カデンツ(終止形)の詳細とポップス・ロック作曲への応用

こちらのページでは、音楽理論用語として使用されている「カデンツ」の詳細と、それを作曲にどう活かしていけばいいか、という点について解説していきます。

カデンツの概要

「カデンツ(kadenz、cadenza)」とは、日本語で「終止形」とも訳される「ハーモニーを展開させるための定型」のことを意味する言葉です。

より簡単にいえば

「こうやってコードをつなげると良い感じの雰囲気になる」

ということを定型として整理したもので、それは以下の三つによって成り立っています。

  • T→D→T
  • T→SD→D→T
  • T→SD→T

※「T=トニック」「D=ドミナント」「SD=サブドミナント」

ここでの「T」「D」「SD」はコードが持つ響きの特徴(機能)を指すものです。

カデンツを理解するためには、この「コードの機能」を把握することが欠かせません。

コードの機能

一般的に曲は「スケール」と呼ばれる音のまとまりに沿って組み立てられ、中でも「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の音階を指す「メジャースケール」や、それをコードに置き換えた「(メジャー)ダイアトニックコード」はその象徴ともいえるものです。

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ダイアトニックコードとスリーコード 概要や成り立ち、コードの役割などについて

これは、言い方を変えれば

「メジャースケール」や「ダイアトニックコード」を活用して音楽を作ると、まとまりのある雰囲気を生み出すことができる

ということです。

そのうえで、ダイアトニックコードには七つのコードが含まれますが、それらは上記で述べた響きの特徴(機能)をもとにして以下三種に分類されます。

  1. トニック(T)=安定した響き
  2. ドミナント(D)=不安定な響き
  3. サブドミナント(SD)=少し不安定な響き

トニックのコードには落ち着いた雰囲気があり、それらはストーリーの始まりにも終りにもなるような安定感を持っています。

また反対に、ドミナントのコードには落ち着かない雰囲気があり、その先を連想させるような響き持っています。

サブドミナントのコードは「安定」でも「不安定」でもないといような、どっちつかずな存在です。

以下は例として、「キー=C」のダイアトニックコードに機能(T,D,SD)を併記したものです。

この表にある通り、例えば「キー=C」における「C(I)」のコードには安定した雰囲気があり、反面で「G(V)」のコードには不安定な雰囲気があります。

コードの機能をカデンツに組み込んでコード進行を作る

こちらで、改めて「カデンツ」の定型を以下に示します。

  • T→D→T
  • T→SD→D→T
  • T→SD→T

冒頭で述べた通り、カデンツは「ハーモニーを展開させるための定型」であるため、例えば一つ目の型は

トニックのあとにドミナントをつなげ、そこからトニックにつなげると良い感じのコードの流れを生み出せる

ということを意味しています。

ここから、前述の「キー=C」を例にとると

C(トニック)→G(ドミナント)→C(トニック)

というコード進行が連想できます。

つまり、上記表で例として挙げた「ダイアトニックコード内の各コードの機能」をカデンツに組み込むことでスムーズなコードの流れを作り出すことができるのです。

「カデンツとは何か?」を考える際には、

  • カデンツ=コード進行展開の定型
  • コードの機能とカデンツを使ってスムーズなコード進行を作ることができる

という点を理解して下さい。

カデンツを作曲(コード進行作り)に活用する

既に述べた通り、上記でご紹介したカデンツの三つの定型を、コードの持つ機能をもとにコード進行へと応用できます。

カデンツをスリーコードに置き換える

以下はカデンツをスリーコードのみによって解釈したもの(キー=C)です。

  • C→G→C(T→D→T)
  • C→F→G→C(T→SD→D→T)
  • C→F→C(T→SD→T)

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そもそもスリーコードが三種の機能を代表する三つのコードであるため、それらを直接的にカデンツへと割り当てることで、簡単にコード進行を作り出すことができます。

これらを実際に音で確認してみると、それぞれのコードが持つ響きの違いによって、コード進行にスムーズなストーリーが生まれているとわかります

カデンツを代理コードによって解釈する

代理コードをカデンツに当てはめることでコード進行を生み出すこともできます。

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代理コードについて あるコードに似た響きを持つコード&スリーコードの代わりに活用するマイナーコード

以下は、カデンツを代理コードによってアレンジしたものです。

  • C→G→Am(T→D→T)
  • C→Dm→G→C(T→SD→D→T)

ここでは「C」の代りに「Am」、「F」の代りに「Dm」を活用しています。

マイナーコードが加わることによって、スリーコードには無かったもの悲しい雰囲気がコード進行に生まれています。

カデンツをより自由に解釈する

カデンツは既にご紹介した三つの定形のみによって成り立ちますが、ポップス・ロックの作曲では、それらはより柔軟に活用されます

例1. トニックの連結

以下は、カデンツを自由に解釈したコード進行の例です。

C→Em→Am→G(T→T→T→D)

ここでは、コード進行の前半に「トニック→トニック→トニック」という機能の流れが作られています。

この部分をまとめて見れば「トニック」であり、その後のドミナント(G)と合わせて

T→D

という機能のつながりになっていると解釈できます。

つまり、カデンツ「T→D→T」にあった

T→D→T

赤字の部分を拡大解釈したものだということが理解できるはずです。

例2. サブドミナントから始める

以下は、カデンツを自由に解釈したもう一つの例です。

Dm→G→C→Am(SD→D→T→T)

ここではコード進行の流れがサブドミナントから始まっていますが、これは「T→SD→D→T」というカデンツを

SD→D→T

として始めているような形だと捉えることができます。

また、後半では「C→Am(T→T)」という、前述したトニック連結の形が含まれている点もポイントです。

カデンツをアレンジすることが大切

カデンツは「終止形」という日本語訳の通り、トニックに回帰することを前提としています。

▼関連ページ
終止の詳細とその種類(全終止・偽終止・アーメン終止・サブドミナントマイナー終止など)

これは「カデンツ」がクラシック音楽の概念であるためです。

反面で、上記「例1」のようにカデンツをドミナントコードで終わらせるなど、途中で区切ることも頻繁にあります。

また、もちろんコード進行はさまざまな形に展開していくものであるため、カデンツは連結されて使用されます。

このように、カデンツをあくまでも「コード進行の流れを作るための目安」と捉え、それを自分なりに解釈してアレンジしていくことが大切だといえるでしょう。

まとめ

ここまでカデンツの詳細とその活用方法について解説してきました。

以下まとめです。

  • カデンツとは「ハーモニーを展開させるための定型」
  • 「T-D-T」「T-SD-D-T」「T-SD-T」の三つがある。
  • コードの機能をそこに組み込んでコード進行を作ることができる。
  • あくめで目安と捉え、それを自由にアレンジすることが大切。

カデンツを上手に活用しつつ、かつそれを柔軟に解釈していくことが魅力的なコード進行を作るうえでのポイントとなります。

また、既存の曲のコード進行をカデンツの観点から分析してみることで、より理解を深めることができるはずです。

コード譜にあるコードを機能に置き換え、それをカデンツに当てはめて捉えるクセをつけましょう

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