こちらのページでは、コード譜などを見てコード進行の成り立ちや仕組みなどを分析(アナライズ)する方法について、詳しく解説していきます。
この内容を、コード進行の理解に役立てて下さい。
目次
コード進行分析の手順概要
私は日頃から作曲の先生として活動していることもあり、日常的にコード譜を分析しています。
具体的には、コード進行を眺め、ポイントを押さえて分析しつつ全体像を把握していくのですが、これをすることでコード進行を骨組みとして解釈することができ、それらが自分でも使えるもの(再現性のあるもの)になっていきます。
私のアップしている曲分析系の動画でも、前半部分では大体まずコード譜を理論的に解釈し、分析するところから始めています。
解説に入る前に、まず私が普段からやっているコード進行分析の手順を簡単に整理すると、以下のようになります。
- 曲のキーを明らかにする
- そのキーのダイアトニックコードに含まれるコードを度数で捉える
- ダイアトニックコードの流れを理論的に解釈する
- ノンダイアトニックコード(ダイアトニックコード以外のコード)を明らかにし、理論的に解釈する
やっていることはつまるところこれだけなのですが、それぞれの工程で考えや視点がより細分化されます。
それぞれについて、詳しくはこれ以降で解説していきます。
手順(1)曲のキーを明らかにする
コード進行分析を進めるにあたり、何よりもまず最初にやるべきは「キーの判別」です。
※この点について、詳しくは以下のページでもまとめています。
曲のキー(調)を判別する方法【コードのみからキーを判別する】そもそも「キー」とはどのようなものか?
キー判別は二段階のステップに分けて行う
上記のページで述べている通り、私の推奨するキー判別の方法では手順を二段階に分けています。
具体的には
- コード譜にあるコードからキーを推測する
- そのキーにおける象徴的なコード進行が使われているかを確認する
という二つを行うのですが、これはキーの取り違えを防ぐための策です。
例えば、なんとなくコードを見て「ああ、このキーだ」と早合点して分析を進めてしまうと、そのあとでコード進行を理論的に解釈する際、すべての視点がその誤って判別したキーを前提として行うことになってしまいます。
これは「分析」という点から考えると最悪で、もはやそれは分析とはいえません。
そのため、特にこの「キーの判別」は丁寧に行い、ご紹介した二段階のステップを踏んでしっかりと正しいキーを判別するようにして下さい。
キーが判別できない曲はなるべく避ける
キー判別の詳しい手順についてはご紹介した上記ページに譲りますが、その上で特筆すべきは、
ということです。
そもそも、コード進行の分析は理論的解釈を存分に活用して行う作業であるため、キーがわからないと何を基準にそれを解釈すればいいかもわからなくなってしまい、コード進行が捉えどころのないものになってしまいます。
それを踏まえると、コード進行分析に慣れていない段階では「キーを判別できる曲」をその題材とすべきで、裏を返せばキーが判別できない曲は分析の題材とすべきではありません。
この一つ目の手順を通して、もしキーがいまいちわからなかった場合、ひとまずその曲のコード進行分析を保留とすることをお勧めします。
手順(2)そのキーのダイアトニックコードに含まれるコードを度数で捉える
コード進行分析の二つ目の手順は、「ダイアトニックコードに含まれるコードをチェックする」ということです。
これは読んで字のごとく、「手順1」で明らかになったキーのダイアトニックコードをまず把握する作業です。
コード譜に、ダイアトニックコードの度数を併記する
ここからやっとコード進行分析らしくなってきますが、具体的にはコード譜を見てキーのダイアトニックコードに含まれるものをピックアップし、しるしをつけるなどしてその位置づけを明らかにしていきます。
最も望ましいのは、ダイアトニックコードの度数を併記するやり方です。
例えば、「手順1」で「キー=C」ということが判別できているとして、コード譜が以下のような状態になっていたとします。
C | Am | Dm | G |
そのうえで、まず「キー=C」のダイアトニックコードに含まれるコードを以下のように明らかにします。
(I, IIm, IIIm, IV, V, VIm, VIIm-5)

これをもとにして、以下のようにコード譜にあるそれぞれのコードにダイアトニックコードにおける度数(以下一覧における赤字)を併記していきます。
C | Am | Dm | G |
I | VIm | IIm | V |
度数の併記により役割を明らかにする
これを行うことで、まず細かい分析の第一段階目として
という点が明らかになります。
例えば、上記コード譜例にあった「Am」の場合、「キー=C」の枠の中ではそれが「VIm」のコードに相当していました。
反面で例えばキーが「G」だった場合、「Gダイアトニックコード」は以下のようなメンバーとなりますが、
(I, IIm, IIIm, IV, V, VIm, VIIm-5)
ここでの「Am」は「IIm」となり、「キー=C」の場合と比べて位置づけが変わってしまいます。
前述したページでも解説しているように、ダイアトニックコードに含まれるそれぞれのコードには役割(機能)があり、それがコード進行の流れやストーリーを生みます。
この度数の分析によってコードの役割が明らかになり、コード進行を機能的な観点から把握することができるようになっていきます。
※度数とコードの役割について、詳しくは以下のページを参考にして分析を進めてみて下さい。
作曲初心者向け|作曲超入門(4)いろいろなコード進行
ダイアトニックコードに無いコードがある場合
ほとんどのコード譜には、ダイアトニックコードに無いコードが多く含まれています。
例えば、前述したコード譜例が以下のような状態になっていることがあります。
C | Am | B♭ | G |
ここでの「B♭」はこの例におけるキーの「Cダイアトニックコード」に含まれていないため、「ダイアトニックコードを度数で解釈する・役割を明らかにする」という分析が出来ません。
その場合には、「B♭」は除外したうえで、例えば以下のような記載の仕方によって度数を併記するようにして下さい。
C | Am | B♭ | G |
I | VIm | ? | V |
「7」や「M7」への対処
ダイアトニックコードは、前述した三和音の状態以外に「7」や「M7(またはM7、maj7、△7等)」が付加されていることもあります。
これは「四和音状態のダイアトニックコード」で、前述した手順と同じ観点から度数と役割の解釈を行うことができます。
以下はその「四和音」のダイアトニックコード一覧表です。
※こちらのページにも掲載しています。
ダイアトニックコードを把握する際には、四和音のコードも的確に捉えられるようにするため、上記のようなものを一覧として手元に用意できるとより便利です。
そのうえで、この一覧におけるIとIVは「△7」、それ以外は「7」をコードから除外すると、それぞれを三和音のダイアトニックコードとしても捉えることができます。
すなわち、この一覧によって「四和音状態」「三和音状態」それぞれコード判別に併用できる、ということです。
手順(3)ダイアトニックコードの流れを理論的に解釈する
ダイアトニックコードの度数と役割が把握できたら、その次の分析手順としてコード進行の流れを理論的に解釈します。
こちらもやるべきことは前述した機能的解釈に似ていますが、ポイントとなるのは
- カデンツの流れ
- 強進行の流れ
があるか、という点です。
カデンツへの着目
「カデンツ」は前述したページでも解説している通り、コード進行の流れを端的に表したまとめのようなもので、一般的にこの機能の流れに沿ってコードをつなげると、そこからは心地い響きが感じられるとされています。
※関連ページ
カデンツ(終止形)の詳細とポップス・ロック作曲への応用
これは、例えば「キー=C」における
- C → F → G
- Dm → G → C
- C → Em → Am → G
などの流れのことを指しますが、コード譜を見てカデンツの形に相当する部分があったらそこにしるしをつけ、「カデンツの形になっている」などと理論づけていきます。
この分析を円滑に行うには度数・コードの機能・カデンツによるコード進行パターン、等の理解が必須となります。
強進行への着目
もうひとつ着目すべきは「強進行」の流れがあるか、という点です。
※関連ページ
強進行について(通称「4度進行」=ドミナントモーションの元になる力強い音の動き)
「強進行」とは結びつきが強いと感じられるコードの動きのことで、それらがコード進行の中にどう活用されているか、それがどんな響きを持っているかという点を分析していきます。
「強進行」について、詳しくは上記ページを確認して下さい。
手順(4)ノンダイアトニックコード(ダイアトニックコード以外のコード)を明らかにし、理論的に解釈する
ここまでを通してダイアトニックコードの分析はおおむね完了します。
その上で、前述したように曲にはノンダイアトニックコード(ダイアトニックコード以外のコード)が含まれていることがほとんどです。
これ以降の分析でそれらの位置づけを把握していきますが、実際のところノンダイアトニックコードを含むコード進行の分析では、より理論的な知識の有無が問われます。
それぞれのコードについて学び、そこからコード進行が分析できるようになる
例えば、コード譜の中に「dim」というアルファベットの付いたコードを含む
というコード進行や、「GonB(G/B)」のような分数コードを活用した
というコード進行が存在していることがあります。
「これらをどう分析するか」といわれれば、そのためにはそれぞれのコードが意味するところと、代表的なコードの流れなどを事前に把握しておく必要があります。
そして、これらノンダイアトニックコードの手法にはさまざまなパターンがあるため、ひとえに「コード進行の分析」といってもそのやり方をひとことで言い表すことが出来ません。
つまり、各種ノンダイアトニックコードの理論的手法を別途学び、その都度対処していく以外に方法が無い、ということです。
音楽理論学習の進め方
ノンダイアトニックコードを含むコード進行の分析は、音楽理論の知識を深く学ぶほど円滑に行えるようになるものです。
以下のページでは、それらを含む音楽理論(コード理論)の学習について詳しく解説しています。
音楽理論を知りたい人のための「学習の見取り図」※独学に活用できる「音楽理論の何をどの順番で学べばいいか」のまとめ
このページを媒介としてそれぞれの知識を学び、コード進行分析に役立てるようにしてみて下さい
番外編(曲分析について)
以下のページでは、コード進行よりもさらに大きな観点から楽曲を分析する「曲分析」について解説しています。
作曲の上達を目指している方は、こちらも是非参考にしてみて下さい。
「曲分析」を習慣にすると作曲が上達する、というお話(曲分析の概要や効果などについて)
まとめ
ここまでコード進行分析の方法について詳しく解説してきました。
改めて、以下に手順をまとめます。
- 曲のキーを明らかにする
- そのキーのダイアトニックコードに含まれるコードを度数で捉える
- ダイアトニックコードの流れを理論的に解釈する
- ノンダイアトニックコード(ダイアトニックコード以外のコード)を明らかにし、理論的に解釈する
ここまでの解説を踏まえると、やはり音楽理論の知識がある程にコード進行分析を円滑に、かつ中身の濃いものとして行うことができる、ということがわかります。
音楽理論の学習と並行してコード進行分析を行うようにして、日頃からコード譜を分析的(理論的)視点によって捉えることを習慣づけてみて下さい。
補足
以下のページでは作曲上達の方法について詳しく解説しています。
【作曲を独学で進めるときの勉強方法】これをやれば作曲は上手くなる!「上達に欠かせない5つの柱」とは?
作曲が上達する「曲分析」について知る
