「さあ音楽を作ろう!」と意気込んでも、初心者の方にとっては何から始めてどんな手順によってそれを行えばいいかがなかなかイメージできないもの。
こちらのページでは、みなさんが聴くことのできる楽曲の音源が一般的にどのような工程を経て作られるか、という点について解説していきます。
これから音源を作っていこうと考えている人は、是非参考にしてみて下さい。
※以下のページでは音楽制作に必要な機材についてご紹介しています。
作曲に必要なものとは?PCを使った作曲・音楽制作に必要なもの(機材)と費用の目安を詳しく解説します。
音源制作に必要な工程の一覧
何もない状態からメロディやハーモニーを生み出し、一曲を完成させたうえでそれを多くの人が聴けるような「音源」にまとめあげるまでには、通常いくつかの工程が必要です。
以下は、その代表的なものです。
- 作曲
- 作詞
- 編曲(アレンジ)
- レコーディング
- ミキシング
- マスタリング
それぞれは、別々の人によって分業として行われることもあれば、一人によっていくつかの作業がまとめて行われることもあります。
各作業を高いレベルで行うにはいずれも専門的な知識が必要で、これから音楽を始めようとする人がすべてを自分一人だけで行うのはやはりハードルが高いといえるでしょう。
これ以降は、それぞれの工程について詳しく解説していきます。
1. 作曲
まず多くの人がすぐにイメージできるのが「作曲」の工程です。
これは文字通り「曲を作ること」を指しており、メロディを考えたり、コードのつながり(ハーモニー)を考えたりすることを指します。
それを踏まえると、例えば「鼻歌でなんとなくメロディを口ずさむこと」なども作曲の一つといえますが、ここでの作曲はより意図的ものという意味合いを持ちます。
音源制作全体を「作曲」と呼ぶこともある
PCを使った音源制作が一般化した現在では、それらの作業全般を指して「作曲」という言葉が使われることもあります。
しかし上記で一覧として挙げた工程の中に属する「作曲」は、主にメロディとハーモニーや、それらを含めた曲構成の骨組みのみ作り上げることを意味する場合が多いです。
このあたりについて、詳しくは以下のページでも解説しています。
「作曲」とはどこまで作ることを指すのか?|音楽制作の境界線を考える
きちんと作るには体系的な知識が必要
作曲はメロディとハーモニーを作り上げる行為であるため、それを円滑に行うためにはメロディやハーモニーが通常どのようなルールによって組み立てられるべきかを把握しておく必要があります。
経験や勘によって「なんとなくこんな感じ」という観点で作曲を行うこともできますが、品質の高い曲を継続的に、かつ短時間で作り上げるためにはなんらかの体系的な知識が必要だといえるでしょう。
それが音楽理論であり、また作曲法などもそれに分類されるものです。
「作曲」の工程は楽曲の品質を握る鍵になる
例えば、派手なサウンドやインパクトのあるフレーズなどを使って曲を組み立てれば、楽曲を「なんとなく良さそうな雰囲気を持ったもの」に仕上げることはできます。
しかし、特にボーカルのあるポップス・ロックなどにおいては、肝心のメロディやハーモニーが平凡だったり、またシンプルであるにしてもそこに説得力のようなものがないと、やはりその曲は「つまらない曲」だと捉えられてしまいます。
既に述べた通りここでの「作曲」とは曲の骨組みを作る行為であるため、この部分をいかにしっかりと行うかという点が、リスナーに「ああ良い曲だなあ」と感じてもらうためにとても重要になるのです。
2. 作詞
作曲と同じく、作詞についても多くの人がすぐにその作業内容をイメージできるはずです。
ボーカリストが実際に歌うメロディがあり、そこに乗せるための言葉を考えるのが「作詞」という工程において行われる行為です。
作詞は「良い・悪い」を判断しにくい
作詞は作曲以上に自由度が高く、「作風」という捉え方ができてしまうものです。
例えばある人にとって幼稚でありがちだと感じられるような歌詞でも、その作風をとても気に入ってしまう人も必ず一定数います。
より簡単にいえば、メロディ・ハーモニー以上に「良い・悪い」を判断しがたいのが歌詞だと個人的に考えています。
メロディラインへの配慮
既に述べた通り「歌詞」は単なる「詩」と違って歌のための言葉であるため、それをより良いものだと感じてもらうためには「メロディ」の存在を意識する必要があります。
メロディを先に作り、後から歌詞をそこに付けるような順序で作詞を行う場合には、言葉をメロディラインに合わせるような配慮が求められ、またメロディの音階に歌詞のイントネーションがすんなりと馴染むような気遣いも必要になるといえるでしょう。
反面で、メロディを全く無視していわゆる「詩」と同じ感覚で言葉を作ることもでき、このあたりがまさに前述の「作風」という言葉でどのようにでも主張できてしまう部分です。
3. 編曲(アレンジ)
作曲と作詞を経て完成した「曲の骨組み」を、実際にどう聴かせるか考えるのがここでの「編曲(アレンジ)」の工程です。
分かりやすくいえば、伴奏をピアノで表現するのか、ギターで表現するのか、というようなことをこの工程で考えていきます。
また「作曲」の項で述べた通り、音楽ジャンルによっては音楽制作全般を「作曲」だと捉えることもあり、この場合にはメロディやハーモニーを考えながら同時にそれらをどんな音色・楽器・フレージングによって表現していくかもあわせて検討されます。
これは、作曲と編曲が同時に行われていくケースです。
ボイシングを確定させる
例えば作曲の工程において「C」というコードを思いついていたとして、そのコードの構成音「ド・ミ・ソ」を「ド・ソ・ミ」と鳴らすこともできれば「ソ・ミ・ド」と鳴らすこともできてしまいます。
これは「ボイシング」という概念にあたるものですが、編曲はこのように「音をどう並べるか」を定義する工程でもあります。
ボーカルのあるポップス・ロックなどにおいて最も目立たせるべきものはメロディであり、それらを印象的に響かせるためにどう音を並べて伴奏を組み立てればいいか、という観点で編曲は行われます。
楽器や音色に関する知識が必要
また楽曲を生楽器のアンサンブルに編曲する際には、その内容が演奏にも直結します。
つまり、編曲をするにあたって伴奏を担当する楽器ごとの特性や操作性、得意なサウンドやフレージングなどを熟知しておく必要があるということです。
そのうえで、それぞれの楽器によるフレーズをどのように配置すれば音が心地良く響くかという点についても考慮しながら作業は行われていきます。
シンセなどのデジタルなサウンドを使用する場合には基本的に「演奏」という概念は無くなりますが、それでも音色がその他の楽器とどう調和するかという観点は必要です。
ここまでに述べた通り、編曲は音の種類や配置を定義する工程であるため、音色が増えるのに比例して作業もその分複雑になっていきます。
もっとも簡単な編曲は「ボーカル+ギター」などの楽器単体による伴奏で、この場合にはギターがボーカルの背後でどのように演奏するかを考えるだけで済みます。
バンドでの編曲は各楽器の担当者によって行われることが多い
通常作曲が一人の人間によって行われるのに対し、例えばバンドアンサンブルなどにおける編曲は、各楽器の演奏内容をそれぞれの楽器担当者が考えることも多いです。
バンドを代表する一人が作曲によってメロディとコードのみを整理し、それを各楽器の担当に共有することでそれぞれが自分の演奏を前提としてそれをアレンジします。
▼関連ページ
バンドの作曲|バンドのための曲の作り方、知識と手順など
反面で、DTMなどによって一人がすべての編曲を行う際には前述した総合的な観点が必要となり、より編曲の難易度が上がります。
4. レコーディング
演奏内容を音として記録するのが、この「レコーディング(録音)」の工程です。
こちらも多くの人が、レコーディングブースに入って楽器を演奏するミュージシャンの姿や、ボーカリストがマイクに向かって歌っている姿をイメージできるはずです。
レコーディングは音を確定させる作業
現在楽曲の音源は「WAVファイル」などの音声データに仕上げられることが一般的であり、レコーディングの工程はその第一歩ともいえます。
つまり、それまで単なる情報でしかなかった曲の骨組みや、演奏しても音になってすぐに消えていく編曲の内容を、音声のデータとして確定させ、何度も繰り返し聴ける状態として保存するのがレコーディングだということです。
レコーディングによって、曲のメロディやコード・歌詞や編曲内容などのすべてがデータとして修正できない状態になってしまうため、この工程に臨むには相応の準備が必要になります。
使用する機材と環境によって品質が決まる
生楽器やボーカルをレコーディングする際には、使用する機材や環境によって記録できるデータの品質が大きく変わります。
安価で質の悪い機材を使うほどレコーディングデータとして記録される音色は粗悪で貧弱なものになり、その反対に高価で質の良い機材を使うほどデータはクリアで何度も聴くに堪えうるものになります。
マイクやオーディオインターフェース、ケーブルから電源設備など、さまざまな要素がそれに関わるため、基本的に商用レベルの高品質なレコーディングを実現させるためにはプロ仕様のレコーディングスタジオが使用されます。
レコーディングには「マイクをどのように配置するか」を定義する「マイキング」という観点もあり、生楽器の音を質の高いデータとして記録するためにはそのような技術も必要となります。
また現在ではDTMレベルでもかなりの品質を確保できるため、生楽器のレコーディングが少なくデジタルサウンドを主体とする楽曲は、コンパクトなレコーディング環境で制作されることも多いです。
あわせて、あえてそのような手作り的なサウンドを意図して、ホームスタジオが活用されることもよくあります。
データをオーディオに変換する
一般的なDTMには「MIDI(データ)」と「オーディオ」という二つの概念があり、それを踏まえるとレコーディングは「データ」を「オーディオ」にする作業とも解釈できます。
この場合には単にデータをオーディオに変換するだけであるため、広い意味ではやり直しが可能です。
5. ミキシング
レコーディングした音の音量や音色を整え、複数ある音のバランスを取るのが「ミキシング」という工程です。
前述した作曲や作詞などに比べて、一般の人にとってあまり馴染みのない工程といえるでしょう。
音を混合させてひとつの音源にする
ミキシング(mixing)はその名の通り、簡単にいえば「音をミックスする(混ぜる)こと」であり、楽曲に存在するすべての音を混ぜ、ひとつの音源として聴ける状態に持っていく作業のことを意味します。
この工程においてポイントとなるのは「音量=音の大きさ」「定位=ステレオ音源における左右の位置」「エフェクト=音色・音の雰囲気」などです。
例えば一般的なバンドサウンドにおいては、アンサンブル全体のバランスを考慮しながら「ドラム」「ベース」「ギター」「ボーカル」などの各楽器に対して上記を考えていきます。
楽曲によってミキシングの内容は変わる
ひとえに「ミキシング」といっても、そこで行われることは楽曲によって大きく変わります。
例えば前述した「ドラム」という一つの楽器だけをとっても、そこには「キック」「スネア」「ハイハット」などいくつかの要素があり、それぞれを調節したうえでまとめ上げる必要があります。
楽曲にドラムが存在していなければこの作業は無くなりますし、基本的には上記のようなドラムに含まれる要素が増える分作業も増えます。
ミキシングは特に専門性が高い
また「エフェクト」にも膨大な数があり、それぞれを的確に操るには特性を踏まえ、操作方法を熟知しておく必要があります。
レコーディングと同じく音響的な知識や技術、センスが必要になるため、経験の無い人がやるにあたって最も苦労する点かもしれません。
その反面で、DTM機材が安価かつ便利になりつつある現在では、特別な技術が無くてもこれらを行えるようにソフトが常に進化しており、素人でもミキシングが簡単にできる時代になりつつあるともいえます。
6. マスタリング
多くの人にとって最も馴染みが薄いのが「マスタリング」という工程です。
これは、ミキシングによってまとまった音源全体の方向性をさらに磨き、リスナーが耳にする状態に仕上げる最終工程のことで、これを経て音源は完成されます。
こちらも非常に専門性の高い作業です。
誰でもいつでもベストな音源に仕上げる
ミキシングによって各楽器のバランスはほとんど決まりますが、そのうえでさらに全体的な華やかさが欲しいとか、迫力が欲しいという場合にマスタリングで微妙な調整が行われます。
また基本的に「リスナーが音源を聴いた時にどう感じるか?」ということを考えながら、誰がどんな時に聴いてもベストな状態で音源と向き合ってもらえるように仕上げるのがここでの作業です。
その昔に完成したレコードやCDの音源を、当時と遜色のないものとしていまだに聴くことができるのは、このマスタリングの工程のおかげです。
まとめ
ここまで、楽曲の音源が一般的にどのような工程を経て作られるかを解説してきました。
もちろん曲には様々な種類があり、上記に当てはまらなかったり、どれかの工程を省略することができるケースも多々あります。
また、品質をそこまで重視しないデモ音源のレベルでは作業がより簡易になることも多いため、これから音源制作をしていきたいと考えている場合には、まず音源の方向性や方針を整理することが重要だといえるでしょう。
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