作曲をスムーズに行ったり、作曲レベルそのものを向上させるためには「音楽を聴くこと」が思いのほか重要です。
この点について、以前下記のような投稿をしています。
作曲上達の為には曲作りの経験や理論などもありますが、音楽を沢山聴いてるかどうかも実はすごい大事です。インプットを増やすとアウトプットが必然的に豊かになる、という原理です。そしてプロ作曲家の人は逆に普段音楽を聴かないともよくいわれてますが、それは聴きすぎて超越してるパターンです。
— うちやま|作曲の先生 (@sakkyoku_info) May 15, 2020
ここで述べている通り、作曲とはつまるところアウトプットの作業であるため、インプットを増やすと必然的に生み出せる曲の品質も向上していきます。
ポイントとなるのは、幅広く、そして沢山聴く、ということです。
こちらのページでは、そんな「作曲の上達(良い曲を作るため)」という観点から、
- 音楽をどのような方法によって聴けばいいか?
- どんな音楽を聴けばいいか?
- どのような姿勢で音楽と向き合うべきか?
という点などを解説していきます。
私の作曲歴は26年ほどですが、ある時からここで述べるような方法で音楽を聴くようにしたところ、そこから目に見えて作曲の質が高まり、より作曲を楽しめるようになりました。
もちろん私の教えている生徒さんにも同じようなことを実践してもらっており、そこでも成果が出ているため、十分に参考にしていただけるはずです。
音楽をどのような方法によって聴けばいいか?
音楽を「幅広く」「沢山」聴くということを実践するうえで、最も気になるのが「そのための手段」です。
ここでポイントとなるのが
「なるべく手間と費用をかけない」
という点ですが、結論からいえば、現在はネットがあるためそれを使ってしまうのが一番手っ取り早いです。
また、もちろん昔ながらのやり方も併用できますが、結果としてそれらもネット経由で入手できることがほとんどであるため、重要性は低いといえそうです。
以下は、音楽を聴くための手段として考えられるものです。
- 定額制音楽サービス(サブスクリプション)
- ネット動画(YouTube)
- 音楽系SNS(Sound Cloud)
- 音楽系ラジオやストリーミング
- CDのレンタル(レンタルCDショップ・図書館)
- その他(CD等の購入)
それぞれについて解説します。
1. 定額制音楽サービス(サブスクリプション)
まず、現在の音楽視聴環境を考えるうえで、最も経済的かつ手軽なのがこの「定額制音楽サービス(サブスクリプション)」を活用するやり方です。
以下は、その代表的なサービス名です。
- Spotify
- Apple Music
- Amazon Music
- Google Play Music
- LINE Music
- AWA
それぞれによってサービス内容や聴ける音楽の種類が若干違いますが、おおまかには各サービスともほとんど差が無く、お好みでどれを選ぶこともできます。
月に1000円くらいで数千万曲が聴ける
実際のところ、これらのサービスのうちいくつかは無料でも利用することができます。
しかし、ここでテーマとしている
- 作曲の上達のために音楽を聴く
- 幅広く沢山音楽を聴く
という点を考慮すると、無料サービスによる制限を解除させて柔軟な視聴環境を手に入れるためにも、それらを有料で利用すべきです。
「有料」といってもその費用は月に1000円程度ですが、たったそれだけで数千万曲を自由に聴けるようになるのです。
すぐに聴ける、膨大な量を聴ける
定額制音楽サービスの良いところは、既に述べたとおり数千万曲という数の楽曲を気になった時すぐに聴ける、という点にあります。
これは以前であれば考えられなかったことで、まさにこのページでテーマとしている「幅広く」「沢山」音楽を聴く、という点に合っています。
以前は邦楽アーティストの多くがこの方式に後ろ向きでしたが、最近はほとんどがそこに加わりつつあるため、CDレンタルなどを含めた従来の聴き方とほぼ遜色が無くなりました。
月に1000円程度払えば、いろいろなジャンルのいろいろな曲が瞬時に聴ける、ということを思うと、その程度の出費は作曲活動の必要経費として十分に許容できるはずです。
2. ネット動画(YouTube)
上記で述べた「定額制音楽サービス」はインターネットのストリーミングによって実現できているものですが、同じくネット動画(YouTube等)を活用すれば、音楽に触れることができます。
費用がかからない、反面で制限や手間も多い
YouTubeの動画を活用して音楽を聴く利点は「費用がかからない」というところにあります。
ネット環境さえあれば気軽に音楽を聴くことができますが、反面で制限や手間も多いものです。
前述した定額制音楽サービスほどに整理が進んでいないため、公式に動画を公開しているアーティストはまだまだ少なく、それらを探すのにも苦労します。
曲によっては、違法アップロードの動画などに頼ることにもなってしまいます。
またそもそもYouTubeが動画配信サービスであるため、アーティストの音楽をアルバム単位で聴いたり、BGMがわりにそれを流しておく、ということにもあまり向いているとはいえないでしょう。
このあたりは、無料であるがゆえの使いづらさとも解釈できます。
3. 音楽系ラジオやストリーミング
音楽の視聴環境としてラジオやストリーミングを活用するやり方も想定できます。
ラジオは実際のAM・FMラジオ放送を聴くこともできますが、現在ではラジオアプリの「radiko」などを利用する人が多いはずです。
同じく、それに近いアプリを使ってストリーミング(ネットラジオ)を活用することもでき、これらは基本的に無料で利用できます。
未知の音楽に触れる
ラジオのいいところは「未知の音楽に出会うことができる」という点です。
例えば「InterFM」などは音楽専門のFM放送として有名ですが、これをある時間に流しておくだけでも、そこからいろいろな音楽に触れることができます。
ここで挙げている手法のほとんどが能動的なものであるのに対し、ラジオやストリーミングは「受動的」であり、それによって意外な出会いが楽しめるはずです。
定額制音楽サービスにあるストリーミングチャンネル
一部の定額制音楽サービスには、ネットラジオのような形式でストリーミングチャンネルを設けているものもあります。
これらも、いわゆるラジオと同じように偶然の出会いが楽しめるため、上記で述べた「能動的」と「受動的」の併用ができるという意味でおすすめです。
私自身もそれらアプリを使って、基本的には自分の好きな音楽を聴き、時々ストリーミングで未知の音楽に触れる、ということをやっています。
4. 音楽系SNS(Sound Cloud)
ネットを活用する方法としてもう一つ挙げることができるのが「音楽系SNS」の存在です。
日本ではいまいち浸透してないものの、海外における「Sound Cloud」などがその筆頭として有名です。
音楽版YouTube
このサービスは、いわば「音楽版YouTube」のようなもので、そこには雑多な音楽が大量にアップロードされており、それを主体として活動しているアーティストも多数います。
音楽を聴くためにはある程度の選択が必要になりますが、動画を見るのと同じような感覚で、無料で気軽に音楽に触れられるという意味でおすすめできます。
5. CDのレンタル(レンタルCDショップ・図書館)
ここまでに述べたのは主にネットを活用するアイディアでしたが、もちろんCDのレンタルによって音楽を聴くことも検討できます。
これは「手間を掛けない」という点からは外れてしまいますが、インターネットに疎い人などはこのように昔ながらの方法を取り入れても良いでしょう。
定額制音楽サービスにほとんどある
最近ではほとんどの音楽が定額制音楽サービスに加わっているため、CDレンタルの必要性が薄れつつあります。
つまり、わざわざお店に借りに行かずとも、手元のスマホで検索すればそれが瞬時に聴けてしまう、ということです。
CDアルバム一枚のために数百円を払って、手間をかけてお店に借りに行くか、月1000円程度を払って手間をかけず数千万曲を好き放題聴くか、という選択となりそうです。
レンタルCDショップ以外に図書館もおすすめ
CDのレンタルを考えるうえで、TSUTAYAなどのレンタルCDショップ以外に、地域によっては図書館を活用することもおすすめできます。
その利点は、やはり「無料である」というところにあり、幅広くいろいろな音楽を聴くにあたり、費用を掛けず気軽に聴けることは思いのほか大切です。
図書館は一度に借りられるCDの枚数を制限していることがほとんどですが、それでも無料で借りられるという点はやはり大きいです。
6. その他(CD等の購入)
最後に挙げられるのがCD等の購入によって音楽を聴く方法です。
ここまでに述べたように、ネットが発達したためもはや「CDを買うこと」は時代遅れの行為になりつつあります。
とはいえ、それでもまだまだネット上に存在しない音楽は沢山あるため、それらのうちでどうしても聴きたい音楽をCDで購入することは十分に推奨できます。
最もおすすめできるのは「定額制音楽サービス」
ここまでに挙げた中で、最もお勧めできるのはやはり「定額制音楽サービス(サブスクリプション)」です。
- 聴きたい音楽を選んで聴ける
- 沢山聴ける
- 手間を掛けずに聴ける
ということを考えると、やはりこれに勝るものは無いかなというのが正直なところです。
もはや、
「作曲の上達のために音楽を聴く」
ということを考えるうえで、この「定額制音楽サービス」は避けて通れないものともいえそうです。
この視聴環境を手に入れるか否かで、インプットの量に大きな違いが生まれます。
どんな音楽を聴けばいいか?
ここまでを通して「音楽を聴くための手段」をある程度理解したところで、次に
どんな音楽を聴けばいいのか?
という点が気になるはずです。
この答えは、つまるところ「気になったものを片っ端から聴いていけばいい」となってしまいますが、押さえるべきポイントをいくつか解説しておきます。
まずは自分が作りたい(好きな)音楽を聴く
作曲上達のために音楽を聴くうえでは、まず何よりも自分の作りたい音楽を聴くべきです。
これは、簡単にいえば「自分の好きな音楽を聴きましょう」ということです。
既に聴いたことのある音楽を繰り返し聴くのもいいですし、
- 好きなアーティストのアルバムのうちでまだ聴いていないもの
- 好きなアーティストと同じようなジャンルに分類される他アーティストの音楽
などを聴くと、無理なく未知の音楽に触れることができます。
ルーツを掘り下げる聴き方
ここで「幅広く聴く」ということを考慮すると、いちアーティストの音楽だけをひたすら聴いているのはやはり不健康で、聴く音楽をそこから別のアーティストに移していくべきです。
そのうえで、おすすめできるのが「自分の好きなアーティストのルーツを掘り下げる」というやり方です。
例えば、現在「back number」の音楽がすごく好きだったとしたら、彼らが影響を受けたアーティストに沿って聴く対象を以下のように掘り下げていくことができます。
「back number」
↓
「Mr.Children」
↓
「サザンオールスターズ」
↓
「ビートルズ」
これによって、ある程度自分の好みを維持したまま、スムーズに音楽の幅を広げていくことができます。
自分が作りたい(好きな)ジャンルにおける有名アーティストの音楽を聴く
次に、上記で述べた「自分の好きな音楽」の拡張版として、そのジャンルにおける有名アーティストの音楽を聴くことによって対象を広げていくこともできます。
これは結局のところ「ルーツを掘り下げる」というやり方につながりますが、例えばロックをやりたいなら
- 「ビートルズ」
- 「ローリング・ストーンズ」
- 「ボブ・ディラン」
あたりは避けて通れませんし、R&B系であれば
- 「スティービー・ワンダー」
- 「マイケル・ジャクソン」
などがそれにあたります。
また、これらは歴史に名を刻むアーティストですが、もう少し最近のアーティストにもヒットを続けている存在はおり、それらも加えていくことで聴ける対象はさらに広がって行くはずです。
そこからさらにルーツや関連アーティストの音楽を掘り下げる
有名アーティストの音楽には、自分が未知のものも含まれているはずです。
そこから既に述べた「ルーツを掘り下げるやり方」を活用したり、それに関連するアーティストを調べることで、聴く範囲を広げていけます。
有名アーティストから新たなジャンルの音楽を開拓する
上記で述べた「有名なアーティストを聴く」というやり方は、自分が触れたことのない新たなジャンルの音楽を開拓するきっかけにもなります。
この「ジャンル」という区分けも実際のところ曖昧ですが、それらはおおまかに「そのアーティストの得意とする音楽性」と捉えて支障ありません。
つまり、未知の音楽を掘り下げていくにあたり「有名なアーティスト」をその糸口にする、ということです。
有名アーティストの音楽によって、未知のジャンルに触れやすくなる
これは、例えば
- 邦楽を多く聴いてきた人が洋楽を聴くようになる
- ロックを多く聴いてきた人がジャズやクラシックを聴くようになる
- アメリカやイギリスの音楽を多く聴いてきた人が南米の音楽を聴くようになる
などの行為を指します。
ここからが馴染みの薄い音楽へと幅を広げていく本格的な局面となります。
そのジャンルを代表するようなアーティストの音楽は、やはり多くの人に支持されているだけあって、聴きやすさや親しみやすさを兼ね備えているものです。
これは、ある意味では「馴染みの薄いジャンルの音楽を毛嫌いしてしまうことを避けるためのやり方」ともいえます。
聴いたことのない音楽をどん欲に吸収する
ここでも、前述した「音楽を掘り下げる」という概念が活用できます。
少しでも気に入ったアーティストがいたら、それに関連する別のアーティストもチェックするようにすると、聴ける音楽は無限に広がっていきます。
どのような姿勢で音楽と向き合うべきか?
「音楽を聴くための手段」「何を聴くべきか」という二点に加えて、「作曲の上達」を目的とする場合にはそれらと向き合うための姿勢にも少し注意が必要です。
作曲者の視点で音楽を聴く
ここでポイントとなるのが、
音楽を作曲者の視点で聴く
ということです。
例えば、ある曲をとても気に入ったとしたら、そこからは以下のようにいろいろなことが考えられます。
- メロディの音階やリズムはどうなっているか
- コード進行はどうなっているか
- どんな曲構成になっているか
- どんな音色によってどうアレンジされているか
- (歌がある場合)どんな歌詞がつけられているか
これらを考えながら聴くことで、それが文字通り「良い音楽(自分の好きな音楽)の理由」となります。
ものによってはそれをそのまま自分の曲作りに流用することもできますが、ここでは「考える」という行為そのものを通して感受性を養うことを目的として下さい。
それにより作曲の時の判断力が強化されて、思いついたメロディやコード・曲構成等の「採用/不採用」を、自信を持って選択していけるようになります。
本格的な「曲分析」につなげる
上記で述べた「作曲者の視点から音楽を聴くこと」は、それを突き詰めるとそのまま「曲分析」の行為へとつながっていきます。
※曲分析について、詳しくは以下のページでも解説しています。
曲分析の重要性について(曲分析の概要や効果、曲分析を習慣にすると作曲が上達する理由について)
つまり、曲をそのような視点から紐解くことで「曲の成り立ち」が理解できるようになり、自分でもそれを作れるようになっていくのです。
結果として、このページでテーマとしている「作曲の上達」を実現することができます。
理論の学習や曲作りにつなげる
欲をいえばそこからさらに一歩踏み込んで、音楽理論の学習や実際の曲作りに取り組んでいけるとより理想的です。
これは、私が別途提唱している「作曲の上達に欠かせない5つの柱」に通じる概念で、
- 音楽を聴くこと
- 曲分析
- 音楽理論の学習
- 作曲法の学習
- 曲作り
のそれぞれを掛け合わせることで、無駄なくしっかりと作曲を上達させていくことができる、というものです。
この点について、詳しくは以下のページをご確認下さい。
作曲を独学で進めるときの勉強方法 「上達に欠かせない5つの柱」とは? これをやれば作曲は上手くなる!
まとめ
ここまで、作曲の上達につながる音楽の聴き方について解説してきました。
以下はまとめです。
- 定額制音楽サービスによって音楽を聴くのが一番望ましい。
- まずは自分の作りたい音楽(好きな音楽)を聴く、そこから関連するアーティストへと聴く対象を掘り下げていく。
- 曲を聴く際には、作曲者の視点を持つことが大切
- それを、理論の学習や曲作りにつなげる
実際のところ、聴いた音楽を作曲技術につなげていくためには、最後に述べた「曲分析」が一番大切です。
楽しみながら、かつ良い音楽を紐解く姿勢を忘れずに幅広い音楽に触れてみて下さい。
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