作曲をしていると
「頭の中に浮かんだこのメロディをもとに作曲をしていきたい!」
と思うことがあるはずです。
こちらのページでは、そんなときに役立つ「思いついたメロディにコードをつけるための手順とコード選びのコツ」について解説していきます。
作業のおおまかな手順は以下の通りです。
- メロディに使われている音を明らかにする
- メロディの実音を元にメジャースケール=キーを明らかにする
- キーをもとにダイアトニックコードからコードを当てはめる
これ以降にて、より詳しくご説明していきます。
※上記とは反対の「コードにメロディをつける方法」については、以下のページにて解説しています。
コード(コード進行)からメロディを作る|コードの伴奏の上で自由にメロディを歌うことの概要とそのコツについて
目次
「メジャースケール」「キー」について
作業に入る前に、まず前提となる知識について簡単に確認しておきます。
メロディからコードを明らかにするにあたって、必要となるのが「メジャースケール」と「キー」の知識です。
▼関連ページ
メジャースケールの内容とその覚え方、割り出し方、なぜ必要なのか?について キー(音楽)について キー=「中心音」と「まとまりのある音のグループ」を意味する言葉
正確には、これとは別に「マイナースケール」を活用する方法もありますが、同じやり方をそちらにも流用できるため、ここではメジャースケールで行う方法に絞り解説を進めていきます。
メジャースケールは、メロディ・コードの元になるもの
「メジャースケール」とは簡単にいえば「音のグループ」のことで、ポップス・ロックにおけるメロディとコードは、基本的にひとつのメジャースケールをもとに組み立てられます。
それが「キー」と呼ばれる概念で、例えば「キー=C(メジャー)」であれば、メロディは基本的に
「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」
をもとに組み立てられます。
同じく、コード進行にはその「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」をもとにした「Cメジャーダイアトニックコード」(以下例)の7個のコードが主に活用されます。
もちろん、これにとどまらないメロディやコードの動きも頻繁に取り入れられて曲は成り立っていますが、音楽の統一感を生み出すのがこの「メジャースケール」=「キー」の概念で、これは音楽の軸になるものともいえます。
メロディからコードを探すにあたり、まず
- ほとんどの音楽は「キー」という概念をもとに、そのキーに紐づく「メジャースケール」の音を主に使いながら成り立っている
- 「キー」の音をもとにした「ダイアトニックコード」がコード進行の主軸になる
という点を理解して下さい。
メジャースケール=キーがわかれば、そこからコードを割り出すことができる
これは、裏を返せば
「その曲のキーさえ明らかにできれば、そこでどんなコードを使えばいいかが大体わかる」
ということにつながります。
メロディにコードをつける作業はこの考えをもとに行われ、その手順は、
- メロディがある
- メロディがどんなメジャースケールによって成り立つものかを割り出す
- メロディのスケールが明らかになることでキーが明らかになる
- キーをもとに、使われているコードが予測できる
というような流れとなります。
メロディにコードをつける手順
これ以降は、メロディにコードをつける実際の手順について詳しく解説していきます。
1. メロディに使われている音を明らかにする
メロディにコードをつけるにあたり、上記で述べた通りまず一番最初に
「メロディを実音として把握すること」
が必要となります。
これを行うには通常はピアノなどの鍵盤楽器やギターなどを活用しますが、楽器が無い場合にはピアノアプリなどを使うこともできます。
メロディを記録し、音源に合わせて楽器で実音を確認する
まず、思いついたメロディをスマホのボイスメモなどに直接アカペラで歌いながら録音して下さい。
これはメロディを忘れてしまうことを防ぐ意味でも効果的です。
そのうえで次にメロディを再生しながら、そのメロディラインに含まれる音を、楽器を使って実音として把握していきます。
具体的には、ボイスメモから流れる音に被せるかたちで楽器を弾いたりしながら、例えば
「これは『ドーレミー』かな?」
というようにメロディを音名として確認します。
確認できたメロディの音名は、そのまま「ドーレミー」のようにメモするなどして簡単に書き留めておいて下さい。
2. メロディの実音を元にメジャースケール=キーを明らかにする
メロディの音名が把握できたら、二番目の手順としてそれをメジャースケールの一覧と照らし合わせます。
以下はメジャースケール一覧の表です。
この表では、上から「Cメジャー」「Gメジャー」… というように12個のスケールが並んでいます。
この表をもとに、「メロディの音がどのメジャースケールに含まれているか?」という点を明らかにしていきます。
メジャースケール判別の例
例えば、メロディの音が
「ソーラシミ…」
というようなもとして把握できたとします。
そこには
「ソ」「ラ」「シ」「ミ」
という4つの音が含まれていますが、それらの音と上記メジャースケール一覧を照合すると、そのすべてが含まれるスケールは
- 「Cメジャースケール」
- 「Gメジャースケール」
- 「Dメジャースケール」
だということがわかります(以下表)。
※その他のメジャースケールでは「ソ」「ラ」「シ」「ミ」のいずれかに「#」や「♭」が付いているため、対象外だと判別できます。
メジャースケール判別のポイント
上記の解説の通り、メロディに含まれる音とメジャースケールを照合する際には「#」「♭」などの変化記号に着目するようにしてください。
そのうえで、それらを満たすスケールを割り出すようにしていきましょう。
メロディに使われている音(=判別の材料となる音)の種類が増えると、その分だけ予測できるメジャースケールはより絞られていきます。
メジャースケール判別の例外
また、思いついたメロディによっては音使いが変則的な形になっていることもあります。
その場合には「メロディの大部分の音を含むメジャースケールはどれか?」という観点から作業を進めるようにしてみて下さい。
これは、メジャースケール内に含まれていない音がいくつかあってもそれを許容する、ということです。
ここまでの作業を通して、
「思いついたメロディ(の大部分)がどのメジャースケールによって成り立っているか」
という点を予測することができます。
3. キーをもとにダイアトニックコードからコードを当てはめる
次に、三番目の手順として予測できたメジャースケールをキーのダイアトニックコードに置き換え、コードを予測していきます。
これ以降の手順が、このページでテーマとしている「メロディにコードをつける作業」のメインとなる部分です。
3-1. メジャースケールをキーのダイアトニックコードに置き換える
まず、メジャースケールはそのままキーに置き換えて捉えることができます。
これは上記の例でいえば、メロディから
- 「Cメジャースケール」
- 「Gメジャースケール」
- 「Dメジャースケール」
という三つのスケールの予測ができていた場合、そこからそのまま
- 「Cメジャーキー」
- 「Gメジャーキー」
- 「Dメジャーキー」
という三つのキーを予測できる、ということです。
そのうえで、予測できたキーをもとに、ダイアトニックコード一覧表(以下)からキーのダイアトニックコードを明らかにします。
ここでの例では、予測できた三つのキーから
- 「Cメジャーダイアトニックコード」
- 「Gメジャーダイアトニックコード」
- 「Dメジャーダイアトニックコード」
の三つを割り出すことができます(以下例)。
この例のように、複数のキーを候補として挙げていた場合にはその分だけ割り出せるダイアトニックコードの数が増えることになります。
3-2 ダイアトニックコードの中からいくつかコードを選び、メロディの伴奏として弾いてみる
次に、いよいよ実際にコードそのものを予測します。
具体的には、キーを元に割り出したダイアトニックコードからいくつかのコードを選び、メロディの伴奏としてそれらを弾いていきます。
コードを選ぶコツ(1)複数キーに共通するコードを選ぶ
前述の例のように複数のキーを予測できていた場合には、それぞれのキーのダイアトニックコードに共通するコードが含まれるはずです。
コードを選ぶ際にはまずそれらを優先して選んでいくようにしてみて下さい。
この例では、予測していた三つのダイアトニックコードすべてに含まれる「Em」「G」等のコードを最優先として選ぶことができます。
コードを選ぶコツ(2)メロディにおける存在感のある音を目安にする
コードを選ぶうえでは、既存の曲においてよく使われる(定番の)コード進行を活用することができます。
以下のページでは、それらをダイアトニックコードにおける度数によって型として一覧にしています。
▼関連ページ 定番のコード進行(例)
上記でご紹介しているような「コード進行の型」を、予測できているキーのダイアトニックコードによって実際のコード進行に置き換えて、メロディの伴奏として鳴らしてみることでその響きを確認してみてください。
その際、一般的なコード進行は
- トニック(ダイアトニックコードにおける「I」や「VIm」)
- サブドミナント(ダイアトニックコードにおける「IV」や「IIm」)
のどちらかで始まることが多いため、大きな分類として、
「トニック系のコードで始まるコード進行」あるいは「サブドミナント系のコードで始まるコード進行」のどちらがメロディと心地よく調和するのか?
という観点からコード進行を絞り込んでいくと、理想とするコードをより効率よく見つけやすいはずです。
コードを選ぶコツ(3)メロディにおける存在感のある音を目安にする
メロディには、より存在感のある音として
- 長く伸ばす音
- 何度も登場する音
- アクセントの強い音
などが存在します。
例えば、ここで挙げていた
「ソーラシミ…」
のようなメロディにおける「ソー」や「ミ」の音などがそれにあたりますが、コードを選ぶ際に
「『メロディにおける存在感のある音』がコード構成音に含まれているか?」
という観点を目安とすることもできます。
メロディの中で存在感のある音がコードに含まれている方が、より心地良くコードと調和します。
このようなやり方でコードを選ぶ際には、前後のコードをきちんと意識し、前述した「コード進行の型」を心に留めつつスムーズなコードの流れが生み出されるように配慮することも必要です。
コードを選ぶコツ(4)セブンス版のダイアトニックコードも候補に入れる
ここまでの手順を通して挙げていたダイアトニックコードには、一覧として示したもののほかに「7度」の音を含む「セブンス(四和音)版」が存在します。
以下は、それを一覧にした表です。
これは前述の例でいえば、以下の通り「セブンス版」のダイアトニックコードを導き出せる、ということを意味します。
通常のダイアトニックコードからコードを選んでもいまいちメロディとの調和が感じられない場合、その次なる候補として上記のセブンス版ダイアトニックコードを試すようにしてみてください。
イメージ通りのコードを見つけることができない場合
ここまでの手順を実施してもイメージ通りのコードを見つけることができない場合には、以下のようないくつかの原因が考えられます。
1. ダイアトニックコード以外のコードをイメージしている
「イメージ通りのコードを見つけることができない」という場合の最も多いケースがこちらです。
まず事前の知識として「ダイアトニックコード以外のコード」がどう扱われるかを知り、それをメロディのキーに置き換えて予測することでコードを見つけることができるようになります。
2. 思いついたメロディの実音を正確に把握できていない
メロディを実音で正確に把握できないと、その後のキーの特定が曖昧になります。
結果としてコードの予測も曖昧になるため、調和を感じるコードを導き出すことが難しくなります。
3. ひとつのメジャースケールに収まらない音がメロディに沢山使われている
スケールに含まれない音を多く使うようなメロディの場合、そもそもキーの特定が難しくなります。
それにより、上記と同じ理由から調和を感じるコードを導き出すのが難しくなります。
4. ダイアトニックコードの中でもより響きが複雑なもの(テンションコード等)をイメージしている
既にご紹介した通りダイアトニックコードには「セブンス版」があり、さえらにはそれをより複雑にしたコードも存在しています。
メロディに合うコードとしてそれらをイメージしていることもあるため、その場合には別途
- 「テンションコード」
- 「分数コード」
- 「変化和音」
等の知識をもとに、ダイアトニックコードを発展させるような形でコードの候補を挙げていくことで理想とするコードを見つけることができるはずです。
メロディへのコードづけを柔軟に行うためには音楽理論の知識が必要となる
ここまでに解説したのは
- 「メロディがメジャースケール内に収まる」
- 「ダイアトニックコードにあるコードをイメージしている」
という一般的なケースを前提としたものです。
もちろん例外は多々あり、それらを特定していくためにはさまざまなコードの知識やスケールの知識が必要になります。
また、作曲を繰り返したり、音楽理論を深く覚えるほど柔軟に対応していけるようになっていきます。
思いついたメロディはその時のためにしっかりと記録しておきましょう。
▼関連ページ ノンダイアトニックコード 意味とその種類の解説 活用のルールやコード進行例等
その他の注意点について
ここまでの手順に付随するその他の注意点についても、以下にあわせてまとめておきます。
コードを判別できる感覚が必要
そもそも、ひとつのメロディにはいろいろなコードを割り当てることができてしまいます。
例えば、前述したメロディ例「ソーラシミ…」にはコード「Em」も「CM7」も「A7」も、どれも合います。
そのうえで、結局のところ「このメロディにこのコードが合っている」と明確に判定できるのは本人だけです。
つまり、
メロディのみの時点でぼんやりとコードの響きをイメージできるか否か
が「コードがメロディと調和するか?(合っているか?)」をしっかりと判定できるようになるために大切だといえます。
その後のコードの流れを明らかにする際にも「キー」の概念を活用する
メロディに対してひとつのコードを明らかにできたあと、そこからさらに次なるコードを導き出してしていこうとする際には、前述した「キー」の概念が重宝します。
というのも、前述した通りメロディのキーが定まっていれば、ダイアトニックコードをもとにしてある程度のコード進行が予測できるからです。
キーをもとにしたコード進行の定番については以下のページでもご紹介しています。
コード進行を数字(度数)で表す利点・代表的な数字パターンの解説 キー別のコード進行を効率良く覚える/扱うための概念
このことから、もし前述の例のようにキーを複数予測していた場合には、なるべく早めにキーをしっかりと確定させることがより望ましいといえます。
メロディ作りに強くなる本
メロディ作りのコツについて、「メロディ作りに強くなる本」というコンテンツとしてまとめています。 「メロディ作りに強くなる本」のご紹介
動画解説
「文章ではよくわからない!」という方に向けて、動画でも解説を行っています。
音楽理論の学習補助ページ
以下のページでは「音楽理論学習の見取り図」と題して、学ぶべき理論の分類や、どんな順序によってどこまで学ぶべきかという点を整理して解説していますので、是非そちらも参考にしてみて下さい。
音楽理論を知りたい人のための「学習の見取り図」※独学に活用できる「音楽理論の何をどの順番で学べばいいか」のまとめ
まとめ
ここまで、思いついたメロディにコードをつけるための方法を解説してきました。
改めて手順をまとめます。
- メロディの実音を明らかにする
- 実音を元にメロディのキーを明らかにする
- キーをもとにダイアトニックコードを明らかにする
- ダイアトニックコードからコードを予測する
既に述べた通りメロディやコードにはいろいろなパターンが存在するため、こちらでご紹介した方法をもとにして、それを自分なりにアレンジしてみることも大切です。
また、上記で解説しているとおりコードをスムーズに割り出すにはやはり「メジャースケール」や「キー」の理解が必要で、さらにはいろいろなコードを知っているほど作業は円滑に進められるはずです。
何度かやっているうちにコードを探す行為も徐々に上達するため、是非楽しみながら取り組んでみて下さい。
補足
一般的には「メロディからコードを探す」よりも「コードからメロディを思い浮かべる」という方が簡単であるため、以下のページではその方法を使った初心者向けの作曲手順について解説しています。
作曲初心者向け 作曲超入門 具体的な作曲方法とやり方のコツ
ポップス・ロック作曲の上達につながる「曲分析ガイドブック」について知る
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