ビートルズの音楽を長年聴いていると、バラード曲の魅力に気付かされるものです。
「Let It Be」や「Hey Jude」などの有名なバラード曲以外にも本当に良い曲が沢山あり、常々もっと多くの人にそれらを知ってほしいと思っていました。
そんなわけで、このページではファン歴30年の視点からビートルズの「バラード曲」に絞り「これは是非聴いてほしい」と思えるおすすめの楽曲を厳選してご紹介してみます。
デビュー当時はエネルギッシュで若々しかった彼らも、アーティストとして成熟していくにしたがって秀逸なバラードをいくつも生み出していくことになります。
そんな経緯や時代背景も感じ取ってもらえると嬉しいです。
前期
This Boy(ディス・ボーイ)
デビューして間もない頃のビートルズが生み出したバラードとして、相当良い曲でありながら世間にまったく認知されていないのが本作です。
ロッカバラード調の作風は当時彼らが心酔していたR&Bサウンドを意識して作られたものとも解釈できます。
初期の作品なだけあって、コーラスワークにも力が込められています。
If I Fell(イフ・アイ・フェル)
こちらはビートルズ初の主演映画となった「A Hard Day’s Night」のサントラ盤でもあるアルバムに収められた作品です。
作曲者であるジョン自らも「バラード曲だ」とコメントを残しており、不思議なコード進行と込み入ったコーラスが特徴となっています。
イントロが無く、いきなり始まるところも良いですね。
Yes It Is(イエス・イット・イズ)
こちらは、前述した「This Boy」と双璧を成すような存在としてファンに認識されているバラード曲で、作風も同じくロッカバラード調です。
この時期のバラードは「壮大に盛り上がって感動的に展開する」というよりも、「控えめな演奏でしっとり聴かせる」という傾向が強く、本作はまさにそんな雰囲気を持っています。
実はサウンドにコシがあって、こちらの曲からもR&Bからの影響が感じ取れます。
中期
Here, There And Everywhere(ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア)
中期バラードとして真っ先におすすめしたいのが本作で、こちらも世間的に全く知られていないながらもファンの間では「静かな良い曲」という共通認識があります。
作曲者はポールですが、この中期のアーティストセンス爆発の時期に、こんな落ち着いた曲を作ってしまうところから、作曲の幅広さを感じます。
中間のブリッジで、部分的に転調するようなムードが生まれています。
She’s Leaving Home(シーズ・リーヴィング・ホーム)
こちらは、コンセプトアルバムとして知られている「Sgt. Pepper’s~」に収録されたバラードで、珍しくストリングスを前面に押し出したサウンドでアレンジされています。
ビートルズによるバンドとしての演奏はないため、実質的にポールひとりで作った作品と解釈できます。
前述した「Here, There And~」の作風を踏まえると、やっぱりポールの引き出しの多さはすごいです。
The Fool On The Hill(フール・オン・ザ・ヒル)
こちらもファンには有名なバラードですが、やはり一般的な認知度は低いと思います。
この曲といえばリコーダーのサウンドがすぐに連想できて、学生時代あのフレーズをよく口で真似したものです。
牧歌的な雰囲気で始まりつつ、サビでいきなり暗いところに突入するような、意表を突く構成を持った作品です。
後期
Hey Jude(ヘイ・ジュード)
後期に入るとビートルズはバラード曲を連発していくことになりますが、このあたりが世間的な「ビートルズ」のイメージに近いかと思います。
特にこの曲は彼らの代名詞ともいえるもので、曲後半のリフレインを含めて特に音楽ファンには広く知られています。
このあたりから、ポールが積極的にピアノを弾くようになっていきます。
Dear Prudence(ディア・プルーデンス)
こちらは「ホワイトアルバム」に収録されたジョンの作品で、ビートルズファン以外でこの曲を知っている人はほとんどいないだろうというくらいに一般的な知名度の低い曲です。
それでいてバラード曲としては本当に名曲で、この頃のジョンが志向していたサイケデリックなムードや、「ビートルズ」という枠組みから抜け出ようとしているような不安定な作風がよく表れています。
コーラスも怪しく、またギターのアルペジオもどこか民族的で、そのあたりも独特なサウンドを生んでいます。
I’m So Tired(アイム・ソー・タイアード)
こちらも「ホワイトアルバム」に収められたジョン曲です。
ジョンはこの頃、このように静かな曲をいくつも書いており、デビュー当時に沢山やってきたいわゆる「ロック」と呼べるような疾走感のある曲から意識的に距離を置いていたとも感じられます。
タイトルにある通り「疲れた…」と嘆く彼の心の声が表現されており、「バラード=感動」とはまた少し違った曲調となっています。
Julia(ジュリア)
こちらもまたまた「ホワイトアルバム」に収められた曲で、作曲者も同じくジョンです。
タイトルになっている「ジュリア」とは、ジョンの母親だとされていますが、一説にはヨーコへの愛を歌った曲ともいわれており、詳しいところはよくわかりません。
アコギ一本の弾き語りのような構成によってアレンジされており、その分地味ですがサウンドがシンプルなため落ち着いて聴けます。
Across The Universe(アクロス・ザ・ユニバース)
こちらもジョンの作品で、ビートルズの活動末期にジョンが残したバラードの中で重要な作品といえます。
「ジャガ・ルー・デイヴァ~」という聞きなれない歌詞や、リヴァーブ深めのボーカルなどからは宗教的な雰囲気も感じられますが、実際ジョンもそんな曲調を意識しており、本人もお気に入りだったようです。
いくつかのバージョンが残されていますが、個人的にはアルバム「レット・イット・ビー…ネイキッド」のバージョンがシンプルで好きです。
Let It Be(レット・イット・ビー)
前述した「ヘイ・ジュード」と同じく、ビートルズのパブリックイメージを成している曲ともいえるのがこちらです。
ピアノ系のバラード、ということでこの頃のポールの趣向が少しわかって、かつ「レリビー・レリビー…」と繰り返すあたりも、なんだか似てます。
曲はゴスペル調で、こちらもまた「アクロス・ザ・ユニバース」とは違った意味で宗教的なムードを持ったバラード曲だといえます。
The Long And Winding Road(ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード)
ポールの「ピアノバラード」三部作として、前述の有名な二曲に加えてこの曲を一番好きなバラードに挙げるファンの人も多いはずです。
こちらも、個人的には当時にリリースされたアルバム「レット・イット・ビー」のバージョンよりも、後年発表された「レット・イット・ビー…ネイキッド」のバージョンの方が、余計な装飾も無く曲の魅力を引き出せていると感じます。
イントロが無く、いきなりタイトルコールのような状態で歌が始まるあたりは、曲を印象付けるという意味でポールのアイディア勝ちです。
Something(サムシング)
ジョンやポールに負けじとジョージもビートルズキャリアの最後に名バラードを生み出しており、それが本作です。
曲は導入部分とサビの部分で転調が実施されており、それ以外にも巧みなコードワークが盛り込まれているなど、ギタリストとしての作り込みも素晴らしいです。
「バラードとは本来こういうものだ」と感じさせてくれるような曲調で、胸を張っておすすめできます。
Oh! Darling(オー!ダーリン)
ポールが残した企画的な色合いを持ったバラード曲で、こちらもいわゆるロッカバラード調ですが、ページ冒頭で挙げた「ディス・ボーイ」「イエス・イット・イズ」よりもさらに力強い雰囲気を持っています。
このレコーディングのために、ポールがあえて声を枯らしたというのはファンの間で有名なエピソードです。
こちらもまたバラードのひとつの形ですが、本当にポールは幅広い曲を書くなと感心してしまいます。
解散後
Free As A Bird(フリー・アズ・ア・バード)
最後の一曲は、ビートルズの解散、およびジョンの死後から何年も経った後、残されたジョンのデモ音源から「ビートルズの新曲」として制作されたバラード曲です。
実質上、一番新しいビートルズのバラードにあたりますが、サウンドはやはり新しく、かつ当時のビートルズらしいムードもしっかりと残されたものになっています。
このような背景から、本作を特別なバラード曲としてお気に入りに挙げるファンも多いです。
まとめ
今回は「バラード曲」ということで、比較的テンポがゆったりした曲を選びましたが、実際のところ線引きが難しい部分もあり、個人的にはまだまだ紹介したい曲が沢山あります。
是非これらと共に、アルバムの中からビートルズバラードの隠れた名曲を探してみて下さい。
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