より良い曲を生み出していくためには、日常的な作曲とあわせて曲の質を高めるための知識を学んでいけると理想的です。
そして、その知識の筆頭として多くのひとがすぐにイメージできるのが「音楽理論」であるはずです。
もちろん、質の高い作曲を行ううえで音楽理論の知識も欠かすことはできませんが、個人的にはそれよりも先に学ぶべきものがあると考えています。
それが、
「曲をどう組み立てるべきか/どう展開させるべきか」
という点を体系的にまとめた、いわば「曲の構成力」を身につけるための知識です。
こちらでは、その点について詳しくご紹介していきます。
作曲力は構成力
そもそも私は、
「作曲ができる力」=「曲を構成させることができる力」
だと捉えています。
私の経験を踏まえると、良い曲を作るうえでは音楽理論の知識やそれを駆使できる技術よりも、曲を構成させる技術を身につける方がより意味があります。
メロディやコードをどう聴かせるか
音楽理論で扱われる「メロディ」や「コード」「リズム」などが曲を成り立たせる要素だとしたら、上記で述べている「構成」はそれを支えるものです。
理論が「素材」で、構成が「器」のようなものだと考えると理解しやすいかもしれません。
例えば、部分的にすごく良いメロディやコード進行を作れたとしても、その前後が流れがいまいちだと良さは半減してしまいます。
またその反対に、すごく単純なメロディやコードの展開でも、前後の流れが良かったり、聴かせ方に意図を込められたりすると、それらをすごく魅力的なものとして演出することができます。
つまり、理論的な解釈やメロディやコード進行の単体の質はさておき、
「それらをどう聴かせるか?」
という観点を持つのが大事だということで、その点に重きを置いて作曲を進められるほどに曲の質は高まっていきます。
これを踏まえると、理論的な知識をそこまで身につけなくても構成力さえきちんと身につければ良い曲は十分に作れるようになる、ということがわかります。
構成力の身につけ方
そのうえで、ではその「曲の構成力」をどのようにして身につければよいか、という点が気になるはずですが、これについては、私がいろいろなところで述べているとおり「既存の曲を分析すること」が最も効果的です。
曲を構成の観点から紐解くことを目的として、ヒット曲や自分がいいなと思う曲の内容を細かく確認していくと、曲構成の基本的なパターンや応用的な手法が理解できるようになります。
構成面から紐解き比較する
構成力を身につけるための具体的な曲分析の方法としては、
- 「Aメロ」「Bメロ」などと呼ばれるブロック(セクション)の展開・構成を明らかにする
- それぞれのブロックでどのようなことが行われているのかを明らかにする(それぞれのメロディやコード進行などの要素を紐解いて比べる)
- 「A→B→サビ」形式でサビに向かって盛り上がっていく場合には、その盛り上がりがどう演出されているかを確認する
などのやり方が考えられます。
特に、各ブロックにおいてメロディやコード・リズムなどがどう配置されていて、前後関係を含めそれらがどう組み立てられているかを考えつつ比較する行為は、曲構成の理解を深めるのに有効です。
例えば、
- Aメロのメロディは単調なリズムによって成り立っている
- Bメロのメロディは複雑なリズムによって成り立っている
というような構成があった場合、
Aメロのメロディがシンプルだから、Bメロのメロディの複雑さがより際立つのかな
という解釈ができたり、また
- ABメロはコードが次々と切り替わっていく
- サビはコード4つから成り立つコード進行がひたすら繰り返される
というような構成が確認できたら
サビのコード進行だけが繰り返されることで親しみやすい雰囲気が感じられるなあ
などとそれらを捉えることもできます。
もちろん、ここで挙げたのはあくまでも一例で、
- メロディ
- コード
- リズム
という要素別の分類や、それぞれの要素をさらに紐解き、
- 置き方
- 長さ
- 大きさ
- 繰り返し
などによって細分化しなから分析することも効果的です。
分析内容を吟味することが大切
ここでポイントとなるのは、
「分析した内容を自分なりに吟味する」
という姿勢です。
〇〇がこうだから、自分にはここが△△に聴こえる
というように、構成を自分なりに把握しつつ解釈することが大切です。
それを繰り返すことで、曲の展開や構成に関して自分なりの判断力や分析力が身につき、結果としてそれらが作曲を進めるうえでの判断力や分析力にそのままつながっていきます。
例えば、あるメロディを作っていて、それが少しいまいちだと感じるときに、
直前の流れが〇〇だから、ここはもっと△△にするべきかな
と、構成面からそのメロディをどう組み立てたらよいかが判断できるようになります。
他にも、例えば
ここのコードの流れが△△だから、ここにひとつ〇〇のようなコードが加わると聴きごたえが生まれそう
というように、日常の曲分析で身につけた構成力によって、どう対処すべきかが自然と考えられるようになるのです。
これは、より簡単にいえば「構成的な観点から曲を紐解くこと」を習慣にすることで自分の作曲でもそのような構成的観点を持てるようになる、ということです。
分析の幅を広げて深く吟味する
そもそも、曲構成の方法には明確な答えがありません。
そのため、自分なりにいろいろな曲を分析して、自分なりに内容を吟味しながら効果的な方法を模索する必要があります。
それを踏まえると、
- なるべくいろいろなアーティストのいろいろな曲を分析する
- 「分析の質」を重視しつつそれぞれを深く吟味する
という点が大事だといえます。
曲構成のいろいろなパターンを知るほどに、自分の中での選択肢が増え、また必然的に構成力が身につくことでさまざまなパターンに対応できるようになっていきます。
それが、結果として「曲構成」を意識して作曲を行う力につながっていきます。
まとめ
冒頭でも述べた通り、個人的には音楽理論よりも「曲構成」の知識を深める方が良い曲を作るうえで有益だと考えています。
また、単に「構成力」といわれても漠然とした印象を受けてしまうはずですが、上記で述べた通り質の高い曲分析をたくさんこなしながら自分なりに吟味を続けることで、やるべきことが必然的に見えてきます。
もちろん、ただ曲分析をするだけでは決して作曲は上手くならないため、やはり「作る」という点は意識しながら、分析で得たものを自分の作曲に活用すべきです。
現在、より良い曲を作るためヒントを探しているひとは、ぜひこのあたりを参考にしながら作曲活動に取り組んでみて下さい。
ポップス・ロック作曲の上達につながる「曲分析ガイドブック」について知る
作曲がぐんぐん上達する「曲分析ガイドブック」のご紹介ページ