こちらのページでは、サビのメロディの作り方について既存の曲を例に挙げながらそのパターンをいくつか考えていきます。
現在サビが思いつかず苦労している方は、是非これらのアイディアを参考にしてみて下さい。
目次
サビメロディ本体の作り方
1. 曲中の最高音を盛り込む
まず、サビのメロディに求められる要素として真っ先に考えられるのが「曲の中での最も高い音をサビに盛り込む」というアイディアです。
リスナーは
「盛り上がり=音が高くなる」
というような認識を持って曲を聴いているもので、その印象にあわせてサビを高い音によって作り込むのがこのアイディアの基本的な方針です。
例:「栄光の架橋(ゆず)」
この楽曲におけるサビは「1分33秒」あたりですが、それ以前のA・Bメロが比較的低い音によって歌われているところ、サビのメロディではより高い音へと音域を広げていきます。
最高音はサビ終盤にある
「えいこうのかけはしへと」
の赤字部分となっており、サビを締めくくる部分にこの最高音を持ってくることで、サビをより印象深いものとして終わらせることができていると感じます。
また、そもそもこの楽曲のサビ冒頭
「(い)くつもの」
というフレーズは最高音半音下の音から始められるほど高い音で構成されており、サビが高音域によって作られていることがよくわかります。
サビのメロディを作るうえでは、まずこの例のように「高い音を多く盛り込む」という意識を持つと、いわゆる多くの人が想像できるサビらしい雰囲気をそこで演出できるはずです。
2. サビメロディ全体の音域を広げる
次に、前述した「最も高い音を盛り込む」というメロディの作り方とあわせてポイントとなるのが「音域を広げる」という観点です。
例:「HANABI(Mr.Children)」
この例ではサビが「1分45秒」あたりから始まりますが、ここでも曲中の最高音にほぼ近い音が盛り込まれています。
特筆すべきは「1分56秒」あたりにある
「もういっかい・もういっかい」
という部分で、この赤字の箇所はそれまでに聴くことができたA・Bメロに含まれている曲の最低音とあまり変わらないほど低い音です。
つまりサビのメロディには、曲における最高音と最低音にそれぞれ近い音が両方盛り込まれていて、それによって広い音域の変化を演出できている、ということがいえます。
ここからリスナーはそのダイナミクスを感じ、それを通して広がりのある雰囲気や壮大な印象を与えることができるのです。
「高い音」「低い音」のそれぞれは、両者が互いを引き立てるように働くため、それぞれがより際立って聴こえるような効果も持ちます。
サビのメロディを作りこむうえでは、単に「高い音を盛り込もう」と考えるのではなく、この例のように「広い音域で作り込もう」という意識が求められます。
3. 同じ高さの音を連続させる
サビメロディの作り方として次に挙げられるのが、「同じ音を連続させる」というアイディアです。
これは、前述した二例にある「メロディの音の高さに配慮する」という観点よりも、どちらかといえば「メロディの形をどのようなものにするか」という観点に分類されるものです。
例:「さくら(ケツメイシ)」
この楽曲はサビから始まる構成となっており、「0分17秒」あたりからそれを確認できます。
サビのフレーズである、
「さくらまいちるなかにわすれたきおくと」
の赤字部分はすべてが同じ音になっており、より具体的には「ド」の音を単に「ドドドド…」と連続させているだけです。
アイディアはそのようにシンプルなものですが、サビのメロディとして十分に印象深いものに感じられます。
また、音階の上下が無いため「歌いやすい」「認識しやすい」というような性質もあわせ持っています。
既存の曲のサビメロディにはこの「同じ音を連続させる」というアイディアによって作りこまれたものが沢山存在しており、そこからこのようなメロディが多くのリスナーに受け入れられることがわかります。
特徴的なサビのメロディが思いつかないような場面では、このように思い切ってメロディの一部分を同じ音の連続によって作りこんでしまうやり方も試してみて下さい。
4. 小さな(似た)フレーズを重ねる
次に、前述した「同じ音」に近いものとして「小さな(似た)フレーズを重ねる」というアイディアによってもサビのメロディを作ることができます。
例:「遠く遠く(槇原敬之)」
この楽曲はイントロが無くサビから始まる形となっていますが、冒頭の
「とおく・とおく…」
というメロディは、似たような形を持った三音のフレーズ(「とおく」)を繰り返すように構成されています。
音階は異なっているものの、同じリズムと同じ歌詞によってフレーズが重ねられていることによって、サビ冒頭のメロディが強く印象に残ります。
また、メロディはその後
「はなれていても…」
のように展開していきますが、ここでも上記「とおく(タタタ)」というフレーズが引き継がれ、それを発展させるようにつなげています。
本作にあるような、小さい(似ている)フレーズを重ねて繰り返し発展させるアイディアはメロディ作りの常套句ともいえるもので、魅力的なサビのメロディを考えるうえでそれらも活用できるはずです。
5. 音を大きく跳躍させる
音の進め方には
- スケール内のとなりの音に進ませる=順次進行
- スケール内のとなりの音より遠くに進ませる=跳躍進行
という二つの概念があります。
▼関連ページ 「順次進行」「跳躍進行」の解説と、それらを活用したメロディ作りのアイディア
一般的に順次進行はスムーズ、跳躍進行はインパクトを与えることができるものとして認識されていますが、この概念はそのままサビのメロディにも活用できます。
すなわち、サビメロディの中に跳躍進行を盛り込み、その音の跳躍によって急劇な音の変化を演出するのがこのアイディアです。
例:「ロビンソン(スピッツ)」
こちらの楽曲のサビは「1分33秒」あたりに登場します。
跳躍進行になっている部分はいくつか存在しますが、例えば
「~そらにうかべたら、ルーララ…」
の赤字部分などはその象徴的な箇所です。
ここではファルセットを使うことで音の跳躍がより印象深いものになっています。
これは、前述した「最も高い音を使う」「音域を広くする」というやり方とあわせて、比較的簡単に導入することができるアイディアのひとつです。
サビのコードによるメロディの操作
ここまではメロディ単体による作り込みのアイディアをご紹介してきましたが、メロディは「コード」や「キー」を背景として成り立っているため、それらに配慮することでメロディの印象を操作することもできます。
以下は、そのいくつかのアイディアです。
1. サビのコードをサブドミナントから始める
一般的にサビ冒頭は安定した雰囲気を求めることが多いため、そこではトニック(安定)の機能を持ったコードが使われがちです。
それを踏まえあえてトニックの使用を避け、サブドミナント(一時的な不安)の機能を持ったコードからサビを作り込むことが検討できます。
例:「ヒロイン(back number)」
本作におけるサビは「0分55秒」あたりで、「キー」と「コード」の関係は以下のようになっています。
- 曲のキー=G
- サビ冒頭のコード=C
ここで扱われている「C」のコードは、「Gダイアトニックコード」における四番目のコードです。
この四番目のコードはトニック(この場合の「G」)に比べて少し不安定な響きを持っており、これが上記で述べたサブドミナントコードにあたるものです。
トニックで始まる一般的なサビに比べて「不安定→安定したい」という響きを生むことから動的な印象を与え、それがサビに冒頭における躍動感や「次を聴いてみたい」という雰囲気につながっています。
これ以外に、二番目のコード(この例における「Am」)もサブドミナントコードに分類されます。
シンプルなメロディでも、コードが異なることで印象が変わることは多いため、そのような観点からこの「サブドミナントで始まるサビ」が検討できます。
2. サビで短3度上/下へ転調させる
メロディ自体の音使いを変える意味で、サビにおいて転調を実施することもできます。
中でも短3度上/下のキーへ転調させるやり方(短3度転調)はその代表的なものです。
▼関連ページ 「短3度転調」の詳細と実例について(同主調平行調または平行調同主調への転調)
例:「パプリカ(Foorin)」
ここでのサビは「0分50秒」あたりですが、曲のキーは以下のような構成となっています。
- 【A/Bメロ】Aメジャー
- 【サビ】F#メジャー
この例では曲が「Aメジャー」から始まり、サビでその短3度下にある「F#メジャー」へと転調していることから、「短3度転調」の典型的な形になっていることがわかります。
この「短3度転調」は、上記でご紹介したページでも解説している通り正しくは「同主調平行調」または「平行調同主調」への転調です。
このパターンの転調は、扱われる音を程良く変えることができることから「インパクト」と「扱いやすさ」をあわせ持ったものとしてサビでよく活用されます。
もちろん、転調のパターンにはいろいろな種類がありますが、サビのメロディに迷ったら、このような観点から短3度転調を含むさまざまな転調の実施を取り入れることもできます。
メロディ作りに強くなる本
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まとめ
以下は、ここまでに挙げた「サビメロディの作り方」のアイディアのまとめです。
- 曲中の最高音を盛り込む
- サビメロディ全体の音域を広げる
- 同じ高さの音を連続させる
- 小さな(似た)フレーズを重ねる
- 音を大きく跳躍させる
- サビのコードをサブドミナントから始める
- サビで短3度上/下へ転調させる
もちろんやり方はこれだけにとどまりませんが、それぞれのアイディアは複合させることもできるため、それによってさらに作れるメロディの幅は広がって行くはずです。
この内容を参考にしつつ、素敵なサビメロディを作り上げてみて下さい。
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