著者：こちらのページでは、ポピュラー系音楽理論における「代理コード」の詳細について解説します。
代理コードの概要
「代理コード」とは、その名の通り
「あるコードを代理できるコード」
のことを指す言葉です。
これは簡単にいえば「響きが似ているコード」のことで、コードの代理（＝置き換え）によって違った雰囲気や前後のコードとのつながりを生み出すことを目的として使用されます。
スリーコードとの響きの比較
代理コードの中でもよく知られているものが、ダイアトニックコードにおいてスリーコードの代理をする、
- 「IIm」
- 「IIIm」
- 「VIm」
- 「VIIm-5」
のコードです。
▼関連ページ
「スリーコード」とは、上記ページでも述べている通りダイアトニックコード内における主要な三つのコードの総称で、具体的には
- ダイアトニックコードにおける一番目のコード（I）
- ダイアトニックコードにおける五番目のコード（V）
- ダイアトニックコードにおける四番目のコード（IV）
がそれにあたります。
そのうえで、同じくダイアトニックコードに含まれる「六番目のコード（VIm）」および「二番目のコード（IIm）」は、そのうちの「I」「IV」にそれぞれ似た構成音を持っています。
以下にその例として、「キー＝Cメジャー」における各コードの構成音を示します。
- 「C」（I）の構成音：ド、ミ、ソ
- 「Am」（VIm）の構成音：ラ、ド、ミ
- 「F」（IV）の構成音：ファ、ラ、ド
- 「Dm」（IIm）の構成音：レ、ファ、ラ
上記の通り、「Am（VIm）」の構成音「ラ・ド・ミ」には「C（I）」の構成音「ド・ミ・ソ」のうち「ド・ミ」の二音が含まれており、それにより双方のコードは似た響きを生みます。
また、同じように「Dm（IIm）」の構成音「レ・ファ・ラ」には「F（IV）」の構成音「ファ・ラ・ド」のうち、「ファ・ラ」の二音が含まれており、こちらも双方が似た響きを生みます。
このような理由から、
- 「C（I）」の代わりに「Am（VIm）」
- 「F（IV）」の代わりに「Dm（IIm）」
をそれぞれ使用する（＝代理する）ことができて、ここでいう「Am」「Dm」のコードは「スリーコードを代理できるコード（＝代理コード）」として解釈できます。
これらはマイナーコードであるため、「代理マイナー」などと呼ばれることもあります。
コードが持つ役割（機能）も維持される
上記例において、スリーコードの「C」「F」のそれぞれは
- 「C（I）」＝「トニック（安定）」
- 「F（IV）」＝「サブドミナント（一時不安）」
という役割（機能）を持っていますが、これは代理コードにもそのまま引き継がれます。
つまり、この例でいう
- 「Am（VIm）」（Cの代理）の役割はトニック（安定）
- 「Dm（IIm）」（Fの代理）の役割はサブドミナント（一時不安）
として分類される、ということです。
これらを踏まえ、ダイアトニックコードにあるすべてのコードをその役割および「スリーコード」「代理コード」の観点で整理すると、以下のように分類できます。
代理コードによるコード置き換えの例
ここからは、「キー＝Cメジャー（Cメジャーダイアトニックコード）」を例として代理コードを活用したコード進行の例をご紹介します。
1.「IV」を「IIm」に置き換える
以下は、スリーコードのみによる構成と、そのうちの「IV」を「IIm」に置き換えた構成の比較です。
C→F→G→C
（I→IV→V→I）
C→Dm→G→C
（I→IIm→V→I）
「F」を「Dm」に置き換えたことにより、「Dm→G」（IIm→V）という強進行の流れが生まれています。
この「IIm→V」は「二番目→五番目」という度数の流れから「ツーファイブ」と呼ばれ、「サブドミナント→ドミナント」のつながりを作る重要なコードの流れとして扱われています。
▼関連ページ
2.「I」を「VIm」により延長させる
以下は、上記の「ツーファイブ」を含んだ構成と、その中にある「I」の直後に「VIm」を挿入してトニック部分を延長させた構成の比較です。
C→Dm→G→C
（I→IIm→V→I）
C→Am→Dm→G→C
（I→VIm→IIm→V→I）
この例の通り、代理コードはコードを置き換えるだけでなくコードの役割を延長させるような局面でも活用されます。
ここでは「C」が「C→Am」のようになることで、より変化のある響きが生まれています。
またこの例における「Am→Dm」の流れは強進行であり、前述した「Dm→G」とあわせて全体が結びつきの強いコードのつながりとしてまとまっています。
このような構成はルートの動きから「いち（I）・ろく（VI）・に（II）・ご（V）」という呼び名で親しまれるコード進行で、作曲やセッションの場で広く使用されています。※「I→VIm→IIm→V」の構成は「循環コード」とも呼ばれます。
まとめ
以下は「代理コード」のまとめです。
- 「あるコードを代理できるコード」（響きが似ているコード）のことを「代理コード」と呼ぶ。
- 中でも、ダイアトニックコード内のスリーコード以外のコードはその代表的なもの。
- スリーコードのみの構成を代理コードによって応用できる。
代理コードの概念を理解することで、ひとつのメロディに対していろいろなコード進行を検討していくことができるようになります。
「代理コード」はスリーコードの次なるステップです
音楽理論について詳しく知る
音楽理論を知りたい人のための「学習の見取り図」※独学に活用できる「音楽理論の何をどの順番で学べばいいか」のまとめ
ポップス・ロック作曲の上達につながる「曲分析ガイドブック」について知る
作曲がぐんぐん上達する「曲分析ガイドブック」のご紹介ページ