ダブルドミナント ドッペルドミナント II7コード=ドミナントにつながるドミナント の詳細と使用例の解説

こちらのページでは、音楽理論用語の一つである「ダブルドミナント(ドッペルドミナント)」の詳細と、そのコードを活用したコード進行の例などを解説していきます。

以下の内容を活用して、是非個性的なコード進行を作り上げてみて下さい。

ダブルドミナント(ドッペルドミナント)の概要

ダブルドミナント(ドッペルドミナント)とは?

「ダブルドミナント」または「ドッペルドミナント」とは、「『ドミナント』に対する『ドミナント』」にあたるコードのことを指す音楽用語です。

これを理解するには、「ダイアトニックコード」と「ドミナントコード」「トニックコード」について把握しておく必要があります。

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ダイアトニックコードとスリーコード(概要や成り立ち、コードの役割などについて) 「ドッペルドミナント」という言葉はドイツ語であり、「ドッペル」は「二重」というようなことを意味します。

「ドッペルドミナント」を直訳すると「二重のドミナント」となります。

注釈
「ダブルドミナント」という言葉は「ドッペルドミナント」をもとにした造語のようなもので、英語では「the dominant of the dominant」や「five of five」という呼び名が一般的なようです。

「トニック」に対する五番目のコードがドミナント

上記のページで解説している通り、あるキーのダイアトニックコードにおける五番目のコード「V」(「キー=C」でいう「G」)は「ドミナントコード」と呼ばれます。

一方で、同じくダイアトニックコードにおける一番目のコード「I」(「キー=C」でいう「C」)は「トニックコード」と呼ばれます。

以下は、「Cダイアトニックコード」におけるそれらを改めて示したものです。

【Cダイアトニックコード】C, Dm, Em, F, G, Am, Bm-5

  • ドミナント=「G(V)」
  • トニック=「C(I)」
これは、あるコードをそのキーの「トニック(I)」としてダイアトニックコードを組み立てたとき、五番目のコードがそのキーにおける「ドミナント」になる、ということを意味します。

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この例では、「C」を「トニック(I)」として組み立てた「Cダイアトニックコード」の五番目のコードが「G」となっています。

そこから、「キー=C」におけるドミナントは「G」である、ということがわかります。

「ドミナント」を「I」と見立てたときの「ドミナント」

このページのテーマとなっている「ダブルドミナント(ドッペルドミナント)」は、上記の関係性を活用したものです。

それは既に述べた通り「『ドミナント』に対する『ドミナント』」のことで、より具体的には、「ドミナント」を仮に「トニック(I)」として見立てたときの「ドミナント」のことを指します。

これをわかりやすく把握するために、以下に例として「G」をトニックとして組み立てた「Gダイアトニックコード」を示します。

【Gダイアトニックコード】G, Am, Bm, C, D, Em, F#m-5
この例における五番目のコードは「D」であり、このことから「『G』をトニックとした場合(キー=G)のドミナントは『D』」だということがわかります。

ここで話を一旦「キー=C」に戻すと、そこでのドミナントは前述の通り「G」というコードでした。

「ダブルドミナント(ドッペルドミナント)」が「『ドミナント』に対する『ドミナント』」のことを意味するため、

「『C』のドミナントは『G』」

「『G』のドミナントは『D』」
という流れから、「『キー=C』のダブルドミナント(ドミナントのドミナント)は『D』」だということがわかります。

いろいろなキーのダイアトニックコードからダブルドミナントを導くことができる

上記で実施したように、あるキーにおけるドミナントコードをトニックと見立て、そこで新たにダイアトニックコードを組み立てることでダブルドミナントを導くことができます。

以下はその例として、「キー=D」におけるダブルドミナントを導く手順です。

【Dダイアトニックコード】D, Em, F#m, G, A, Bm, C#m-5

  • ドミナント=「A(V)」

↓「A」をトニックとする

【Aダイアトニックコード】A, Bm, C#m, D, E, F#m, G#m-5

  • ドミナント=「E(V)」
この手順を通して、「キー=D」のダブルドミナントは「E」である、ということがわかります。

ダブルドミナントは「IIm」をメジャー化したもの

そもそも、「Dダイアトニックコード」には「Em(IIm)というコードが存在しています。

【Dダイアトニックコード】D, Em, F#m, G, A, Bm, C#m-5
これを踏まえると、上記例の「キー=D」におけるダブルドミナント「E」は、その「Em(IIm)」をメジャーコードにして「E」としたものだということがわかります。

ここから、直接的に

ダブルドミナントは「IIm」を「II」としたもの
という定義が成立します。

すなわち、わざわざ前述したような手順を辿らなくても、そのキーのダイアトニックコードさえわかっていれば「IIm」を「II」に変形させてより簡単にダブルドミナントを求めることができるのです。

これは、例えば「『キー=F』のダブルドミナントは?」と考える際に、

【Fダイアトニックコード】F, Gm, Am, B♭, C, Dm, Em-5

  • 「IIm」=「Gm」
  • ダブルドミナント=「G(II)」
という手順で「G」というコードを導き出すことができる、ということです。

「ダブルドミナントとは何か?」と考える際には、

  • ダイアトニックコードの「IIm」を「II」にしたもの
  • 「ドミナント」の「ドミナント」のこと

と理解するようにして下さい。

ダブルドミナントの使用方法

これ以降は、実際のコード進行におけるダブルドミナントの具体的な使用例について解説していきます。

ドミナントモーションのおさらい

ドミナント(V)はダイアトニックコードの中でも特に不安定な響きを持っています。

そして、響きが不安定であるがゆえに最も安定した響きを持つトニック(I)がそこから連想され、コードの流れがそこに結びつくことで程よい心地良さをリスナーに感じさせることができます。

さらには「V」を「V7」の形とすることで響きはより不安定になり、このことから一般的に「V7→I」というコードは強い結びつきを持った二つのコードとして扱われます。

この「V7」を「ドミナントセブンス」、「V7→I」というコードの動きを「ドミナントモーション」などと呼びます。

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ドミナントセブンスとドミナントモーションについて|コード進行を操る重要な働き 以下はその例として、前述の「Cダイアトニックコード」と、そこでの「V7→I」を示したものです。

【Cダイアトニックコード】C, Dm, Em, F, G, Am, Bm-5

  • 「G7 → C」(V7 → I)

ダブルドミナントをドミナントモーションの形で使用する

ダブルドミナントの使用方法として最も一般的なのが、上記「ドミナントモーション」を活用したものです。

具体的には、ダブルドミナントを「〇7」の形とし、それを「V7→I」の行き先である本来のドミナントに結びつける形で使用します

以下は、「Cダイアトニックコード」における例です。

【Cダイアトニックコード】C, Dm, Em, F, G, Am, Bm-5

  • 「D7 → G7 → C」(II7 → V7 → I)
前述の通り、ダブルドミナントは「ドミナントのドミナント」であるため、「V7→I」の流れによりそのキーにおけるドミナント(V)に結びつきます

ここではダブルドミナント「D(II)」が「D7(II7)」となり、そこから「G(V)」へとつながっていることがわかります。

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この例では「G(V)」が「G7(V7)」となっているため、ダブルドミナントの向かい先がセブンスコードとなり「D7→G7」という構成が生まれています。

このように、「V7→I」は時として「V7→I7」の形になることもあります。

上記を整理すると、
ダブルドミナント(II)は「II7→V7」の形で使用する
と定義できます。

実際のコード進行の中では、「V7」の前に「II7」を挿入したり、ツーファイブ(IIm7→V7)の構成があった場合、それを「II7→V7」に変形する感覚で使用されることが多いです。

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ツーファイブとは?(概要と基本的な成り立ち、活用方法、マイナーキーにおける例など)

補足

ダブルドミナントはセカンダリードミナントコードでもある

コード進行の手法の一つに「セカンダリードミナントコード」という概念があります。

▼関連ページ
セカンダリードミナントコード 成り立ちとその表記などをわかりやすく解説します

これは、ダイアトニックコードにおける「I」以外のコードを「I」と見立てた場合のドミナントコードのことを指し、ダブルドミナントもそこに含まれます。

つまり、より大きな範囲を指す「セカンダリードミナントコード」という概念があり、その中で「ドミナントのドミナント」だけを特別に「ダブルドミナント」と呼ぶ、ということです。

ドミナントモーションの連結

前述したドミナントモーションの概念は、ダブルドミナント以前にも作ることができます。

これは、いわば「ドミナントのドミナントのドミナント」を意味します。

以下は「キー=C」におけるその例です。

「A7 → D7 → G7 → C」(VI7 → II7 → V7 → I)

ダブルドミナントである「D(II)」をさらにトニックと見立て、「Dダイアトニックコード(D, Em, F#m, G, A, Bm, C#m-5)」におけるドミナントセブンス「A7」をその前に連結しています。

このように、「ドミナントセブンスのドミナントセブンスのドミナントセブンスの…」とつなげていくことは理論上可能で、ジャズなどではこのような解釈が用いられることがあります。

まとめ

ここまで、ダブルドミナント(ドッペルドミナント)について解説してきました。

「ドミナントのドミナント」という込み入った概念により頭が混乱してしまうこともありそうですが、その都度順を追って考えることで理解することができるはずです。

また、あるコードに対するドミナントを素早く導くためには、瞬時にさまざまなキーのダイアトニックコードを思い浮かべることが求められます。

これはコード進行を柔軟に生み出していく技術にもつながるため、日頃からこのような考え方ができるようトレーニングしていけると理想的です。

ダブルドミナントはコードの結びつきを強めるための概念でもあります。