作曲と楽器はそれぞれ密接な関係を持っています。
みなさんも、作曲家がピアノの前で「うーんうーん」とアイディアをひねり出しているような状況を連想することができるはずです。
でも、最近ではPCやスマホでも作曲ができるようになりました。
果たして作曲をやるにあたって絶対に「楽器」という存在は必要なのでしょうか?
こちらの記事ではそのあたりを考えていきます。
目次
現代の作曲スタイル
楽器が無くてもPCやスマホがあれば作曲はできる
現代ではPCによるDTMが発達し、またスマホが一般化してからはPCすら使わずに音楽制作をしている方も多いはず。
そういったみなさんのように、極論楽器が無くても作曲はできてしまいます。
音を繋ぎ合わせて、重ね合わせて、「曲」として感じられるようにそれらを構築していく。
そうやって手探りでもPCやスマホの作曲向けソフトを触っていれば、なんとか曲は仕上がっていくものです。
作曲を楽しむために楽器が必要
それでは、やはり作曲に楽器は必要ないのでしょうか。
ここでは私の専門である「ボーカルメロディのある曲」に限って考えますが、その答えは「楽器があったほうが作業が進めやすい」となります。
もう少し正確に言えば、「楽器が弾けた方が作曲を楽しめる」となります。
その理由は「楽器を使った作曲」と「PC・スマホを使った作曲」の制作スタイルの違いにあります。
「ボーカルメロディのある曲」の作曲に楽器は最適
「歌って作る」が基本
私がみなさんに教えている「ボーカルメロディのある曲」の作曲は、メロディを歌いながら考えます。
これは、他でもお伝えしているとおり「歌メロは歌って作るべし」という発想がその元になっています。
出来上がった曲は歌われるものであるため、そのメロディには「歌いやすい」とか「歌うと心地いい」という性質が求められるわけです。
だから、それを作る際にも歌いながら作らなければいけないわけで、この「歌って作る」は私が教えている作曲のスタイルにおいて基本です。
楽器で音を確認し、メロディを歌う
上記の「メロディを歌いながら考える作曲」を、楽器を使ってやる場合には作業がとても原始的で、かつ直接的なものになります。
具体的には「弾き語り」のスタイルによって作曲は進められていきます。
作曲の際には、まずギターやピアノなどの楽器をコードで弾き、そのうえでメロディを歌いながら考えます。
メロディにあわせてコードのつながりが検討され、その反対にコードのつながりによって新たにメロディは検討されます。
この「コード」と「メロディ」それぞれはお互いに影響を与えるもので、「あーでもない」「こーでもない」という作業がいわゆる「作曲の姿」である、と言えます。
楽器でコードをあれこれと弾きながら、そのうえでメロディをあれこれと歌う、という状態です。
PCやスマホを使った作曲
「データを打ち込む」という手間
ではこれを楽器の弾けない人がPCやスマホでやるとどうなるか、というと楽器を使うよりもちょっと手間がかかってしまうのです。
既に述べた通り、作曲の作業の中でメロディは歌って作るので、まずそのよりどころとなるコードの音やキーの音を確認する必要があります。
そのために、DTMソフト上で音を鳴らすことから始まって、その音をもとになんとなくメロディを連想します。
歌ったメロディを採用するか、または採用しないかを考えるにあたってそこにコードの響きが必要となるため、毎回DTMのPLAYボタンを押すことになります。
これが最初はいいのですが、コードが二つ、三つとつながっていく局面に入ると次に「コード進行の検討」が必要になるため、あわせて「音を打ち込む」という作業が必要になるのです。
例えば初めに「C」というコードを鳴らしていたとします。
そしてそのうえでメロディを考えていて「じゃあ次のコードは『F』にしてみよう」と考えたら、楽器であればそのまま「F」を弾けばいいのですが、DTMではそのコードをデータとして打ち込む必要があるのです。
さらには「やっぱり『F』じゃなくて『G』にしよう」と思ったら、いままで打ち込んでいた「F」のデータを一回消して、「G」を打ち込み直すことになります。
楽器の方がより柔軟
この書き方はDTMの中でもより手間のかかるソフトを使用していることを想定したものですが、要は「DTMは音を柔軟に表現できない」という制約がある、ということです。
確かに、現在はもっと簡単にコードの響きを確認できるソフトもあります。
そしてさらに4~5年したら楽器を弾くのと同じ感覚でDTMが活用できるようになっていくかもしれません。
でも、今のところやっぱり楽器を手にしながら音を直接的に確認して行くのと、DTMによってデータを打ち込んでいくのでは作業のやりやすさが大きく違ってきます。
楽器を使った方がより柔軟で、融通が利きます。
※でも、これはもしかしたら古い人間の考えなのかもしれません…(笑)。デジタルネイティブ世代からするとDTMの作業の方がよりやりやすいのかも??
まとめ
ここまで述べた意見はPCやスマホでの音楽制作が一般化した現在の流れに逆らうような意見とも取られそうですが、実際の例によって裏付けられた考え方でもあります。
私は、これまで上記のような「楽器を使わない作曲」に取り組む方を何人も見てきました。
その人たちの多くは、やっぱり楽器ができる人たちに比べて苦労しています。
平たく言えば、みんな「作曲って大変だ~」という思いを強く持っている、ということです。
これは、より突き詰めて考えると「作曲を楽しめていない」ということで、それは上で述べたような作業スタイルに問題があるのだと考えられます。
現状では、やっぱりDTMによる作曲はまわりくどいんですよね…。
これがインストの作曲であればまだいいのですが、ボーカル曲の作曲となるとなおさらです。
だからこの記事のテーマに戻ると、結論として「楽器で作曲をやるべし」というほど強い意見ではないものの、「楽器ができたほうがより作曲を楽しめますよ」となります。
前述の通り、楽器を使った作曲は「弾き語り」に近いものなので、バリバリ楽器を弾きこなせなくても弾き語り程度で少し弾ければ十分です。
DTMで無理して作曲に取り組んで楽しめていない方は、是非そんな「楽器を使った作曲」も検討してみて欲しいです。
多分、より楽しめるはずですので。
ポップス・ロック作曲の上達につながる「曲分析ガイドブック」について知る
作曲がぐんぐん上達する「曲分析ガイドブック」のご紹介ページ