こちらのページでは、頭の中だけを使って作曲をする方法(通称「脳内作曲」)のコツや利点、手順の例などについて解説していきます。
目次
頭の中だけで作曲をするために必要なもの
一般的に、作曲は楽器等を使って音を確認しながら行っていく作業です。
そのうえで、こちらのページでテーマとしている
「楽器を使わずに頭の中だけで作曲すること」
を行うためには、楽器を使わない分いくつかの能力が必要となります。
ここでいう「いくつかの能力」とは、具体的には以下のようなものです。
- 何もない状態でもメロディを考えられる
- 思いついたメロディをきちんと音として確定できる
- (メロディを支える)ハーモニーを連想できる
裏を返せば、これらの能力が未熟な状態で「脳内作曲」に取り組もうとすると、ほとんどの場合そこから一曲仕上げていくことに失敗します。
それぞれについて、詳しくは以下の通りです。
1. 何もない状態でもメロディを考えられる
「頭の中で作曲すること」は、言い換えれば「頭の中でメロディを考えること」です。
それには、まず当然のことながら、何らかの補助が無くても脳内だけでメロディを考えられる感性が必要となります。
この「補助」とはつまり楽器の音であり、またPCで作曲をする人にとってはDAWソフトから流れる音などがそれにあたります。
メロディがどのようなものか理解しておく必要がある
メロディを考えられるようになるためには、そもそも「メロディとはどのようなものか?」を理解しておく必要があります。
すなわち
- メロディの音階
- メロディのリズム
- メロディの形
などの一般的な状態がイメージできて、それを自分なりに思い浮かべることができる、ということです。
2. 思いついたメロディをきちんと音として確定できる
その次に、思いついたメロディを実際の曲にしていくためには、それを実体のあるものにする能力が求められます。
つまり、頭の中でなんとなくメロディを考えているだけではなく、それを音楽として再現できるようにする必要があるのです。
そのために、「脳内作曲」の手順の中では通常、
- 思いついたメロディを歌って実音にする
- 思いついたメロディを楽器(ピアノやギター等)で実音にする
という作業があわせて行われます。
これによって、頭の中で考えられたメロディを客観的に、かつ自分以外の人も聴くことができるようになります。
3.(メロディを支える)ハーモニーやリズムを連想できる
さらに、作曲をするうえでメロディとあわせて必要となるのが「ハーモニー」や「リズム」です。
頭の中で作曲をするうえでは、これらをメロディとあわせて連想できるか、またはメロディをきっかけとしてハーモニーやリズムまで創作を発展させることができることも大切です。
こちらも前述した内容と同じく、アイディアを曲としてまとめていくためには、ただなんとなく脳内でメロディを考えるだけでは不十分で、
- そのメロディはどのようなハーモニーの中に存在するものか?
- そのメロディはどのようなリズムの上に成り立つものか?
を考える必要がある、ということです。
楽器を使わずに頭の中で作曲する利点
こちらでテーマとしている「頭の中で作曲する方法」は、
- 楽器を用意しなくても作曲に取り掛かれる
- 何にも縛られず自由に発想を広げることができる
などの利点から、プロの作曲家にも取り入れられているものです。
ある職業作曲家の「脳内作曲」例
私の知り合いの職業作曲家も、「頭の中で作曲すること」を実際の制作に取り入れている一人です。
彼は某男性アイドルグループのシングル曲や、その他多くのメジャー系作品を手掛けるプロの作曲家ですが、その制作は「頭の中でメロディを考えることから始まる」と言っています。
その理由は、やはり「楽器の音に影響されず、純粋に良いメロディのみを思い浮かべることができるから」だといいます。
彼が取り組む制作ではサビの品質が特に重視されるため、この場合は「サビとして通用する良いメロディとは?」という姿勢で、脳内作曲を行うとのことです。
多くの人が耳にする有名なメロディが、楽器を何も使わず頭の中のみから生み出されていることを考えると興味深いです。
自由であるがゆえの難しさ
上記の例にもあるように、特に自由な発想を目的として頭の中で作曲に取り掛かる人は多いです。
反面で、自由であるがゆえにやり方を間違えるとメロディがとりとめのないものになってしまうのも事実で、そこにはやはり既に述べたような能力があわせて必要となります。
自由な発想をきちんとした一曲にまとめ上げていくだけの経験と技術が、この「脳内作曲」を意味のあるものにするのです。
頭の中で行う作曲の方法例
ここからは、頭の中で作曲するための方法を簡単にご紹介します。
とはいっても、やるべきことはとてもシンプルです。
1. 頭の中でメロディを思い浮かべる
まず、すべてのスタートとなるのが「メロディを思い浮かべること」です。
文字通り頭の中でメロディを考え、それが採用に値する魅力的なメロディかどうかを吟味していきます。
この際、本当に何のきっかけもないとメロディを考えることがより難しくなってしまうため、
- 自分の理想とする音楽を聴いて、インスピレーションを得る
- 弾き語りなどを通してメロディを歌う脳を活性化させておく
などの準備も効果的に働きます。
これらの準備を経て脳内作曲に取り組むと、知らず知らずのうちに既存曲に影響を受けたようなメロディが思い浮かんでしまうこともあるため、注意が必要です。
テンポ(リズム)だけはきちんと明確にしておく
頭の中でメロディを考える際にポイントとなるのが、
そのメロディがどんなテンポ(リズム)を持っているか?
という点です。
思いついたメロディはその後に曲として発展させていくことになりますが、その際にメロディの持つテンポやリズム・アクセント等があやふやだと、曲はやはり綺麗にまとまっていきません。
自由にメロディを思い浮かべつつも、そこに手拍子をつけたり、リズムを取ったりしながらテンポとアクセントを明確にしていくよう心掛けて下さい。
2. 思いついたメロディをボイスメモなどに記録する
次に、これだというメロディが頭の中で思いついたら、音程をある程度はっきりと捉えられるように、それを何度か口に出して歌います。
そのうえで、メロディを忘れてしまわないよう、録音することで記録しましょう。
ここではボーカルメロディのある曲の作曲を前提としていますが、思いついたメロディを楽器に置き換え、五線譜などを使って記録していくこともできます。
録音には、スマホのボイスメモなどが活用できます。
また、この際に前述した「テンポ(リズム)」をあわせて記録することが大切で、具体的には既に述べた通り手拍子を付けるなどして、メロディがどのようなテンポのもとに成り立つものかを明確にしておきます。
3. そのメロディに合うコードを明らかにする
次に、思いついたメロディにどんなコードが合うかを考えていくことになります。
これを円滑にこなすためには、ページの冒頭で述べたような
どんなハーモニーの中に成り立つメロディか?
をきちんと連想できているかが鍵となります。
また、メロディをきちんとした音として確定できているかどうかも重要です。
この「メロディからコードを探す」という作業の詳細については、以下のページで詳しく解説しています。
メロディにコードをつける方法|思いついたメロディにコードをつけるための手順と選び方のコツ
メロディを思いついた時点でコードが明確ではなくても、この作業を通して理想とするハーモニーを特定させていくこともできます。
曲のすべてを脳内で行うことはあまり無い
ここで、
- コードのつながりは脳内で考えられないのか?
- 曲のすべてを頭の中だけで作ることはできないのか?
という疑問が湧きますが、通常「頭の中で作曲をする」という場合、ここで例として挙げているような「曲の一部分にあたるメロディを作ること」を指すことが多いです。
やり方によっては、メロディやコードを大きなサイズで思い浮かべ、文字通り頭の中のみで作曲を進めていくこともできますが、その労力に見合う効果を踏まえると、あまり現実的とはいえません。
4. キーを明らかにし、作業を通常の作曲工程に乗せる
ここまでくれば、あとは通常の作曲と同じです。
コード進行やメロディラインを元にキーを明確にし、そのキーの
- メジャースケール
- ダイアトニックコード
などを活用してメロディとコード進行をさらに発展させていきます。
これらについて、詳細は以下のページにて解説しています。
▼関連ページ
曲のキー(調)を判別する方法【コードのみからキーを判別する】そもそも「キー」とはどのようなものか?
キー(音楽)について キー=「中心音」と「まとまりのある音のグループ」を意味する言葉
ダイアトニックコードとスリーコード 概要や成り立ち、コードの役割などについて
まとめ
ここまで、頭の中で作曲をするためのコツや利点、手順の例などについて解説してきました。
まとめは以下の通りです。
- 頭の中で作曲するためには「メロディを考える能力」「考えたメロディを音にして確定する能力」「ハーモニーとリズムを連想する能力」が必要となる。
- 脳内作曲はいつでもできる、自由に発想を広げられる。
- 自由であるがゆえに、メロディがとりとめのないものになってしまう危険性もある。
頭の中で作曲することは、簡単にいえば
なんか良いメロディ無いかな~
と空想すること、ともいえます。
経験を積めば、意外性のあるメロディを作るうえでそのような制作のスタイルがより効果的に働くこともあります。
普段楽器やPC等を使ってばかりいる人は、是非一度このような作曲にも取り組んでみて下さい。
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