作曲初心者向け|作曲超入門(6)ノンダイアトニックコード(ダイアトニックコード以外のコード)の活用

ダイアトニックコード以外のコードをどのように使うか

コード進行構築において、「キー」と「ダイアトニックコード」の概念は欠かせないものです。

ポピュラー音楽の作曲においては、自分が現在どんなキーを使っていて、そのキーのダイアトニックコードの中でどんな機能をもとにどうコードをつなげているか、ということを把握しながら、コード進行は検討されていくべきです。

反面で、ダイアトニックコードの中にはコードが七つしか存在しないため、その手法にもある程度の限りがあります。

幅広い曲調によってコード進行のさまざまなストーリーを提示していくとなると、ダイアトニックコードだけを使った構成では不十分で、その状態をいかに抜け出て、ダイアトニックコード以外のコードをどのように使っていくか、という観点での作業がポイントとなります

ダイアトニックコード以外のコードは「ノンダイアトニックコード」などと呼ばれますが、それらは原則として理論的な解釈をもとに使用されるべきで、それによりリスナーはそれらの響きを違和感なく聴き入れることができるようになります。

セカンダリードミナントコード

最も利用されるノンダイアトニックコード

ノンダイアトニックコードとして最も頻繁に利用されるものに「セカンダリードミナントコード」というコードが存在します。

これらは、前述したダイアトニックコード内での「V → I」の構成をもとに導き出されたコードです。

セカンダリードミナントコードについては、以下のページでも解説しています。
セカンダリードミナントコード 成り立ちとその表記などをわかりやすく解説します

コード進行の次なる一手として平等に活用する

上記ページでも解説している通り、セカンダリードミナントコードを使用するたびにそれらを理論的解釈から導き出していると、能率が悪くあまり実用的とはいえません。

実際の作曲の中では、セカンダリードミナントコードはもっと直接的に使用されることがほとんどで、具体的には、「I7」「II7」「III7」「VI7」をそれぞれ単なるひとつのコードと捉えて、ダイアトニックコードと同じように、コード進行の中で自由に活用します

そのうえで、ドミナントモーションを意識して、そこからつながる「仮のI」を直後に配置して理論的な整合性を取っていくことがほとんどです。

作曲のコツ
  • セカンダリードミナントコードは「I7」「II7」「III7」「VI7」である、と覚える
  • それらは「次なる一手」として、ダイアトニックコードと同じ感覚で利用できる
  • 利用の際は、その次のコードとあわせてドミナントモーションの構成を検討する
例えば、キー=Cにおいて、「C」から始まるコード進行を考えているとして、その際に、ダイアトニックコードの概念をもとに「C → Dm」「C → Am」というようなコード進行が検討できます。

  1. 「キー=Cの曲として『C』からコードを繋げよう」
  2. 「ダイアトニックコードを活用した『C → Dm』『C → Am』というコード進行はどうだろう」

これとあわせ、セカンダリードミナントコードとして使える「C7」「D7」「E7」「A7」も次なるコードの候補とすることができて、「C → C7」や「C → D7」「C → E7」「C → A7」なども同じく選択肢として検討できる、ということを指します。

そこから、例えば「C → E7」という構成を検討する場合には、「E7」の後に「仮のI」となる「Am」を配置して理論的な整合性を取っていきます。

  1. 「セカンダリードミナントコードとして『C7』『D7』『E7』『A7』もあるから、『C → C7』『C → D7』『C → E7』『C → A7』なども、検討してみよう」
  2. 「『C → E7』が良さそう」
  3. 『E7』はセカンダリードミナントコードだから、その次にはドミナントモーションによって『Am』をつなげてみよう」

ドミナントモーションを無視した構成も選択できる

セカンダリードミナントコードは、状況に応じて、あえて「仮のI」につながらない構成として、それらを完全に独立したひとつのコードとして使用することも可能です。

この場合、セカンダリードミナントコードとしての機能のみが残るため、「コードが仮のIに進行しなかった」=「ドミナントモーションが行われずに肩すかしを食らった」というような印象をリスナーに与えます。

この「仮のIに解決しないセカンダリードミナントコード」は、意外性のある構成のひとつとしてしばしば見かけることができます。


セカンダリードミナントコードはダイアトニックコードの七つに次ぐ存在としてポピュラー音楽では頻繁に利用されているため、まずは“「I7」「II7」「III7」「VI7」をダイアトニックコードと同じように使用できる”と覚えて、それをコード進行検討の際に活用してください。

サブドミナントマイナーコード

「IV」の置き換え

「セカンダリードミナントコード」と同様に、ノンダイアトニックコードとして「サブドミナントマイナーコード」も広く活用されています。

サブドミナントマイナーコードとは、その名のとおり、サブドミナントコードをマイナーにしたコードで、ダイアトニックコード内の「IV」を、マイナーである「IVm」として利用します。

コードの響きがマイナーでありながらサブドミナントとしての機能は維持されるため、理論的な成り立ちを考慮せず、ほとんどの場合ダイアトニックコードの構成の延長で、「IV」の代替案として使用されます。

サブドミナントマイナーコードについては、下記記事でも解説しています。
サブドミナントマイナーコード その概要と使い方 代理コード/終止部分への活用など 上記の通り、サブドミナントマイナーコードは、通常のコード進行の中で「IV」を「IVm」に置き換えるだけで使用でき、前後のコード構成について特別に考慮すべきことはありません

それと同時に、「IVm」は響きそのものが特殊であるため、頻繁に使われる「IV」をすべて「IVm」にするような使用方法よりも、ある一つのポイントだけに絞って利用する方が、リスナーに対しよりインパクトが強まる、といえるでしょう。

作曲のコツ
  • サブドミナントマイナーコードは、「IV」を「IVm」に置き換える、という意識のみで使用することができる
  • 一つのポイントに絞って利用するとインパクトが強まる
具体的には、キー=Cにおいて「C → Fm → C → Fm」(I → IVm → I → IVm)のような利用方法は、「IVm」が頻出することで効果が薄れてしまうため、インパクトという意味で好ましくない、ということを指しています。

終止形への活用

終止形の中でも「IV → I」の形は、トニック「I」へ落ち着く際にドミナント「V」を経由しないため比較的特殊であるとされていますが、これを活用することで、サブドミナントマイナーコードの存在をより際立たせることができます

キー=Cでの例

  • 配置前:Am7 → Dm7 → F → C(VIm7 → IIm7 → IV → I)
  • 配置後:Am7 → Dm7 → Fm → C(VIm7 → IIm7 → IVm → I)
トニック「C(I)」へ落ち着く直前に置かれた「F(IV)」を「Fm(IVm)」に置換する形で、サブドミナントマイナーコードが活用されています。

この形は「サブドミナントマイナー終止」とも呼ばれ、個性的な終止のひとつとして、度々活用されます。

まとめ

ノンダイアトニックコードの活用は個性的な曲作りを目指すために欠かせないものです。

既にご紹介した「セカンダリードミナントコード」と「サブドミナントマイナーコード」はそれを代表するものであり、必ず習得しておくべき概念だといえるでしょう。

次のページでは、起伏のある曲構成をいかにして提示するかという点について解説しています。
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