作曲初心者の中には、
- コードの展開がいつもワンパターンになってしまう
- 個性的で聴きごたえのあるコードの展開を作りたいけどやり方がわからない
という悩みを抱えている人も多いはずです。
こちらではそれを踏まえ、
「どのような観点から個性的なコード進行を作ればいいか」
という点を詳しく解説します。
▼基本的なコード進行の作り方については以下のページにて解説しています。
目次
個性的なコード進行を作るための考え方概要
解説を進めるにあたり、まず個性的なコード進行を作るための手順(考え方)の概要を以下に示します。
- 定番のコード進行を活用する
- コードを装飾する
- ダイアトニックコード外でアレンジする
- 「装飾」と「ダイアトニックコード外」を複合させる
上記一覧では通番を割り振っていますが、正確には「2」と「3」は並列的に存在するものです。
それぞれについて、詳しくはこれ以降にて解説していきます。
1. 定番のコード進行を覚えて活用する
個性的なコード進行を作るうえで、まずその土台となるのが、いわゆる「よくあるコード進行」です。
▼以下のページではそれらをまとめています。
これを私は「定番のコード進行」などと呼んでいます。
定番のコード進行は「ダイアトニックコード」によって成り立つ
別ページでも述べている通り、通常ポップス・ロック等のコード進行は「ダイアトニックコード」と呼ばれるコードのグループを活用して作られます。
これらはキーの概念をもとにした「まとまりを感じるコードのグループ」で、これらを活用することでコード進行は聴きやすく、かつ説得力のあるものになります。
定番を活用するにあたり、まずここで述べた
- キー
- ダイアトニックコード
の概念を簡単にでも把握しておくと、その後の作業が進めやすくなるはずです。
よくある形をまず覚えて活用する
以下は、定番として覚えておくと重宝するコード進行10種をキー別にまとめた一覧です。
これらは定番といわれるだけあって、本当にさまざまな曲で活用されています。
これらはよく、ダイアトニックコード内の場所(度数)に置き換えて
- 1→4→5
- 1→6→2→5
- 4→5→3→6
のように数字によって語られることもあります。
また、よくあるコード進行を特定の曲名になぞらえて「〇〇進行」のように整理するやり方も一般的です。
いずれにしても、なんらかの方法によってまずは定番の進行を把握し、それらを活用してコード進行を組み立てていくことが個性的なコード進行を生み出すための土台となります。
▼以下のページでは「カノン進行」「ブルース進行」について解説しています。
2. コードを装飾する
個性的なコード進行を生み出すための次なるステップは「装飾」です。
これは、主に
- セブンスコードの活用
- テンションコードの活用
を意味するものです。
ダイアトニックコードは四和音以上にできる
上記でご紹介したダイアトニックコードによる定番のコード進行は、ポップス・ロックなどでは三つの構成音から成る「三和音」によって組み立てられることが多いです。
そのうえで、同じようにキーの音を活用しながらその構成音を四つ以上に増やすことが可能で、これらは「セブンスコード(7の和音)」などと呼ばれます。
詳しい解説は上記ページに譲りますが、例えばキー=Cメジャーにおける「C→Am→Dm→G」という進行は、以下のようにセブンスコードによって構成音を増やすことができます。
「C→Am→Dm→G」
「CM7→Am7→Dm7→G7」
セブンスコードによるコードの展開を実際に音で確認してみると、コード構成音が増えることで響きがより複雑になり、三和音の状態に比べて華やかになった印象を受けます。
特筆すべきは、
セブンスコードは7度の音を付加しているだけ=三和音がすべて含まれている
という点で、これは「定番をそのままセブンスコードに(装飾)することができる」ということを意味します。
もちろん装飾の有無をどう選択するかは自由であるため、定番のコード進行すべてをセブンスコードにしたり、また一部のみを装飾したりと、いろいろなパターンが考えられます。
テンションコードも基本的にはセブンスと同じ
上記でも挙げた通り、コードの装飾にはあわせて「テンションコード」という概念を活用できます。
これには若干のコツが必要ですが、例えば既にセブンスコードによって装飾していたコードを以下のように、さらに複雑なものにすることができます。
「CM7→Am7→Dm7→G7」
「CM7(9)→Am7(9)→Dm7(9)→G7(13)」
このテンション付加もあくまで一例であり、どのように装飾を加えるかは自由です。
また、「三和音/セブンスコードの響きを含んでいる」という点は同じであるため、テンションのつけ方をある程度理解すれば定番を崩さずそのまま装飾によってサウンドをより多彩にすることができます。
3. ダイアトニックコード外でアレンジする
上記で述べた「装飾」が定番の展開を崩さず響きのみを豊かにする手法であったのに対し、定番のコード進行そのものに手を加えて、コードの流れをアレンジすることも検討できます。
それがここで述べている「ダイアトニックコード外のコードを活用する方法」です。
ダイアトニックコードから外れる=個性的な響き
既に述べた通り、一般的な楽曲は「キー」「ダイアトニックコード」という概念によってある程度のまとまりを維持して作られます。
そのうえで、「『キーの音』から外れる音」を活用することがあわせて検討できますが、これをコード進行に置き換えて、
「ダイアトニックコードに無いコード(=ノンダイアトニックコード)を導入すること」
が考えられます。
その構造の通りキー=まとまりを感じさせる音のグループから外れた音を含むため、ノンダイアトニックコードはリスナーに異質(個性的)な雰囲気を感じさせます。
ノンダイアトニックコードの活用には理論的な裏付けが必要
ノンダイアトニックコードについて詳しくは上記でご紹介したページにて解説していますが、それらはただやみくもに活用されるわけではなく、基本的には使用に際してなんらかの理論的裏付けが必要となります。
このコードアレンジを実施するにあたり、まずノンダイアトニックコードに相当するいくつかのコードを理論的な裏付けをもとに理解することが前提となります。
例えば、ノンダイアトニックコードの一種として頻繁に活用される「セカンダリードミナントコード」の概念を知っていることで、定番のコード進行を以下のようにアレンジできるようになります。
- 【定番】「C→Em→Am」
- 【アレンジ】「C→E7→Am」
▼関連ページ
つまるところ、ノンダイアトニックコードによるアレンジを成功させるポイントはこれらの手法をいかに多く知っているか、によるところが大きいです。
理論的な成り立ちを理解することで、自分の意図に沿って効果的にそれらを盛り込んでいくことができます。
4.「装飾」と「ダイアトニックコード外」を複合させる
個性的なコード進行を作る最後のステップは、これまでにご紹介した二つの概念(「装飾」と「ダイアトニックコード外」)を複合させるやり方です。
それぞれをより高度に作り込んで組み合わせると、複雑で独特な響きを持つコード進行を生み出すことができます。
定番を土台として「装飾」と「ダイアトニックコード外」でアレンジした例
以下は、定番のコード進行と、それをここまでの概念によって順番にアレンジした例です。
「C→F→G」
「CM7→FM7→G7」
「C→F→F#dim→G」
「CM7→FM7→F#dim→G7」
最終的には
「CM7→FM7→F#dim→G7」
という複雑な響きを持ったコード進行が生み出されていますが、これがどのような経緯(考え方)によって作られているかが理解できるはずです。
つまり、「装飾」と「ダイアトニックコード外」の双方について理解を深め、それらを柔軟に扱えるようになることが個性的なコード進行を作るうえで最も重要だということです。
まとめ
以下はまとめです。
- 個性的なコード進行は「定番」→「装飾」→「ダイアトニック外」→「両者の複合」という観点で作れる。
- 「定番(の響き)を多彩にする」、または「定番そのものをアレンジする」という観点が求められる。
- 装飾の方法やダイアトニックコードにないコードの活用方法を身につけることがポイント。
少し複雑なコードの展開を目にするとその構造が理解できず難解な印象を受けてしまうものですが、ここまでの解説を踏まえると、それらも結局のところ、
- 定番
- 装飾
- ダイアトニックコード外
の三つを組み合わせたものにすぎない、ということがわかります。
ここまでに述べたそれぞれの概念を段階的に身につけながら、個性的なコード展開を意図的に作り上げることを目指してみて下さい。
定番の型をまず徹底的に使いこなすことが個性的なコード進行を作れるようになるための第一歩です。
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