作曲に興味がある段階では、
「みんな実際どんな風に作曲を進めてるの?」
というところに疑問を持つはずです。
そんな想いに応えるべく、こちらでは私が実際に作曲している姿を「作曲風景」と題して、詳しくご紹介していきます。
今回題材としたのは「ロックな曲の作曲」で、動画での実演をもとに作曲の進め方の例を解説していきますので、参考にしてもらえるとありがたいです。
目次
曲作りの進め方概要
作曲風景をご紹介するにあたり、まず私がやっている曲作りの進め方について、簡単にその概要を解説しておきます。
作曲の進め方
私はポップス・ロック系の作曲を専門としているため、作曲は
楽器を弾きながら、歌ってメロディを考える
というやり方によって進めていきます。
その手順は、主に以下のような流れとなっています。
- 曲のキーを決める
- そのキーに沿って、一番初めのコードを決める
- コードを弾き、自由に歌いながらメロディを考える
- コードを展開させ、それにあわせてメロディも展開させる
- コードとメロディそれぞれを少しずつ展開させてAメロ等ひとつのブロックにまとめる
- 曲の形式によって、それを「Bメロ」「サビ」などへとさらに展開させる
- 一曲の完成
ここでポイントとなるのが
- コードをまず初めに鳴らす
- コードとメロディそれぞれを少しずつ展開させていく
という点です。
コードから作曲し、徐々に展開させる
これについては、以前のツイートでも以下のように述べています。
いくつかある作曲のやり方のなかで、初心者が一番失敗しづらいのがコードから作曲するやり方です。
1.コードを弾く、または打ち込む
2.その上でメロディを考えるこの順番で少しずつ繰り返して発展させると、コードという土台があることでメロディが破綻せず、無理なく一曲が仕上がります😌
— 内山敦支|うちやま作曲教室 (@sakkyoku_info) August 4, 2020
1.コードを弾く、または打ち込む
2.その上でメロディを考える
この順番で少しずつ繰り返して発展させると、コードという土台があることでメロディが破綻せず、無理なく一曲が仕上がります
作曲のきっかけとして初めにコードを鳴らすのは、上記ツイートにあるように「メロディを歌うための土台を設ける」という理由からです。
簡単にいえば、コードが伴奏になることでメロディを歌いやすくなる、ということです。
また、そこからメロディ・コードを発展させる際にもそれら一方を一気に作ってしまうのではなく、双方を少しずつ展開させていくように作ります。
それによって、適度に自由に、かつ破綻せずメロディとコードを組み立てていくことができます。
作曲風景を収めた動画
上記を踏まえ、その作曲風景を収めたものが以下の動画です。
これ以降は、この動画に沿って解説を進めていきます。
作曲風景の解説
ここでは動画で実際に行っている作業について、「そこでどんなことを考えているか」という観点を踏まえそれぞれを解説していきます。
【1】作る曲の方針を定める
今回「ロックな曲」を作るにあたり、曲には「ロック的だ」と感じられる要素を盛り込むことが求められます。
作曲はそれを定めるところから始まりますが、こちらではそれらを以下のようにまとめました。
- 「♭III」「♭VI」「♭VII」を活用する
- シンプルな構成にする
- パワーコードによって表現する
1.「♭III」「♭VI」「♭VII」を活用する
ここで挙げている「♭III」「♭VI」「♭VII」とは、同主調のマイナーキーから借用された三つのコードのことを指します。 フラット系三種のノンダイアトニックコード 同主調マイナーからの借用
今回の曲はキーを「Cメジャー」として進めていくため、これらは「E♭」「A♭」「B♭」となります。
これらはマイナーキーらしい響きを持つコードであるため、そこからロックな雰囲気が感じられます。
2. シンプルな構成にする
もうひとつ挙げた「シンプルな構成」とは、いわゆる一般的なロックのイメージによるものです。
展開がドラマチックではなく、繰り返しを多用したわかりやすい構成を持つ曲、ということを意味します。
3. パワーコードによって表現する
三つ目の「パワーコード」については、作曲というより「表現方法」に分類されるものです。
コードによる演奏にパワーコードを活用することで、単なるストロークよりもロック的な雰囲気をより強く提示することができます。
【2】Aメロの制作
今回の曲では、既に述べた通り「キー=Cメジャー」として作業を進めていきます。
ページ冒頭でもご紹介した作曲の手順に沿って、まず冒頭のコードを「Cダイアトニックコード」の一番目のコードにあたる「C」に設定します。
この「C」のコードを鳴らしながら、その後に前述の「E♭」「A♭」「B♭」のコードを絡めつつ、歌ってメロディを考えます。
ここでは上記で挙げた方針にあわせ、コード進行やメロディをシンプルなものにするため、展開が短め(四小節程度)になるように収めていきます。
結果的に、完成したコード進行は下記のとおりです。
※二回繰り返し
この上に四小節のメロディを乗せ、これをひとつのブロック(Aメロ)とします。
【3】Bメロの制作
次にBメロの制作に入りますが、ここでポイントとなるのが
という点です。
基本的には、Aメロにない要素をBメロに盛り込むほどにブロックが変わったことを明確に提示できるため、ここではまず「Aメロがどのような要素を持っているか」ということを整理します。
以下は、その簡単な一覧です。
- 冒頭のコード:C
- メロディの始め方:ブロック頭と同時
- メロディの形:タータ
そのうえで、「これらと違う要素」といことを前提として、「Bメロにあると望ましい要素」を以下の通り定めます。
- 冒頭のコード:C以外(Fなど)
- メロディの始め方:ブロック頭より前・後
- メロディの形:タタタ
作業の流れはAメロでやったものと同じで、上記の要素をもとに下記の構成を組み立てました。
コードが展開しすぎずに「F→C」という流れを短く繰り返しているところが「Aメロとの差別化」という点でのポイントです。
メロディはブロック頭よりも後から始めて、「タタタ…」と刻むような形としています。
【4】サビの制作
次にサビを制作していきますが、こちらでもBメロと同じく、直前のブロック(Bメロ)にない要素=サビにあると望ましい要素をまず以下のように整理します。
- 冒頭のコード:F以外(Cなど)
- メロディの始め方:ブロックより前
- メロディの形:ター
ここから、サビを下記の構成としました。
C→B♭→A♭→F7
※これを二回繰り返す
上記にある通り、基本的に四小節のコード構成を繰り返す形で展開させています。
またメロディも小さなまとまりを繰り返しており、シンプルで伝わりやすい形としています。
ワンコーラスの完成
ここまでを通して「Aメロ」「Bメロ」「サビ」がまとまり、ワンコーラスが完成しました。
解説をもとに改めて動画で曲を確認していただくと、各ブロックがそれぞれ違った要素を持ち、「♭III」「♭VI」「♭VII」などによってロックな雰囲気も感じられるはずです。
また、クラシカルな曲調から遠ざける意味でダイアトニックコードの中でもマイナー系のコードをあえて排除しています。
ブロックごとの差別化をしっかりと行って、構成面で聴き応えのあるものにすることで、シンプルなメロディ・コード進行でも作品性を高めていくことができます。
作曲風景のまとめ
ここまで「ロックな曲」の作曲風景を動画と共に解説してきました。
作業のポイントを改めて以下にまとめます。
- どんな曲にするか(曲調)をある程度定める
- 上記をもとに、「その曲にどのような要素が必要か(作曲の方針)」を洗い出す
- 洗い出した要素を念頭に置きながら、手順に沿って作曲を進める
- ブロックを展開させるときは、作り終えた直前のブロックを整理し、方向を定めながら作業を進める
ここで述べている「曲調」とは、今回の例でいう「ロックな曲」などのことを指すものです。
また、そこから導くことができる要素(今回の例でいう「♭系コード」や「シンプルな構成」など)をきちんと念頭に置いて、コードやメロディを組み立てることも重要です。
さらには、ブロックを展開させ曲を大きなものにしていく際には必ず一度立ち止まり、どのように場面転換を演出していくかを考えることも欠かせません。
今回は「ロックな曲」というテーマをもとに作曲風景をご紹介しましたが、上記を含めた作業の進め方・考え方・方針の決め方などを、是非日々の作曲に活用してみて下さい。
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