「DTMは簡単」という言葉に振り回されないための心構え

作曲未経験者/初心者向けの広告としてよく、

「『DTM』に取り組めば誰でも簡単に音楽が作れる」

という言葉を目にすることがあります。

これはある意味では本当なのですが、私の経験からいえば少し嘘だと感じるところもあります。

こちらでは、そのあたりについて少し述べてみます。

DTMの本質

こちらで取り上げている「DTM」とは「Desktop Music」を略したもので、PCやスマホなどを使って音楽を作る行為全般を意味する言葉です。

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そして、一般的には総称として「DAW(Digital Audio Workstation)」と呼ばれる、音楽制作専用のソフトを扱う作業を指してこの言葉が使われます。

そのうえで、そもそもDTMはやることがとても多く、例えば、

  • メロディやコード、曲構成を考える(作曲)
  • それをどんな楽器や音色でどう聴かせるのか考える(編曲)
  • アレンジするためにデータを打ち込む、生楽器演奏のように聞かせる、音を並べる(打ち込み)
  • 各音を混ぜ合わせて音量のバランス/エフェクト/音圧/配置などの観点から聞きやすくする(ミキシング)
  • 全体を整えてより聴きやすさを出す(マスタリング)

などはその作業の一例といえます。

さらには、これらを生演奏でやるのであれば「楽器を演奏する作業」「録音する作業」も必要となります。

質の高い音楽を生み出すためにはこれらのすべてが必要で、一人で全部こなすことを考えるとその大変さが想像できるはずです



「簡単」という言葉が意味するところ

冒頭で述べた、

「『DTM』に取り組めば誰でも簡単に音楽が作れる」

という言葉の真意は、

  • データを打ち込めば楽器を弾けなくても音は鳴らすことができる
  • メロディやハーモニーを混ぜ合わせて音楽を作ることはできる

などの部分に向けられたもので、要約すれば「大きな労力なく音楽が表現できる」ということを指して「簡単」という言葉が使われていると解釈できます。

その反対に、既に述べたとおり例えばプロミュージシャンがリリースしているような質の高い音楽を作るという意味では、DTMは決して簡単とはいえません

むしろ、作業量も知識も技術も必要になり、ある意味で専門職に近い作業だと感じます。

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いわゆるレコーディングの現場等では、ミキシングやマスタリングのエンジニアがいたり、スタジオミュージシャンとして演奏だけに徹する人がいたり、それぞれの分野を専門にこなす人がいることからも、それが理解できます。

初めの一歩にDTMは最適

この「DTMは簡単」という言葉に期待を抱いて音楽制作に取り組み、自分が生み出す曲があまりにも稚拙すぎて失望してしまう人は案外多いものです。

ここまでに述べたことを踏まえればそれは当然で、つまりは

  • やることがとても多い
  • それぞれの作業に専門的な知識や経験が求められる

という性質を持ったDTMの作業を「簡単」という広告でまとめてしまうこと自体が間違っていて、それが過剰な先入観や期待感を生んでしまうのです。

それを踏まえ、新たにDTMを始めようと考えている人はこの「DTMは簡単」という言葉を、

  • 楽器が弾けなくてもメロディやコードの展開をデータによって実現できる
  • 曲作りの初めの一歩を踏み出すのに最適

というように解釈したうえで、音楽制作に取り組むようにしてみてください。




DTMの作業を分けて考える

DTMによって作曲を始めて、「思ったほど上手くいかない」と悩んでいる人の多くは、根本的にメロディやコードを生み出したり展開させたりすること(=曲の骨格を作る作業)に慣れていないものです。

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このあたりの感覚が無い状態でそれ以降の工程にあたる「打ち込み」「ミキシング」「マスタリング」などに取り組むと、作業が三重苦・四重苦のような状態になってしまいます

私がおすすめしているのは、

まず、メロディやコードの展開によって曲の骨格を作れるようになることを目指す

というやり方です。

これは、目安として、

  • 歌のある曲=「弾き語りによるコードの伴奏のうえで、歌声によってメロディを表現できる状態」
  • 歌のない曲=「ピアノひとつによって伴奏とメロディラインを表現できる状態」

を作ることを指します。

これらを通して、曲全体の流れと骨格が見えるところまで、なるべくシンプルな演奏表現で曲を作り上げることを目指してみてください。

それによって、出来上がったものをさらにDTMで作り込んだり、また状況によってはバンドで生演奏したり、「ギター+ピアノ」の編成にしたりなど、いろいろなアレンジによって曲を表現できるようにもなります。

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これは、より簡単にいえば「メロディ・コードによって曲の骨格を作る作業(≒作曲)」と「曲をどう表現するか考えて整える作業(≒編曲)」を分ける、ということです。

これらを通して、まず「メロディやコードによって曲展開を作る感覚」を磨き、そこからDTMを本格的に活用したアレンジやミキシングの工程に無理なく進むことができます。



自分の特性に合ったものを伸ばしていく

また、DTMが一般化した現在では、ここで述べた

  • 「メロディやコードによって曲の展開を作る作業」
  • 「編曲」
  • 「打ち込み」
  • 「ミキシング」
  • 「マスタリング」

などのすべてを含めて「作曲(=音楽制作)」だと捉えるケースも多いです。

とはいえそれらには向き・不向きがあるのも事実で、例えば、

  • メロディを考えるのが得意⇔音響的な感覚が求められる作業は苦手
  • エンジニアのような細かい作業や音響的作業が得意⇔メロディ作りは苦手

などのケースは多いため、実際の音楽制作を通して、自分の特性にあったものを伸ばしていくのが最も望ましいと私は考えています。

これは、

  • メロディやコードによる曲の骨格を作るのが得意→DTMでは曲構成がわかる程度の簡素な打ち込みのみを担当して、編曲やミキシング以降は自分以外の人に任せる
  • DTMのミキシング以降の部分が得意→メロディ作りなどよりも専門的なエンジニアとしての技能を磨く

というように、DTMの本質を理解したうえで無理にすべてをこなそうとせず、力を入れていく部分を見極めることを意味します。




まとめ

以下はまとめです。

  • 「DTMは簡単」は、「大きな労力なく音楽が表現できる」という意味
  • 質の高い音楽をDTMによって生み出すのはとても大変
  • まずはメロディやコードによって曲の骨格を作れるようになることを目指す
  • 自分がやれることを見極めて、DTMと上手に付き合っていくのが望ましい

既に述べたとおり、「DTMは簡単」という言葉に期待してやってみたものの思ったほど上手くいかず、作曲の難しさを感じたり、また自分の音楽的センスを疑ってしまう人は多いものです。

ここでまとめている内容を参考にDTMの作業や性質を正しく捉え、上手に向き合いながらぜひ自分なりの音楽活動を突き詰めていってください

DTMに積極的に取り組むのも、DTMを必要最低限にするのも、どちらも作曲活動です。