ベーシストによるベースを使った作曲を考える(ルート弾きなどを活用したベースによる曲作りの解説・注意点)

ベースを弾いている人の中には「作曲をしてみたい」と考えている方が案外多いものです。

普段作曲講師として活動している私も、身内のバンドでは数年間ベースを担当していた経験があります。

そんな自分は「ベーシストによるベースを使った作曲」について考えられる立場にあるかと思うため、こちらではその点について少し詳しく解説していきます。

現在ベースを弾いていて「作曲したい」という思いを持たれている方は、これらを参考にしていただけるとありがたいです。

実際のところ、ベースはコードの響きを体感しづらい

そもそも、ベーシストだった私がバンド当時に作曲をするとき、実際にベースを使っていたかといわれれば、その答えは「使っていない」となります。

使っていたのは、ありがちですが「ギター」で、ベースでその曲を弾くときにはそこからさらにベースアレンジをして、ベースラインを考え出したうえで弾いていたことになります。

これは、「ベースがコードの響きを体感しづらい」という点にその理由があります。

ベースはメロディ(単音)楽器

ベーシストの皆さんであればご存知のように、ベースラインは基本的に単音で鳴らされるものです。

そのため、そこには(瞬間的な)コードの響きは無く、どちらかといえばベースラインの流れによって「ああ、この部分は『C』かな」というように和音を把握できるような性質を持っています。

反面で作曲とは「曲」を作ること、すなわち

  • メロディ
  • コード進行(ハーモニー)
  • リズム

を作ることであり、中でもボーカルのメロディラインを作るポップス・ロック等の作曲においては「コードの響きからメロディを連想すること」、または「メロディにコードの響きを割り当てること」が作業の中核を成します。

そのため、

「コードの響きを瞬間的に把握できる」

という点が、作曲を進めるうえで思いのほか重要となり、それを踏まえると、瞬間的にコードの響きを体感しづらいベースという楽器はそれに不都合だということになります。

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この点はベースに限らずすべてのメロディ楽器(単音でメロディを鳴らしていく楽器)にもいえることで、例えばトランペットやフルートを使って作曲をするのも同じように難易度が高いです。

結果として、ギターやピアノ(=楽器単体で瞬間的にコードを表現できて、かつ単音のメロディも鳴らすことができる楽器)がポップス・ロックにおける作曲の主役となっているのです。

ベースでも作曲ができる

では、上記を踏まえたうえで「ベースを使って作曲をすることは不可能なのか?」といわれればそうとも言い切れないところがあります。

それは、ベースが文字通り「コードのベース音(ルート音)を担う楽器」「スケールに沿って演奏される楽器」であるからで、それ考慮すればベースを弾きながら曲を作ることは可能です。

コード進行に付けられるベースラインのおさらい

例えば「キー=C」の曲を前提として

「C → Am」

というコード進行があり、その上で既になんらかのメロディが歌われているとします。

そこにベースをつけるとすれば

C Am
ドードドシ ラーラミラ

のようなベースラインが考えられますが、ここでの「ド」と「ラ」は、コード「C」と「Am」のルート音にあたるもの、つまり「C→Am」というコードを象徴するものです。

またその他に弾かれている音は「Cメジャースケール」に属する音であり、これらはベース演奏の基礎となる

  • コードのアクセントとなる部分では、そのコードのルート音を弾く
  • ベースラインはそのキーのスケールによって組み立てる

という二点を踏まえたものです。

▼関連ページ
メジャースケールの内容とその覚え方、割り出し方、なぜ必要なのか?について

コードに対するベースラインの付け方を逆説的に捉える

ベースで作曲をする際にはこれを逆説的に捉え、

  1. キーを決める
  2. そのキーのメジャースケールでベースラインを組み立てる
  3. アクセントとなる部分(小節の頭など)で弾く音を、「そのキーのダイアトニックコード内にあるコードのルート音」として感じる

という点を押さえてベースを演奏すれば、そこからコード進行やコードの響きを感じることができます。

具体的には、既に例として出したように例えば「キー=C」と決めたうえで

ドードドシ ラーラミラ

のように小節を区切ってベースラインを弾き、そこにある「ド」と「ラ」の音から

「C → Am」

というコード進行を連想する、ということです。

これができればあとはギターやピアノ(コードの響き)を使って作曲するのと同じで、そこからメジャースケールでメロディを連想し、コード・メロディともに展開させていくことが可能です。

▼関連ページ
コード(コード進行)からメロディを作る|コードの伴奏の上で自由にメロディを歌うことの概要とそのコツについて

ベースで作曲をする際のお勧め「ルート弾き」

上記をさらに踏まえ、ベースを使って作曲をする際に最もお勧めなのが、ベーシストの皆さんにとって馴染み深い「ルート弾き」を活用するやり方です。

ルートのみによりコードの響きが強く感じられる

「ルート弾き」を活用した作曲とは、前述の例でいえば「C→Am」というコードを

C Am
ドードドド ラーラララ

のように表現することを意味します。

これによってその部分のコードの響きがより強く感じられ、かつコードの演奏も単純になるため「ベースを演奏する」という負担も軽くなります

また、作曲の進め方は既にご紹介したものと同じです。

「ルート弾き」の注意点

「ルート弾き」でベースによる作曲に取り組む際に注意すべきは、「キー」や「ダイアトニックコード」をきちんと意識するという点です。

ルートのみの情報では他のコード進行も連想できてしまう

例えば「ド」や「ラ」というルートを持つコードには、前述した「C」「Am」以外にも

  • 「ド」=CmC7Cm7-5C6
  • 「ラ」=AA7Am7-5A6

などが、存在します。

既にご紹介した

ドードドド ラーラララ

というベースラインは、感じ方によっては

「C7 → A7」
「Cm → Am7-5」

のようにも捉えることができてしまい、そうなるとそのベースラインを「キー=C」だとは感じづらくなります。

結果としてそこにどのようなメロディを当てはめればいいのかがわからなくなってしまい、それが作曲の妨げとなってしまうのです。

あらかじめそのキーのスケールを弾いておく

これを防ぐためにはあらかじめ曲のキーをきちんと決め、それを意識しながらベースを弾くことが大切です。

具体的には、上記の例でいえば「Cメジャースケール=ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」のフレーズをベースで何度か弾いておき、そのうえで「ルート弾き」を行うようにします。

そうすることで、「Cダイアトニックコ―ド」にあるコードが必然的に連想され、「ド」のルート音を「C」、「ラ」のルート音を「Am」として捉えることができます。

ベースを使った作曲でメロディを考える難しさ

例えばギターやピアノを使って「C」というコードを鳴らしていた場合、そこでは

「C」=ド、ミ、ソ

という三つの音が鳴っており、「ミ」も「ソ」も聞こえているためそれを伴奏として「ミ~ソラド~」のようなメロディを考えることは簡単です。

反面で、既にご紹介したようなルート弾きによるベースで作曲を進める場合、例えば「C」というコードは

「C」=ドードドド…

のように表現することになり、それを伴奏としてメロディを考える際に前述の「ミ~ソラド~」のようなフレーズを歌うことが難しくなります。

これが冒頭で述べた「ベースはコードの響きを体感しづらい」を意味するもので、ベースを使って作曲を進めるうえで一番の壁となる点です。

単音で和音を連想する感覚を持つ

ご紹介した「ルート弾き」のアイディアは文字通りルート音のみをベースで演奏するやり方であるため、最も和音を浮かべづらいともいえます。

そのうえで、例にある「ド」という単音だけで「C=ド、ミ、ソ」という和音をスムーズに連想できるか否かが、メロディを柔軟に思い浮かべるための鍵となるのです。

これには、弾いている音(ルート音)をダイアトニックコードに置き換えた場合にどんなコードになるのか、という観点を持つことが大切で、既存の曲においてコードの響きとベースラインを繰り返し聴くことで徐々にその感覚が養われていきます。

また、ベースラインをスケールに沿って適度に動かした方がコードの響きはより感じやすくなるため、そのような観点からルート弾きに若干のアレンジを加えるとより作曲は進めやすくなるでしょう。

理論的知識も必要

作曲を円滑に進めるためには、前述した通り「キー」や「スケール」に関する概念が欠かせません。

中でも「ダイアトニックコード」や「コードの機能」について一通り知っておくことが大切で、それにより意図的にコード進行を組み立てていけるようになります。

▼関連ページ
ダイアトニックコードとスリーコード(概要や成り立ち、コードの役割などについて)

まとめ

ここまで「ベーシストによるベースを使った作曲」について考えてみました。

あらためて整理してみると、やはりギターやピアノを使う場合に比べて、ベースを使った作曲は難易度が高めだということがわかります。

そこにはコードの響きを連想すること(=音感)が求められますが、慣れれば次第に良いメロディを生み出していくことができるようになるはずです。

解説したやり方を参考に、是非ベースによる作曲を体感してみて下さい。

ベースの演奏のみによって既存の曲を歌う練習をすると、ベースラインからメロディを考えることが上手くなります。

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