日頃から作曲の先生として活動していると、
「メロディに合うコードが見つけられません」
という相談をよく受けます。そして、そのような悩みを持つ方の多くは
- 自分には音感がない…
- 自分には作曲のセンスがない…
とモヤモヤを抱えてしまうものです。
しかし、私が思うのはむしろその逆で、「メロディに合うコードが見つけられない」と悩んでいる人ほど作曲のセンスがあると考えています。
こちらでは、そのあたりについて詳しく述べてみます。
※当記事はこちらのポッドキャストの内容を編集/再構成したものです。
目次
メロディに合うコードが見つけられない人の実態
私自身も、作曲を始めたばかりの頃はこの
「思いついたメロディに合う、最適なコードを見つけ出す」
という作業に苦労しました。
いろいろなコードをメロディに割り当てて、それでもいまいち理想とする響きが得られず、短いメロディにコードをつけるだけでもすごく時間がかかったことを覚えています。
そのため、同じような悩みを持つ初心者のみなさんの気持ちはとてもよくわかりますが、そのうえで私は冒頭で述べた通り、
「メロディに合うコードが見つけられないその状態はむしろ作曲のセンスがある」
とお伝えしたいです。
判断ができている、ということ
「メロディに合うコードが見つけられない」と悩む人の多くは、実際にいくつかのコードをメロディに割り当て、その響きを自分なりに捉えたうえで
メロディに合っていない(=自分の求める響きではない)
という判断をしています。
この状態は、突き詰めていえば
「違う」という判断が自分なりにできている状態
ともいえます。
つまり、なんらかの「コード(=響き)のイメージ」を持っていて、それをもとに「違う」という判断を下しているのです。
もちろん、「明確に違うかどうかわからないけどなんとなく違う気がする…」というような、曖昧な判断になることもあるはずです。とはいえ、いずれにせよそこでは自分なりの尺度によって響きの判定ができています。
実際のところ、(これまでに出会ったことはありませんが)本当に音感がない人は恐らく響きのイメージを持てていないことで、「メロディに合っていない」ということすら判別できないはずです。
それを踏まえると、「コードがメロディに合っていない」と気づけている状態が、実はすごいことだと理解できるのではないでしょうか。
自信を持ち試行錯誤を繰り返す
上記で述べた通り、「メロディに合うコードが見つけられない」という状態が、
- 響きのイメージを(無意識にでも)持てている
- それをもとに自分なりの尺度で「違う」と判別できている
ということだと分かれば、あとはその判断を何度も繰り返して、理想とするコードの響きを見つけるだけです。
この自信が持てるだけでも、作曲に向かうモチベーションが変わってくるはずです。
ページ冒頭で述べた通り、私自身も作曲超初期の当時はコードが見つけられませんでしたが、曲を作りたいという強い熱意をもとに片っ端からコードを探してその「違う」という判断を重ね、なんとか1曲完成まで漕ぎつけていました。
メロディに合うコードを見つけられるようになるためのコツ
ここまでをもとに、
ではその「見つけられない」という状態をいかにして乗り越え、スムーズにコードを見つけられるようになるためにどんなことに取り組めばいいのか?
という点が気になるはずです。
以下に、それらをいくつか挙げてみます。
1. 最低限の音楽のルールを知る
まず初めに挙げられるのが、「最低限の音楽のルールを知る」という点です。
この「最低限の音楽のルール」とは、具体的には
- キー(およびそのもとになるスケール)
- ダイアトニックコード
のふたつの知識で、これは、
- ポップス・ロックなどの音楽は「キー」という概念のもとに成り立っている
- コード進行はキーに紐づく「ダイアトニックコード」を主体として作られる
ということを指します。
それらがわかれば、
- 自分が生み出したメロディがどんな「キー」に属するのか?
- そのキーに属する「ダイアトニックコード」にはどんなコードが含まれているのか?
という観点が持てるようになり、メロディに合うコードを見つける作業を、筋道を立てて考えながら行えるようになります。
例えば一部分のコードだけが見つからず、その前後が明らかになっていればダイアトニックコードからその部分を予測することができます。
▼関連ページ キー(音楽)について キー=「中心音」と「まとまりのある音のグループ」を意味する言葉 ダイアトニックコードとスリーコード 概要や成り立ち、コードの役割などについて
2. いろいろなコードを知る
メロディに合うコードを探すうえでは、基本的にいろいろなコードを割り当てて響きの調和を確認することになります。
それを踏まえると、いろいろなコードを知っていることも作業を円滑に進めるうえで有利です。
基本となる「メジャーコード」「マイナーコード」はもちろんのこと、
- メジャーセブンス
- マイナーセブンス
- フラットファイブ
- シックス
- ディミニッシュ
など、たくさんのコードの存在と、またそれを瞬時に表現できる演奏力も身につけておけると理想的です。
そのためには、日頃から弾き語りなどを通していろいろなコードに触れ、それらを演奏できるようにしておくのがおすすめです。
▼関連ページ コード(和音)の種類 コードネームの表記とそれぞれから受ける印象等の解説
コードをアレンジする技術が必要
実際にメロディに合うコードを考える際には、すべてを理論的な解釈によって突き止めることは稀で、もっと原始的に「音のイメージにあわせてコードを探っていく」というような作業になることが多いです。
その際に、ここで述べているようにいろいろなコードを即座に演奏で表現できる技術が重宝します。
例えば
「Am」コードがなんとなくメロディに合っている、でも少しイメージと違う
というような時には、その「Am」を「Am7」にしたり「Am7-5」にしたり、または「Adim」にしたりと、変形させながら響きを確認することができるようになります。
この「いろいろなコードを知ること」は、コードアレンジの対応力を高めること、とも言い換えられそうです。
3. コードを探す前の下準備をする
また、そもそも「メロディにどんなコードが合うか」という判断の答えは、そのメロディを思いついた人のみが知るものです。
そのため、何よりも「このメロディにはこのコードが合う」というイメージをきちんと持つことが大切だといえます。
そのためには、
- メロディを作る際にはなるべくそれに合うコードのイメージを持つようにする
- メロディを生み出したときの感覚を忘れないようにする(=感覚が残っているうちになるべく早くコードを見つけるようにする)
- メロディの音程があやふやにならないように、きちんとした音名にする
など、コードを探す前の下準備のような行動も求められるといえそうです。
補足
メロディ作りのコツについて、「メロディ作りに強くなる本」というコンテンツとしてまとめています。 「メロディ作りに強くなる本」のご紹介
まとめ
以下は、ここまでに述べた内容のまとめです。
- 「メロディに合うコードが見つけられない」という状態は、「違う」という判断ができている証拠=その感覚があるということ
- 最低限の音楽のルールを知り、たくさんのコードを覚えると、メロディに合うコードを見つけるうえで有利
- 根本的に、「メロディにはこんな響きのコードが合う」というイメージをきちんと固めておくことも必要
冒頭で述べた通り「メロディに合うコードがわからない」という悩みは多く、それによって自分の音楽的な才能を疑ってしまうひとはたくさんいます。
まずその点については、既に述べた通りむしろ音感があることに自信をもつべきです。
そして、その自信をもとに、音楽の基礎知識や下準備によって経験を重ねながら、何度も繰り返しやっていくことで必然的に状況は改善されていくはずです。
その経験はコード進行を自ら生み出していける技術に必ずつながっていくため、ぜひ前向きな姿勢で取り組んでみて下さい。
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