歌もの(ボーカルメロディのある曲)を作曲するためのコツ|歌いやすい、歌いたくなる曲を作るためには?

普段から作曲講師として活動する私は、これまで主にボーカルメロディのある曲=「歌もの」の曲を作ってきました。

もともとシンガーソングライターとして活動していたこともあり、自分の中で「作曲=歌もの」なのですが、そこにはいわゆる「インスト曲」と呼ばれる、ボーカルメロディの無い曲とはまた違った気遣いが必要となります。

こちらでは、そんな「歌もの」の曲を「歌いたくなるもの」「歌いやすいもの」にするためのコツや注意点について解説していきます。

「歌もの」作曲で大切な三つのコツ

今回テーマとする「歌ものの曲(ボーカルメロディのある曲)」とは、つまるところ「メロディが人間の声によって歌われている曲」のことを指します。

そのため、特にこのジャンルの曲を作るコツや注意点は、メロディ作りに集約されます。

以下の三点は、「歌もの」の曲を作曲するうえで大切となるコツや注意点です。

  1. メロディを歌いながら作る
  2. 音域に配慮してメロディを作る
  3. 単純なメロディでも許容する

これ以降で、それぞれを詳しく解説していきます。

1. メロディを歌いながら作る

歌ものを作るうえで最も重要で、かつ曲の品質を一番に左右するのが「歌いながら作る」という点です。

この点については、先日に以下のツイートをしています。


歌を作るなら、メロディは歌いながら作りましょう。メロディは歌われるものになるので、歌って無理がないとか歌って心地良いという観点が必要だからです。つまり、メロディには「歌のメロディ」と「器楽のメロディ」があるということですね。

これは、平たくいえば「『歌』は歌って作りましょう」ということです。

「歌のメロディ」を作る

この「歌って作る」という鉄則は、メロディを

  • 歌いやすいもの
  • 歌って無理がないもの

にするための方法ともいえます。

上記のツイートでも述べている通り、そもそもメロディには「歌のメロディ」「器楽のメロディ」があり、それぞれは全く違った性質を持っています。

楽器ではできても歌では難しい

例えば、畳みかけるようなエレキギターのフレーズを歌声で上手に表現することは難しい、と多くの人がすぐに理解できるはずです。

このように、楽器では簡単に表現できてしまうメロディも、それを歌で表現しようとすると、それがとても困難なものになってしまうことはよくあります。

すなわち、この例における「エレキギターのフレーズ」が「器楽のメロディ」で、楽器を弾きながらメロディを作ることは「器楽のメロディを生み出すこと」につながります。

DTMは特にどんなメロディでも表現できてしまう

上記で「器楽」という言葉を使っていましたが、これは最近主流になりつつある「DTM」も同じです。

つまり、メロディを画面の中(DAW上、データ)として考えてしまうと、それが「歌では表現しづらいもの」になってしまうということです。

データ(打ち込み)は楽器以上に何でも表現できてしまうため、特にこの点に注意すべきです。

歌うことで「歌のメロディ」を生み出す

上記を踏まえ、「歌もの」の曲を作る際には、「歌ってメロディを考える」という姿勢が最も大切で、それによって「歌のメロディ」を生み出すことができます。

具体的なメロディの考え方は

  • 楽器を弾きながらメロディを歌って考える
  • DAWで伴奏を流しながら、それに合うメロディを考える

などです。

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DTMで作業を行う場合にはデモ音源用にボーカリストの歌うメロディをデータとして打ち込むこともありますが、その際には事前に歌って無理がない(心地良い)ということを確認したうえで、それらを実施するようにして下さい

これを守ることで、

  • 歌いづらい音の移動
  • 歌いづらいリズム
  • 歌えない音域

などに気付くことができ、結果としてメロディが歌うのに適したものになっていきます。

すぎやまこういちさんのお言葉

この点については、作曲家として有名なすぎやまこういちさんも同じことを述べています。

ご興味のある方は、是非著作の本にも目を通してみて下さい。


2. 音域に配慮してメロディを作る

二つ目に注意すべき点は「音域に配慮する」ということです。

この点については、以下の記事でも詳しく解説しています。
作曲のコツ|メロディの音域に注意して作曲をすることの重要性について

音域に対して厳しい耳を持つ

前述した通り、メロディを歌いながら作ることで「歌うことが困難な音域」はある程度排除することが出来ます。

しかし、「メロディの音域」という点に特化するとそれでもまだ不完全で、より厳しい耳を持つことが大切だと私は日頃から伝えています。

適当に対処してしまいがち

多くの作曲初心者は、この「メロディの音域」という点に対して適当に対処してしまいがちです。

つまり

  • 部屋でつぶやくように歌って、きちんと声を出すことが想定できていない
  • 多少高音に無理があっても「裏声で対処できるだろう」と安易に見逃してしまう

など、歌いやすさに対する配慮がしっかりと行えていないのです。

1オクターブ半に収める

実際のところ、どのような観点によってメロディの音域をコントロールすればいいかと問われると、それは「ボーカリスト次第」だといえます。

簡単にいえば、

歌い手が歌える音域にあわせてメロディを作り込めばいい
ということになります。

そのうえで、それらをあえて定義づけるとすれば、目安となる「1オクターブ半」程度の音域にメロディが収まるよう作り込むことがポイントとなります。

例えば男女それぞれの出せる「低い音」「高い音」には違いがあり、これは人によっても異なりますが、音域という観点で考えれば、ほとんど誰もがこの「1オクターブ半」という音域の中で声を出せます


上記の図で示したように、例えば作った時点でメロディに高すぎる部分があったとしても、1オクターブ半の音域にメロディが収まっていれば、ほとんどの場面において移調によって対応が可能となるのです。

それが、同じく図にあるように適正の範囲を超える音域でメロディが作り込まれている場合、仮に「高すぎるから低くしよう」と移調をした場合、今度は低すぎて歌えない部分が生まれてしまいます。

この「1オクターブ半」という範囲はあくまで目安ですが、特に「歌もの」の曲を他人に提供をする場合(移調することがあり得る場合)には、特にこの点に対する注意が必要となります。

3. 単純なメロディでも許容する

最後は注意点というよりも「コツ」と呼べる内容で、それは「単純なメロディでも歌声では許容することが出来る」という点です。

器楽と歌声との比較

上記で「歌のメロディ」と「器楽のメロディ」があるということを述べましたが、こと「歌のメロディ」に限っては、シンプルで何の変哲もないメロディでも十分に許容できてしまう、という性質を持っています。

例えば、以下は単音で音階が上下しない音をDAWに打ち込んだものですが、これを(同音連続の)メロディとして聴くと、やはり味気なくて面白みのないものだと感じてしまうはずです。


反面で、例えばヒット曲における以下のメロディには、同じように音階が変化しない「同音連続」の部分が盛り込まれています。

既存曲での例
  • SMAP「世界に一つだけの花」Aメロ冒頭

    「はなーやのーみせーさきーに ~」

  • 平井堅「瞳をとじて」サビ冒頭

    ひーとみーをとーじて ~」

※赤字が同音連続となっている部分

これを踏まえると、歌声では単純な形をしたメロディが思いのほか許容できてしまうことがわかります。
作曲のコツ|メロディの形三種のご紹介(同音連続・ギザギザ・音跳び)

単純なメロディが良い効果を生むことがある

上記で述べた事柄も同様に、歌いながらメロディを作ることで満たすことが出来ます

すなわち、メロディを歌いながら作ってさえいれば、例え思いついたメロディが単純でもそれが採用に値するメロディだと感じられるのです。

また上記で挙げたヒット曲の例のように、逆にその「単純なメロディ」が良い効果を生むことがあり、これは「歌もの」ならではです。

例えシンプルで派手さの無い音階を持つメロディでも、リズムが一定で変化に乏しいメロディでも、歌いながらそれを組み立てて確認することで名曲のメロディになり得ます。

「歌もの」の作曲を上達させるために必要なこと

ここまでに述べた注意点やコツに加えて、「歌もの」の作曲を上達させるためにはいくつかのポイントがあります。

この点についても、以前に以下のようなツイートをしています。


ボーカル曲の作曲が上手くなる人の特徴

  1. 弾き語りで色々な曲を歌っている
  2. 分析する視点で曲を聴いている
  3. 日常的に歌を口ずさんでいる
  4. 音楽理論と作曲方法論を勉強している
  5. 音楽を幅広く沢山聴いている

私が見てきた限り2~4を掛け合わせ始めると初心者でもぐんぐん成長していきます

作曲全般にいえることとして「音楽理論」や「方法論」は大切ですが、中でも

  • 弾き語りで色々な歌を歌う
  • 日常的に歌を口ずさむ

という二点は歌もの作曲に特化した内容です。

この「歌う」ということが何よりもそのトレーニングとなるため、作曲を上達させたい方は特にこの点を重視して取り組むようにしてみて下さい。

まとめ

ここまで、歌もの(ボーカルメロディのある曲)を作曲するためのコツについて解説してきました。

まとめると、以下のようになります。

  • 「歌って無理がない」「歌って心地良い」のために、メロディを歌いながら作ることが大切
  • メロディ全体の音域は「1オクターブ半」を目安に、厳しい耳を持つ
  • 単純なメロディでも、それが良い効果を生むことがあるため、許容する

このように、「歌もの」の作曲はインスト曲とは違った難しさや制限がありますが、そこには必ず生身の人間が関わるため、捉え方を変えればとても温かみのあるものだといえます。

歌い手(自分で歌う場合には歌っている自分の姿)のことを常に念頭に置きながら、思いやりを持って作曲をすることが「歌もの」作曲の成功の秘訣です。

良い歌は、思わず歌いたくなるものです。

補足

作曲上達の方法について、以下のページにて詳しく解説しています。
【作曲を独学で進めるときの勉強方法】これをやれば作曲は上手くなる!「上達に欠かせない5つの柱」とは?