サビに使えるコード進行のアイディア(おしゃれな雰囲気、ロックな雰囲気などを持つコード進行)

こちらのページでは、サビで使えるコード進行のアイディアをご紹介していきます。

※ご紹介するコード進行のキーは「C」に統一します。

トニックで始めるコード進行

まず、サビ冒頭の安定感を高めるために「トニック」の機能を持ったコードからコード進行を組み立てることが検討できます。

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カデンツ(終止形)の詳細とポップス・ロック作曲への応用

コードの機能については上記ページにて解説している通りですが、この「トニック」から始める構成はサビのコード進行を考えるうえで基本となるものです。

ダイアトニックコードのみの活用

以下に、トニックの機能を象徴する「I(C)」で始めるコード進行をいくつか挙げます。

  1. C→Dm→Em→F[I→IIm→IIIm→IV]
  2. C→Em→Am→Em[I→IIIm→VIm→IIIm]
  3. C→F→Em→Am[I→IV→IIIm→VIm]
  4. C→G→Am[I→V→VIm]
  5. C→Am→F→G[I→VIm→IV→V]
これらは、ダイアトニックコード内のコードのみを活用して組み立てたコードの例です。

このように、スケール内(この例の場合「Cメジャースケール=ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」)の音のみを使って作られたコード進行は響きに無理がなく、リスナーにすんなりと受け入れてもらうことができます

特にサビの冒頭では違和感なくコードの響きを感じてもらう必要があるため、このように、ダイアトニックコードのみを使ったシンプルな構成が思いのほか似合います。

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ダイアトニックコードとスリーコード(概要や成り立ち、コードの役割などについて)

また、ここで挙げたコード進行のつながりはあくまでも一例で、これら以外にもダイアトニックコード内のコードを活用しながらさまざまなコード進行が検討できます。

ここで述べているように、サビのコード進行を考えるうえでは

  • ダイアトニックコードのみによってコード進行を組み立てる
  • トニック(I)からコード進行を始める

という二点が基本となります。

ノンダイアトニックコードの挿入

サビのコード進行には「聴きやすさ」と共にインパクトも求められるものですが、上記でご紹介した「ダイアトニックコードのみの構成」は響きがストレートすぎるため、若干その点が弱いともいえます。

これを踏まえ、ダイアトニックコードのみによるコード進行を土台としつつ、そこに「ノンダイアトニックコード(ダイアトニックコード以外のコード)」を加えることが検討できます。

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ノンダイアトニックコード 意味とその種類の解説 活用のルールやコード進行例等

セカンダリードミナントコードの活用

以下はノンダイアトニックコードの例として「セカンダリードミナントコード」を活用したコード進行です。

※赤字部分がセカンダリードミナントコード

  1. C→E7→Am→Em[I→III7→VIm→IIIm]
  2. C→A7→Dm→G[I→VI7→IIm→V]
  3. C→C7→F[I→I7→IV]
  4. C→G→E7→Am[I→V→III7→VIm]
  5. C→Am→D7→G[I→VIm→II7→V]
上記のうち、「1~3」は二つ目のコードとしてセカンダリードミナントコードが挿入されており、安定感のある「I(C)」との対比によってそれらの響きがより際立って聴こえます。

また、「4」「5」はコード進行の途中にセカンダリードミナントコードが活用された例ですが、このようにダイアトニックコードのみの構成における中間部分でそれらを聴かせ、コード進行にアクセントを加えることもできます

実際にこれらのコード進行を鳴らしてみると、セカンダリードミナントコードがひとつ加わるだけでもサウンドがリッチなものになって、サビで使える個性的な雰囲気が生まれていることがわかるはずです。

▼関連ページ
セカンダリードミナントコード 成り立ちとその表記などをわかりやすく解説します

セカンダリードミナントコードを「ツーファイブ」でアレンジする

コード進行の手法の一つである「ツーファイブ」を活用すると、上記でご紹介したセカンダリードミナントコードを組み込んだ構成がより個性的なものになります。

このアイディアは、特にサビでコード進行をインパクトのあるものにしたい場合に重宝します。

▼関連ページ
ツーファイブとは?(概要と基本的な成り立ち、活用方法、マイナーキーにおける例など)

以下は、前述したセカンダリードミナントコードの例をツーファイブによってアレンジしたものです。

※赤字部分がツーファイブ

  1. C→Gm7→C7→F[I→Vm7→I7→IV]
  2. C→Bm7-5→E7→Am→Em[I→VIIm7-5→III7→VIm→IIIm]
  3. C→Em7-5→A7→Dm→G[I→IIIm7-5→VI7→IIm→V]
ツーファイブに関する詳しい解説は上記他ページで行っていますが、ポイントとなるのは
セカンダリードミナントコードを「V7」と捉えて、そこから「IIm7→V7」を作る

という点です。

例えば、上記例のうち「1」はセカンダリードミナントコードとして「C7」が活用されていますが、ここではそれを「V7」と捉え、その場合の「IIm7」に相当する「Gm7」を直前に導いています。

つまり、ここでの

「Gm7→C7→F」

というコードの流れが、一時的に「キー=F」における

「IIm7→V7→I」

のような形になっている、ということです。

参考:Fダイアトニックコード
F, Gm, Am, B♭, C, Dm, Em-5
また、ツーファイブは「V7」の先にマイナーコードがある場合

「IIm7-5→V7→Im」

のように、「IIm7-5」としてフラットファイブのコードを活用します

上記「2~3」の例にある「E7」「A7」は共にマイナーコード(「Am」「Dm」)につながるセカンダリードミナントコードであるため、ツーファイブを「IIm7-5→V7」のような形として作っています。

※これらも、一時的にキーが「Aマイナー」「Dマイナー」になっているような状態です。

「♭III」「♭VI」「♭VII」(♭系三種のコード)の活用

セカンダリードミナントコードとあわせて、響きに変化を加えてくれるのが「♭III」「♭VI」「♭VII」です。

以下は、同じくそれらをコード進行に組み込んだ例です。

※赤字部分が該当のコード

  1. C→E♭→F→G[I→♭III→IV→V]
  2. C→B♭→A♭→B♭[I→♭VII→♭VI→♭VII]
  3. C→B♭→E♭→B♭[I→♭VII→♭III→♭VII]
  4. C→F→A♭→G[I→IV→♭VI→V]
このうち、「1~3」はまた二つ目のコードとして「♭III」「♭VII」を活用したもので、セカンダリードミナントコードと同じく、それらがよりインパクトのあるものに感じられます。

「2」「3」の構成は冒頭の「I(C)」以外すべてが「♭系三種のコード」となっていますが、「キー=C」のコード進行でありながら、このようにダイアトニックコードをほとんど使わないようなコード進行に作り込むこともできます。

また「4」の例のように、もちろんダイアトニックコードの中間にこれらを挿入することも可能です。

特に、この「♭III」「♭VI」「♭VII」は異質な響きを持っているため、サビにおいてコード進行をより個性的なものにしたい時に活躍してくれます。

▼関連ページ
フラット系三種のノンダイアトニックコード 同主調マイナーからの借用

他ノンダイアトニックコードについて

上記でご紹介したもの以外にも沢山のノンダイアトニックコードが存在しており、それらを同じくダイアトニックコードの構成に組み込むことによって、コード進行の持つ雰囲気はより多彩になっていきます。

ノンダイアトニックコードの種類やその活用方法を知るほどにコード進行を柔軟にアレンジしていくことができるため、サビにおいて特徴的なコード進行を意図的に作りたい場合にはそれらに対する理解を深めることが欠かせないといえるでしょう。

他トニック(VIm、IIIm)から始める構成

「トニックの機能を持つコードから始める」という点を考えるにあたり、「I」以外に活用できるのが同じくトニックの機能を持つ「VIm」「IIIm」です。

以下のコード進行はその例です。

  1. Am→F→G→C[VIm→IV→V→I]
  2. Em→Am→Dm→G[IIIm→VIm→IIm→V]
上記の例のどちらも、それぞれ「VIm(Am)」「IIIm(Em)」を先頭にしながらダイアトニックコードのみによってコード進行を組み立てています。

基本的な概念は前述した「I(C)」を冒頭に持ってくるものと同じですが、その反面で「VIm」「IIIm」はコード進行の冒頭としては使いづらい性質もあわせ持っており、使用には注意が必要です。

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「VIm」「IIIm」をコード進行の冒頭に置くと、元のキー(Iの響き)が希薄なものとして感じられてしまうことがあります。

そのため、上記の例にあるように「そのキーを象徴するようなコードの動き(IV→V→IやIIm→Vなど)」を適度に盛り込む配慮が求められます。

また、サビのインパクトとしてそれらの異質な雰囲気をあえて活用するやり方も選択できます。

サブドミナントで始めるコード進行

ここまでに述べた「『トニック』で始めるコード進行」に加えて検討できるのが「サブドミナント」の機能を持ったコードから始める構成です。

これらは具体的には、「IV」または「IIm」でコード進行を始めること、を意味します。

ダイアトニックコードのみによるコード進行

以下は、ダイアトニックコードのみによってそれをコード進行にした例です。

  1. F→G→Am→G[IV→V→VIm→V]
  2. Dm→G→Em→Am[IIm→V→IIIm→VIm]
こちらも、基本的な組み立て方はトニック(I)を活用したコード進行と同じです。

「サブドミナントから始める」というアイディアそのものが特徴的であるため、このようにその他のコード進行がある程度ストレートでも、サビのコード進行として十分に活用できます。

ノンダイアトニックコードによってアレンジしたコード進行

サブドミナントコードから始める構成にも、ノンダイアトニックコードを組み込むことができます。

以下は前述した「セカンダリードミナントコード」「ツーファイブ」を活用したコード進行の例です。

  1. Dm→G→E7→Am[IIm→V→III7→VIm]
  2. F→G→Em7-5→A7[IIm→V→IIIm7-5→VI7]
この例のうち「1」はセカンダリードミナントコード「E7」を活用したもの、「2」は「A7」をツーファイブにしたものです。

サブドミナントからの流れにアレンジが加わり、さらにコード進行が聴きごたえのあるものになっています

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上記でご紹介した「♭系三種のコード」はサブドミナント始まりの構成には若干ハマりづらいです。(これらのコードが他のキーから借用されたものであり、サブドミナントから始まる(=トニックの存在が明確でない)と本来のキーが希薄になってしまうため)

この例のように、サビのコード進行を特徴的なものだと感じさせるためには

  • サブドミナントのコードから始める
  • ノンダイアトニックコードを盛り込む

という二点が検討できます。

サビに使えるコード進行の一覧

ここまでにご紹介した「サビに使えるコード進行」の例を、一覧として以下に示します。

  • C→Dm→Em→F[I→IIm→IIIm→IV]
  • C→Em→Am→Em[I→IIIm→VIm→IIIm]
  • C→F→Em→Am[I→IV→IIIm→VIm]
  • C→G→Am[I→V→VIm]
  • C→Am→F→G[I→VIm→IV→V]
  • C→E7→Am→Em[I→III7→VIm→IIIm]
  • C→A7→Dm→G[I→VI7→IIm→V]
  • C→C7→F[I→I7→IV]
  • C→G→E7→Am[I→V→III7→VIm]
  • C→Am→D7→G[I→VIm→II7→V]
  • C→Gm7→C7→F[I→Vm7→I7→IV]
  • C→Bm7-5→E7→Am→Em[I→VIIm7-5→III7→VIm→IIIm]
  • C→Em7-5→A7→Dm→G[I→IIIm7-5→VI7→IIm→V]
  • C→E♭→F→G[I→♭III→IV→V]
  • C→B♭→A♭→B♭[I→♭VII→♭VI→♭VII]
  • C→B♭→E♭→B♭[I→♭VII→♭III→♭VII]
  • C→F→A♭→G[I→IV→♭VI→V]
  • Am→F→G→C[VIm→IV→V→I]
  • Em→Am→Dm→G[IIIm→VIm→IIm→V]
  • F→G→Am→G[IV→V→VIm→V]
  • Dm→G→Em→Am[IIm→V→IIIm→VIm]
  • Dm→G→E7→Am[IIm→V→III7→VIm]
  • F→G→Em7-5→A7[IIm→V→IIIm7-5→VI7]

サビのコード進行におしゃれな雰囲気を盛り込むアイディア

サビのコード進行におしゃれな雰囲気(大人っぽい、都会的な雰囲気)を盛り込むためには、コード進行に「セブンスコード(四和音)」「テンション」を加えることが検討できます。

以下は、上記のコード進行のうちいくつかをセブンスコードやテンションでアレンジした例です。

  • CM7→Dm7→Em7→FM7[IM7→IIm7→IIIm7→IVM7]
  • CM7→E7→Am7→Em7[IM7→III7→VIm7→IIIm7]
  • CM7(9)→Em7-5→A7(13)→Dm7(9)→G7[IM7(9)→IIIm7-5→VI7(13)→IIm7(9)→V7]
  • CM7→B♭M7→E♭7→B♭M7[IM7→♭VIIM7→♭III7→♭VIIM7]
  • Am7→FM7→G7→CM7[VIm7→IVM7→V7→IM7]
  • Dm7(9)→G7(♭13)→E7(#9)→Am7(11)[IIm7(9)→V(♭13)→III7(#9)→VIm7(11)]
特にテンションが加わるとかなり複雑なコード進行だと感じられますが、ここまでの成り立ちを考えると、それらは

  • トニックまたはサブドミナントでコード進行を始める
  • ダイアトニックコードのみでコード進行を組み立てる
  • 部分的にノンダイアトニックコードを盛り込む

という土台があり、そこで扱われているコードのそれぞれを「セブンスコード(四和音)」や「テンション」にしているだけだということがわかります。

サビのコード進行を考えるうえでポイントとなるのは、

  • キーを明確にする
  • そのキーにおけるダイアトニックコードを活用してコード進行を組み立てる
  • トニックまたはサブドミナントのどちらかでコード進行を始める
  • 特徴的な響きを盛り込みたい場合にはノンダイアトニックコード以外を盛り込む
  • 響きをおしゃれ(大人っぽい、都会的な雰囲気)にしたい場合にはセブンスコードやテンションを加える

などの点です。

これらをきちんと満たすことで、サビにおける印象的なコード進行を無理なく作り込んでいくことができるはずです。

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セブンスコードの解説 コードに「7度」の音を含む四和音、その成り立ちと詳細について テンションコード 概要とコード表記、コード進行例などの解説

まとめ

ここまで、サビに使えるコード進行について解説してきました。

サビは曲の顔ともいえる重要なブロックであるため、上記を参考に是非魅力的なコード進行を作り上げてみて下さい。

ノンダイアトニックコードの活用が、サビの特徴的なコード進行を作るポイントです。

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