リハーモナイズの解説|概要と考え方、やり方や実例などを詳しく説明します

「リハーモナイズ(reharmonize)」とは、

「ハーモニー(コードのつながり・和声)」を「改めて作り上げる」

というようなことを指す言葉です。

略して「リハモ」とも呼ばれるこの手法によって既にあるコードの流れに新たなコードを加えたり、コード進行全体を全く別のものに変えたりすることができるため、それがメロディに違った印象を与えるためのアイディアにもなります。

以下よりリハーモナイズの詳しい内容と、それをどのように行うかという点について解説していきますので、魅力的なコード進行考えるうえでの参考にしてみて下さい。

リハーモナイズの前提

メロディを心地良く響かせる

リハーモナイズ(コードの流れに変化を加えること)を考える時に重要となるのは、「メロディを心地良く響かせる」という前提です。

例えばコード進行だけの(メロディが無い)曲があり、そこでリハーモナイズを実施しようとした場合、想定できるコードやその流れには制約が無いはずです。

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曲にはコードしか存在していないため、それをどのようにアレンジしても他に影響を与えることはありませんし、これは当然です。

反面で、ほとんどの曲にはメロディが存在しており、その伴奏となっているコードはメロディに対して何らかの調和のとれた響きを持っています。

コードを変化させる場合、やり方を誤るとその「調和」が崩れてしまうことがあります

このことから、リハーモナイズを実施する際には

  • 既にあるメロディとコードがどのような理由によって調和できているか
  • どんなコードであればその調和を保てるか

を意識することが最も大切だといえるでしょう。



コードとキー・メジャースケールについてのおさらい

「メロディとコードの調和」を考える際に必要となるのが、「キー」という概念です。

一般的にポピュラー音楽のほとんどは、「キー」とその元になる「メジャースケール」に沿って組み立てられます。

▼関連ページ
メジャースケールの内容とその覚え方、割り出し方、なぜ必要なのか?について

キー(音楽)について キー=「中心音」と「まとまりのある音のグループ」を意味する言葉

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厳密には上記のほかに、「マイナースケール」を活用した「マイナーキー」の楽曲も存在していますが、こちらでは一旦メジャーキーのみに絞り解説を進めます。

上記ページでも解説している通り、「メジャースケール」とは簡単にいえば「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の並び順のことです。

また、例えば「キー=Cメジャー」という場合、その曲は

「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」

を主要な音として活用していきます。

これはリハーモナイズで扱う「コード」についても同様で、つまりキーの元になる「メジャースケール」という存在があり、コードを組み立てる場合にも、

そのメジャースケールを元にした「(メジャー)ダイアトニックコード」が基本的に活用される

ということを意味します。

▼関連ページ

ダイアトニックコードとスリーコード(概要や成り立ち、コードの役割などについて)

ダイアトニックコードの覚え方(割り出し方)

メロディとコードを心地良く響かせたり、それをもとに新たなコードの流れを検討するためには上記の

  • 「キー」
  • 「メジャースケール」
  • 「ダイアトニックコード」

の概念を理解することが欠かせません。

これ以降は、リハーモナイズの具体的な例について解説していきます。




リハーモナイズのやり方

1. ダイアトニックコードの活用

既に述べたとおり、音楽の多くは「(曲のキーの元となる)メジャースケール」の音を主に活用して作られます。

上記で例として挙げた「キー=Cメジャー」の場合、メロディには基本的に「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の7音を使い、コードには「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」を元にした

「C, Dm, Em, F, G, Am, Bm-5」

という7個のコードが活用されます。

この場合メロディとコードは同じ「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」を元として作られているため、両者が程良く調和して響きます

最も簡単なリハーモナイズは、この概念を活用するものです。

例えばここでの例にある「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」によって歌われるメロディに

「C→Dm→G」

というようなコードが割り当てられていた場合、それをダイアトニックコードにある他のコードによって変形させていくことができます。

以下はリハーモナイズの一例です。

リハーモナイズ前:C → Dm → G[I → IIm → V]
リハーモナイズ後:Am → F → G[VIm → IV → V]

ここでは、ダイアトニックコード内にあるコードのみを使って、「C」を「Am」へ、「Dm」を「F」へ置き換えています。

スリーコードを代理コードに置き換えただけの構成ですが、「リハーモナイズ=コード進行を改めて作り上げる」という観点で捉えれば、これもリハーモナイズの一種だといえるでしょう。
代理コードについて マイナーコードをスリーコードのかわりに活用する



元となるコード進行の機能を無視することもできる

上記例ではリハーモナイズ前の構成にある

  • 「C」=トニック
  • 「Dm」=サブドミナント

の機能を踏まえ、それぞれが同じ機能を持つ

  • 「Am」=トニック
  • 「F」=サブドミナント

に置き換えられています。

このように、多くの場合「リハーモナイズ」という言葉には

「コード進行の機能的な流れを維持する」

という前提を含みますが、単に「コード進行を改めて割り当てる」ということだけを考えれば、機能を無視することもできます。

例えば、以下の二つの構成は

「ドードレミーレードー」

という同じメロディに、

  • 「C→Em→Am」
  • 「Dm7→G→F」

という異なる二つのコード進行を割り当てた例です。

※譜割りをわかりやすくするために小節で区切っています。

C Em Am
ドードレ ミーレー ドー
Dm7 G F
ドードレ ミーレー ドー

これは、いわば

「『C→Em→Am』という流れを『Dm7→G→F』にリハーモナイズしている」

と捉えることができますが、「Dm7→G→F」というコードの流れでも問題なくメロディと調和します。

前者は

「トニック(C)→トニック(Em)→トニック(Am)」

という機能の流れであったのに対し、後者は

「サブドミナント(Dm7)→ドミナント(G)→サブドミナント(F)」

という機能の流れとなっており、機能が全く変わっていてもこのようにコードを置き換えることができてしまいます

このように、「メジャースケールのメロディ+メジャーダイアトニックコード」という構成を前提とする場合には、ダイアトニックコードを活用することでさまざまなコードへのリハーモナイズが可能です。




2. ツーファイブの活用

二つ目にご紹介するのは「ツーファイブ」を活用したリハーモナイズの手法です。

ジャズなどで語られる一般的なリハーモナイズは、こちらの概念をその土台とすることが多いです。

「ツーファイブ」とはダイアトニックコードの「IIm7→V7」の動きを表したものであり、「キー=Cメジャー」でいうところの「Dm7→G7」がこれにあたります。

▼ツーファイブ解説ページ
ツーファイブとは?(概要と基本的な成り立ち、活用方法、マイナーキーにおける例など)

二つのコードによって

  • 「サブドミナント(IIm7)→ドミナント(V7)」という機能的な流れ
  • ルート音の「II→V」という強進行の動き

の両者をあわせ持つようなかたちになる、という点がツーファイブの最大の特徴です。

この構成は結びつきが強いため、例えばドミナントセブンス「V7」のみが使用されていた場合にも、それを「IIm7→V7」として捉えることができてしまいます

以下は、「キー=Cメジャー」での例です。

リハーモナイズ前:C → Am → G7[I → VIm → V7]
リハーモナイズ後:C → Am → Dm7-G7[I → VIm → IIm7-V7]

ここでは「G7」を、「Dm7→G7」というツーファイブに分割するような形でリハーモナイズを行っています。

ポイントとなるのはこのように「分割する」という意識によってツーファイブを導入する点で、これにより元々あった構成の長さやメロディに影響を与えることなく「IIm7」のコードを挿入することができます。



すべてのドミナントセブンスコードを「IIm7→V7」にできる

また、上記はダイアトニックコード内で行われたツーファイブの分割であるため、前項「1. ダイアトニックコードの活用」に近いものとなりますが、この概念はすべてのドミナントセブンスコードに活用できます

以下はその代表的なものとして、「セカンダリードミナントコード」をツーファイブによって分割した例です(キー=Cメジャー)。

リハーモナイズ前:C → C7 → F[I → I7 → IV]
リハーモナイズ後:C → Gm7-C7 → F[I → Vm7-I7 → IV]

この例では、リハーモナイズ前の状態でコード「F」に対するセカンダリードミナントコード「C7」が存在しています。
セカンダリードミナントコード 成り立ちとその表記などをわかりやすく解説します
そこからその「C7」をツーファイブによって分割するように、「Gm7→C7」という構成を活用しながらリハーモナイズを行っています。

結果として「F」というコードに向かって

「IIm7→V7→I」(Gm7→C7→F)

が作られるような形となっていますが、こちらも問題なくコードの挿入ができています。

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このように、ドミナントセブンス(セカンダリードミナントコードを含む)をツーファイブによって分割する際には、その「〇7」というコードをダイアトニックコードにおける「V7」と捉え、そこから「IIm7」にあたるコードを導き出すことがポイントです。

この例における「Gm7(Vm7)」はノンダイアトニックコードですが、ツーファイブを活用したリハーモナイズが理解できていることで、このように特徴的なコードを挿入することもできるようになります。




3. 裏コードの活用

前述の「ツーファイブ」の例と同じく、ドミナントセブンスのリハーモナイズとして「裏コード」も頻繁に活用されます。

▼関連ページ
裏コードについて ドミナントコードの代理ができるコードを解説

上記ページでも解説している通り、「裏コード」とは「置換ドミナント」とも呼ばれる「♭II7」のコードのことを指す言葉です(「キー=Cメジャー」でいうところの「D♭7」)。

こちらのリハーモナイズでは、これをドミナントセブンスである「V7」の代理コードとして活用します。

以下は、「キー=Cメジャー」における例です。

リハーモナイズ前:Dm7 → G7 → C[IIm7 → V7 → I]
リハーモナイズ後:Dm7 → D♭7 → C[IIm7 → ♭II7 → I]

ここでは、単に「G7」をその裏コードである「D♭7」に置き換えているだけですが、リハーモナイズとしてしっかりと機能します。

裏コードの活用により、「D→D♭→C」という半音で下降するルートの流れが生まれているところも特徴の一つです。



さらにツーファイブの活用

前項で述べた「すべてのドミナントセブンスコードを『IIm7→V7』にできる」という概念は、裏コード「♭II7」についても同じことがいえます

すなわち、セカンダリードミナントコードをツーファイブ化したのと同じように、「♭II7」を「V7」と捉えて、そこから「IIm7→V7」の形を作ることでリハーモナイズが実施できます。

以下は、前述の「裏コードを使用したリハーモナイズの例」をさらにツーファイブによって細分化したものです。

リハーモナイズ前:Dm7 → D♭7 → C[IIm7 → ♭II7 → I]
リハーモナイズ後:Dm7 → A♭m7-D♭7 → C[IIm7 → ♭VIm7-♭II7 → I]

この例では、「D♭7」を「V7」と捉えた場合の「IIm7」にあたる「A♭m7」が直前に挿入され、ツーファイブの形が作られています。

Cメジャーキーにおける「A♭m7」は異質なコードだといえる存在ですが、このようにスリリングな構成も導くことができるようになります。




4. ドミナントセブンスコードへの置き換え

最後にご紹介するリハーモナイズの手法は、いろいろなコードをドミナントセブンスコードにしてしまうやり方です。

以下は、冒頭でご紹介していたシンプルなコードの構成を、このアイディアによってリハーモナイズした例です。

リハーモナイズ前:C → Dm → G[I → IIm → V]
リハーモナイズ後:C7 → D7 → G7[I7 → II7 → V7]

ここでの「G7」は「キー=Cメジャー」においてそもそも想定することができる「V7」のコードとなりますが、それ以外のコードをセブンスの状態にした「C7」「D7」というノンダイアトニックコードが、特徴的な響きを生んでいます。

このようなリハーモナイズの手法はブルース(ジャズブルース等)でよく見られるもので、リハーモナイズ前に存在していたメロディによってはそれらを若干修正する必要もあります。
ブルースコードの概要とコード進行の例・バリエーション(ジャズブルースなど)

ここでも活用できるツーファイブの概念

前述の「裏コード」のリハーモナイズでもご紹介したように、ツーファイブの概念はここでも活用できます

上記アイディアによって作られた「〇7」のコードをここでもまた「V7」と捉えて、その「IIm7」にあたるコードを直前に挿入します。

以下はその実施例です。

リハーモナイズ前:C7 → D7 → G7[I7 → II7 → V7]
リハーモナイズ後:Gm7-C7 → Am7-D7 → Dm7-G7[Vm7-I7 → VIm7-II7 → IIm7-V7]

ここまでくるとかなりコードが入り組んできますが、モダンジャズなどで聴くことができる多くの複雑なコード進行は、基本的にこのような概念によって作られています。



リハーモナイズを理解し実施する際のポイント

ここまでにご紹介したように、リハーモナイズを理解するには「ドミナントセブンス」「ツーファイブ」の概念が欠かせません。

ポップス・ロックの作曲においては、もともとの曲調が崩れない範囲でこれらを実施しながら、より聴き応えのあるコード構成に変形させていくやり方が想定できます。

また、より複雑なものを目指す場合には、ご紹介した手法を掛け合わせることでさまざまな構成を連想することもできます。

これは、上記の通り「セカンダリードミナントコード」や「裏コード」をさらにツーファイブによって分割したり、それらを改めてすべてドミナントセブンスのコードにしたりすること、などを意味します。

いずれにしてもリハーモナイズを意味のあるものにするためには、それ実施するにあたり「どんな曲調を実現するのか」というプランニングが必要になるといえるでしょう。




まとめ

ここまでリハーモナイズの概要とその例、やり方などについて解説してきました。

冒頭でご説明した通り、「キー」や「ダイアトニックコード」、そして「ドミナントセブンス」「ツーファイブ」を活用しながら、リスナーが許容できる範囲においてコードを置き換えることがリハーモナイズの原則ともいえます。

またこちらでご紹介したもの以外にも、実際にはさまざまなアイディアによってリハーモナイズは実施されています。

これらを参考に、いろいろな曲を題材にしながらリハーモナイズを体験し、その理解を深めてみて下さい。

「リハモ」という呼び方でミュージシャンを気取れます(笑)