こちらでは、魅力的なメロディを効率良く生み出すための、
「たくさん出して、あとから選ぶ」
というやり方についてご紹介します。
※当記事はこちらのポッドキャストの内容を編集/再構成したものです。
目次
究極の1本を生み出すのは大変
メロディを作るうえで、多くのひとは「これぞ」という1本を追い求めて頭をひねり、あれこれと試行錯誤を繰り返します。
そのうえで、なかなか理想とするメロディを生み出せず、自分のできなさ加減に嫌気が差したり、集中し続けることで疲れを感じてしまいます。
また、納得できる1本を見つけるためにダメ出し繰り返す行為は、作業効率の面から考えてもあまり好ましいとはいえません。
それを踏まえおすすめできるのが、冒頭でもお伝えした、
まず初めにメロディをたくさん出し、その中から質の高いメロディを選ぶ
というやり方です。
「たくさん出してあとから選ぶ」の具体的な手順
この「メロディを最初にたくさん出してあとから選ぶ」というやり方は、特に弾き語りでメロディを生み出す人にとっては実現しやすく、また楽器やDTMを使って作曲する人も同じように活用できるものです。
こちらでは、「弾き語りによってメロディを生み出す」というスタイルを前提として解説します。
また、「やり方」と大げさにいうほど難しいものではありませんが、以下のとおりその手順について簡単にまとめてみます。
手順1. ボイスメモアプリ等を用意する
まず初めに、スマホのボイスメモ(アプリ)等の録音できる環境を用意します。
もちろんDTMによる録音環境でも問題ありませんが、スマホのボイスメモは、
- 録音・停止・再生がワンタッチ
- やろうと思ったときにすぐ始められる
- 1回の録音ごとに音声ファイルがひとつずつ作られる
- ファイルに名前をつけられる
- 出先でも音声ファイルを再生して確認できる
などの利点があり、単にメロディをたくさん生み出すだけの作業をするうえでより直感的に扱えて利便性が高いといえます。
手順2. メロディを考える
録音環境が準備できたら、あとはいつもどおりメロディを歌いながら考えます。
この時点では録音することを意識せず、楽器を弾きながらなにげなくメロディを口ずさんで、あれこれと検討してみてください。
もちろん、楽器を使ってコードの展開を同時に組み立て、状況に応じてコードの流れをノートなどに書き留めることも大切です。
ピンとくるメロディが思い浮かんだら、何度も繰り返し歌えるくらいになるまで口慣らしをします。
手順3. メロディを弾き語って録音する
その後、ボイスメモを録音状態にして、スマホに向かって直接弾き語るようにしてメロディとコードの演奏を記録します。
「手順2」で「メロディだけが思い浮かんで、それに合うコードが見つからない」という状態にあった場合でも、同様にそれを録音することができます。
その際は、メロディがどんなリズム(テンポ)を持っているか、という点のみは明らかにしておくために、メロディを歌いながら手を打ってリズムをあわせて録音するようにしましょう。
ここでは、録音を終えたらすぐに停止させて、ひとつのメロディ案ごとにボイスメモ上でひとつのファイルが残るようにしてください。
手順4. 「手順2~3」を繰り返す
これ以降は「手順2」と「手順3」でやったとおり、
メロディを思い浮かべて、心に引っかかったものをある程度確定させる→それを録音してひとつの音声ファイルとして残す
という作業を繰り返します。
30分程度の時間を設けて、その間にひたすらこれを繰り返すことで「メロディ案」の音声ファイルがボイスメモ上に次々と記録されていきます。
これを私は「メロディ出し100本ノック」などと呼んでいます。
手順5. メロディを選ぶ
その後、溜まった音声ファイルを確認し、複数あるメロディ案の中から採用できそうなメロディがあるかを確認していきます。
ここまでを通して、例えばメロディのかけらを100本生み出したら、その中に少なくとも1つか2つは光るものを見つけることができるはずです。
「たくさん出してあとから選ぶ」の利点
メロディ作りの敷居が下がり正確に判断できる
このやり方を導入することによって、
「まあ、なんとなく良さそうだからとりあえず記録しておこう」
というような、気楽な姿勢でメロディ作りに臨めるようになります。
さらには、あとから冷静になってメロディを選ぶことで、判断もより正確にできます。
「究極の1本」を追い求めてメロディの不採用を続けていると、根本的に自己肯定感が下がってしまったり、長い時間の作業によって何が正解なのかがわからなくなってしまうものです。
メロディを作るモチベーションや、その判断の質を高める意味でもこのやり方は効果的だといえます。
隙間時間に取り組める
またこの方法には、「曲作り」としてまとまった時間を取らなくても、15分~30分程度の時間が取れたらその間にできてしまう良さもあります。
日々の暮らしの中で、いわゆる「隙間時間」のようなものは案外多いもので、例えば
- お風呂から上がった後の20分
- 寝る前の15分
などと時間を決めて、そこでこの「メロディ出し」に取り組むことで、メロディ作りの行為を習慣化させ、それを曲作りへとしっかりつなげることもできます。
補足
たくさん出した中に良いメロディがなかった場合
もちろん、たくさん出したメロディの中に気にいるものが全く無い、ということもあり得ますが、その場合にはまた別途時間を設けて、同じことを2回~3回やってみて下さい。
根本的にメロディ案の母数を増やすほどに採用できるメロディの数も増えていきます。
また、メロディ作りはやればやるほど感覚が磨かれるもので、繰り返しやるどにより高い確率で自分が納得できるメロディを生み出せるようになります。
たくさん出した中に良いメロディがありすぎる場合
またそれとは反対に、
記録できたものの中に良いメロディがたくさんありすぎて、どれを採用すればいいか迷ってしまう
というケースも想定できます。
その場合は、メロディのストックとして良いメロディの音声ファイルだけを別フォルダなどに分けておくと、作曲のたびにそれらを活用することができます。
良いメロディのストックがある状態は、定期的に曲を作っていかなければいけないような局面での心の余裕につながります。
メロディ作りに強くなる本
メロディ作りのコツについて、「メロディ作りに強くなる本」というコンテンツとしてまとめています。 「メロディ作りに強くなる本」のご紹介
まとめ
以下に、「メロディをたくさん出して、あとから選ぶ」というやり方の利点を改めてまとめます。
- メロディを作るときの心理的負担が少ない
- あとから選ぶため冷静に採用/不採用を判別できる
- 良いメロディの案を溜めておける
もちろん、「これぞ」というひとつのメロディを追い求めるやり方にも面白みがあります。
とはいえ、上記で挙げたような利点を踏まえると、この「たくさん出してあとから選ぶ」という方法も、メロディ作りのひとつのスタイルとして取り入れられるはずです。
現在、なかなか良いメロディが生み出せず苦労している人は、時間を取ってまずメロディをたくさん作り、あとから選ぶやり方に取り組んでみてみてください
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