こちらの記事では、コードの種類のひとつである「オーギュメント(オーグメント、aug)コード」について解説していきます。
あわせて、記事最後では動画による解説も行います。
目次
「オーギュメントコード」の概要
「オーギュメント(オーグメント)コード」とは、コード譜等において「〇aug」などと表記されるコードの名称です。
ディミニッシュコード(dim)などとあわせて、特殊な構成音を持っているコードとして知られています。
「オーギュメントコード」の構成音
通常、メジャーコード(三和音)は「完全1度」「長3度」「完全5度」の音によって成り立っています。
例:「C」の構成音
- ド(完全1度)、ミ(長3度)、ソ(完全5度)
※上記の音名に併記している「度(ど)」という言葉は、音程を表す際に扱われる音楽用語です。詳しくは以下のページにて解説しています。
音楽における「度数(ディグリー)」の詳細について(音程や「何番目か」を表す「度」という概念)
そのうえで、オーギュメントコードの場合にはここでの「完全5度」のみが半音上がり、「増5度」の状態となります。
例:「Caug(Cオーギュメント)」の構成音
- ド(完全1度)、ミ(長3度)、ソ#(増5度)
ここから、オーギュメントコードを
「メジャーコードにおける5度の音を半音上げた状態のコード」
として定義することができます。
また、このような理由からオーギュメントコードは「C+5」(Cシャープファイブ)などと表記されることもあります。
「13th」テンションとの類似性
上記で示した「増5度」の音は別名で「短6度」とも呼ばれますが、それはすなわちテンションノートとして解釈される「短13度(♭13th)」と同じ音でもあります。
例えば前述の「C」にテンション「♭13th」を加えて「C7(♭13)」などとした場合には、同じく構成音に「ソ#(ラ♭)」を含む形となります。
そのような意味から、オーギュメントコードは「♭13th」のテンションコードに近い響きを持っているとも解釈することができます。
とはいえ、あくまでもテンションの付加はセブンスコードを前提とするため、オーギュメントコードが「メジャーコードの5度音を半音上げた状態のコード」(=三和音)であることを考えると、それぞれが違うルーツによって成り立っているコードだと理解できるはずです。
▼関連ページ セブンスコードの解説 コードに「7度」の音を含む四和音、その成り立ちと詳細について テンションコード 概要とコード表記、コード進行例などの解説
「オーギュメントコード」の使用例
増5度への変化を聴かせる
オーギュメントコードは別名「変化和音」とも呼ばれ、通常のメジャーコードをその直前において
「完全5度」→「増5度」
という音の変化を演出することが多いです。
以下は、メジャーコードとオーギュメントコードを繋げて繰り返したコード進行の例(キー=C)です。
- C→Caug→C→Caug(I→Iaug→I→Iaug)
この例のように、オーギュメントコードはダイアトニックコード内の「I」コードによく活用されます。
「完全5度」→「増5度」の変化を次なるコードへの足掛かりにする
上記例における「完全5度→増5度」の変化は
「ソ→ソ#」
という音の変化を生み出しますが、この半音上昇の音の変化を次なるコード展開への流れとして活用する構成も多く見かけられます。
以下は前述のコード進行をそのような観点からアレンジしたものです。
- C→Caug→Am(I→Iaug→VIm)
ここでは「ソ→ソ#」という音の変化が次なる「Am」の構成音「ラ」につながり、
「ソ→ソ#→ラ」
という流れを作っています。
「5度音上昇型クリシェ」への活用
コード進行技法のひとつである「クリシェ」の用法には「5度音を上昇させる」というアイディアが存在しますが、そのような場合にもオーギュメントコードが活用されます。
▼関連ページ クリシェの技法解説 コード進行におけるクリシェの概要と典型的な使用例、アレンジ例など
以下は、一般的な「5度音上昇型クリシェ」の構成例です。
- C→Caug→C6→C7(I→Iaug→I6→I7)
こちらでも、これまでの例と同じく「完全5度」の「ソ」の音が
「ソ→ソ#→ラ→ラ#」
と半音で上昇していきます。
前述の例が主に「完全5度」→「増5度」という音の変化を聴かせるための構成だったのに対し、クリシェにおけるオーギュメントの活用は上記のような連続した音の変化(=クリシェライン)を聴かせるという意味合いが強いと解釈できます。
ドミナントコードへの活用
既に述べたように、オーギュメントコードは「♭13th」のテンションコードと似た響きを持っています。
そのためドミナントコード(V)をオーギュメントの形(Vaug)にすることで「♭13th」のコードに近い響きを提示することがあります。
以下は、キー=Cにおける「G→C」(V→I)という構成にオーギュメントコードを加えたものです。
- Dm7→G→Gaug→C(IIm7→V→Vaug→I)
この例では、コード「G」の増5度音である「レ#」がテンションのサウンドである「♭13th」のように感じられます。
またここでも「完全5度」→「増5度」の変化は次なるコードへ向けた足掛かりとなっており、「レ→レ#」という音の変化が次なる「C」コードの構成音「ミ」につながり、
「レ→レ#→ミ」
という半音の流れが作られています。
動画で解説
「文章ではよくわからない」という方のために、以下の動画でもオーギュメントコードについて実演を交え解説しています。
まとめ
以下は、オーギュメントコードについてのまとめです。
- オーギュメントコードとは、メジャーコードの5度音を半音上げた状態の三和音のこと
- 直前にメジャーコードを配置して「完全5度」→「増5度」の変化を聴かせる構成としてよく活用される
- 5度音を上昇させるクリシェにも同じく活用される
- 「♭13th」のテンションコードに響きが似ているため、そのような観点で活用されることもある
オーギュメントコードはあまり馴染みのないコードですが、ご紹介したようにポップス・ロックなどにおいてはコード進行のアクセントとして活用されることが多いです。
コードのつながりをスムーズに聴かせるために、是非活用してみて下さい。
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