作る曲がいつも似たようなものになってしまう、という悩みへの対処法

作曲を続けていく中で、

「いつも同じような(似たような)曲ばかりできてしまう」

という悩みを抱えている人は多いものです。

私のところにもそのような悩みが寄せられることは多く、その都度対処の仕方についていくつかアドバイスをしています。

というわけで、こちらでもその「同じような(似たような)曲ばかりできてしまう」への対処法について詳しく解説してみます。

「同じような曲」は必ずしも悪いわけではない

今回のテーマに関連するものとして、以前にこのような投稿をしています。

作る曲がどれも似た感じになる…という悩み、似てるということはそれだけ曲の傾向が統一されているともいえる。つまりそれが自分の作風だということ。プロのアーティストにも「あの人のあの感じ」という曲調がありそれが個性にもなっている。必ずしも悪いわけではないと考えると少し気が楽になります。

ここで述べている通り、

「作る曲がどれも似たようなものになってしまう」のは、必ずしも悪いわけではない

というのが私の持論です。

詰まるところ「似たような曲」は作曲者の「好きなメロディ/コード進行/曲調」であり、それは作曲者の個性でもあります。

作る人が同じであればアウトプットがある程度似てくるのは当然で、上記投稿にあるとおりそれが「作風」にもなると私は捉えています。

自分の作るものを頭ごなしに否定しない

こちらで取り上げている悩みへの対処法を考えるにあたり、まず心に留めておくべきはこの点です。

つまり、常に違った印象を与える曲を作ることが必ずしも正義ではなく、時として似たような曲も「作曲者の個性」になり、それが必要なものになるということです。

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もちろん、同じような曲調ばかりを何度も扱っていると作風の幅は狭くなってしまいますが、「似たような曲→曲の質が低い」という観点で自分の生み出すものを頭ごなしに否定する必要はない、ということをここでは述べています

これによって作る曲の許容範囲が広がり、より自然に作曲に取り組むことができるようになるはずです

具体的な対処法

では、実際の作曲の中で「前に作った曲と似てる」と感じてしまった場合、それにどう対処していけばいいのでしょうか?

ここで考えられる具体的な対処法は以下の二つです。

  • 作ったコード進行を度数で捉え、それとは違う構造を持ったコード進行を作るよう心掛ける
  • 自分が好きなメロディのリズムや形を明らかにし、それとは要素を活用してメロディを作る

それぞれについて、詳しく解説していきます。

1. 作ったコード進行を度数で捉え、それとは違う構造を持ったコード進行を作るよう心掛ける

ポップス・ロックの作曲には「キー」の概念が必須で、あわせてコード進行にはそのキーの「ダイアトニックコード」が活用されます。

▼関連ページ キー(音楽)について キー=「中心音」と「まとまりのある音のグループ」を意味する言葉 ダイアトニックコードとスリーコード 概要や成り立ち、コードの役割などについて

詳しい解説は上記ページに譲りますが、これは言い方を変えると

「キー」という一つの概念の元にあらゆる曲が作られている

ということで、それが「曲が似たようなものになってしまう」という悩みを生む原因でもあります。

特にコード進行は上記の「ダイアトニックコード」にある7個を主に活用しながら作っていくためどうしてもパターン化してしまい、意識せずにそれをつなげると似たようなものになってしまいがちです。

そこで、やるべきは

コードを度数で捉える

ということで、それによって作ったものを構造で捉え、そこからいろいろなタイプのコード進行を生み出していけるようになります

意図せずコード進行が同じになってしまうケース

例えば、以下は「キー=Cメジャー」と「キー=B♭メジャー」における二つのコード進行を示したものですが、この双方は一見違うものに感じられつつも実は同じ構造を持っています

キー=Cメジャー
Dm→G7→Em→Am
キー=B♭メジャー
Cm→F7→Dm→Gm

これらは、キーが違うだけで、ダイアトニックコードの度数ではどちらも

IIm→V7→IIIm→VIm

という構造によって成り立っています。

例えば

「前回は『キー=Cメジャー』で作ったから今回は『キー=B♭メジャー』で作ろう」

と作曲を始め、そこで前回とは違うコード進行「Cm→F7→Dm→Gm」を扱ったとします。

ここで上記の構造を意識できていないと、新たなコード進行を導入している気でいても、実はそれが以前に使ったものと全く同じものだった、ということが起こってしまうのです。

コード進行を構造で捉えながら組み立てる

コード進行を組み立てる時には、ここで述べている「構造で捉える」という意識を持つことが大切です。

▼関連ページ コード進行を数字(度数)で表す利点・代表的な数字パターンの解説 キー別のコード進行を効率良く覚える/扱うための概念

例えば前述した「Dm→G7→Em→Am(キー=Cメジャー)」を作った際に、

「これは『IIm→V7→IIIm→VIm』だ」

という構造的な観点でそれを捉えることができていれば、似たようなものを自分が作ってしまうことを未然に防ぐことができます

つまり、

  • 「IIm→V7→IIIm→VIm」とは違う構造を持ったコード進行を活用する
  • コードの機能的な流れまでをきちんと把握し、それを避けるようにコード進行を作り込む
  • ダイアトニックコードにないコードを活用してみる

などの方法をとることができるようになる、ということです。

リハーモナイズの活用

コード進行には「リハーモナイズ」という観点があり、あるコードを「同じ意味合いを持つ別のコード」に置き換えることができます。

▼関連ページ リハーモナイズの解説|概要と考え方、やり方や実例などを詳しく説明します

これは主に上記で挙げた「機能的な流れ」を考慮して行うものですが、同じ構造を持つコード進行を意図的に避けるためには、このような概念を活用することも検討できます。

構造が違うのに似ていると感じる原因

また「リハーモナイズ」の観点は、裏を返せば「似たような雰囲気を持つコード進行」を生み出してしまう原因になります。

つまり、

違った構造を持つコード進行を作ったような気でいても、実際のところ同じ意味合いを持つコード進行だった

ということが起こり得る、ということです。

このあたりの見極めは難しいところがありますが、「構造=度数の流れは明らかに違うのに、なんだか似たような雰囲気を持っている」というコード進行の多くにこの「リハーモナイズ的な類似性」があります。

そのような場合にはこの点を改善のヒントとして探ってみて下さい。

2. 自分が好きなメロディのリズムや形を明らかにし、それとは違う要素を活用してメロディを作る

コードと共に「似たような曲」の原因になるものがメロディで、それも同じくその成り立ちや骨組みを明らかにすることで、さまざまなバリエーションを生み出すことができるようになります。

これを実施するにあたり、まず「そもそもメロディとは何か?」ということをきちんと捉えておく必要があります。

▼関連ページ メロディが作れない(思い浮かばない)時の打開策|メロディはこうやって作る!を解説します。

上記のページでも述べている通り、メロディは、

  • 扱われている音の種類
  • 音の進み方(音階の幅)
  • 音符の種類(リズム)
  • 始め方
  • 大きさ

などの要素によって成り立つものです。

なにげなく歌ったメロディが上記のような観点からどのような骨組みによって成り立っているかを明らかにすることで、それを意図的に避けるように新たなメロディを作り込むことができます。

意識を持ってメロディを考える

特に、「作るメロディが毎回同じような感じになってしまう」という悩みを持つ人の多くは、この点が意識できていないものです。

つまり、

「なんかいいメロディないかな~」

と無計画にメロディを考えてしまうことで、結果として自分が歌いやすく、なんとなく心地良いメロディに思考が向いてしまい、似たようなものが生まれてしまうのです

これを改善させるためには、まずメロディを作る際に上記で挙げた「要素」に意識を向けることが大切です。

すなわち

  • 「『タタタ…』と刻むのではなく、『ターー…』と伸ばす感じのメロディにしてみよう」
  • 「音階を『ド→レ→ミ…』と隣に進ませるのではなく、『ド→ソ…』のように跳躍させてみよう」
  • 「短いフレーズを繰り返すのではなく、長く発展し続けていくような大きなメロディにしよう」

というようなことを考慮しながらメロディを歌うということです。

そこから、例えば、

以前に作った曲のサビが「タタタ…」と短く畳みかけるようなメロディだったら、今回は「ターー…」と伸ばすようなメロディにする

というような検討ができるはずです。

このようなことを考えながらメロディを作ることで、必然的にそれまでとは違ったタイプの曲ができ上がっていきます

「同じような曲ばかりできてしまう」という悩みを打開する普段の心掛け

今回のテーマである「同じような(似たような)曲ばかりできてしまう」という悩みは、実際のところ「日頃の視野の狭さ」が原因になっていることも多いです。

それは

  • 新しい知識を学んでいない/それを取り入れて作曲していない
  • 同じような曲ばかり聴いている
  • 新しい経験をしていない

というような状態にあることを指します。

裏を返せば、新たな知識を学んだり、それまで聴いたことのなかったような音楽を聴けば必然的にでき上がる曲の内容や質にも変化が生まれるものです

以下のページではその点について詳しく解説しています。

作曲のスランプを乗り越える|悩みやマンネリ改善に効果のある4つの行動

こちらも是非参考にしてみて下さい。

まとめ

ここまで「いつも同じような(似たような)曲ばかりできてしまう」という悩みへの対処法を考えてみましたが、それらは要約すれば

  • 新たな知識や音楽を常に取り入れ、それを作曲に反映させる
  • 無計画にやらず、きちんと方針や企画を立てて曲作りを行う

という二点に集約されます。

現在悩んでしまっている人のほとんどはこの点ができていないもので、これらをここに留めながら作曲を繰り返すことでおのずと表情豊かな作品が揃っていくはずです

是非前向きに、状況の改善に取り組んでみて下さい。

経験と共に、いろいろな曲が作れるようになっていきます。

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