鼻歌作曲のやり方 メロディを鼻歌で作り、コードをつけて曲にする方法の解説

こちらのページでは、作曲のスタイルとして多くの人が一度はイメージしたことのある

鼻歌でメロディを思い浮かべてそれを一曲に仕上げていく方法

について、詳しく解説していきます。

実際私のところにもそのような作曲のやり方についての質問は多く、とはいえいくつかのコツもあるためなかなか一言では語り切れない、というもどかしさがあります。

そのような希望を満たすべく、こちらでは

  • 作曲の初心者(これから作曲を始める)
  • 楽器経験がない、または少ない

という前提で細かく解説を進めていきますので、是非参考にしていただけるとありがたいです。

用意するもの

まず、鼻歌で行う作曲=「鼻歌作曲」を始めるにあたり用意すべきものを以下に挙げます。

  • 鼻歌を録音するためのもの(スマホのボイスメモ、またはレコーダーなど)
  • 鼻歌の実音を確認するためのもの(ピアノやギターなどの楽器、またはスマホのピアノアプリ)
  • 作曲を進めるための機材(楽器、またはPCやスマホなど)

それぞれについて、簡単に解説しておきます。

鼻歌を録音するためのもの(スマホのボイスメモ、またはレコーダーなど)

作業を進める中で、思いついた鼻歌は忘れてしまわないように音声として録音しておく必要があります

最も手軽なのはスマホのボイスメモアプリを活用するやり方で、ほとんどのスマホにはもとからアプリがインストールされています。

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この際、音がわかればそれでいいため高価なレコーダー等は不要です。

また、既にハンディレコーダー等を所有している場合には、それを使うこともできます。

鼻歌の実音を確認するためのもの(ピアノやギターなどの楽器、またはスマホのピアノアプリ)

音声として記録した鼻歌を作曲に活用するためには、それをきちんとした実音として把握することが不可欠です。

これは簡単にいえば、「ラララ~」と歌った鼻歌を音名によって「ドミソ~」などと明確に言い表すことができる状態にすることを指します。

それにはピアノやギター等の楽器を使うのが最も確実で、同じ観点からスマホのピアノアプリ等も活用することができます。

作曲を進めるための機材(楽器、またはPCやスマホなど)

「鼻歌作曲」も通常の作曲と同じであるため、それを進めていくための機材が必要になります。

ポップス・ロック等のボーカルのある曲を前提とすると、現在考えられる作曲のスタイルには、

  • 楽器を弾き、歌いながら作るやり方
  • PCやスマホ等のソフトにデータを打ち込みながら作るやり方

の二つが想定できます。

それぞれの手順やコツを把握しておくが必要となりますが、この点は後述します。

鼻歌作曲の手順

鼻歌で作曲を進めていく手順について、以下に概要を示します。

  1. 鼻歌を歌う
  2. 思いついた鼻歌を音声として録音する
  3. 鼻歌の実音を明らかにする
  4. 鼻歌の実音からキーを予測する
  5. 予測したキーをもとにコードの伴奏を合わせ、キーを確定させる
  6. その他の部分を作曲する(一曲の完成)

大まかにはこのような順番に沿って進められます。

詳細について、これ以降で解説していきます。

1. 鼻歌を歌う

まず、一番最初にやるべきは当然のことながら「鼻歌を歌う」という行為です。

鼻歌のリズムを感じる

これを実施するうえでポイントとなるのが、「リズムを感じる」ということです。

「鼻歌作曲」ということでただ無計画にメロディを歌ってしまうと、やはりそれはつかみどころのないものになってしまうため、メロディを歌うにあたり

  • 何拍子か(四拍子または三拍子)
  • どんなアクセントを持っているか

などを最低限感じながら歌うことが求められます。

これは、より具体的にいえば鼻歌を歌いながら手拍子をつけたり、「ワン・ツー・スリー・フォー」というリズムを感じながら鼻歌を歌うことを意味します。

曲の持つリズムについては以下のページでもご紹介しているため、あわせて参考にしてみて下さい。

作曲に活用できるリズムの種類(曲作りの幅を広げる)

上記を踏まえ、ぼんやりと思いついた鼻歌のメロディを、リズムを感じながらきちんと歌えるようになるまで何度か口ずさみます

2. 思いついた鼻歌を音声として録音

次に、鼻歌のメロディがある程度確定したら、それを前述したスマホのボイスメモ等に歌って録音します

この際、上記で述べた「リズム」についてもあわせて録音しておくと、あとから聴き直した時にその鼻歌がどのようなリズムの上に成り立っているかがすぐにわかり便利です。

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実際に鼻歌を歌いながら手拍子を打ったり、「コツコツ…」と机などを叩いてリズムをつけても良いでしょう。

3. 鼻歌の実音を明らかにする

鼻歌がまとまったら、次に録音したメロディを作曲で使えるようにするため、その実音を明らかにします

鼻歌の音声を実際に聴き、ピアノ等を使って音を重ねながら

「この音は『ド』かな?『レ』かな?」

というように音名を確認していきます。

もちろん、録音された鼻歌は「スラスラスラ~」と流れて再生されてしまうため、何度も繰り返し音声を聴きながら音名を確認していくことになるはずです

これにより、鼻歌を「ドレーミーソーミ…」のような音名によって表記することが可能になります。

鼻歌の音がぶれている場合

また、ここで

「鼻歌の音階が不安定で音を明確に言い当てられない」

ということも考えられますが、それを矯正する意味もこの作業には含まれています

つまり、なんとなく歌った鼻歌の多くは音程が曖昧で、そのままではもちろん作曲に活用できないため、きちんとした音階によって鼻歌のメロディを整える必要がある、ということです。

この作業を通して、「ラララ~」と何気なく口ずさんでいた鼻歌が、実音として楽器などで再現できるメロディになります。

4. 鼻歌の実音からキーを割りだす

上記を通して鼻歌で歌ったメロディの音名が明らかになったら、次にそれらを活用してキーを割り出します

▼関連ページ
キー(音楽)について キー=「中心音」と「まとまりのある音のグループ」を意味する言葉

「キー」についてのおさらい

「キー」について詳しくは上記ページで解説していますが、それは簡単にいえば

まとまりを感じる7音をグループ別にわけたもの

のことです。

そもそも音には12個の種類があり、「音楽」とはそのなかで「まとまりを感じる7音」を主に使って組み立てられます。

この点について詳しい解説は割愛しますが、例えば「キー=C」というとき、その音楽では「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の7音が主に活用されます。

以下は、キー別の7音を表にしたものです。

もちろんこれら以外の5音も活用されますが、音楽=まとまりのある音の集まりの雰囲気を感じるために、キー別の上記7音を中心的に活用します。

なんとなく歌った鼻歌もどれかのキーに属する

ここで述べている「音楽が『キー』という概念によって成り立っている」ということは、鼻歌にもいえます。

つまり、なんとなく歌った鼻歌でも、それを「音楽」として心地良いと感じている時点でそれがなんらかのキーに属していると想定できる、ということです。

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多くの人が「心地良い」と感じるメロディは、一部の例外を除きほぼすべてがなんらかのキーの上に成り立っています

曲全体を作るために「どんな音使いをすればいいか」を明確にする

この点が「鼻歌でやる作曲」の最も重要な作業で、つまり

音楽とはそもそも「キー」=「まとまりを感じる7音」を主体として組み立てられる

作曲するためには「キー」=「どの7音を使うか?」を明らかにする必要がある

鼻歌によって思いついたメロディを作曲に活用するためには、それが「どのキーの音使いによって成り立つものか?」を明らかにすることが必要となる

ということです。

「ラララ~」となんとなく鼻歌を歌うだけでは不十分で、それを音名にし、そこからキーを割り出すことで初めて「どんな音使いをすればいいか」がわかります

そこから、それ以外の全体を曲として組み立てていくことができるようになるのです。

メロディの音を一覧と照らし合わせる

前述の作業を通してメロディの実音が明らかになったら、それを上記「キー別の音一覧」の表と照らし合わせ、それらがどのキーに属するかを推測します

これは、例えばメロディが

「ドレーミーソーミ…」

のような音名になっていたら、

「ド」「レ」「ミ」「ソ」を含むキーはなんだろう?

と考えながらメロディを前述の表に照らし合わせる、ということです。

この例では、以下の通り「キー=C」または「キー=G」「キー=F」に「ド」「レ」「ミ」「ソ」のすべてが含まれています。

キー=C
・ファ・・ラ・シ
キー=G
・ラ・シ・・ファ#
キー=F
ファ・・ラ・シ♭・
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これら以外のキーは、すべて「ド」「レ」「ミ」「ソ」のいずれかにシャープやフラットがついています

ここから、

「ドレーミーソーミ…」というメロディは「キー=C」「キー=G」「キー=F」のいずれかではないか?

という推測ができます。

5. 予測したキーをもとにコードの伴奏を合わせ、キーを確定させる

上記を通してキーが予測できたら、次にそれをもとにコードの伴奏をつけキーを確定させます。

ここで活用できるのが「ダイアトニックコード」です。

ダイアトニックコード=キーの音をコードにしたもの

「ダイアトニックコード」とは上記で表としている「キーの音」をコードに置き換えたものです。

以下に、その一覧を示します。

この中から任意のコードを鼻歌のメロディに伴奏として合せ、その調和を確認することで予測したキーが正しいかどうかを確かめることができます

象徴となるコードをまず活用する

ここでダイアトニックコードから活用するのは上記表で言う「I」と「IV」にあたるコードで、これらはそのキーを象徴する響きを持っています。

ここまでの例では「キー=C」「キー=G」「キー=F」の三つが予測できていたため、そこから

【キー=C】C,Dm,Em,F,G,Am,Bm-5

【活用するコード】「C」と「F」

【キー=G】G,Am,Bm,C,D,Em,F#m-5

【活用するコード】「G」と「C」

【キー=F】F,Gm,Am,B♭,C,Dm,Em-5

【活用するコード】「F」と「B♭」

というコードを導くことができます。

これらを録音した鼻歌の音声に伴奏として合わせ、響きが調和するかを確認します

コードを確認できる環境が必要

上記作業を行うためには、コードを音として確認できる環境が必要です。

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これが、ページ冒頭で述べた「作曲を進めるための機材」にあたります。

ピアノ等の楽器があれば直接的にコードを演奏によって鳴らすことができますし、またPC等の音楽制作の環境があれば音を打ち込んだり、あらかじめ用意されている「自動コード演奏機能」のようなものを使うことも検討できます。

コードフォームについては、以下の外部サイトが活用できます。

ギターコード一覧(楽器.me)

ピアノコード一覧(楽器.me)

コードが合わないと感じたら他を試す

上記を通して、キーの推測が正しければ「I」または「IV」のコードによって鼻歌メロディとのなんらかの調和を感じるはずです。

反面でキーを取り違えていたり、メロディの形によってはキーが正しくても「コードが調和していない」と感じることもあるため、その場合には上記以外のコードを伴奏として活用してみて下さい。

これは、例えば「キー=C」であれば

【キー=C】C,Dm,Em,F,G,Am,Bm-5

【I,IV以外のコード】「Dm」「Em」「G」「Am」「Bm-5」

を活用することを指します。

「キーの確定」をスムーズに行うためのポイント

実際のところ、この「キーを確定させる」という作業が鼻歌による作曲を成功させるか否かの分かれ目になる部分ともいえます。

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慣れていないうちはこの作業を困難だと感じ、またキーを取り違えてしまうことや、キーがわからなくなってしまうことも多いです。

以下は、作業を進めるうえでのポイントです。

a. メロディが落ち着く部分を探る

キーの音の中で、最も響きが安定しているのが「一番目の音」で、これは例えば

「キー=C」=「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」でいうところの「ド」

にあたります。

この音はメロディを作るうえでも中心的な役割を果たし、その安定した響きからメロディの始点や終点などに活用されることが多いです。

これを逆手に取ると、鼻歌のメロディからキーを推測するにあたりこの「メロディの始点」や「終点」を感じることができれば、キーを割りだすことが比較的容易になるといえます。

つまり、

  • 鼻歌のメロディを自分なりに展開させて落ち着くポイント(終点)を考える
  • メロディの始まりの安定感を確認し、それを始点とみなす

などによって、その音をそのまま「キーにおける一番目の音」と捉えることができるのです。

それができれば直接的にキーが推測でき、あとは上記手順に沿って比較的簡単にキーを確定させることができます。

b. 何度も使われる音、アクセントの強い音から直接コードを想定する

鼻歌のメロディをキーの判別に活用する際には、何度も使われている音やアクセントの強い音に注目し、それをそのままコードに結びつけることもできます。

例えば、前述した

「ドレーミーソーミ…」

というメロディでは、「ミ」という音が二回登場します。

また、メロディのアクセントは「ソー」という音にも強くあるため、これを「『ミ』と『ソ』の音が前面に出ているメロディ」と捉え、

「ミ」と「ソ」の音を構成音に含むコードは何かな?

と考えることができます。

上記の例では

  • C=ド・ミ・ソ
  • Em=ミ・ソ・シ

という構成音からこれらのコードが推測でき、ダイアトニックコード一覧を元にそれらを含む「キー=C」「キー=G」あたりが推測できます。

キー以外の音やコードが連想できる場合もある

上記とは別に、鼻歌のメロディにキー以外の音が含まれていたり、メロディに調和するコードがダイアトニックコード以外のものである可能性もあります。

そうなるとキー判別の難易度はより高まりますが、ここまでに述べた

  • メロディの音を幅広く抽出してキーを推測する
  • メロディの始点/終点を想定してキーを推測する
  • メロディの中で何度も使われる音やアクセントからコードを推測する

などを複合させると、より作業を進めやすくなるはずです。

また、これらを円滑に進めるためにはやはり音楽理論やコード進行の基礎を知っておくことが求められます。

以下のページも、あわせて参考にしてみて下さい。

音楽理論を知りたい人のための「学習の見取り図」※独学に活用できる「音楽理論の何をどの順番で学べばいいか」のまとめ 【コード進行とは?(コード進行の作り方)】どのような手順に沿ってコード進行は作られるのか?を考える

6. その他の部分を作曲する(一曲の完成)

ここまでを通して鼻歌のキーやそれに合うコードが特定できたら、あとはそのキーをもとにメロディやコードを展開させ、一曲にしていきます

ここからは直接的な作曲の作業になるため、詳しい手順やコツなどについては以下のページをご確認ください。

作曲初心者向け|作曲超入門(1)具体的な作曲方法とやり方のコツ 歌もの(ボーカルメロディのある曲)を作曲するためのコツ|歌いやすい、歌いたくなる曲を作るためには? 打ち込み(パソコン・DAW)による作曲手順の解説|曲作りの概要や方法をご紹介します
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上記以外にも作曲の進め方やコツに関するいろいろな記事があるため、それらも参考にしてみてください。

番外編

既存の書籍にも「鼻歌でやる作曲」を題材とした教則本はいくつかあります。

以下の本はその中でも評価が高いため、一読しておくとより作業を進めやすいはずです。

メロディ作りに強くなる本

メロディ作りのコツについて、「メロディ作りに強くなる本」というコンテンツとしてまとめています。 「メロディ作りに強くなる本」のご紹介

まとめ

ここまで「鼻歌作曲のやり方」について解説してきましたが、上記でも述べているように

  • 鼻歌を実音にする
  • 鼻歌のキーを明らかにする

という二点が作業を進めるうえで特にポイントとなります。

慣れないうちはこれらをとても困難だと感じますが、やっているうちに段々とコツがつかめるようになっていきます。

是非楽しみながら、作曲を進めてみてもらえると嬉しいです。

鼻歌でやる作曲は、本来難易度の高い作業です。

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