作曲の手順や取り掛かり方には、いくつかの方法があります。
例えば、
- メロディを先に考えて、それをきっかけとしてその後の展開を考える
- 歌詞を先に考えて、その歌詞を前提としてメロディを作る
- リフ(曲のメインとなるフレーズ)を考えて、そのリフから曲全体をイメージする
などはその代表的なものだといえますが、なかでも、
コード進行を先に決めて、そのコード進行にメロディをつける
という作曲のやり方が初心者向けとしておすすめされているのをよく見かけます。
この方法にはいくつかのメリットがある一方で、
「コードが先に決められていると、メロディがそのコードに引っ張られたものになってしまう」
というデメリットがあるのも事実です。
こちらではその点について少し詳しく掘り下げてみます。
※当記事はこちらのポッドキャストの内容を編集/再構成したものです。
目次
コードを先に決めることの弊害
こちらでテーマとしている、
「コード進行を先に決めて、後からメロディを考える」
というやり方には、
- コード進行による背景をまず先に決めることで、そこからメロディを連想しやすい
- コード進行によって枠組みを作ってしまうことで曲が破綻しづらい
などの利点があります。
特に作曲初心者は、
- メロディを思い浮かべること
- 思い浮かべたメロディにコードをつけること
- その後の曲展開を作ること
などに苦労するケースが多いため、コード進行を先に考えて(コード進行によって曲展開をある程度作ったうえで)作曲することはこれらをすべて回避できるやり方として最も効果的だといえます。
「コード」の枠を意識しすぎてしまう
この方法には上記で挙げたようなメリットがある一方で、冒頭でも述べた通り、
メロディがコード進行に引っ張られやすい
というデメリットもあります。
そもそも、コード進行(=ハーモニー)が事前に用意されていると、メロディを作るときには
「コード進行の枠に収めなければいけない…」
という感覚が必然的に強く働いてしまうものです。
これは、言い方を変えれば「コード」という枠によってメロディ作りの自由度が下がってしまうことを意味します。
それによってメロディは型にはまったもの(=コード進行の枠組みの中でしか動けていないもの)になりやすく、おのずと人工的で味気ないメロディがそこから作り出されてしまいます。
結果としてそれが「作ったメロディに愛着が持てない」という状態につながってしまい、ここで述べている、
- のびのびと作曲ができないこと
- 作ったメロディに愛着が持てないこと
などが掛け合わされて、「作曲は面白くない」というネガティブなイメージが生まれてしまいます。
これは、「『初心者向け』として提案されている方法そのものが初心者を苦しめてしまう」という構図だといえます。
トレーニングとしてはおすすめ
もちろん私自身も、作曲初心者におすすめのやり方としてこの「コード進行を先に決める」という方法を取り上げることがあります。
特に、メロディが本当に何も思い浮かばない人やメロディ作りの感覚自体を養いたい人などにはこのやり方がすごく有効で、例えば
- 4つ程度のコードからなるコード進行を繰り返して、そこに調和するいろいろなメロディを考える
- ヒット曲のコード進行(および曲構成等すべて)を拝借したうえで、メロディだけを新たに考える
などを行うことで、そこからメロディ作りを含めた作曲のいろいろなことが学べます。
とはいえ、このやり方はあくまでもトレーニング的なものであり、メインの作曲手順にはなり得ないと私は考えています。
特例として、同じコード進行を何度も繰り返すような(ループ構成の)曲を作る場合には必然的にコード進行が事前にすべて決まっている状態となるため、この「コード進行を先に決めてしまう作曲」を避けられないといえます。
特に、現在ここで挙げているように「コード進行を先に決めてからメロディを考える」という方法で作曲に取り組み、それによって思ったほど達成感や満足感を得られていない人は、一度そのやり方を見直してみてほしいです。
おすすめのやり方:メロディとコードを少しずつ発展させる
きちんとしたコードの展開がある曲を目指すうえで、私は最も無駄がないやり方として、
メロディとコードを少しずつ発展させていく方法
をおすすめしています。
以下はその具体的な手順です。
1. キーを決める
作曲をするにあたり、まず初めにキーを定めます。
それによって必然的にキーの音が定まるため、そこから
- メロディにはそのキーの音を主に使う
- コード進行にそのキーのダイアトニックコードを主に使う
ということが明らかになります。
▼関連ページ キー(音楽)について キー=「中心音」と「まとまりのある音のグループ」を意味する言葉 ダイアトニックコードとスリーコード(概要や成り立ち、コードの役割などについて)
2. キーのダイアトニックコードを使って定番のコード進行を演奏する
次に、キーのダイアトニックコードを活用して、いわゆる定番とされているようなコード進行の響きをギターやピアノを使って(またはDTMなどにデータを打ち込むなどして)確認します。
ここでの「定番のコード進行」とは、基本的に2~4個程度のコードによって成り立つ、いわゆる「よく見かけるコード進行」のようなものです。
また、コード進行のサウンドを確認するうえで
- どのようなテンポにするか
- どのようなリズムやアクセントをつけるか
という点も考慮すべきだといえますが、作曲に慣れないうちは標準的なリズムパターンや好きな曲のテンポやリズムに近いものを活用すればそれで十分です。
▼関連ページ 作曲に使えるコード進行の定番(※初心者向け) 特に頻繁に使われる10パターンのまとめとそのアレンジ
3. コード進行を伴奏としてメロディを連想する
その次に、コード進行の響きを伴奏としてメロディを思い浮かべます。
ここが作曲の本質的な部分だといえますが、伴奏として用意されているコード進行はあくまでもきっかけにすぎないため、それを踏まえつつも自由な発想でメロディを思い浮かべられるとより望ましいです。
メロディによって伴奏のコードを差し換えたり、省略したり追加したりしながら独自にアレンジしても構いません。
4. 新たにコード進行を考える→メロディを連想する
これ以降は作業の繰り返しで、
- 連想したメロディから新たにコード進行を連想する
- コード進行から新たにメロディを連想する
という手順を交互に行いながら、メロディとコードが追いかけっこをするように少しずつ発展していくかたちを目指してみて下さい。
メロディやコード進行を生み出すことに苦労を感じることも多いかと思いますが、既に述べた通り「キー」が定まっていれば、
- キーの音
- キーのダイアトニックコード
- ダイアトニックコードを使った定番のコード進行
の三点を活用できるため、少し慣れれば案外すんなりと作れるようになるはずです。
コード進行に「定番のコード進行」を活用することで、まとまりのあるコードの流れを維持することもできます。
もちろん、例えば定番のコード進行に縛られすぎて、
「このコード進行に合うメロディは…」
という発想で作曲を進めてしまうと意味がないため、あくまでも「キー」という範囲の中で自由に連想できるメロディと、それを補強するための「ダイアトニックコード」「定番のコード進行」という位置づけを意識することがポイントとなります。
自由度の高い曲作り
この方法によって作曲を進めることで、「メロディ」「コード進行」の双方を先々まであえて確定させず、どのようにもできる状態の中で組み立てることになります。
結果として、作曲の自由度はその分高まります。
さらには「キー」という枠組みによってある程度の秩序も保たれるため、作曲が大きく破綻しずらいという点もこの方法のメリットだといえます。
作曲の進め方を模索している人は、ぜひこのやり方を候補のひとつに加えてみて下さい。
補足
メロディ作りのコツについて、「メロディ作りに強くなる本」というコンテンツとしてまとめています。 「メロディ作りに強くなる本」のご紹介
まとめ
私がこれまで見てきた中でも、この「コードを先に決めてしまう」という作曲のやり方によって、やりづらさと苦労ばかりを感じているような人がたくさんいました。
もともと作曲に「こうやらなければいけない」という絶対的な正解は無いため、のびのびとやれる手順や環境を探りながら、自分なりの方法を見つけてみてほしいです。
また、曲によって手順や方法が変わることもあり得るため、その試行錯誤も含めて作曲として楽しめればより理想的だといえるかもしれません。
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