「なにげなく思いついた鼻歌から作曲を始めたい」と考える人は案外いるものです。
そして同じように、
鼻歌によって作られたメロディのかけらが実際のところどんなステップを経て1曲になるのか
という点について知りたい人も多いはずです。
それを踏まえ、こちらでは「鼻歌が1曲になるまでの過程」というテーマで、その中身を簡単にまとめてみます。
もちろん、作曲の進め方は人それぞれです。ここでご紹介する過程はあくまで一例ですが、目安として参考にしてもらえると嬉しいです。
※当記事はこちらのポッドキャストの内容を編集/再構成したものです。
目次
鼻歌が1曲になるまでの手順詳細
手順1. 鼻歌メロディを用意する
まず初めに必要となるのが、当然のことながら鼻歌で作られたメロディのかけらです。
なにげなく思いついたメロディは時間と共に忘れてしまうことも多いため、スマホのボイスメモなどを活用してすぐに録音して残しておけると望ましいです。
手順2. 鼻歌メロディのテンポやノリなどを明らかにする
次に、思いついた鼻歌メロディのリズムを明らかにします。
例えば数秒程度の短いメロディでも、
- どんなテンポを持つのか
- どのような拍子(4拍子、3拍子など)によって成り立っているか
- 拍(ワン・ツー・スリー・フォーなど)のアクセントがどう付くか
などによってそこから感じられる印象やメロディ自体が持つ性質は変わります。
これらを考慮しつつ、思いついたメロディをボイスメモに記録する時点で鼻歌と共に手拍子によるリズムを加え、メロディとリズムをあわせて音源として記録しておけると最も理想的です。
▼関連ページ 作曲に活用できるリズムの種類(曲作りの幅を広げる)
手順3. 鼻歌メロディのキーを予測する
次に、鼻歌メロディがどのようなキーに属するのかを予測します。
具体的なやり方は以下の通りです。
- ギターまたはピアノなどを用意して、録音されている鼻歌メロディを何度か再生しながらメロディがどんな音名によって成り立っているかを探りながら特定する
- それらの音が「キーの音」に含まれるキーは何かを考えて、キーを予測する
これを行うには、鼻歌を聴きとって音名になおす力と、「キーとは何か?」という点について概念だけでも知っておく必要があります。
▼関連ページ キー(音楽)について キー=「中心音」と「まとまりのある音のグループ」を意味する言葉
手順4. 鼻歌にコードをつける
次の手順として、鼻歌メロディにコードをつけます。
これ以前の手順でキーが予測できているため、そのキーのダイアトニックコードを活用しながら実際にギターやピアノでコードを弾いて、歌声との調和を確認していきます。
ここでは、
- 鼻歌メロディにどんなコードが合うかを判別できる音感
- コードを演奏しながらメロディを歌う弾き語りの技術
- いろいろなコードを切り替えて演奏できる技術
などが求められます。
また、実際のところひとつのメロディにはいろいろなコードをつけることができてしまうため、根本的に、
「鼻歌のメロディにどのようなコードが最も似合うか」
という点を作曲者として(おおまかにでも)イメージしておくことも必要となります。
さらには、数秒程度の鼻歌には通常コード1~4個がつくことになるため、コード自体をひとつ目のものからその先へと展開させる感覚も求められます。
そのためには、一般的なポップス・ロック等でよく使われるコード進行などを事前に把握しておいて、それをそのまま活用したり、その一部をアレンジして活用したりするのが一般的です。
▼関連ページ 作曲に使えるコード進行の定番(※初心者向け) 特に頻繁に使われる10パターンのまとめとそのアレンジ
鼻歌に合うコードが見つけられたら、必要に応じてそれらをどこかに書き留めたり、改めて鼻歌とコードの音を弾き語りによって録音しておきます。
手順5. メロディとコードをさらに展開させておおきなまとまりにする
鼻歌にコードがついたら、ここからはもともと思いついていた鼻歌を飛び越えて、新たなメロディやコード進行を生み出す局面に入ります。
これ以前の手順を通して完成していた、
鼻歌のメロディ+コード数個
という状態を踏まえつつ、そこから先にどんな展開があると気持ち良いかを考えてメロディやコードをさらに伸ばすように展開させていきます。
ここで、キーが定まっていると、メロディには「そのキーの音」、コードには「そのキーのダイアトニックコード」を活用することができるため、より作曲を進めやすくなります。
そのうえで、展開できたメロディとコードを「Aメロ」「サビ」などのひとまとまりになるよう、起伏をつけながらまとめていきます。
これらは映画や小説でいうところの「場面」のようなもので、
- 曲の導入部分となる場面
- 曲の中で一番盛り上がる場面
などのように、その部分からなんらかの雰囲気が感じられるようにメロディやコードの統一感が意識されて作られます。
手順6. 次なるまとまりへとさらに曲を展開させる
さらに次の手順として、「Aメロ」から「Bメロ」へと曲が展開するように、既に完成していた「Aメロ」とは違った、「Bメロ」に相当する新たなひとつのまとまりを作っていきます。
これ以前の手順ではあくまでも鼻歌の延長としてメロディやコード進行を考えることができていましたが、これ以降は新たな場面を作ることになるため、より作曲のレベルが上がります。
もちろん、ここでいう「Bメロ」のような新たなまとまりは、鼻歌をもとに作られた「Aメロ」を前提として成り立つものであるため、
- それまでに作った「Aメロ」がどのような要素(メロディやコード進行や構成)によって成り立っているかを把握する
- それを前提として、新たなまとまりでどう場面転換を演出するか、またどのような統一感を盛り込むかを考える
という順序で作りこむことが求められます。
そして、ここまでを通して、ワンコーラスが完成します。
手順7. ツーコーラス目以降、およびイントロアウトロ等を作る
これ以降はワンコーラスを前提として、それをさらに発展させたツーコーラス目以降や、曲の冒頭と末尾を演出するイントロやアウトロなどを作ることで1曲が仕上がっていきます。
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まとめ
以下に、ここまでにご紹介した手順をまとめます。
- 手順1. 鼻歌メロディを用意する
- 手順2. 鼻歌メロディのテンポやノリなどを明らかにする
- 手順3. 鼻歌メロディのキーを予測する
- 手順4. 鼻歌にコードをつける
- 手順5. メロディとコードをさらに展開させておおきなまとまりにする
- 手順6. 次なるまとまりへとさらに曲を展開させる
- 手順7. ツーコーラス目以降、およびイントロアウトロ等を作る
これらは、大まかに
- 鼻歌をもとにやる(やれる)作業 ※手順1~4
- 鼻歌から新たなものを作り出す作業 ※手順5~7
に分けられます。
鼻歌をもとにする部分では、歌ったメロディを作曲で扱えるように、きちんとした実音に置き換えたりキーやリズムを明らかにしたりすることがポイントとなります。
そのためには、既に述べた通り、音を聴き取る力やキーやリズムに関する基礎的な知識が必要です。
また、鼻歌から新たなものを作り出す局面では基本的な作曲力が問われ、メロディやコードなどをまたゼロから考えて、統一感を意識しつつ聴きごたえのある展開を組み立てることが求められます。
現在鼻歌から作曲をやってみたいと考えているひとは、これらをもとに、知識を固めたり、作曲する感覚を養ってみて下さい。
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