コード進行の禁則(=好ましくない進行)について|「やってはいけないコード進行」はあるのか?

作曲でコードをつなげていく際に、

適当に作っているけど、このコード進行は正しいのかな?

と不安になってしまう人は案外多いものです。

そもそも、音楽に「正しい/正しくない」は無いものと考えていますが、確かに「ぎこちない=好ましくないコード進行」があるのも事実です。

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この「ぎこちない=好ましくない」は、クラシック系の音楽用語では「禁則」などと呼ばれます。

意図がない限りそれらはなるべく避けるのが望ましいため、こちらではコード進行をスムーズで説得力のあるものにすることを目的として、「ぎこちない=好ましくないコード進行」の代表的なものをいくつかご紹介します。

前提:ポピュラー音楽における「禁則」の位置づけ

上記で述べた通り、クラシック系の作曲や和声では「禁則」という概念が根付いており、曲は基本的に

ハーモニーのスムーズな流れを阻害する「悪い響き/進行」を排除する

という観点で作られます。

その反面で、ポップスやロックなどのポピュラー音楽は、それらを乗り越えるところに美学があります

つまり、正統音楽における「やってはいけないこと」を多少考慮しつつも、

「格好良ければなんでもいい」

という点を最優先させるのがポップスやロックである、ということです。

これを踏まえると、本来冒頭で述べたような「正しくないコード進行」のようなものは存在しないため「このコード進行は正しいのか?」という疑問自体が無意味なものとなります

「好ましくないコード進行」は違和感のある響きを生む

とはいえ、既に述べたように「禁則」に相当するような「好ましくないコード進行」は存在しており、それらをむやみに使ってしまうとやはり違和感のある響きが生まれてしまうものです。

また、私は仕事で数千曲のコード譜に目を通してきましたがやはりヒット曲などにそのようなコード進行が使用されているのは稀で、そこから実用性も低いということがわかります。

こちらで「コード進行の禁則」=「ぎこちない=好ましくないコード進行」を取り上げるにあたり、上記で述べた

  • 本来ポピュラー音楽のコード進行に禁則は無い
  • とはいえ「ぎこちない響きを持ったコード進行」はあり、それらは違和感のある響きを生んでしまう
  • それらは明確な意図がない限り使用されることもあまりない

という点を前提として心に留めておいてください。

コード進行の禁則(好ましくないコード進行)

こちらでは、「キー=C」を例として「禁則(好ましくない)」とされるコード進行をいくつかご紹介していきます。

また、解説はダイアトニックコードとそれを活用したコード進行の基本的な概念が身に付いていることを前提として進めていきます。

※このあたりについて理解を深めておきたい人は、以下ページをご参照下さい。
ダイアトニックコードとスリーコード(成り立ちとコードの役割などについて) 代理コードについて(マイナーコードをスリーコードのかわりに活用する)

1. 「Em→G(IIIm→V)」

まず、スムーズな流れを持ったコード進行を作るうえで「IIIm」の扱い方はひとつの鍵となります。

中でも、こちらで挙げた

「Em→G」(IIIm→V)

というコード進行は硬い響きを持っており、無計画に使うと違和感のある雰囲気が生まれてしまうため、禁則にあたるコード進行のひとつとして扱われています。

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そもそもこの「IIIm」は、理論上「安定」の機能を持っているものとされていますが、構成音には「不安定」の要素も含まれており、そのような意味でコードの響きはどっちつかずだといえます。

そのため、コード進行の中でも特に不安定な響きを持つ「ドミナント」のコード(V、この例では「G」)へ無計画につなげてしまうと、曖昧な雰囲気がより強調されてしまうのです。

2. 流れの最後に置く「Em」

上記の「Em→G」に関連するものとして、コード進行の末尾に「IIIm」を置く形もあまり好ましいとはいえません。

以下は、その例です。

C→F→Dm→Em(I→IV→IIm→IIIm)

ここでは、コード進行の終着部分が

「Dm→Em」

という構成になっていますが、既に述べたようにこの「Em(IIIm)」はどっちつかずな響きを持っているため、このように流れの末尾に置かれるとその響きがより際立ってしまいます

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これと同じ理由から、コードの流れの冒頭にも「IIIm」はあまり使用されません。※それを逆手に取って、あえて冒頭に使用するやり方もあります。

この「IIIm」は基本的に流れの中間部分に置かれるもので、重要な役割をあまり持たせないように活用するもの、と捉えると扱いやすいです。

※またその場合にも、前述したようにドミナントコード(V)につなぐと響きが曖昧になってしまうため、それはなるべく避けるべきです。

3. 「Dm→F(IIm→IV)」や「Am→C(VIm→I)」

ダイアトニックコードにおける「IIm」や「VIm」は代理コードと呼ばれ、スリーコードからの置き換えができるものとされています。

それらを前面に出し、反対にそこからスリーコード側へとつなげるような構成も、一般的には「禁則=好ましくないもの」とされます。

ここで挙げている、

  • Dm→F(IIm→IV)
  • Am→C(VIm→I)

の二つがそれにあたり、これらは

機能:サブドミナント
  • Dm=代理コード
  • F=スリーコード
機能:トニック
  • Am=代理コード
  • C=スリーコード

という関係で、同じ機能を持つ二つのコードを連結させる形となっています。

サブドミナントの連結は要注意

この中でも、サブドミナントコードをつなぐ「Dm→F」はより不自然な響きを生みますが、個人的な印象ではそれを逆にした

「F→Dm(IV→IIm)」

あまりスムーズとはいえない構成だと解釈しています。

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サブドミナントの響きがそもそも浮遊感のあるどっちつかずな性格を持っており、上記のように、そこに長くとどまるような構成がそれをより強調させてしまうからだと捉えています。

この点を踏まえると、サブドミナントコードを連結させる構成はなるべく避けた方がよいといえるでしょう。

トニックは比較的許容範囲が大きい

もうひとつの「Am→C(VIm→I)」も同じく禁則だとされますが、こちらは前述したサブドミナントのケースに比べて許容範囲が大きいです。

特に、スリーコードとしてのトニック「C(I)」から同じ機能を連結する

  • 「C→Am(I→VIm)」
  • 「C→Em→Am(I→IIIm→VIm)」

などの構成はとてもスムーズな響きを持っており、ここで挙げている「Am→C」もそれらを拡大解釈したものだと捉えることができます。

多くの曲でも、この「Am→C(VIm→I)」の形は比較的自由に扱われています

4. 「G→F(V→IV)」

クラシック系の理論から派生したコード進行の禁則として一番知られているのが、

「G→F(V→IV)」

の形です。

これらは、前述したように

  • G(V)=ドミナント
  • F(IV)=サブドミナント

という機能を持つコードで、音楽理論のうえでは、それぞれ

  • サブドミナントは基本的にドミナントに進むもの
  • ドミナントは基本的にトニックへ進むもの

だとされています。

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ポップス・ロックでは、上記のうち「サブドミナントはドミナントに進む」という概念は頻繁に無視されます。それらは「サブドミナント→トニック」という流れを作ることが多いです。

ここで挙げている「G→F(V→IV)」は上記を無視した

ドミナントがサブドミナントに向かう

という流れになっており、これが「好ましくない」という響きにつながっています。

「V→IV」は、ブルースでは当然のように使われる

その一方、ここで挙げている「V→IV」という流れはブルースのコード進行では当たり前のように扱われています

※関連ページ
ブルースコードの概要とコード進行の例・バリエーション(ジャズブルースなど)

詳しくは上記ページでも解説していますが、ブルースには「スリーコード・12小節」というコード進行の概念があり、その締めくくり部分では、

「G→F→C(V→IV→I)」

という流れが当然のごとく使用されます。

またロックやR&Bにはブルースを土台としたものも多いことから、上記概念はそのまま活用され、同じようなコード進行は頻繁に目にすることができます

実際に音で確認してみるとこの「G→F」の響きはとてもブルージーで、「異端=カッコいいサウンド」を持っていることがわかります。

これこそが、ページ冒頭で述べた

ポピュラー音楽は、クラシックの音楽理論(禁則)を乗り越えるところに美学がある

という点を象徴するものです。

まとめ:コード進行の「好ましくない」を知るには「分析」が最も効果的

ここまで、コード進行の禁則(ぎこちない=好ましくない)について考えてきました。

以下はその簡単なまとめです。

  • 「IIIm→V」という流れ
  • 「IIIm」を際立たせる(コード進行の最後に置く、などの)構成
  • 「IIm→IV」や「VIm→I」という「代理コード→スリーコード」の流れ
  • 「V→IV」という「ドミナント→サブドミナント」の流れ

既に述べた通り、ポピュラー音楽のコード進行において「禁則=やってはいけない」というものは存在せず、本来どんな構成でも許容されるべきです

そこにあるのは

  1. 説得力のあるコード進行
  2. 説得力があまりない=違和感のあるコード進行

という二つの軸のみで、これはある意味で感覚的なものでもあります

この点の感性を養うためには、「一般的なコード進行はこうなっている」というデータを自分の中に多く蓄積するのが一番効果的で、そのような意味から「コード進行の分析」に取り組むことをおすすめしています。

※関連ページ
コード進行分析(アナライズ)の方法|手順とコツ・注意点などの解説(キー判別、理論的解釈など)

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私自身も膨大な量の曲をコード譜に起こし、それを実際に聴きながら理論的な観点から分析したことで、コード進行の「一般的/一般的ではない」という尺度を持つことができました。

つまり、「禁則」という定型に頼るのではなく、既存の曲から抽出できる生のデータを土台として「あまり好ましくないコード進行」を自分なりに捉える姿勢が大切だということです。

それによって、それらを避け円滑な響きを組み立てたり、あえてその「好ましくないコード進行」を印象的に盛りこむこともできます。

これらを参考に、是非「好ましくない」なども踏まえた個性的なコード進行を追求してみて下さい。

上記で挙げた「V→IV」は私も愛用しています。