こちらではR&B風のおしゃれなコード進行と、そもそもどのような発想によっておしゃれなコード進行が出来上がっているかについて解説しています。
※記事最後では動画による実演も行っています。
目次
おしゃれなR&B風コード進行
今回取り上げるコード進行は以下のとおりです。(キー=C)


最後の「A7(♭13)」からそのまま冒頭の「Dm7(9)」につなげることで、構成をループさせることができます。
HipHopやその他クラブ系のトラックなどにも活用できそうです。
シンプルなコード進行を変形させることでR&B風コード進行になる
R&Bやジャズなどにおけるおしゃれ(=複雑)なコード進行は、そのほとんどがスリーコード等によるシンプルなコード進行が元となっています。
ここからは、それらシンプルなコード進行がどのように変形して複雑なコード進行になっていくのか、その過程を解説します。
基本形:スリーコード
まず、コード進行の最も基本的な形として、スリーコードによる構成を思い浮かべることができるはずです。
下記は、スリーコードのみを使ったコード進行の例です。
(トニック:安定、サブドミナント:一時不安、ドミナント:不安定)
変形(1):代理コードによるコードの置き換え
次に、上記コードの中にある「F(IV)」を、ダイアトニックコード内の「Dm(IIm)」に置き換えます。
それぞれは、構成音と響きが似ているため、同じ機能(サブドミナント)となり、互いに置き換えて使用することが可能です。
変形後:C → Dm → G[I → IIm → V]
変形(2):セカンダリードミナントコードの挿入
次に、上記コード進行中にある「Dm」に対して、そのセカンダリードミナントコードである「A7(VI7)」を挿入します。
変形後:C → A7 → Dm → G[I → VI7 → IIm → V]
※セカンダリードミナントコードの詳細については、下記をご参照ください。

変形(3):「A7」以外のセブンスコード化
次に、上記コード進行のうち、「A7」以外の三つのコードをセブンスコード化して、四和音とします。
この場合、ダイアトニックコード内に収まる形で四和音とするため、「C」には「M7」が、「Dm」と「G」には「7」が付加されます。
変形後:CM7 → A7 → Dm7 → G7[IM7 → VI7 → IIm7 → V7]

変形(4):テンションの付加
次に、上記四和音構成のコードに対して、テンションを付加します。
ここでは、「CM7」と「Dm7」にはナインス(9)を、「A7」と「G7」にはサーティーンス(13)を付加します。
また、ここでの「A7」と「G7」では、テンションを変形させて使用することも可能であるため、「A7」のみに、サーティーンスを半音下げた「♭13」を付加することとします。
CM7 → A7 → Dm7 → G7
[IM7 → VI7 → IIm7 → V7]
CM7(9) → A7(♭13) → Dm7(9) → G7(13)
[IM7(9) → VI7(♭13) → IIm7(9) → V7(13)]
変形(5):Dm7(9)からコード進行を始める
次に、上記コード進行の中で中間部分にある「Dm7(9)」を、コード進行のスタート位置として、全体の構成を組み替えます。
具体的には、下記のような構成となります。
CM7(9) → A7(♭13) → Dm7(9) → G7(13)
[IM7(9) → VI7(♭13) → IIm7(9) → V7(13)]
Dm7(9) → G7(13) → CM7(9) → A7(♭13)
[IIm7(9) → V7(13) → IM7(9) → VI7(♭13)]
ここまでの手順を通して、元になっているスリーコードのみのシンプルな構成を冒頭でご紹介したR&B風のおしゃれなコード進行に変形させることができました。
番外編:リズムをR&B風のリズムにして演奏する
コード進行そのものの構成に加えて、「演奏の際にどのようなリズムを提示するか」、という点も、そのコード進行が与える印象を大きく左右します。
具多的には、ロックやポップスで扱われるストレートな8ビートのリズムよりも、R&Bで多用する16ビートのリズムとしてコードを演奏する方が、R&B的な雰囲気を与える意味で好ましく、また、テンポもそれに見合ったもの(ややゆっくりなテンポ)にする方が効果的です。
動画で解説
「文章ではよくわからない!」という方のために、下記動画でもR&B風コード進行ができるまでについて、実演を交え解説しています。
是非参考にしてみてください。
補足
こちらのページで解説している内容は、音楽理論を理解することで柔軟に考え、自分でもアレンジしていけるものです。
以下のページでは「音楽理論学習の見取り図」のようなことを解説していますので、そちらも是非参考にしてみて下さい。
音楽理論を知りたい人のための「学習の見取り図」※独学に活用できる「音楽理論の何をどの順番で学べばいいか」のまとめ
まとめ
R&B風のおしゃれなコード進行と、それがどのような解釈によって出来上がっているかについて解説してみました。
コードの成り立ちについての解説をまとめると、下記の通りとなります。
- もとになるコードはスリーコード
- ダイアトニックコード内でコードを代理する
- セカンダリードミナントコード等のノンダイアトニックコードを活用する
- コードを四和音にしたり、テンションを加えたりして、響きを華やかにする
- コード進行の構成そのものを見直して、個性的な構成となるように検討する
- 効果的なリズムを使って演奏する
R&Bやジャズなど、一般的なポップス等にない複雑なコード進行を作ろうとするとき、それらを直接的に作り上げようとしてしまいがちです。
その際に、コード進行の基礎が身についていると、その成り立ちが理解できることで、さらにそれを応用したり、目指す曲調に合わせて柔軟に変形して対応することもできるようになります。
まずは、初歩的な練習を通して、シンプルなコード進行を複雑なものへ発展させる感覚を養ってください。
補足
以下のページでもコード進行をリッチなものにする方法について解説しています。
複雑なコード進行(難しいコード進行)を作るためのアイディア|シンプルなコード進行を発展させる
作曲が上達する「曲分析」について知る
