こちらのページでは転調のパターンとそのサウンドを体感するために、邦楽に限定して、実際の曲で行われている転調の実例をまとめました。
※転調のパターンごとに整理しています。
曲の終盤で転調するパターン
まず、日本のポップス・ロックの中で最も多いのが曲の終盤で半音または全音高いキーに転調するパターンです。
沢山の実例がありますが、以下にできるだけ多くその例を挙げてみます。
「Story(AI)」
- 転調ポイント:3分56秒あたり
- 転調前:「キー=Cメジャー」
- 転調後:「キー=Dメジャー」
終盤転調の典型的なパターンです。
転調のポイントで、伴奏にメロディを乗せたまま全音高いキーに転調しています。
「愛をこめて花束を(Superfly)」
- 転調ポイント:3分56秒あたり
- 転調前:「キー=Gメジャー」
- 転調後:「キー=Aメジャー」
こちらも全音転調のパターンです。
「First Love(宇多田ヒカル)」
- 転調ポイント:3分13秒あたり
- 転調前:「キー=Gメジャー」
- 転調後:「キー=A♭メジャー」
この例のような半音の転調は、使われる音がガラッと変わるためインパクトがあります。
「名もなき詩(Mr.Children)」
- 転調ポイント:4分31秒あたり
- 転調前:「キー=Gメジャー」
- 転調後:「キー=A♭メジャー」
桜井さんも、定番の手法として曲終盤における半音転調をよく活用します。
「HANABI(Mr.Children)」
- 転調ポイント:4分13秒あたり
- 転調前:「キー=D♭メジャー」
- 転調後:「キー=Dメジャー」
この例のように、半音キーが上がる部分にそのままメロディが乗ると音の切り替わりがより明確になります。
「Stand By You(Official髭男dism)」
- 転調ポイント:2分56秒あたり
- 転調前:「キー=G♭メジャー」
- 転調後:「キー=Gメジャー」
比較的新しい曲にも、同じようにこのような手法は多く見られます。
「アゲハ蝶(ポルノグラフィティ)」
- 転調ポイント:5分43秒あたり
- 転調前:「キー=Aマイナー」
- 転調後:「キー=B♭マイナー」
この例のように、マイナーキーの曲でも半音転調は効果的です。
「サウダージ(ポルノグラフィティ)」
- 転調ポイント:3分18秒あたり
- 転調前:「キー=Eマイナー」
- 転調後:「キー=Fマイナー」
前述した「アゲハ蝶」と同じく、突然半音高いキーに上げてしまうことで半音転調の意外性をより強く演出することができます。
「地上の星(中島みゆき)」
- 転調ポイント:3分35秒あたり
- 転調前:「キー=Dマイナー」
- 転調後:「キー=D#マイナー」
こちらもマイナーキーにおける半音転調のパターンです。
「真夏の夜の夢(松任谷由実)」
- 転調ポイント:3分38秒あたり
- 転調前:「キー=Cマイナー」
- 転調後:「キー=C#マイナー」
こちらもマイナーキーです。
前触れがなく、突然転調するような構成になっています。
「群青日和(東京事変)」
- 転調ポイント:2分14秒あたり
- 転調前:「キー=E♭メジャー」
- 転調後:「キー=Eメジャー」
この例は、間奏後のブロックにおいて区切りのいいタイミングで転調しているケースです。
「Everything(MISIA)」
- 転調ポイント:5分35秒あたり
- 転調前:「キー=D♭メジャー」
- 転調後:「キー=Dメジャー」
こちらも同じく間奏後に転調しているケースです。
間奏の締めくくりの部分で、はっきりと半音高いキーに転調したことが感じられます。
サビで転調するパターン
転調の実例としてもう一つよく見かけるのが、サビのみで別のキーに切り替わるパターンです。
前述した曲終盤における転調は半音または全音高いキーへの転調が定番となっていますが、こちらはさまざまなアイディアによって転調が実施されています。
「パプリカ(米津玄師)」
- 転調ポイント:0分58秒あたり
- 転調前:「キー=Fメジャー」
- 転調後:「キー=Dメジャー」
この曲は、始まりから「キー=Fメジャー」で曲が展開し、サビにおいて「Dメジャー」のキーに転調します。
この「Fメジャー」に対する「Dメジャー」は「平行調同主調」と呼ばれるキーです。
※「Fメジャー」の平行調「Dマイナー」→その同主調「Dメジャー」
ポイントとなるのは、サビをトニックコードの「D」で始めていないという点で、これにより無理やりな雰囲気を抑え、さりげなく転調を実施するような効果を生んでいます。
また、この転調は俗称として「短3度転調」などとも呼ばれています。
▼関連ページ
「短3度転調」の詳細と実例について(同主調平行調または平行調同主調への転調)
「ALONE(B’z)」
- 転調ポイント:1分30秒あたり
- 転調前:「キー=Cメジャー」
- 転調後:「キー=Aメジャー」
こちらも「Cメジャー」に対する「Aメジャー」で、「平行調同主調」への転調に分類できます。
※「Cメジャー」の平行調「Aマイナー」→その同主調「Aメジャー」
こちらはサビが「A」のコードから始められているため、転調したことが比較的はっきりと感じられます。
「シングルベッド(シャ乱Q)」
- 転調ポイント:2分30秒あたり
- 転調前:「キー=Eメジャー」
- 転調後:「キー=C#メジャー」
こちらの曲でも、平行調同主調への転調が実施されています。
※「Eメジャー」の平行調「C#マイナー」→その同主調「C#メジャー」
「愛のうた(倖田來未)」
- 転調ポイント:0分54秒あたり
- 転調前:「キー=Cメジャー」
- 転調後:「キー=E♭メジャー」
こちらの例は「Cメジャー」から「E♭メジャー」への転調ということで、「同主調平行調」への転調に相当します。
※「Cメジャー」の同主調「Cマイナー」→その平行調「E♭メジャー」
曲終盤における転調のように、突然キーが切り替わるためその部分が特徴的なサウンドを生み出しています。
「ZERO(B’z)」
- 転調ポイント:2分13秒あたり
- 転調前:「キー=Aマイナー」
- 転調後:「キー=Bマイナー」
こちらの曲では、曲終盤における全音高いキーへの転調と同じような形で「Aマイナー」から「Bマイナー」へと転調しています。
サビの後には何事もなかったかのように元のキーに戻るところも特徴的です。
特殊なパターン
上記でご紹介した二つのパターン以外に、曲途中で転調する特殊なケースもまれに見かけられます。
「麦の唄(中島みゆき)」
- 転調ポイント:0分36秒あたり
- 転調前:「キー=B♭メジャー」
- 転調後:「キー=Bメジャー」
この曲における転調はポップス・ロックにおいてかなり特殊なもので、Aメロの中で突然キーが半音上がる構成となっています。
このような手法はクラシックなどでも見かけることができ、そのような観点から作られた曲とも解釈できます。
その他のパターン
こちらには用意できていませんが、これ以外にもBメロのみで一時的に別のキーに切り替わったり、曲の展開と共に何度か転調を繰り返してくパターンなどもあります。
- Rain(秦基博)
- TSUNAMI(サザンオールスターズ)など
- 終わりなき旅(Mr.Children)
- CAN YOU CELEBRATE(安室 奈美恵)
- 夜に駆ける(YOASOBI)
まとめ
ここまで、転調する曲の実例についてまとめてみました。
実際に音源を聴いてみると、転調によるサウンドの変化が体感できるはずです。
こちらに挙げた以外にも、さまざまな曲に転調は活用されているため、コード譜を分析しながらその効果を体感してみて下さい。
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