アコギの購入を検討する際に、多くの初心者は
- 適当に買って失敗したくない…
- でもどのような観点からアコギを選べばいいかわからない…
という思いを抱えています。
というわけで、こちらではそんな初心者の方に向けて、これまでに何本もアコギを購入してきた私が、自身の経験をもとに失敗しないアコギの選び方について解説していきます。
▼以下の記事では、私がこれまでに所有してきたアコースティックギターの中でも特に重要な三本について比較もしています。
是非、これからアコギを選ぶための参考にしてみて下さい。
目次
アコギを選ぶための前提
そもそも、基本的にアコースティックギターは実物を触り、試奏をしたうえで購入すべきものです。
それは、スペック表だけではわからないことが多々あり、それがアコギの弾きやすさや弾いた時の心地良さを左右する重要な事柄につながるからです。
アコギを選ぶ際には必ず楽器店などに足を運び、ギターが満足に弾けなくともしっかりとギターを抱えたり、生音を聴いたうえで購入を検討するようにしましょう。
アコギの選び方「触った感覚」編
アコギを選ぶ際にもっとも重視してほしいのが、「触ってみたうえでの感覚」です。
これにはいくつかの確認点があるため、以下より一つずつ詳しく解説していきます。
1. 抱えた時の感じ
まず、アコギを選ぶうえで最も大切なのが「抱えた時に心地良いか(無理がないか)」という点です。
ひとえに「アコースティックギター」といってもその大きさや形状はさまざまで、人によって抱えた時の感覚は異なります。
座って演奏する場合、または立って演奏する場合、いずれにしても「ギターを抱える」という行為は同じであるため、演奏フォームとしてギターを構えた時のフィーリングをまず大切にしてください。
より具体的にいえば、ギターを持って構えた時に、「なんだか抱えづらいな」とか「ずっと持っていると疲れる」というように感じてしまったらそのギターとの相性はいまいちだということです。
反面で、すんなりと持てたり抱えて違和感がなければ相性が合っているということで、その観点からは購入候補に入れる価値があると判断して下さい。
ボディの大きさを考慮する
「ギターを抱える」という性質上、やはりボディの大きさは抱えやすさに比例します。
例えば、「弾きやすいギター」として有名なメーカー「テイラー」のギターでも、モデルによってはボディが大きめに作られており、抱えづらいと感じる人も多いはずです。
またその反面で、「マーチン」の「000」シリーズなどには小さめのボディが採用されており、体の小さな女性などでも比較的抱えやすいとされています。
これらを踏まえると、「抱えやすさ」は「ギター本体の大きさ」とも捉えることができるでしょう。
ボディの厚みとボディバランス
大きさと共にアコギの抱えやすさを左右するのが、ボディの厚みやボディバランスです。
この点は特に見た目ではわかりづらい点で、見た感じではちょうど良さそうだったのに持ってみたら思いのほか不自然だった、ということもよくあります。
アコギを選ぶ際にはまずは実物を見て標準的な大きさを把握し、その上で実際にギターを抱えながら、ボディの厚みやバランスなどの点から構えた時の体勢や感覚に無理がないかということを確認して下さい。
2. ネックの握りやすさ(細さ・太さ)
アコギを選ぶ際に「抱えた感じ」と同じく重視すべきなのが「ネックの握りやすさ」です。
ボディサイズと同じく、ネックの太さにも実にいろいろな種類があり、この点も特に実物を触ってみないとわからないところです。
見た目では握りやすそうだと感じたのに、実際に握ってみたらなんだかネックが「ボテッ」としていた、ということは本当によくあります。
メーカーごとのクセや特徴
ネックの形状は、メーカーごとのクセや特徴が反映されやすいものとされています。
例えば有名メーカーである「ギブソン」のギターには「ナロー(narrow=細い)ネック」というネックが採用されているモデルがあり、そのようなギターのネックは一般的なエレキギターのように細くて握りやすいものとなっています。
また、メーカーによって「かまぼこ型」「三角型」などのように得意とするネックの形状も異なっており、このあたりはそれぞれ弾き比べる価値のあるところです。
試奏はネックとの相性を確認する作業
ネックの握りやすさも、もちろん直接演奏に影響します。
試奏する際には、後述するサウンド面の確認はもちろんのこと、それ以上にネックとの相性に十分注意して下さい。
私自身も、当時マーチンの「D-28」という高額なギターを適当に選んでしまい、ネックの握りがどうにも自分の好みに合わなくて結局手放してしまった経験をしています。
「ネックを握った感覚・相性」は、購入以降そのギターを演奏するたびにずっと付いて回る大きなポイントだと、その経験を通して痛感しました。
3. 弦高
ネックの握りやすさと共にアコギを選ぶ上で確認すべきは「フレットボードと弦の間の幅」で、これをギター用語で「弦高(げんこう)」と呼びます。
弦高は弦の押さえやすさを左右するもので、弦高が高いとフィンガリングに強い力が必要となり、反面で弦高が低いとあまり力を入れなくとも楽に弦を押さえられます。
弦が押さえやすいかを確認する
弦高の確認は平たくいえば、既に述べたとおり「弦が押さえやすいか確認すること」を意味します。
実際にアコギのフレットを触って、無駄に強い力を入れずとも弦を押さえることができるかを確かめて下さい。
特にギターの演奏に慣れていない時点ではこの判断を難しいものだと感じることがありますが、いくつかのギターを弾き比べていくと標準的な弦高の高さを把握することができるはずです。
アコギの選び方「サウンド」編
サウンド面の確認も、アコギを選ぶうえではやはり欠かせません。
以下はその際のポイントです。
1. 自分で弾いたときの音
まずアコギを実際に演奏してみて、演奏者として感じるサウンドを確認しましょう。
アコギを演奏する際には、演奏者としてギターを抱えながらその真上に顔がある状態で、自分の前方に出ていく音を聴くことになります。
これは、後述する「リスナーとしてギターの正面に向かい合って聴く音」とは違ったものになります。
結果として、今後の演奏を楽しいものにしてくために、その状態で聴いた音が心地良いという点が特に重要になるのです。
演奏する内容について
ここで「演奏がそこまで満足にできない状態で何を弾けばいいのか」と疑問がわきますが、これはその時に自分が弾けるもので全く問題ありません。
(仮にギターが全く弾けなくい場合には、単に弦を「ジャラ~ン…」と鳴らすだけでも大丈夫です)
最も理想的なのは演奏に以下のようなものを織り交ぜ、それぞれのサウンドをどう感じるか確認する、というやり方です。
- 開放弦を含むコードによるストローク
- 5フレット~9フレットあたりをセーハするコードによるストローク
- アルペジオのフレーズ
- 単音のフレーズ(ローフレット、およびハイフレット)
- 激しめのコードストローク、優しいコードストローク
ここに挙げた内容は実際に行うアコギの演奏に直結したもので、おおむねこのあたりを網羅しつつ確認しておけば、演奏の段階で「思っていた音と違った」と感じることが無くなるはずです。
アコギの音を聴くときに確認すべきポイント
実際に演奏をして音を聴く際には、主に以下の点に着目して下さい。
- 音がしっかりと伸びるか
- 弦の響きにツヤがあるか
- 低音は太く、中高音には明るさがあるか
この中でも特に「音がしっかりと伸びるか」という点は重要で、作りがいまいちなギターほど音の響きが悪く、反面できちんと作られているギターほど伸びやかで心地良いサウンドを持っています。
あわせて、前述したいくつかの演奏を行うことで
- 単音は良いけど、コードで弾くと響きにばらつきがあると感じる
- ローフレットは良いけどハイフレットに行くほど音が詰まったものに感じる
というような点をあぶりだすこともできます。
演奏に慣れていない時点でこれらをくまなく確認することは難しいものですが、ここでもいくつかのギターを弾き比べてみることで、自分の好みにあった音を見つけ出すことができるでしょう。
2. 他人に弾いてもらったときの音
次に、お店の人や同行してくれた友達などにアコギを演奏してもらい、リスナーとしてそのギターの音を聴き、響きを確認しましょう。
これは、上記で述べた「演奏者としてギターの真上から聴く音」ではなく「ギターの正面から受ける音」を確認することを意味します。
いうまでもなくこれから購入するアコギは、演奏者本人以外の人はギターの前面からその音を聴くことになります。
演奏内容や確認点は同じ
「リスナーとしての音の確認」においても、着目すべき点は既に述べた「演奏者としての着目点」と同じです。
上記で解説した「音の伸び」「ツヤ」「単音・コードの音」などについて、リスナーの視点から問題が無いかを確認しましょう。
3. エレアコの音(エレアコ仕様のアコギの場合)
最近は、いわゆる昔ながらのアコースティックギターに加えてエレアコ(エレクトリックアコースティックギター)仕様のアコギも普及してきています。
「テイラー」など、メーカーによってはそれを標準とするところもあり、サウンドを確認する際にはそのような観点も必要となります。
エレアコ仕様のアコギでは、生音だけでなく実際にアンプに接続し、スピーカーを通して出る音もあわせて確認しましょう。
エレアコは奥が深い
実際のところ、エレアコとしてのサウンドの確認は奥が深いものです。
というのも、そもそも生楽器として存在していたアコギをいろいろな技術によってエレキ化しているため、その構造によってスピーカーから出る音には生音以上にクセや特徴が生まれやすいからです。
「生音はいいけどエレアコとして聴いたらいまいち」ということも多々あり、またその際の判断基準も「エレアコとしてどれほど使用していくか」によって変わります。
確認すべき点は既に述べた生音におけるものと同じですが、この点のみを特に踏まえておくようにして下さい。
アコギの選び方「コンディション」編
アコギを選ぶ際には、「どのようなコンディションを持っているか」という点にも着目すべきです。
以下は、その中でも特にアコギ選びで失敗しないためのポイントとなる点です。
1. ペグのまわり具合
適当に対処してしまいがちですが、思いのほか大切なのが「ペグ」(以下画像の銀色の部分=ギター弦の張力を調整するための「ねじ」のようなもの)のまわり具合についての確認です。
ペグはギターのチューニングを左右する重要なパーツで、この作りが雑だとチューニングがすぐに狂ったり、チューニングがなかなか思い通りに合わないということにもなりかねません。
改めてチューニングしてみるのが効果的
ペグの状態を確認するために一番効果的なのは、試奏の際に整えてあったチューニングをあえて一度狂わせて、それを自らの手でもう一度チューニングしてみる、というやり方です。
あえてペグの巻きを大きく緩めて弦をだらんとさせ、そのうえで再度ペグを巻きつつ弦に張りを戻していくと、その過程でペグのスムーズな回転や、がたつきの有無などが確認できます。
お勧めなのは、一度高価なギターのペグをそのようにして確認してみることです。
それによって「質の良いペグの状態」を知ることができます。
ペグのメーカー名を品質の目安にする
ペグに刻印されているメーカー名を目安にするというのも、質を確認する意味で効果的です。
中でも以下はペグの有名なメーカーとして、一定の品質を保っています。
- ゴトー
- グローバー
- シャーラ―
- クルーソン
お店の方にメーカー名を確認してみても良いでしょう。
2. 傷が無いか、故障していないか
新たにギターを購入する以上、やはり傷や故障は避けたいものです。
まれに新品のギターにおいても小さなへこみがあったり、わずかな擦り傷がついてることがあるため、それらが無いかを確認しましょう。
特にボディの裏、またはヘッド部分は傷がつきやすいため注目すべきポイントです。
中古ギターの傷はある程度目をつぶる
中古のギターを選ぶ際には、ある程度の傷は避けられないものです。
とはいえ、演奏に支障をきたすような故障は問題があるため、そのような観点から確認が必要となるでしょう。
フレットが減ってないか
また、中古ギターにおいては「フレットの減り具合」にも着目するようにして下さい。
ギターを長く使っていく中で最も影響を受けやすいのがこの「フレット」で、弦を押さえて演奏するという性質上「フレットの減り・けずれ」は避けられないものでもあります。
前述した「ギター本体の傷」と同じく、中古のギターにおいてある程度のフレットの減りは許容すべきものですが、あまりにフレットが減っている場合には音程にも影響が出てしまうため見極めが必要です。
アコギの選び方「スペック」編
もうひとつ確認すべきはスペックについてです。
この辺りは、そもそも自分自身がどのようなものを求めるか、という点をあらかじめ明らかにしておき、そのうえで検討すべき内容ともいえます。
主に、以下について確認して下さい。
1. 値段
アコギを選ぶうえで、やはり値段は大きな判断基準となります。
いろいろなものと共通するように、やはり高価なアコギほどあらゆる面で質が高く、値段が安価になるほどギターの質もそれなりになっていきます。
「10万円」がひとつのボーダーライン
個人的な感覚では、「10万円」というところがアコギの品質を分けるボーダーラインだと感じています。
もちろんそれ以下の値段で質の良いアコギは沢山存在していますが、これは簡単にいえば「10万円出せば最低限信頼できる品質を持ったアコギを手にできる」ということです。
また、中古ギターでも状態の良いものが多く出回っているため、定価10万円クラスのものを7~8万円程度で入手する、というのも方法の一つです。
2. メーカー
前述した「値段」とあわせて考慮したいのが「メーカー」です。
老舗で有名なメーカーほど質が高く弾きやすいアコギが多いものですが、もちろんハンドメイド系のマニアックなメーカーにも質の高いギターは多く存在しています。
「国内」「海外」という分け方
アコギのメーカーを考える際には、「国内」「海外」という基準が一つの目安となります。
以下は、それぞれにおいて代表的なメーカーをまとめたものです。
- ヤマハ
- K.ヤイリ
- タカミネ
- ギブソン
- マーチン
- テイラー
- オベーション
この中で、国内メーカーは比較的安価で、海外メーカーは高価、という傾向にあります。
初心者で、かつなるべく安価で質の良いアコギを探している場合には、国内メーカーのアコギをお勧めします。
3. ボディの色、形などのデザイン
もちろん、外観(デザイン)もアコギを選ぶ際に重視したい点です。
記事前半で述べた通りアコギにはさまざまな形をしたものがあり、またボディの色もモデルによってさまざまです。
カッタウェイか否か
高音弦側のハイフレットがへこんでいる(えぐれている)状態のボディを「カッタウェイ」と呼びますが、ギターを形状で選ぶ際には大きく「カッタウェイか否か」という点が考慮できます。
これは、ハイフレット側を押さえやすくするために設計されたもので、主にそのような演奏に使用することを目的としています。
ボディの色は「ナチュラル」「単色」「サンバースト」など
アコギのボディの色には、大きく分けて、
- ナチュラル(色なし)
- 単色(一つの色で塗装)
- サンバースト(グラデーション的な塗装)
という三種類があります(以下画像)。
(アコギには木材の色をそのまま前面に出したナチュラル塗装のギターが多いです)
それぞれに違った良さがありますので、デザインで選ぶ際の目安にしてみて下さい。
4. エレアコか、そうでないか
アコギを選ぶ際には「エレアコ仕様か否か」という点も重視できます。
これは、そのアコギを使って実際にどのようなことをしていこうと考えているかによって選ぶべきものが変わる点でもあります。
マイクで音を拾うのは案外大変
アコースティックギターは生楽器であるため、もちろんギターの前にマイクを立てることでその音を収音することができます。
とはいえ、アコギの音をマイクで拾うことは思った以上に大変で、状況によっては音が痩せてしまい、迫力の無いものになってしまうことも多いものです。
自分自身の活動予定を踏まえて選ぶ
上記のような不便さを解消するためにエレアコは開発され現代に至っているわけですが、特にアコギを使って以下のような活動をしたいと考えている際には、エレアコ仕様のアコギを選ぶことが検討できます。
- ライブ会場で音響設備を使って演奏する
- 機材を使ってアコギの音をネット配信をする
- レコーディングをする
既に述べた通り、これらをマイクによって行うことも可能です。
反面で、エレアコはケーブル一本をつないでしまえばすぐにその音を収音できてしまうため、利便性を考慮するとエレアコで対応した方が作業を進めやすい局面も多いです。
この点は、自分自身がどのようなスタイルを求めるかという点にもよるところです。
まとめ
ここまで失敗しないためのアコギの選び方について解説してきました。
やはり、購入する以上は長く愛着を持ってアコギを弾き続けたいものですし、それが演奏の上達にもつながります。
是非慎重に検討し、お気に入りの一本を選んでみて下さい。
店員さんのお勧めするギターも、候補に入れる価値があるでしょう。
アコギ比較記事
冒頭でもご紹介した通り、以下のページでは有名メーカー三社のアコギを所有経験から比較しています。
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