コード進行の構築
「コード進行」=「ストーリー」を作る
作曲者が意図をもってコードをつなげていくことは、小説家が文法と起承転結に配慮しながら文章を構築していく作業に似ていています。
基本に沿った標準的な構成は受け手に安心感を与え、時としてそれに反した構成を作ったり、手法を入り組ませて多彩にすることでスリリングな展開を演出します。
「コード進行の決まり事」や「基本的なパターン」は、そういった構成を作り上げるために欠かせない知識です。
それらを把握することによって、初めて作曲をコントロールできるようになっていきます。
スリーコード
ダイアトニックコード内の各コードには機能があって、その中でも、前述した「I」と「V」、それに「IV」を加えた三つのコードは「スリーコード」と呼ばれ、コード進行の骨組みとして語られます。
(キー=Cでいう「C、F、G」)
すでに述べた通り、「I」は「安定」、「V」は「不安定」の雰囲気を持っています。
また「IV」は「V」ほど不安定な響きが強くないことから「一時不安」という機能のコードとして扱われます。
「安定」から始まったコードのストーリーが一定の起伏を経て再度「安定」へと落ち着くことを踏まえて、コード進行の最小構成は以下の3パターンに集約されます。
※カッコ内は「キー=C」での例
- 安定 → 不安定 → 安定 「I → V → I」(C → G → C)
- 安定 → 一時不安 → 不安定 → 安定 「I → IV → V → I」(C → F → G → C)
- 安定 → 一時不安 → 安定 「I → IV → I」(C → F → C)
これらは三つの終止形は「カデンツ」と呼ばれています。
- 安定=トニック「T」
- 不安定=ドミナント「D」
- 一時不安=サブドミナント「SD」
コードの持つ機能を理解する際に、まずカデンツを踏まえたスリーコードの構成を把握したうえで、ギターやピアノなどを使って「C → G → C」や「C → F → G → C」などのコード進行を鳴らしてみると、和音をつなげた時におこる波や重力を体感できるはずです。
下記記事でも、同様に解説しています。
ダイアトニックコードとスリーコード(概要や成り立ち、コードの役割などについて)
代理コード
スリーコード以外のコードの機能
ダイアトニックコード内にはスリーコード以外に残り四つのコードが存在していますが、それらも「安定」「不安定」「一時不安」のどれかに分類することができます。
それぞれのコードの機能は下記のとおりです。
- IIm = 一時不安(SD)
- IIIm = 安定または不安定(TまたはD)
- VIm = 安定(T)
- VIIm-5 = 不安定(D)
※「IIIm」は、理論書等では「トニック」の機能に分類されますが、構成によっては「ドミナント」として響くケースもあります。
同じ機能のコードに置き換える
上記一覧より、「IIm」は「一時不安(SD)」の機能を持っており、それはスリーコードの「IV」と同じであることがわかります。
このような場合、それぞれのコードは互いに置き換えて使用することができます。
下記はその例です。
※カッコ内は「キー=C」での例
- 置換前:「I → IV → V → I」(C → F → G → C)
- 置換後:「I → IIm → V → I」(C → Dm → G → C)
機能的な骨組み(T → SD → D → T)は保持されたまま、コード進行だけが変更されていることがわかります。
もともとの構成と比べると、マイナーコードによって響きが多彩になった印象を受けます。
同様に、「I」と同じ「安定(T)」の機能持つ「VIm」使って、置き換えを実施したのが下記例です。
- 置換前:「I → V → I」(C → G → C)
- 置換後:「VIm → V → I」(Am → G → C)
こちらの例では、機能を保持したまま、冒頭のコードをマイナーコードに置き換えることで、印象が大きく変わっています。
まとめ
ご説明した通り、コードの置き換えによってスリーコードのみの構成はいろいろな形へと発展させていくことができます。
置き換えができる四つのコードは、その性質から「代理コード」と呼ばれます。
コードを展開させていくときは、まず「現在のキーを認識したうえでそのダイアトニックコードを活用すること」、そして、「それぞれのコードが持つ機能を考慮しながら互いに置き換えること」を意識すると、全体をバリエーション豊かなものにまとめていくことができます。
代理コードについては、下記記事でも解説しています。
代理コードについて マイナーコードをスリーコードのかわりに活用する
次のページでは、曲構成の骨組みとなる「形式」の概念についてより詳細に解説していきます。
曲構成のパターン(曲形式)と、それらを意識した曲作りの方法
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