こちらのページでは、コード進行の代表的な形である「4536進行」について解説していきます。
手軽に導入できて、かつ使い勝手もいい構成なので、是非オリジナル曲などに活用してみて下さい。
目次
「4536進行」の概要
「4536進行」とは、特定のコードの進み方(コード進行)を表した言葉で、具体的にはダイアトニックコードにおける「四番目→五番目→三番目→六番目」というコードの進み方を意味します。
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ダイアトニックコードとスリーコード(成り立ちとコードの役割などについて)
以下は上記ページにも掲載している「キー=C」のダイアトニックコード一覧と、そこでの「4536進行」を示したものです。
このように、キーのダイアトニックコードさえ明らかになっていれば、それを元にして簡単に「4536進行」を作り上げることができます。
「4536進行」が広く活用される理由
上記「4536進行」は心地良い雰囲気を持っており、作曲や演奏の場面で広く活用されています。
それには、以下のような理由があります。
1. ストーリーを感じさせる「機能的なつながり」を持っている
「4536進行」に含まれる「四番目」「五番目」「三番目」「六番目」のコードは、それぞれに特徴的な響きを持っています。
以下はそれを一覧にしたものです。
- 四番目=少し不安定な響き
- 五番目=不安定な響き
- 三番目=安定した響き
- 六番目=安定した響き
ここにある「安定」「不安定」「少し不安定(一時不安)」という三つの機能は、コード進行を組み立てる際に語られる三種の機能分類(下記)です。
- 安定(トニック)
=落ち着いた響き、締めくくりや動き出しを感じさせる
- 不安定(ドミナント)
=落ち着かない響き、それゆえに安定(トニック)を連想させ、そこに結び付くことが多い
- 一時不安(サブドミナント)
=少し落ち着かない響き、ドミナント・トニック双方に結び付く
この「4536進行」を機能的な側面から分析すると、「少し不安定」な響きが「不安定」になり、そこから「安定」に落ち着いている、と捉えることができます。
つまり、機能の流れによって、文章でいう「起承転結」のようなストーリーが演出できている、ということです。
コードは通常、順番に変化してリスナーにさまざまな響きやストーリーを感じさせるものですが、「4536進行」はそのような意味から非常に理にかなった構成だといえます。
2. 二つの強進行を含む
コード進行を考える際に、それぞれのコードが持つ最低音(ルート・根音)の動きは特に重要視されます。
中でも「強い音の進み方(強進行)」とされている音の動きがあり、ルートの動きがそうなるようにコードをつなげることで、説得力のあるコード進行を作り出すことができます。
「4536進行」におけるコードのつながりにはこの要素が含まれており、「音の進み方」という観点からも心地良さを感じることができます。
「強い音の進み方=強進行」について
一般的に、「強進行」は「完全4度上」または「2度上」などへの音の動きのことを指します。
すなわち、ある音が完全4度高い音に動くこと、あるいは2度高い音に動くとき、それを「強進行」と呼ぶ、ということです。
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強進行について(通称「4度進行」=ドミナントモーションの元になる力強い音の動き)
音楽における「度数(ディグリー)」の詳細について(音程や「何番目か」を表す「度」という概念)
以下は、例としてそれらの音の動きを「Cメジャースケール=ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ(キー=C)」において表したものです。
- ド→ファ
- レ→ソ
- ミ→ラ
- ソ→ド
- ラ→レ
- シ→ミ
- ド→レ
- ミ→ファ
- ファ→ソ 等
そのうえで、以下は前述の「Cダイアトニックコード」における「4536進行」に、ルートの動き併記したものです。
このルートの動きと、上記の「強進行になる音の動き」を見比べると、以下のポイントにそれらが含まれているとわかります。
- F(ファ) → G(ソ) =2度上
- Em(ミ) → Am(ラ)=完全4度上
これは、「4536進行」には強進行が二つ含まれている、ということを意味しますが、このような観点から「4536進行」が強い結びつきを持ったコード進行である、ということが理解できます。
「4536進行」のアレンジ型
「4536進行」は、実際の作曲の中ではアレンジされて使われることがあります。
以下はその代表的な例です。
1.「4」を「2」にする「IIm→V→IIIm→VIm」
「4536進行」における「四番目」のコードは、よく「二番目」のコードに置き換えられます。
以下は、前述した「キー=C」における「4536進行」と、それを上記の観点からアレンジし「2536進行」としたものの比較です。
- F → G → Em → Am(IV → V → IIIm → VIm)
- Dm → G → Em → Am(IIm → V → IIIm → VIm)
「四番目」のコードが「主要三和音(スリーコード)」であるのに対し、「二番目」のコードはその代理ができることから「代理コード」などと呼ばれています。
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代理コードについて(マイナーコードをスリーコードのかわりに活用する)
また、この置き換えをすることで前述した「2度上」の強進行を「完全4度上」に変形させることができます。
以下は、ルートを併記してそれを比較したものです。
- F(ファ) → G(ソ)=2度上
- Dm(レ) → G(ソ)=完全4度上
一般的に強進行は「2度上」よりも「完全4度上」の方がより強いものとされており、この置き換えによってコード同士の結びつきをより強めることができます。
2. 上記構成をさらに発展させた「IIm→V→I→VIm」
上記「2536進行」にある「IIIm」をさらに「I」に置き換え、「2516進行」とすることもできます。
以下は「キー=C」においてそれらを改めて比較したものです。
- Dm → G → Em → Am(IIm → V → IIIm → VIm)
- Dm → G → C → Am(IIm → V → I → VIm)
この構成は、「循環コード」として有名な「1625進行」を途中から始めたものとしても知られています。
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循環コード(その詳細と成り立ち・派生形や「逆循環コード」についての解説など)
3.「3」をセカンダリードミナントにするにする「IV→V→III7→VIm」
「4536進行」にある「IIIm」を「III7」とすることで、セカンダリードミナントコードとして「VIm」への結びつきをより強めることができます。
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セカンダリードミナントコード|成り立ちとその表記などをわかりやすく解説
以下は、通常の「4536進行」と、それをセカンダリードミナントコードによってアレンジした構成の比較です。
- F → G → Em → Am(IV → V → IIIm → VIm)
- F → G → E7 → Am(IV → V → III7 → VIm)
もともと「○7」のコードには不安定な響きがあり、セカンダリードミナントコードはそれをコードの動きに活用したものです。
「III7」はそもそもセカンダリードミナントコードとして「VIm」へ結びつくものであるため、ここでは「完全4度上の強進行」と「不安定な響きが解消される」という二つの効果によって、より力強いコードの動きを生み出しています。
まとめ
ここまで「4536進行」の詳細と、いくつかのアレンジ型について解説してきました。
「4536進行」は心地良いと感じられる構成であるがゆえに、いろいろな曲において活用されており、人によってはこれを「ありきたりな響き」だと感じてしまうこともあります。
ご紹介したような発展形を自分なりに考え、意味のあるものとして提示していくことがより望ましいといえるでしょう。
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