ボイシングについて|オープンボイシング・クローズドボイシングの例など

「ボイシング(Voicing)」とは、主に作曲や編曲に関連する音楽用語です。

同じ楽曲でも、ボイシングを意識することでそこから感じられる雰囲気は変わります。

こちらのページでは、そんな「ボイシング」の詳細や、それを活用した編曲のアイディアについて解説していきます。

「ボイシング」の概要

「ボイシング(Voicing)」とは、簡単にいえば「音の並べ方(音をどのように並べるか)」を意味する言葉です。

この言葉は主にコードや、それを含むより広範囲な音の重なりに対して使われます。

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音楽では、曲の中で特定の意味を持つ音のことを「声(Voice)」という言葉によって表すことがあります。(二声、混声、内声、和声、など)

そこに、「~すること」を意味する「~ing」を付加して、「声(音)を配置すること=Voicing」という言葉が成り立っている、と捉えることができます。

通常「ボイシング」という言葉が使われるときは、そのほとんどが以下二つのどちらかを意味します。

  • コード(和音)単体において構成音を配置すること
  • アンサンブルの中で楽器とその音を配置すること

これ以降は、それぞれについてより詳しく解説していきます。

ボイシング(1)コード(和音)単体において構成音を配置すること

コードを効果的に響かせるため構成音の配置を検討する

多くの人に知られている「C」や「Am」などの一般的なコードは、通常以下のような構成音を持つものとして捉えられています。

  • C=「ド・ミ・ソ」
  • Am=「ラ・ド・ミ」

これらは、例えば「C」であれば

「ド」と「ミ」と「ソ」を同時に鳴らせば「C」の響きが出来上がる

と読み解くことができるため、これをピアノで表現する際には、以下のような鍵盤の押さえ方がすぐにイメージできます。

これは「ド・ミ・ソ」という構成音の通り、鍵盤の低いところから順番に「ド」→「ミ」→「ソ」と音を重ねている状態です。

しかし、前述した

「ド」と「ミ」と「ソ」を同時に鳴らす
という定義さえ守れば「C」のコードは形作ることができるため、より柔軟にそれを捉えると、例えば以下のような鍵盤の押さえ方も検討することができます。

これは、前述した図のうち「ミ」のみを1オクターブ高い鍵盤にあげて押さえている状態です。

これが「ボイシング」の概念である「コード(和音)単体において構成音を配置すること」を意味するものです。

それぞれの押さえ方によってコードから感じられる響きには微妙な違いが生まれますが、どちらも同じく「C」のコードであり、演奏上はどちらも活用できます

コードは構成音さえ満たせばさまざまな音の並び方によって表現することができるため、曲を緻密に編曲する際には最も効果的にコードを響かせるためのボイシング(構成音の配置)が検討されます

クローズドボイシングとオープンボイシング

コードのボイシングを考える際に活用できる、「クローズドボイシング」「オープンボイシング」という二つのスタイルがあります。

それぞれは一般的に、以下のように定義されています。

  • クローズドボイシング:最も近い高さにあるコードの構成音を重ねて配置する
  • オープンボイシング:構成音の配置に間隔を空けて、全体が1オクターブ以上にまたがるよう配置する

クローズドボイシング

以下に、コード「C」をクローズドボイシングで並べた前述の図を改めて示します。

この図のように、クローズドボイシングはコードの構成音が密集しているため、三和音~四和音程度であれば基本的にすべての構成音が1オクターブ内の高さに収まる形となります。

また、クローズドボイシングは音の間隔が近いため、和音が塊で聴こえてくるような雰囲気を持っています。

通常多くのコードはクローズドボイシングの状態で認識されており、そのような意味から最も一般的な構成音の配置であるといえるでしょう。

オープンボイシング

クローズドボイシングをアレンジした前述の状態(以下)がオープンボイシングです。

上記図を見るとわかるとおり、オープンボイシングは構成音同士の間が適度に離れているため響きに広がりがあり、クローズドボイシングに比べてすっきりとした印象を与えます。

これ以外にも、例えばベース音のみを低音側に単体で配置し、その他の構成音同士をより高音部に持ってくるなど、いろいろなアレンジが検討できます。

演奏のための構成音の配置

コード構成音のボイシングは、演奏のしやすさを考慮して検討されることもあります。

例えば、コード「Am」は構成音「ラ・ド・ミ」から以下のようなクローズドボイシングが想定できます。

そのうえで、これを同じくクローズドボイシングによる前述のコード「C」からつなげて「C→Am」と演奏すると、構成音の動きは以下のような流れとなります。

この図を見ると、「C(ド・ミ・ソ)」から「Am(ラ・ド・ミ)」に展開するにしたがって、構成音全体が高音部に大移動するような状態になってしまっていることがわかります。

つながるコードの響きを考えるとこのままでは不自然であるため、これを改善するため「Am(ラ・ド・ミ)」のボイシングを以下のようにアレンジし、「ド・ミ・ラ」という並び方にすることが検討できます。

この状態のまま改めて「C→Am」とつなげてみると、構成音の変化は以下のように自然な形となります。

改善前の状態にあった構成音の大移動がなくなり、無理のない構成音のつながりを実現できていることがわかります。

これが演奏の都合によって検討されるボイシングの例です。

このように、通常コードは前後関係を考慮したうえで、最も自然に響く形に構成音の配置をアレンジして演奏されます

ボイシング(2)アンサンブルの中で楽器とそれぞれの音を配置すること

もう一つの「ボイシング」が、アンサンブルの中で各楽器にどのような音を割り当てるか、という観点を意味するものです。

アンサンブルの例

例えば、ピアノ、ギター、ベースという三種類の楽器によるアンサンブルを組み立てる時、それぞれに以下のような役割を割り当てているとします。

  • ピアノ:メインのメロディを演奏する
  • ギター:メロディラインを引き立たせる別のメロディ(カウンターメロディ)を演奏する
  • ベース:コードのルート音をもとにベースラインを演奏する

そのうえで、ここにボイシングの観点を取り入れると、

  • ピアノのメインメロディをもっと目立たせるために、ギターも同じメロディラインを演奏してユニゾンにしよう
  • ギターが演奏しているカウンターメロディは音の分離が曖昧だからオルガンで表現しよう
  • コードの雰囲気をより重厚にするためにストリングスでもう一つのカウンターメロディを演奏しよう

というような検討ができるようになります。

「ボイシング」という言葉が使われるときは「楽器(音)の配置」という意味合いをより含む

この例のように、アンサンブルに対する「ボイシング」の観点は簡単にいえば編曲の行為そのものを指しますが、厳密には前述した通り「楽器(音)の配置」という意味合いをそこに含むことが多いです。

それは、上記例のように、

  • メインメロディ:ピアノ
  • カウンターメロディ:ギター
  • ベースライン:ベース

という楽器の配置を、

  • メインメロディ:ピアノ・ギター
  • カウンターメロディ(1):オルガン
  • カウンターメロディ(2):ストリングス
  • ベースライン:ベース

のように検討することを指します。

編曲をしているとき、「アンサンブル全体のボイシングを検討しよう」というような表現が使われるときには、このようなことを意味すると理解してください。

メロディラインの多い音楽に使われることが多い

そもそもアンサンブルに対して「ボイシング」という言葉が使われる時、その楽曲は複数のメロディラインを持つことが多いです。

ページ冒頭で述べた「声」という言葉をもとに楽曲における一つのメロディラインを「声部」などと呼び、その聴かせ方や楽器配置などを見直すことを指して「ボイシング」という言い回しが用いられます。

そのため、いわゆるシンプルなバンドサウンドにおいてこのような意味での「ボイシング」という言葉が使われることは少なく、複数のメロディ楽器(各種管楽器やバイオリン等の弦楽器)が絡み合うオーケストラアレンジなどにおいて、このような言い回しがよく使われます。

まとめ

ここまで、「ボイシング」の詳細や、それを活用した編曲のアイディアについて解説してきました。

こちらでご紹介しているのはあくまで一例であり、実際の楽曲ではさまざまなタイプのボイシングが取り入れられています。

既存曲をボイシングの観点から分析してみると、より理解を深めることができるはずです。

ボイシングを意識することは「聴かせ方」を考えることでもあります。