コード進行がすごい曲(厳選8曲)の解説|どの部分がどうすごいのかを詳しく分析します。

コード進行好きの内山です。

作曲や弾き語りなどを通してコード進行の一般的なパターンを理解すると、今度はそれと反対に、個性を出すための奇抜なコード進行を知りたくなってしまうものです。

私自身も、作曲の先生という立場上いろいろな曲をそのような視点から聴いてしまうことが多く、人からも

「コード進行がすごい曲ってどんなのがありますか?」

というような質問を受けることがあります。

このページではそんな素朴な疑問をもとに、私がこれまでに見てきた「コード進行がすごい(特徴的・個性がある)曲」をいくつか挙げてみます。

どのあたりがどうすごいか、という点も詳しく解説しますので、作曲のネタとして参考にしてみて下さい。

※なお、曲は「すごい度数」という独自の目安によって分類しています。

※また、コード進行の解釈は通常の音楽理論的観点によるもので、もちろん切り口を変えれば違った見方もできるということをご理解ください。

すごい度数:☆

「もう恋なんてしない(槇原敬之)」


本作は失恋をテーマにした名曲として知られていますが、親しみやすいメロディと曲構成の中に、やや「すごい」ポイントが隠れています。

セカンダリードミナント的手法

もともと、この楽曲のキーは「E」で、コード進行は基本的に以下の「Eダイアトニックコード」を中心として展開されていきます。

Eダイアトニックコード
E,F#m,G#m,A,B,C#m,D#m-5

その中で、「すごい」ポイントはBメロ冒頭部分にある

C#m7→F#7→B

というところで、この部分における「F#7」は本来「Eダイアトニックコード」では「F#m(またはF#m7)」になるべきものです。

それを踏まえると、この「F#7」は次のコード「B」に向かって「V7→I(F#7→B)」の形を取る「セカンダリードミナント」だという解釈ができます。

※関連ページ セカンダリードミナントコード|成り立ちとその表記などをわかりやすく解説

キーそのものが変わっているような雰囲気

上記のみを考えれば一般的によく見かけるノンダイアトニックコードの手法だといえますが、特筆すべきは直前の「C#m7」から、いわゆる「ツーファイブワン」の形によって「B」まで到達し、そこで流れが完結している点です。

つまり、この部分だけを切り取ると一時的にキーが「B」に変わり、そこでの「IIm7→V7→I」のような雰囲気が感じられる、ということです。

Bダイアトニックコード
B,C#m,D#m,E,F#,G#m,A#m-5

(上記「Bダイアトニックコード」から、「IIm7→V7→I」は「C#m7→F#7→B」だということがわかります)

このように、「F#7」を単なるひとつの個性的なコードだと感じさせず、「瞬間的な転調」のような雰囲気を出すためには、メロディを然るべきところで区切ったり、リズムによってそれを演出することが求められます。

上記で解説したように、

「セカンダリードミナント」のようでいて、それにとどまらずキーそのものが変わっているような雰囲気が生まれている

という点に、このコード進行(およびその表現の仕方)のすごさを感じました。

※関連ページ ツーファイブとは?(概要と基本的な成り立ち、活用方法、マイナーキーにおける例など)

「もう恋なんてしない(槇原敬之)」コード譜

「愛のうた(倖田來未)」


上記「もう恋なんてしない」がコードの聴かせ方のすごさを持ったものであったのに対し、こちらの楽曲はコードの選ばれ方そのものに珍しさ(=すごさ)があります

「F#m7-5」の異質なムード

本作のキーは「C」で、こちらも基本的には「Cダイアトニックコード(以下)」を中心としてコード進行が組み立てられています。

Cダイアトニックコード
C,Dm,Em,F,G,Am,Bm-5
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この曲はサビで転調が実施されており、厳密には、その部分では「キー=E♭」の「E♭ダイアトニックコード」が活用されます。

この曲のコード進行における「すごい」ポイントは、冒頭の

C→F#m7-5

の部分で、ここで扱われている「F#m7-5」のコードはダイアトニックコードに含まれていない「ノンダイアトニックコード」にあたるものです。

「コードの選ばれ方」の理論的解釈

数多くあるコード進行中でも、この「C→F#m7-5」という流れは本当に珍しく、この部分が上記で述べた「コードの選ばれ方そのもののすごさ」を指すものです。

これを理論的に解釈すると、以下のようになります。

同じような構成音を持っているコード

上記「F#m7-5」は、ノンダイアトニックコードでありながらダイアトニックコード内のいくつかのコードと同じような響きを持っています

それを確認するために、以下に「F#m7-5」と、あわせて「Cダイアトニックコード」の六番目のコード「Am」四番目のコード「F」の構成音をそれぞれ示します。

  • 【F#m7-5】ファ#・ラ・ド・ミ
  • 【Am】ラ・ド・ミ
  • 【F】ファ・ラ・ド

これらを見比べると、「F#m7-5」は「Am」「F」と似た構成音を持っていることがわかります。

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特に「Am」と「F#m7-5」は、同じような構成音によって成り立っています。また「F」を四和音のダイアトニックコード「FM7」にすることで構成音は「ファ・ラ・ド・ミ」となり、より「F#m7-5」に近づけることもできます。
置き換えによりノンダイアトニックコードを導く

すなわち、これは

「F#m7-5」は「Am」や「F」に響きが近い

ということを意味し、

ここから、

  • 「C→F#m7-5」≒「C→Am」
  • 「C→F#m7-5」≒「C→F」

のような置き換えができることになります。

そして、その部分のコード進行が

C→F#m7-5→F

のようになっていることを考えると、

コード「F」に向かう、ベース音「F#→F」という半音の流れを作るために、「Am」や「F」と響きの似ているコード「F#m7-5」を活用した

と解釈することができます。

このように、

  • 響きが似ている
  • ベースラインをスムーズにつなげる

というような観点から特殊なノンダイアトニックコードを置くことによって、このように個性的なコード進行を生み出せることがこの曲からわかります。

「愛のうた(倖田來未)」コード譜

すごい度数:☆☆

「川べりの家(松崎ナオ)」


いわゆるアコースティックな響きを持った味わい深い楽曲である本作にも独特なコードの流れが含まれており、こちらに加えさせていただきました。

ノンダイアトニックコード「Am7」

この楽曲の冒頭のコード進行は

D→Am7→D→Am7

という構成になっており、そこから「キー=D」を予測してしまいますが、「Dダイアトニックコード」には以下の通り「Am7」が含まれていません

Dダイアトニックコード
D,Em,F#m,G,A,Bm,C#m-5

この「Am7」はドミナントコード「A」をマイナーセブンスの形にしたもので、その多くは「キー=D」において

Am7→D7→G

のように、四番目のコード「G」へ紐づく流れを作るために活用されます

一方で、ここでは淡々と

D→Am7→D→Am7

の構成が繰り返されており、上記のような一般的な流れが無いことからその異質さが際立ちます。

「キー=C」でも説明がつきづらい

曲はその後展開し、

  • FM7→Em7→Dm7→C
  • CM7→Am7→FM7→Em7

のような流れをむかえることから、ぱっと見ではキーが「C」になっているように感じます。

そこで、前述した「Am7」が「キー=C」にも含まれていることを思い出し、

もともと「キー=D」ではなく、「キー=C」だったのではないか?

と考え直すこともできますが、そうすると今度はその部分で扱われている「D」のコードの説明がつきづらくなります…

どっちつかずなキーの雰囲気

この楽曲のコード進行のすごさは「Am7」というコードのどっちつかずな雰囲気と、そこから「キー=C」へ転調していくことでキーの中におけるコード進行の位置づけがあやふやになっていく点にあります。

実際に音源を聴きながらコードをなぞってみると、メロディラインと相まってコード進行の流れが異質なものに感じられ、キーがねじ曲がっているような印象を受けます。

このように曲の中でキーをいくつか切り替え、そこに説明のつきづらいコードを組み込むと、コード進行の響きそのものに違った意味を持たせることもできます。

「川べりの家(松崎ナオ)」コード譜

「やさしさに包まれたなら(松任谷由実)」


「すごい」コード進行を考えるうえでよく例に挙げられるのがユーミンのいくつかの楽曲で、なかでも本作は広く一般的に認知されていながらも特徴的なコードの流れを持っていることで知られています。

モーダルインターチェンジ的な手法

この楽曲のコード進行における「すごい」ポイントはAメロ冒頭の部分に含まれています。

本作のキーは「F#」で、以下はそのダイアトニックコードを一覧にしたものです。

F#ダイアトニックコード
F#,G#m,A#m,B,C#,D#m,Fm-5

これを踏まえて冒頭のコード進行(以下)を見てみると、一部のコード(※赤字部分)がダイアトニックコード以外のものであることがわかります。

F#→G#Fm→A#m→D#m

これは、一般的には「モーダルインターチェンジ」と呼ばれる手法によって解釈できるものです。

※関連ページ モーダルインターチェンジの解説(モーダルインターチェンジとは何か?その使用方法や効果など)

違うモードによって導かれたコード

一般的なメジャーダイアトニックコードは「イオニオン」と呼ばれるモード(音の並び方)によって成り立っています。

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ここでの「F#ダイアトニックコード」は「F#イオニアン」というモードによって成り立つもの、と言い換えることができます。

そのうえで、ここでは上記「モーダルインターチェンジ」の手法を活用することによって、「F#リディアン」と呼ばれるモードから以下のコードのグループを導くことができます

F#,G#,A#m,Cm-5,C#,D#m,Fm

前述した曲冒頭のコード進行(以外)を改めて確認してみると、そのすべてがここに含まれていることがわかります。

F#→G#→Fm→A#m→D#m

つまり、本作の冒頭のコードは通常のメジャーダイアトニックコードではなく、「リディアン」と呼ばれるモードによって導かれたコードによって成り立っている、ということです。

広い範囲にわたって解釈できるモーダルインターチェンジ

モーダルインターチェンジは、通常ポップス・ロックにおいて数個のコードのみにおいて活用されることが多いです。

これが、きちんとした形で広い範囲にわたって扱われていることは稀で、本作のコード進行のすごい点はそのようなところだといえるでしょう。

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また、実際のところモーダルインターチェンジは後付け的に解釈されることもあり、ユーミンがそれを狙ってやったのか、または響きを優先させて結果的にこのような形になったのか、その真相はわかりません。

「やさしさに包まれたなら(松任谷由実)」コード譜

「麦の唄(中島みゆき)」


アイリッシュな雰囲気にアレンジされた本作は、「転調の実施方法」に特徴があります。

曲冒頭における半音転調

この楽曲は、もともと「B♭」のキーで始まります。

B♭ダイアトニックコード
B♭,Cm,Dm,E♭,F,Gm,Am-5

上記ダイアトニックコードを活用しながら、曲冒頭のコード進行も以下のような形で展開していきます。

B♭→E♭→B♭→F→Gm…

ここまではよくある形なのですが、その後Aメロの途中で曲は半音上のキーに転調し、キーが「B」に変わります

以下は「Bダイアトニックコード」のコード一覧です。

Bダイアトニックコード
B,C#m,D#m,E,F#,G#m,A#m-5

前述した「キー=B♭」と比べると、コードの種類が大きく変わっていることがわかりますが、このように半音の転調が曲の冒頭に仕込まれることがあまりなく、そのような点で珍しいコード進行だといえます。

転調の実施方法でコード進行の個性を出す

上記で解説しているように、この曲における「すごい」は、「コード進行」というより「転調のさせ方」にあるといえます。

曲はこれ以降転調後の「キー=B」で展開していき、またツーコーラス目のAメロで「B♭」に戻るなど、特徴的なキーの転換を繰り返していきます。

このページでテーマとしている「特徴的なコード進行」を組み込むにあたり、本作のように転調の実施方法に個性を持たせることは一つのヒントとなりそうです。

「麦の唄(中島みゆき)」コード譜

すごい度数:☆☆☆

「SAY YES(CHAGE and ASKA)」


これ以降の楽曲は、主に細かい転調にコード進行のすごさがあります。

中でも、本作は歴史に残るヒット曲でありながら、特徴的なコード進行を持っていることで知られています。

ノンダイアトニックコードのさまざまな形

この楽曲のキーは「E♭」で、他の曲と同様に、前半では以下の「E♭ダイアトニックコード」を基本的に扱いながらコード進行が展開されていきます。

E♭ダイアトニックコード
E♭,Fm,Gm,A♭,B♭,Cm,Dm-5

コード進行が特徴的に変形していくのはAメロの終盤~Bメロ辺りで、ここではダイアトニックコードに無いさまざまなコードが組み込まれています。

以下はその一例です。

  • B♭m7→E♭→A♭
  • Fm7-5→B♭m7→E♭
  • D7→Gm7→Cm7→F7

ダイアトニックコードを超越した流れ

この曲のコード進行がすごいのは、短い転調のようなコードの流れを緻密につなげ、一般的なダイアトニックコードの流れを超越した特徴的な流れを作っているところです。

例えば、以下の短いコードの組み合わせは、それぞれのキーを感じさせるような響きを持っています。

  • 「D7→Gm7」=キーGマイナー
  • 「B♭m7→E♭」=キーA♭メジャー
  • 「Cm7→F7」=キーB♭メジャー

それぞれは、前述した「セカンダリードミナント」やその発展形のように響くときもあれば、そうは感じないほどキーはねじれて響くときもあります

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ひと言では理論的な解釈が難しいほどいろいろなコードが混ざり合っていますが、結果としてBメロの終盤では元のキー「E♭」にきちんと回帰します。

個人的には、そのひとつひとつを正確に紐解いて、細かく解釈していきたいほどすごいコード進行を持った曲だと感じています。

「SAY YES(CHAGE and ASKA)」コード譜

「晴れたらいいね(DREAMS COME TRUE)」


この楽曲も、巧みな転調によってリスナーとしてのキーの認識があやふやになってしまうような、すごい構成を持っています。

ワンコーラスに二度の転調

楽曲冒頭は「キー=C」として、以下のような「Cダイアトニックコード」に沿ったコードによって曲が展開していきます。

C→Em→C→F→Dm7

ポイントとなるのはAメロの終盤~Bメロで、ここでは以下のようなコード進行によって明確に「E♭」のキーへと転調していることがわかります

E♭M7→Gm7→Cm7

この「短3度上」への転調はポップス・ロックではよく見かけられるものです。

※関連ページ 「短3度転調」の詳細と実例について|同主調平行調または平行調同主調への転調

そこから、この曲では間髪入れずさらに長2度上のキー=「F」へ転調し、コード進行は

F→Am7→Gm7→Am7

のように展開していきます。

Fダイアトニックコード
F,Gm,Am,B♭,C,Dm,Em-5

つまり、もとあった「キー=C」からワンコーラスのうちに二度の転調を挟み、キーが「F」へと切り替わっているということです。

転調の流れやメロディとの兼ね合いもすごい

楽曲の中盤におけるBメロなどで転調をするパターンはよくあるものの、本作のように短い転調を繰り返して二段階でキーが変わるケースは稀です。

また、転調をするためのコードの流れやメロディとの兼ね合いも独特で、このあたりは実際に注意して楽曲を聴いてみるとそのすごさが体感できるはずです。

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ワンコーラス終了後に元の「キー=C」に戻りますが、その部分ではスムーズな流れが演出されており、キーを戻す一つのパターンとして参考になります。

「晴れたらいいね(DREAMS COME TRUE)」コード譜

「ここではない、どこかへ(GLAY)」


最後にご紹介する本作でも、細かい転調による曖昧なキーの感覚と、コード進行の不思議な響きを感じることができます。

クリシェが盛り込まれたAメロ

楽曲冒頭のキーは「A」で

  • A→AM7→A7
  • Bm→BmM7→Bm7

のようなクリシェの形を中心としてコードは展開していきます。

Aダイアトニックコード
A,Bm,C#m,D,E,F#m,G#m-5

上記で挙げたコード進行は、一番目のコード「A」と六番目のコード「Bm」を徐々に変化させていく形で、クリシェの定番のパターンです。

※関連ページ クリシェ(1)概要・特徴的なコード進行を作るための典型的な使用例

「いつのまにか転調している」パターン

その後、Bメロではいつのまにか

G→A→D→A→Bm

のようなコードの流れに発展しますが、これは「キー=D」のダイアトニックコードを使ったものとして解釈できます。

Dダイアトニックコード
D,Em,F#m,G,A,Bm,C#m-5

本作のコード進行の「すごい」ポイントは、このように「いつのまにか転調している」というような点にあります。

Bメロは結果としてコード「D」に着地し、「キー=D」であることがその時点で初めて明確になります

サビでも「いつのまにか」が実施される

そこから、キーはまたすぐに元の「A」に戻り、サビは「キー=A」として改めて展開していきます。

この「仕切り直し」のような構成も、実際に楽曲を聴くと不思議な響きにつながっていることがわかります。

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サビではさまざまなコードが組み込まれ、その分「キー=A」としての響きは若干薄れていますが、このようなコードのアレンジは他の楽曲でもよく見かけることができます。

サビのコードはスムーズに流れていき、ワンコーラスはそのまま「A」のキーで作り込まれるかと思いきや、結果として

F#→Bm→Gm→D

のような形で、また「D」のコードに着地してコード進行が締めくくられます

これがBメロ終盤に続く、二つ目の「いつのまにか転調している」ポイントです。

関係調への転調はスムーズ

本作における「キー=A」と「キー=D」は、「主調」「下属調」にあたる関係で、これらは音使いが似ていることから「関係調」と呼ばれるグループに属するものとされています。

その分、転調の実施が容易で、ここでの例のような「いつのまにか転調している」を演出しやすいともいえます。

このページのテーマである「すごいコード進行」を作るにあたり、この「関係調への転調」もまた、ひとつのアプローチとして活用できるはずです。

※関連ページ 転調(1)転調の概要(転調とは中心音とそのグループを変えること)と調の種類

「ここではない、どこかへ(GLAY)」コード譜

まとめ

ここまで、「コード進行がすごい曲」をいくつかまとめてみましたが、もちろんここに収まらないほどいろいろな曲で特徴的なコード進行が活用されており、学べることはまだまだ沢山あります

日常的にコード譜を分析するクセをつけ、そこからいわゆる「普通ではない」コード進行のテクニックを探っていくと、自分の曲に活かせるものも見つかるかと思います。

それを通して、これらのさらに上をいくような個性のあるコード進行を是非生み出してみて下さい。

転調やモーダルインターチェンジの知識は「すごいコード進行」を作る助けとなるはずです。