こちらでは作曲初心者向けとして、「マイナーキーの作曲に使える定番のコード進行パターン」を、マイナー全12キー分、およびその構造的な解説を付け加えつつご紹介します。
▼以下のページではメジャーキーの定番のコード進行をご紹介しています。 作曲に使えるコード進行の定番(※初心者向け) 特に頻繁に使われる10パターンのまとめとそのアレンジ
マイナーキーの作曲に使えるコード進行の定番10パターンのまとめ
まず、マイナーキーの定番のコード進行10パターンを、マイナー全12キー分の実際のコード進行に置き換えたうえで以下に一覧として示します。
各キーのコード進行は、キーが異なるだけでどれも同じ10パターンの構造によって成り立っています。
キー=Aマイナー
- Am→Dm→E7
- Am→Dm→G→E7
- Am→F→G
- Am→F→C→E7
- Am→G→F→E7
- Am→C→Dm→E7
- F→G→Am
- F→E7→Am
- Dm→Am→E7→Am
- Bm7-5→E7→Am
キー=Eマイナー
- Em→Am→B7
- Em→Am→D→B7
- Em→C→D
- Em→C→G→B7
- Em→D→C→B7
- Em→G→Am→B7
- C→D→Em
- C→B7→Em
- Am→Em→B7→Em
- F#m7-5→B7→Em
キー=Bマイナー
- Bm→Em→F#7
- Bm→Em→A→F#7
- Bm→G→A
- Bm→G→D→F#7
- Bm→A→G→F#7
- Bm→D→Em→F#7
- G→A→Bm
- G→F#7→Bm
- Em→Bm→F#7→Bm
- C#m7-5→F#7→Bm
キー=F#マイナー
- F#m→Bm→C#7
- F#m→Bm→E→C#7
- F#m→D→E
- F#m→D→A→C#7
- F#m→E→D→C#7
- F#m→A→Bm→C#7
- D→E→F#m
- D→C#7→F#m
- Bm→F#m→C#7→F#m
- G#m7-5→C#7→F#m
キー=C#マイナー
- C#m→F#m→G#7
- C#m→F#m→B→G#7
- C#m→A→B
- C#m→A→E→G#7
- C#m→B→A→G#7
- C#m→E→F#m→G#7
- A→B→C#m
- A→G#7→C#m
- F#m→C#m→G#7→C#m
- D#m7-5→G#7→C#m
キー=G#マイナー
- G#m→C#m→D#7
- G#m→C#m→F#→D#7
- G#m→E→F#
- G#m→E→B→D#7
- G#m→F#→E→D#7
- G#m→B→C#m→D#7
- E→F#→G#m
- E→D#7→G#m
- C#m→G#m→D#7→G#m
- A#m7-5→D#7→G#m
キー=Dマイナー
- Dm→Gm→A7
- Dm→Gm→C→A7
- Dm→B♭→C
- Dm→B♭→F→A7
- Dm→C→B♭→A7
- Dm→F→Gm→A7
- B♭→C→Dm
- B♭→A7→Dm
- Gm→Dm→A7→Dm
- Em7-5→A7→Dm
キー=Gマイナー
- Gm→Cm→D7
- Gm→Cm→F→D7
- Gm→E♭→F
- Gm→E♭→B♭→D7
- Gm→F→E♭→D7
- Gm→B♭→Cm→D7
- E♭→F→Gm
- E♭→D7→Gm
- Cm→Gm→D7→Gm
- Am7-5→D7→Gm
キー=Cマイナー
- Cm→Fm→G7
- Cm→Fm→B♭→G7
- Cm→A♭→B♭
- Cm→A♭→E♭→G7
- Cm→B♭→A♭→G7
- Cm→E♭→Fm→G7
- A♭→B♭→Cm
- A♭→G7→Cm
- Fm→Cm→G7→Cm
- Dm7-5→G7→Cm
キー=Fマイナー
- Fm→B♭m→C7
- Fm→B♭m→E♭→C7
- Fm→D♭→E♭
- Fm→D♭→A♭→C7
- Fm→E♭→D♭→C7
- Fm→A♭→B♭m→C7
- D♭→E♭→Fm
- D♭→C7→Fm
- B♭m→Fm→C7→Fm
- Gm7-5→C7→Fm
キー=B♭マイナー
- B♭m→E♭m→F7
- B♭m→E♭m→A♭→F7
- B♭m→G♭→A♭
- B♭m→G♭→D♭→F7
- B♭m→A♭→G♭→F7
- B♭m→D♭→E♭m→F7
- G♭→A♭→B♭m
- G♭→F7→B♭m
- E♭m→B♭m→F7→B♭m
- Cm7-5→F7→B♭m
キー=E♭マイナー
- E♭m→A♭m→B♭7
- E♭m→A♭m→D♭→B♭7
- E♭m→B→D♭
- E♭m→B→G♭→B♭7
- E♭m→D♭→B→B♭7
- E♭m→G♭→A♭m→B♭7
- B→D♭→E♭m
- B→B♭7→E♭m
- A♭m→E♭m→B♭7→E♭m
- Fm7-5→B♭7→E♭m
マイナーキーの定番のコード進行10パターンの構造解説
これ以降は、ご紹介したマイナーキーの定番のコード進行10パターンの構造などについて解説します。
※解説は「マイナーダイアトニックコード」を前提として行います。
以下は「Aマイナーダイアトニックコード」における例とその度数による構造です。
(Im,IIm-5,♭III,IVm,Vm,♭VI,♭VII)
(Im7,IIm7-5,♭IIIM7,IVm7,Vm7,♭VIM7,♭VII7)
▼関連ページ マイナースケールの解説 ハーモニックマイナー・メロディックマイナーを含む三種について
1.「Im→IVm→V7」
まずひとつめに挙げたのが、マイナーダイアトニックコードの「一番目(Im)」「四番目(IVm)」「五番目(Vm)」のコードをつなげつつ、五番目のコードのみを「〇7」のかたちにしたコード進行です。
「キー=Aマイナー」に置き換えると、
Am→Dm→E7(Im→IVm→V7)
となります。
スリーコードがコード展開の基礎
マイナーキーにおいてもメジャーキーと同様に「スリーコード」の概念がコード展開の基礎となり、ダイアトニックコードにおける「一番目」「四番目」「五番目」のコードをつなげることで安定したコードの流れを生み出すことができます。
▼関連ページ ダイアトニックコードとスリーコード(概要や成り立ち、コードの役割などについて)
そのうえで、メジャーキーにおいてはダイアトニックコードの
- 「一番目(I)」
- 「四番目(IV)」
- 「五番目(V)」
がそのままスリーコードとして活用されるのに対し、マイナーキーにおいては「五番目(Vm)」がコード進行の機能的にやや不十分であるため、頻繁に「V」あるいは「V7」に変形されます。
より具体的には、本来マイナーダイアトニックコードにおける「スリーコード」のみを活用して
Am→Dm→Em(Im→IVm→Vm)
という構成が作れるところ、「Vm」を「V7」へアレンジして
Am→Dm→E7(Im→IVm→V7)
のような展開が作られます。
もちろん「Am→Dm→Em(Im→IVm→Vm)」の構成も活用されます。
メロディックマイナー・ハーモニックマイナーのダイアトニックコード詳細と覚え方、実用的なコードの把握
2.「Im→IVm→♭VII→V7」
ふたつめに挙げたのは、前述したスリーコードの構成に「♭VII」を盛り込んだもので、これを「キー=Aマイナー」に置き換えると
Am→Dm→G→E7
となります。
平行調における「IIm→V」の形
ここでの「Im→IVm→♭VII(Am→Dm→G)」のルート音の流れ(A→D→G)は「強進行(完全4度上進行)」に相当するものです。
▼関連ページ 強進行について(通称「4度進行」=ドミナントモーションの元になる力強い音の動き)
これによって、スムーズな響きの変化が生まれていることがわかります。
また、この展開を平行調にあたるメジャーキー(例:「キー=Aマイナー」に対する「キー=Cメジャー」)として捉えると
「IIm→V(Dm→G)※ツーファイブ」
としても解釈できることから、
- 強進行およびコード機能的にスムーズな展開
- 瞬間的に平行調に転調しているような雰囲気
の双方をあわせ持つようなコードの流れになっていると解釈できます。
▼関連ページ ツーファイブとは?(概要と基本的な成り立ち、活用方法、マイナーキーにおける例など)
3.「Im→♭VI→♭VII」
次に挙げたのは、ダイアトニックコードの「一番目」「六番目」「七番目」をつなげた展開です。
「キー=Aマイナー」では
Am→F→G
というコードの流れになります。
平行調における「IIm→V」の形
この構成における
「♭VI→♭VII(F→G)」
は、前述した例と同じように平行調のメジャーキーとして解釈すると
「IV→V」
となり、スリーコードに相当するコードの展開だということがわかります。
そのため、同じく機能的にスムーズな流れがあり、かつ一時的に平行調のメジャーキーに転調したような雰囲気が生まれます。
また、「Im(Am)」と「♭VI(F)」は似たような構成音によって成り立っているため、
「Im→♭VI(Am→F)」
というコードの展開によって微妙に変化するサウンドが生み出されているところも特徴のひとつだといえます。
4.「Im→♭VI→♭III→V7」
次に挙げたのは、前述した「Im→♭VI」を別のコードへ向けたような展開で、「キー=Aマイナー」に置き換えると
Am→F→C→E7
というコードの流れになります。
平行調メジャーキーの主和音「♭III」
ここで盛り込まれている「♭III」のコードは、平行調メジャーキーにおける主和音「I」に相当するものです。
この例における、「Aマイナー」の平行調「Cメジャー」の主和音「C」です。
前述した例と同じように、ここでの
「♭VI→♭III(F→C)」
も平行調メジャーキーとして解釈するとスリーコードの一部である
「IV→I」
にあたるため、同じく「機能的な流れ」と「一時的な平行調の雰囲気」が感じられます。
また、直後に置かれた「V7」はもともとのマイナーキーの主和音「Im」を連想させるものであり、これによってコード進行全体から
「マイナーキーとメジャーキーを行ったり来たりするようなサウンド」
が生まれています。
5.「Im→♭VII→♭VI→V7」
五つ目に挙げたコード進行もここまでの例と同じく「♭VI」「♭VII」を活用した構成で、「キー=Aマイナー」では
Am→G→F→E7
という展開となります。
ルートがスムーズに下がる流れ
このコード進行におけるルートの動き「I→♭VII→♭VI→V」は、例として挙げた「キー=Aマイナー」では
「A→G→F→E(ラ→ソ→ファ→ミ)」
という流れとなり、スケールに沿って順番に音階を下るかたちになっていることがわかります。
そこからスムーズな響きの変化が感じられますが、聴きやすいコードの展開を考えるうえではこのように自然なルートの動きを盛り込めると望ましいです。
また、ここでの「V7(E7)」を「♭VII(G)」に差し換えて、
Am→G→F→G(Im→♭VII→♭VI→♭VII)
という流れを作り出すことによって(主和音を連想させすぎない)浮遊感のあるコードのサウンドを演出することもできます。
6.「Im→♭III→IVm→V7」
次に挙げたのは、スリーコードのみの展開に「♭III」を盛り込んだもので、「キー=Aマイナー」では
Am→C→Dm→E7
となります。
似たような響きの連結
ここでの
「Im→♭III(Am→C)」
という流れは「似たような響き(役割)を持ったコードをつなげた構成」ともいえるものです。
「Im(Am)」の延長にあるコードとして「♭III(C)」のサウンドが感じられ、主和音が引き延ばされたような雰囲気が生まれています。
また、その後のコードは
…♭III→IVm→V7(C→Dm→E7)
と展開することから、ダイアトニックコード内を隣のコードに向かって順番に上がっていくスムーズさが感じられます。
7.「♭VI→♭VII→Im」
ここまでのコード進行はすべて主和音「Im」から始まっていましたが、もちろんその他のコードから展開を始めることもできます。
ここでご紹介している構成はそのひとつで、「キー=Aマイナー」に置き換えると
F→G→Am
というコード進行になります。
ルートのスムーズな動き
この「♭VI→♭VII→Im(F→G→Am)」というコードの流れは、既にご紹介した
Am→G→F→E7(Im→♭VII→♭VI→V7)
という展開を逆行するようなものだといえます。
そこから、同じようにダイアトニックコード内を隣のコードに向かって順番に進んでいくようなスムーズさが感じられます。
実際のところこのコード進行は平行調メジャーキーでも頻繁に活用されるため、「メジャーキー/マイナーキー」のどちらでも活用できる典型的なコードの流れとして知っておくと便利です。
8.「♭VI→V7→Im」
次に挙げたものも「♭VI」から始まるコード進行で、上記で示した「♭VI→♭VII→Im」のアレンジ型ともいえます。「キー=Aマイナー」では
F→E7→Am
というコードの流れとなります。
Imに結びつくV7
既に述べたように、ここでの「V7」は機能的に補正されたコードとも呼べるもので、より具体的には
「V7→Im」
という展開によって主和音「Im」を予感させ、そこに強く結びつきます。
このようなコードの流れは「ドミナントモーション」と呼ばれるもので、数あるコード進行の中でも主和音にきちんと回帰する展開として特に頻繁に扱われます。
▼関連ページ ドミナントセブンスとドミナントモーションについて|コード進行を操る重要な働き
9.「IVm→Im→V7→Im」
次に挙げたコード進行も、「Im」以外のコードとして「IIm」を展開の冒頭に置いたもので、スリーコードのみによってコードの流れが作られています。
「キー=Aマイナー」では
Dm→Am→E7→Am
となります。
定期的に登場する「Im」
マイナーダイアトニックコードにおける「Im」がそのキーを象徴するような響きを持っていることは既に述べた通りですが、特に演歌など、特定のジャンルにおいてこの「Im」が頻繁に扱われることがあります。
ここでは、
「IVm→Im→V7→Im(Dm→Am→E7→Am)」
という展開によって、流れの中で逐一「Im」が置かれていますが、これによってコードの響きはその都度安定して、その分コード進行から感じられる響きの変化は少なくなります。
このようなコードの組み立て方はクラシック音楽的でもあり、そちら側の雰囲気を演出する意味であえて「Im」を多めに盛り込むことが検討できます。
10.「IIm7-5→V7→Im」
最後に挙げたのは「マイナーダイアトニックコードにおけるツーファイブワン」の構成で、「キー=Aマイナー」に置き換えると
Bm7-5→E7→Am
というコード進行となります。
「m7-5」のコード
メジャーキーと同じくマイナーキーでも、ダイアトニックコードにおける
「二番目」→「五番目」→「一番目」
を連結した「II→V→I(ツーファイブワン)」の構成は強い結びつきを持ったコードの流れとしてよく活用されます。
そのうえで、マイナーダイアトニックコードではこれが
「IIm7-5→V7→Im(Bm7-5→E7→Am)」
という構成になって、二番目のコードが「〇m7-5」の形になるところがメジャーキーのツーファイブワンとの違いだといえます。
メジャーキーのツーファイブワンは「IIm7→V7→I」というような構成になり、「IIm7」には「-5」がつきません。
突き詰めていえば、この「IIm7-5→V7」にマイナーキーらしさがあり、このコード進行を盛り込むことによってマイナーキーの雰囲気をより強調することができます。
また「メジャー/マイナー」を曖昧にするような意味で、「IIm7」に「-5」をつけず
「IIm7→V7→Im(Bm7→E7→Am)」
という形を作り、メジャーのツーファイブをマイナーの主和音へ結びつけるような展開も検討できます。
動画解説もあります
「文章ではわからない」という方に向けて、上記でご紹介したコード進行の一部について動画でも解説を行っています。
まとめ
改めて、以下に「マイナーキーの作曲に使える定番のコード進行パターン」をまとめます(カッコ内は「キー=Aマイナー」における例です)。
- 「Im→IVm→V7(Am→Dm→E7)」
- 「Im→IVm→♭VII→V7(Am→Dm→G→E7)」
- 「Im→♭VI→♭VII(Am→F→G)」
- 「Im→♭VI→♭III→V7(Am→F→C→E7)」
- 「Im→♭VII→♭VI→V7(Am→G→F→E7)」
- 「Im→♭III→IVm→V7(Am→C→Dm→E7)」
- 「♭VI→♭VII→Im(F→G→Am)」
- 「♭VI→V7→Im(F→E7→Am)」
- 「IVm→Im→V7→Im(Dm→Am→E7→Am)」
- 「IIm7-5→V7→Im(Bm7-5→E7→Am)」
ぜひこれらを作曲に活用しながら、さらにいろいろな構成へと応用することを検討してみてください。
オリジナル曲・添削サービスのご案内
【あなたのオリジナル曲を添削します】「曲添削サービス」のご案内