シンコペーションとは?(「食う」と表現されるリズムの成り立ちをわかりやすく解説)

「シンコペーション」とは、リズムのアクセントに関する音楽用語です。

具体的には「本来のアクセントとは違った場所にアクセントを置いて通常とは違ったリズムのノリを生み出す手法」のことを指します。

こちらのページではポップス・ロックにおいて使われる「シンコペーション」の意味と、それが曲にどのような効果をもたらすか、という点について解説していきます。

ポップス・ロックにおけるシンコペーション

シンコペーションという言葉の本来の意味は冒頭で述べた通りですが、ポップス・ロックで「シンコペーション」という言葉が使われる場合、その多くは「フレーズのアクセントを弱拍に置いて音をつなげている状態」を指すことがほとんどです。

これをよく「食う」などと表現しますが、これは本来あるべきアクセントよりも前から音が始まる状態を、「アクセントが食べられて無くなっている(前にずれている)状態」または「アクセントに対して前から食らいついている状態」と形容した言い回しです。

それをわかりやすく解説するために、以下の通り「シンコペーションにしたフレーズ・していないフレーズ」のそれぞれを比較します。

シンコペーションにしないフレーズ

以下は四拍子の曲において(シンコペーションにせず)8分音符を単音で鳴らしたフレーズの例です。

楽譜では8分音符が規則正しく並んでおり、音源を聴いてみても、いわゆる8ビートのリズムに合わせて音が規則正しく鳴っていることがわかるはずです。

この例では「タタ・タタ・タタ・タタ…」と16個(8個×二小節)の音がフレーズとして並んでいますが、そこでのアクセントは表拍にあると感じられます。

タ・タ・タ・タ…」
※赤字部分がアクセント

このアクセントは四拍子の「ワン・ツー・スリー・フォー」にあたる部分で、曲が本来持っている拍子のアクセントにフレーズがきちんと合っている状態となっています。

シンコペーションを取り入れたフレーズ

次に、上記フレーズの一部をシンコペーションの状態にしたものが以下です。

楽譜を見ると、フレーズの冒頭と中間に音符同士をつなげる表記(「タイ」)があることがわかります。

その部分がシンコペーションになっているところです。

楽譜の表記は、そこで音がつながって8分音符の長さだったものが4分音符の長さに伸びていることを意味しています。

また実際に音源を聴いてみると、前述の「シンコペーションにしないフレーズ(16個の音)」の1番目・9番目にあたる音の発音タイミングが前にずれ、その部分で音がつながって伸びていることがわかるはずです。

これが既に述べた「フレーズのアクセントを弱拍に置いて音をつなげている状態」です。

アクセントと発音タイミングの整理

既にご紹介した「シンコペーションを取り入れたフレーズ」の音源を聴くとわかるように、フレーズの中にシンコペーションの部分を設けることで、その部分においてアクセントが一時的に裏拍に置かれて、独特なノリが生まれます。

以下は改めてそれぞれのアクセントと発音タイミングを表にしたものです。

【シンコペーションなし】

1 . 2 . 3 . 4 .

【シンコペーションあり】

1 . 2 . 3 . 4 .

こちらの「シンコペーションあり」の状態では「ワン・ツー・スリー・フォー(1・2・3・4)」の「ツー(2)」の裏拍部分をシンコペーションにしています。

これにより本来「スリー(3)」の部分に来るはずのアクセントがその部分にずれています

「シンコペーション」とはいわない例(音がつながる理由)

上記「シンコペーションあり」の状態で、例えば以下のようにアクセントのみを「ツー(2)」の裏拍部分におき、「スリー(3)」の部分にも音を鳴らすことはできます。

1 . 2 . 3 . 4 .

しかしこのような場合、「スリー(3)」の部分に音があることからやはりアクセントはそこに感じられてしまい、一般的に「シンコペーションのフレーズになっている」とは捉えられません

すなわち、フレーズをシンコペーションだと感じさせるためには本来のアクセントにあたる部分の音を消す必要があるため、必然的に音がつながって伸びる形になる、ということです。

※ドラムなど、リズムそのものをシンコペーションだと解釈する場合にはこの限りではありません。

シンコペーションの効果

リズムが複雑になる

既に解説した通り、フレーズにシンコペーションの部分が含まれることでアクセントが裏拍にずれるため、その部分に特徴的なリズムが生まれます。

平たく言えば、フレーズの中に表拍・裏拍双方のリズムが含まれることでリズムがより複雑になる、ということです。

曲に大人っぽさや複雑さを盛り込みたい時にシンコペーションの概念は欠かせないもので、R&Bなどの曲ではフレーズにシンコペーションが多用されます

例としてご紹介した8分音符のリズムはもとより、16分音符のリズムにもシンコペーションが頻繁に盛り込まれます。

メロディをシンコペーションに結びつけて分析する

上記をもとに、例えば曲が幼稚で単調だと感じた際に、それを改善する意味でシンコペーションを活用することができます

具体的にはメロディのアクセントをシンコペーションによって裏拍にずらしたり、伴奏のフレーズでそのようなリズムを表現することができるはずです。

反面で、曲調をシンプルにしたり、より伝わりやすいメロディを目指す場合には意識的にシンコペーションを排除することもできます。

童謡のメロディを分析してみるとほとんどの曲のアクセントは表拍にあり、特にメロディの持つリズムをシンプルなものとして作り込んでいることがわかります。

このように、既存の曲のメロディをシンコペーションの観点から分析してみると、いろいろなことが学べるでしょう。

まとめ

ここまで、主にポップス・ロックにおける「シンコペーション」という言葉の意味や効果について解説してきました。

まとめは以下の通りです。

  • シンコペーションとは「本来のアクセントとは違った場所にアクセントを置いて通常とは違ったリズムのノリを生み出す手法」のこと
  • ポップス・ロックにおいては「フレーズのアクセントを弱拍に置いて音をつなげている状態」を指すことが多い
  • 弱拍にアクセントが置かれたシンコペーションの音は、直後にある本来のアクセントとつながって伸びる
  • シンコペーションによりメロディのリズムが複雑になるため、そのような曲調を目指す際に活用できる

ご紹介した通り、メロディに対して上手にシンコペーションを盛り込めるようになると、それらをより魅力的なものに仕上げていくことができます。

その効果を確認する意味で、是非作曲の中で積極的にシンコペーションの概念を活用してみてください。

作ったメロディがシンコペーションによって魅力的なものに生まれ変わることもあります。