こちらのページでは、主に編曲に関わる音楽用語「ペダルポイント」の詳細と、既存曲における例やそれを活用した曲作りのアイディア等について解説していきます。
目次
「ペダルポイント」の概要
ペダルポイントとは
一つの音を持続させる手法
のことを指す音楽用語で、ポップス・ロック等においてはベース音においてそれを実施する「ベースペダルポイント(バスペダルポイント)」を意味することがほとんどです。
ベースペダルポイントの例
例えば、「キー=C」において
C→Dm→G
というようなコード進行があった場合、そこでのベース音は
ド(C)→レ(D)→ソ(G)
と動きます。
音楽では、通常このようにベース音が曲の展開にあわせて変化していくものですが、こちらで取り上げている「(ベース)ペダルポイント」はそれをあえて逆手に取り、音を保持し続けます。
以下は、上記のコード進行にベースペダルポイントによるアレンジを加えたものです。
C→DmonC→GonC
ここでは、構成の冒頭にあった「C」のベース音「ド」をそのまま保持し続けており、そこから「DmonC」「GonC」のコードが生まれています。
このように、ペダルポイントをコードとして表す場合には上記でいう「onC」のように、同じベース音を意味する「on〇」の表記が付け加えられます。
そこから、ポップス・ロック等におけるペダルポイントは分数コード(オンコード)に関連する手法としても位置付けられています。
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ペダルポイントのサウンド的な特徴と使用される場所
上記で例として挙げたペダルポイントのコード進行を実際に聴いてみると、ベースに変化が無いためそこからはどっしりとした雰囲気が感じられます。
このようにペダルポイントは響きの安定感を生むため、サウンドを穏やかなもの(安定したもの)として感じさせたい場面や、コード進行の動きを一旦落ち着かせたい部分などに活用されます。
イントロにおけるペダルポイントの活用は、その代表的なものです。
ペダルポイントの応用的な使用
ペダルポイントは、厳密には長い構成(三小節以上)にまたがるものを指しますが、二小節程度の短い部分にこのような「ベース音を持続させる」というアレンジが用いられることもあります。
例えば、同じく「キー=C」における曲冒頭でコード進行が
C→Am→Dm→G…
のように展開していた場合、そこからつながる次のブロックでコードを
F→GonF…
のように組み立て、ベースを動かさないことで響きを一旦落ち着かせる手法をよく見かけます。
これは二つのコードのみで「ベース音を持続させる」を実施した例ですが、広い意味でこれらもペダルポイントの一種として解釈できます。
コード構成音の理論的解釈
またペダルポイントによって生まれたコードを部分的に切り取ると、ほとんどの場合その構成音は理論的に何らかの解釈ができます。
例えば、上記で挙げた
C→DmonC→GonC
というコード進行には「DmonC」というオンコードが含まれていましたが、それを構成音によって分析すると
DmonC=「レ・ファ・ラ」+「ド」
という状態になっていることがわかります。
ここでの「ド」の音は「Dm」における「短7度」の音であり、「レ・ファ・ラ・ド」の構成音は「Dm7」と同一です。
つまり、構成音のみを考えると
DmonC=Dm7
だということになります。
同じく上記コード進行に含まれる「GonC」は
GonC=「ソ・シ・レ」+「ド」
という状態で、ここでの「ド」の音は「G」における「完全4度」の音であるため、こちらでも構成音のみを考えると
GonC=G11(またはGsus4に似た構成音)
だということがわかります。
このように、通常ペダルポイントによって生まれるオンコードのほとんどは、
- 元のコードをセブンスコード化したもの
- 元のコードをテンションコード化したもの
- 元のコードから構成音が変わらないもの
のどれかと同じ構成音を持つことになります。
もちろん、例外も多々あります。
「ソプラノペダル」について
上記はペダルポイントを最低音に配置した手法でしたが、同じく「一つの音を持続させる」というアイディアを高い音で実施することもできます。
それらは「ソプラノペダルポイント」などと呼ばれ、主にストリングスなどのアレンジに活用されます。
ペダルポイントを活用した曲の例
これ以降は、実際の曲におけるペダルポイントの使用例を確認していきます。
「I’ve Got A Feeling(The Beatles)」
この曲のキーは「A」です。
ペダルポイントの実施を最もはっきりと感じることができるのが「0分41秒」以降の部分で、ハーモニーとメロディは展開していながらも、ベースが「ラ(A)」の音を弾き続けていることがわかります。
これにより、既に解説したような安定感のあるサウンドが生まれています。
「Jet(Wings)」
こちらの曲も同じく「キー=A」で、「0分26秒」あたりから、その後しばらく「ラ(A)」のベース音が保持され続けています。
アイディアは前述した「I’ve Got A Feeling」と同じで、ポールがベーシストであることから、ベースの音を保持するこのようなペダルポイントの手法を気に入っていたのかもしれません。
こちらも同様に、持続するベース音によってそこからはどっしりとした雰囲気が感じられます。
「Jump(Van Halen)」
ペダルポイントの例として有名なこちらの曲は、キーが「C」で、イントロから「0分58秒」までの間、延々と「ド(C)」の音がベースとして鳴らされ続けています。
本作はシンセの印象的なリフでもお馴染みですが、あの安定感のあるサウンドがベースペダルによって生まれていることを思うと改めて興味深いです。
このように、ロックではペダルポイントによって同じような雰囲気をループさせる手法もよく活用されます。
「The Chain(Fleetwood Mac)」
こちらは、主にイントロ部分にベースペダルポイントを活用した例です。
曲のキーは「E(またはEm)」で、展開していくイントロにおいてベース音の「ミ(E)」が保持され続けています。
カントリー調のサウンドを持った曲にはこのようなペダルポイントの手法が良く似合い、特に「E」の音はアコースティックギターの6弦の開放音にあたるため、アレンジにも程良く馴染みます。
「Relax(Frankie Goes To Hollywood)」
こちらもイントロから曲冒頭の部分にペダルポイントが活用された例で、前述した「The Chain」と同じくキーは「E(またはEm)」となっています。
同様に「ミ(E)」がベース音として延々と打ち鳴らされ続けており、それがこの作品の持つ怪しいサウンドを生んでいます。
このように、ペダルポイントは「音が動かない」という点からリスナーに不気味さを感じさせることもできるため、不穏な曲調を表現するために活用されることもあります。
まとめ
ここまで、ペダルポイントの詳細と既存曲における例、活用アイディアなどについて解説してきました。
上記でもご紹介したように、曲のキーにおけるトニックの音(キー=Cでいう「ド」の音など)は思いのほか簡単にペダルポイントとして機能してしまうため、まずは作曲に活用してみることで、そのサウンドを味わってみて下さい。
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