作曲と編曲を分けよう(DTMで苦労してる作曲初心者向け)

DTMで音楽制作をしながら、楽しさよりも苦労をより多く感じている初心者の方におすすめできるのが、

作曲と編曲を分ける

という考え方です。

こちらでは、その詳細についてご紹介していきます。

※当記事はこちらのポッドキャストの内容を編集/再構成したものです。

作曲=曲の骨格を作る

DTMを使って音楽制作をするにあたり、「さあ作曲をやろう」と考えてそのまま直接PCに向き合い作業を進めるスタイルで取り組んでいる人は多いはずです。

そして、特に初心者の場合にはそのようなやり方によって作曲(音楽制作)を始めることで、結局作っている音楽がよくわからない形になって、

「DTM=作曲はこんなにも難しいものなのか…」

と苦労ばかりを感じてしまうケースが案外あります。

そんな時におすすめできるのが、今回のテーマである「作曲と編曲を分ける」という考え方で、これは具体的には、

DTM(PCやそれを含む音楽制作の環境)に向き合う前に曲の骨格を簡単に作っておくこと

を意味します。

「曲の骨格」とはいわば音楽制作の下書きのようなもので、DTMに向き合う前に「作曲」という工程をあえて用意して、

  • メロディ
  • ハーモニー(コード進行)
  • 曲の展開や構成

などをある程度決めてしまうことで、それがDTMの行き詰まりを打開することにつながります。

DAWは「曲作り」というより「音作り」

そもそも、一般的な音楽制作で扱われる「DAW」に分類されるソフトは「Digital Audio Workstation」という名の通り、

「デジタルでオーディオ(音声)を作る環境」

であるため、いわゆる一般的な作曲としてイメージできる「メロディやコード進行を生み出して曲にする」という行為以上に、

  • どんな音色にするか
  • どんな音量にするか
  • それらのバランスをどう取るか

などを制御する、(曲作りというよりも)「音作り」に近い環境だといえます。

そのため、「作曲」というにはあまりにやれることの幅が広く、作曲経験の無い人がいきなりそれに向き合うと、「なんでもできる」というその環境が逆に足かせとなって「何をすればいいか分からない」という状態につながってしまうことがよくあります。

そのため、既に述べた通り「曲の骨格を作る工程」を先にやっておいて、その後に「音楽制作=音を作る工程」としてDTMを活用するようにしながら、作業を分けることでやるべきことや力の入れどころを明確にすることができます。

曲の骨格作りにおすすめできるのは弾き語り形式

ここで、具体的にその「曲の骨格を作る工程」をどう進めればいいか、という疑問がわきますが、特にポップス・ロック等のボーカル曲を作るうえでおすすめできるのが、私がいろいろなところでご紹介している

「弾き語り形式による作曲」

です。

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これは、つまり「自分の歌」と、ギターやピアノ等を使った「コードの伴奏」によってメロディとハーモニーを生み出して1曲にまとめていく作曲のやり方を指します。

また、この「弾き語り形式の作曲」をするうえではどのような状態まで作ることを「曲の完成」とするかがわかりづらいはずですが、これは

弾き語りの状態でその曲の演奏を始めから終わりまで表現しきること

をその目安としてください。

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具体的には、例えばライブステージなどでお客さんを前にイントロから演奏を始め、ひと通り演奏し終えるまで、と考えればイメージしやすいはずです。

そこまでを通して、その曲の

  • コード進行
  • メロディライン
  • それらを含めた曲の展開具合

などを作りこむと、それが曲の骨格になります。

そこから環境をDTMに移し、伴奏をデータとして打ち込んだり、メロディラインをオーディオ録音したり、そのメロディに絡む別の楽器のラインを考えたり、という作業に進むことができるはずです。

初心者はメロディやハーモニーを作ること自体に苦労する

初心者がDTMでつまづいてしまう原因の多くは、

  • メロディーを生み出すための感覚を持てていない
  • コード進行の知識が持てていない→ハーモニーを展開させる感覚がない

などの点にあります。

これらは、弾き語りにおいては

  • メロディを生み出す→メロディを歌う
  • ハーモニーを展開させる→コードを演奏してつなげる

というようにやるべきことが明確であるものの、DTMでそれを表現しようとするとすべてをMIDIデータとして打ち込んだり、オーディオデータとして録音しなければいけないという回りくどさがあり、それが難しさにつながってしまいます。

弾き語りであればギター/ピアノにおけるコードフォームが既に定まっており、純粋にコードを演奏してメロディを歌うことでそれが実現できるため、

  • どんなメロディを作るか
  • そのメロディにどんなコードをつけるか

という作曲の本質的な部分に注力できて、DTM以上にやるべきことが明確になります。

冒頭で述べた通り、DTM環境はやれることの幅があまりにも広いため、まず一度DTMから離れ、弾き語りを通して「作曲」でやることを明確にしたうえでメロディ作りやコード進行の組み立てに慣れることをまず目指してみて下さい

そのうえでDAWに向き合うことで、DTM環境をより上手に活用していくことができるはずです。

上記に当てはまらない例

ここまでに述べた内容とは別に、

「DTMを使って音の緻密な重なり合いを作りたい」

というような思いを持っている方の場合には「弾き語りによって曲の骨格を作る」という工程がそこまで意味を成さないため、直接的にDTM環境に向き合い、DAWの操作に慣れることを目指してください

むしろ、DAWを使う方が音の重なり合いがデータによって視覚化されて、理解をより深めやすいはずです。

まとめ

ここまでに述べたように、特にボーカル曲の場合には、弾き語り状態での1曲完成によってメロディ/ハーモニー/曲構成を含めた曲の骨格部分を切り分けることで作曲の本質が見えます。

またこちらではDTMをテーマとしていますが、これは例えばバンドなどにおける作曲においても同じです。

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「さあ曲を作ろう」といっていきなりメンバー全員でスタジオに入っていちから曲を練るよりも、メンバーの誰かが弾き語り状態で曲の骨格を作り、それをスタジオでバンドアレンジする、という工程を踏む方が明らかに作業は効率的になります。

それを含め、今回ご紹介した「作曲と編曲を分ける」という考えはポップス・ロックでは一般的な概念ともいえるため、現在行き詰まりを感じている方は一度このやり方を試してみて欲しいです。

「弾き語り形式の作曲」は、曲の本質と向き合う作曲ともいえます。

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