台としつつ、その各コードに7度の音を加えて、

「F→G→C」⇒「F7→D♭7→C7」

のように装飾を行ったものです。

「三和音に7度の音を加えている」という状態はこれ以前の二例と同じで、特筆すべきは「F(IV)」および「C(I)」に「短7度(たんななど)」の音が加えられている点です。

この音はそれぞれキーのスケールから外れる音でありながら、「ブルースコード」としての観点から「I」または「IV」においてよく活用されます。

それぞれ、セブンス版ダイアトニックコードにおいては

  • IM7(この例でいうCM7)
  • IVM7(この例でいうFM7)

となるところ、本来付け加えられるべき「M7(長7度)」が「7(短7度)」になることでコード表記が「〇7」のかたちとなっています。

それによって「F7→D♭7→C7」というように、コード進行全体を通して「〇7」のコードが平行移動するような状態になるという面白さも生まれています。

▼関連ページ ブルースコードの概要とコード進行の例・バリエーション(ジャズブルースなど)

13.「F→G→C」⇒「FM7→Dm7onG→CM7」

こちらのアレンジ案もセブンス版ダイアトニックコードを活用したもので、既にご紹介した「F→Dm7onG→C」がセブンスコードによって

「F→G→C」⇒「FM7→Dm7onG→CM7」

とアレンジされています。

「IIm7onV(Dm7onG)」自体が5つの構成音から成り立つ複雑な響きを持つコードであるため、一般的にはその前後もセブンスコード等によって構成音を増やし、全体を通して多彩な響きが生まれるようにアレンジされることが多いです。

14.「F→G→C」⇒「D7(9)→G7(♭13)→CM7(9)」

次に挙げている案ではセブンスのさらに先へと発想を広げ、「D7→G→C」の構成にテンションの音を活用して、

「F→G→C」⇒「D7(9)→G7(♭13)→CM7(9)」

とアレンジをしています。

ここでの「9」「♭13」がテンションに相当するもので、通常セブンスコードにこれらが付加されることでさらに複雑な響きが生まれます。

中でも9th(ナインス)の音はさまざまなコードで扱われ、テンションの中では比較的使い勝手のいいものだといえます。

また、「〇7」のコードはテンションの許容範囲が広く、通常の「9」「11」「13」の他に、ここで例として挙げているような「#」「♭」を付加したテンションの変形もよく活用されます。

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このような、「#」「♭」を付加したテンションは「オルタードテンション」などと呼ばれます。

▼関連ページ テンションコード 概要とコード表記、コード進行例などの解説

15.「F→G→C」⇒「Dm7→Dm7-5→CM7」

最後に挙げたのは、既にご紹介した、サブドミナントマイナーの代理コード「IIm7-5(この例でいうDm7-5)」を活用した、

「F→G→C」⇒「Dm7→Dm7-5→CM7」

というアレンジ案です。

これ以前に挙げているように、「F」の代理コードとしてセブンス版ダイアトニックコードによって「IIm7(Dm7)」を導くことができるため、そこからのつながりとして、

「Dm7→Dm7-5」

という変化を聴かせています。

最後に置かれている「CM7」も、同じくセブンス版の主和音「IM7」です。

まとめ

ここまでに挙げた、「F→G→C」からのアレンジ案を改めて以下に示します。

  • Dm→G→C
  • F→G→Am
  • F→D♭7→C
  • F→Dm7onG→C
  • D7→G→C
  • F→Fm→C
  • F→Dm7-5→C
  • F→A♭→C
  • F→B♭→C
  • Dm7→G7→CM7
  • FM7→G7→Am7
  • F7→D♭7→C7
  • FM7→Dm7onG→CM7
  • D7(9)→G7(♭13)→CM7(9)
  • Dm7→Dm7-5→CM7

こうして改めて確認してみると、スリーコードのみによるシンプルな「F→G→C」という構成も、発想の仕方によってさまざまなかたちにアレンジすることができるとわかるはずです。

上記で述べているように、コードアレンジにおいては、

  1. コードを置き換える
  2. コードを装飾する

という2点がポイントとなります。

これらを踏まえつつ、理論的な解釈によっていくつかの手法を活用しながら、ぜひコードアレンジに挑戦してみて下さい。

個人的には、セブンスコード以降からがコードアレンジの面白いところだと思っています。