こちらのページでは、コード進行の技法のひとつである「循環コード」について解説していきます。
あわせて、後半では循環コードの発展形ともいえる「逆循環コード」についても述べていきます。
※ページの最後には動画でも「循環コード」を解説していますので、そちらもご覧いただくとより理解が深まるはずです。
目次
循環させることで心地いい展開が生まれる
循環コードとは何か
「循環コード」とは、すなわち「循環させることができるコード進行」のことで、「キー=C」を例とすると
というようなコードの流れを指す言葉です。
このコード進行は、ダイアトニックコード(後述)の度数をもとに「I(いち)VI(ろく)II(に)V(ご)」などとも呼ばれ、言葉の通り
という形で、何度も循環させることができます。
「なぜこの流れを循環させることができるのか」という点をきちんと理解するには、ダイアトニックコードとコードの進み方や機能について把握する必要があります。
これ以降は「循環コード」の成り立ちやその種類についてより詳しく考えていきます。
いろいろな循環コード
「循環」とは「始まったものがひと通り進んでまた元に戻ってくる、そしてその流れをぐるぐると繰り返す」というようなことを指す言葉です。
「循環コード」も同じような意味から「始まってまた元に戻ってくる、そしてその流れをぐるぐると繰り返すことができるコード進行」のことを指しています。
通常「循環コード」はコード3個~5個程度によってできている短いコードの構成を指すことが多く、中でも既に述べた
の形はその代表ともいえるものです。
これ以外にも、同じように以下のようなコードのまとまりも循環させることができるため、「循環コード」の一種であるといえます。
- C → F → G
- C → Em → Am → G
この「循環させることができる」を理解するにあたり把握すべきは「ダイアトニックコード」と「コードの機能」です。
ポイントは「不安定→安定」という流れ
ポップス・ロックにおけるコード進行は「ダイアトニックコード」を土台として作られます。
※ダイアトニックコードについて詳しくは以下のページをご確認ください。
ダイアトニックコードとスリーコード 概要や成り立ち、コードの役割などについて
ダイアトニックコード内のそれぞれのコードには「安定」「不安定」「一時不安」という三つの機能があります。
そして、通常コードを展開させる場合にはこれら三種の機能を文章でいう「起承転結」のようにつなげながら、ハーモニーに起伏をつけていきます。
中でも
という機能の流れは「不安定」が「安定」に解決することから最も強いコードの進み方であるとされています。
今回の題材である「循環コード」は、この「不安定→安定」という流れを活用したものです。
循環することで不安定が安定に解決する
上記を確認するために、既にご紹介した
というコード進行を機能で表すと、下記ようになります。
ここで、コード進行の最後にある「不安定」のコード「G」を冒頭の「安定」のコード「C」につなげる=循環させることで「不安定→安定」という強いコードの流れが生まれることがわかります。
安定→安定→一時不安→不安定→安定→安定→一時不安→不安定
これが、既に述べた「循環させることができる」ということを意味します。
すなわち、上記のコード進行を「循環させる」ということは「構成の最後にある『不安定』のコードを冒頭にある『安定』につなげる」ということになるのです。
既にご紹介したその他の循環コードも、すべて循環によって「G → C(V → I)」=「不安定→安定」という流れが生まれます。
C → Em → Am → G → C → Em → Am → G …
「不安定」が「安定」に進むときに生まれる強い力を使って「安定」から始まる構成をまた繰り返す、という、これが循環コードの基本的な仕組みです。
「循環コード」と呼ばれない例
例えば、ダイアトニックコードにあるコードを使って
という構成を組み立てた場合、これを何度も繰り返す(=循環させる)ことはもちろんできます。
しかし、この場合コード進行の最後が「Am」で終わっているため、冒頭の「C」に戻る時に「不安定→安定」という流れが生まれません。
そのため、上記のようなコードはいわゆる「循環コード」とは呼ばれないのです。
「循環コード」はコードの流れが重視される
ここまで述べたように「循環させることができる」という理由には、コード進行末尾の「不安定」と冒頭の「安定」によって出来上がる「不安定→安定」という機能の流れが大きく関わっています。
では、例えば「キー=C」において「『C』で始まって『G』で終わる構成であれば何でも循環コードになるのか?」という疑問がわきます。
これは広い意味ではその通りであり、より厳密に言えば「循環コード」という言葉を使う際にはコード進行そのものの流れも重視されます。
「安定」に落ち着く流れの型=カデンツ
そもそもコード進行には、その進め方の「型」のようなものが存在しています。
クラシックなどでそれらは「カデンツ」と呼ばれ、「カデンツ」は「どのように『安定のコード』につなげるか」という観点で整理されています。
以下は、カデンツにある三つの「コード進行の型」です。
※ここでは「安定=トニック(T)」「不安定=ドミナント(D)」「一時不安=サブドミナント(SD)」として表記します。
- T → D → T
- T → SD → D → T
- T → SD → T
上記は、例えば「1」であれば、「安定(T)」のコードが「不安定(D)」に進み、そこからまた「安定(T)」に戻ることでスムーズなコードの流れが出来上がる、というようなことを意味しています。
カデンツの循環
あるひとつのコード進行に対して「循環コード」という呼び名を使う時は、コード進行の機能が上記カデンツの「1」または「2」をもとに、
または
という流れになっていることがほとんどです。
既にお伝えした通り、何度も登場している
は、機能で表すと
となるため、カデンツの型を満たしています。
※「C → Am」はトニック(T)を連続させて伸ばしている状態です。
これらを踏まえると、「循環コード」は「カデンツの循環」であるともいえそうです。
循環コードの拡大
裏を返せば「T → D」または「T → SD → D」という機能が循環すればそれらしいものになるため、以下のようなコードの流れも循環コードとして用いることができます。
Am → Em → F → G(T → T → SD → D)
また、循環の過程にノンダイアトニックコードを含んだ以下のような流れも循環コードの一種として扱われることがあります。
C → E7 → Am → G
C → F → F#dim → G
このような観点から、カデンツの流れを意識しつつさまざまな循環コードを作り出すことができるはずです。
「逆循環コード」について
ここまでにご紹介した「循環コード」の発展形として「逆循環コード」という構成が存在します。
一般的に「逆循環コード」は「『一時不安』から『不安』を経由して『安定』に返ってくる構成」のことを指し、具体的には
のような構成がそれにあたります。
「逆」という名称から「通常の循環コードを逆行するような構成?」と勘違いしそうですが、実際には通常の循環コードの途中から始まるようなコード構成のことを指します。
この「逆循環コード」の構成を循環させ、
という形で活用していきます。
循環のつなぎ目部分にあたる「Am → Dm」をより強く結びつけるために「A7 → Dm」とすることも多いです。
動画で解説
「文章ではよくわからない!」という方のために、以下の動画でも実演を交え解説しています。
是非参考にしてみてください。
まとめ
ここまで、「循環コード」について解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- 「循環コード」とは「循環させることができるコード進行」のこと
- 「不安定→安定」という機能の流れが循環の推進力になる
- 「循環コード」はカデンツの循環でもある
- ノンダイアトニックコードを挟んだ構成も循環コードの一種として扱われる
- 「Dm → G → C → Am(IIm → V → I → VIm)」のように「一時不安」から「不安」を経由して「安定」に返ってくる構成のことを「逆循環コード」と呼ぶ
「循環コード」はその名の通りループ系の音楽に活用できるため、代表的な形を把握したうえで是非作曲に活用してみて下さい。
音楽理論について詳しく知る
音楽理論を知りたい人のための「学習の見取り図」※独学に活用できる「音楽理論の何をどの順番で学べばいいか」のまとめポップス・ロック作曲の上達につながる「曲分析ガイドブック」について知る
作曲がぐんぐん上達する「曲分析ガイドブック」のご紹介ページ