こちらのページでは、
- PC(パソコン)を使った作曲に興味があってソフトを探している
- そもそも作曲ソフトって何?
という思いを持たれている方のために、作曲ソフトの概要とその具体的なソフト名をいくつかご紹介します。
私自身も日頃は作曲の先生としてPCを使った作曲に取り組んでおり、これまでに十数年さまざまなソフトを触り、その使い勝手を体感してきました。
そのような経験から、それぞれのソフトの「良い点」「いまいちな点」なども含め、細かく解説していきます。
目次
作曲ソフトの区分
ひとえに「作曲のためのソフト」といってもその種類はさまざまで、自分自身のやりたい作曲のスタイルや特性、どのような曲を作ってみたいか、などによって選ぶものは変わります。
以下に、その大まかな分類をまとめてみます。
1. 音声やデータを入力するソフト
多くの人がイメージする「作曲用ソフト」が、おそらくこちらに分類されるものかと思います。
以下動画で表示されているのがその一般的な画面のイメージです。
これらのソフトは「Digital Audio Workstation(DAW、ダウ)」などと呼ばれるもので、現在では音楽制作に関するあらゆることができてしまうように作り込まれているものがほとんどです。
このソフトには
- 音声(オーディオ)
- データ(MIDI)
という二つの概念があり、それらを分け隔てなく扱えてしまう利点があります。
それぞれの定義は以下の通りです。
- 歌や楽器などの生演奏を、マイクやケーブルを介して直接録音する
- 音声(波形)データとして再生できる
- 文字通りデータを打ち込む
- そのデータが音源を経由することで音になり再生できる
ここから、例えば
- ドラムはデータで打ち込んで生演奏を再現する(データ)
- ギターは実際に演奏する(音声)
- それらを伴奏として歌う(音声)
⇒それぞれを混ぜ合わせて一曲にする
というようなことが実現できてしまいます。
「Digital Audio Workstation」という名前の通り、そもそもこちらに分類されるソフトは「音楽=音源を作ること」をその目的としているため、最近ではあらゆる音楽ジャンルに対応できるようこのようなソフトが主流となっています。
良い点
さまざまなジャンルの音楽を作ることができる
上記で解説したように、これらのソフトのほとんどは音楽制作におけるいろいろなことが実現できるよう作られているため、さまざまなジャンルやスタイルの音楽に対応できます。
例えば
- ソロのシンガーソングライターとして曲を作りたい
- バンドのために曲を作りたい
- ゲーム音楽のBGMを作りたい
- ボーカロイドを使って作曲したい
など、「生演奏/打ち込み」「歌あり/歌なし」「ソロ/大人数」などを問わず、ほぼすべての音楽をこのソフトの中で作ることができます。
音楽をゼロから作って音源まで完成させられる
また、前述の通りDAWの主な目的は「音源を作ること」であるため、そのような要望にも応えることができます。
- 作曲したあと、音源をSNSに公開したい
- 作った曲を音源としてバンドメンバーに送りたい
- オーディション用にオリジナル曲を作って音源にしたい
などの要望を叶えるためにも、これらのソフトはうってつけです。
いまいちな点
多機能すぎるため操作や機能の習得に時間が掛かる
DAWには沢山の機能が盛り込まれているため、それを使って作曲をする場合、多くの人は操作の習得に苦労します。
つまるところこれらのソフトを扱うことは「パソコンを扱うこと」であるため、その点が
- 「作曲がしたいのに…」
- 「パソコンの操作がしたいわけではないのに…」
という不満につながってしまうこともある、ということです。
いろいろなことができる反面で、その分用意すべきものやセッティングなどに割く時間も増えます。
音楽制作全般の技術が必要になる
こちらも上記に挙げた内容と関連しますが、DAWは「音源を作ること」を目的としているため、純粋な「曲作り」よりも、「それをどう音源にするか」という点に重きが置かれています。
詳しい解説は割愛しますが、例えば
- 音を調節する(エフェクト)
- 音を混ぜてバランスを取る(ミキシング)
- 聴きやすい音源になるよう整える(マスタリング)
などの作業が必要となり、これらは「作曲」という本筋とは別のものであるため、これらに取り組むことが大変だと感じることもあります。
「DAW」の細分化
こちらで取り上げている「音声やデータを入力するソフト」は、それぞれのソフトの歴史や成り立ちによってさらに細分化されます。
具体的には
- 音声(オーディオ)を重視したソフト
- データ(MIDI)を重視したソフト
- ループ音源による音楽制作を重視したソフト
などが挙げられますが、これらは主にそのソフトがどのようなコンセプトによって誕生し、進化してきたかによるものです。
とはいえ、最近では万能なソフトを求めるユーザーが多いことから、例えば
というように、各ソフトの機能は画一化されつつあります。
2. 楽譜を作るソフト
「作曲用ソフト」としてもう一つ挙げられるのが「楽譜を作るためのソフト」です。
これらは「ノーテーションソフト」などとも呼ばれますが、前述したDAWが「音源を作ること」を目的としていたのに対し、こちらは文字通り「楽譜を作ること(notation=記譜)」を目的とします。
以下動画で表示されているのが、その一般的な画面イメージです。
見た目は紙に書かれた五線譜とほぼ同じで、ほとんどのソフトの場合、それを取り囲むように入力のためのボタン類が配置されています。
ソフトは「いかに記譜をスムーズに行うか」という点に重きが置かれており、余分な機能を極力なくすことでDAWとの差別化を図っているものが多いです。
また、入力した楽譜の情報は音として確認することもできますが、これもあくまで「確認用」であるため、後述の通り音声としての品質は一般的にDAWよりも劣ります。
良い点
作曲のみに集中できる
楽譜制作系のソフトは既に述べた通り「楽譜を作ること」を目的としており、その分操作もシンプルでやれることも限られています。
これは、言い方を変えれば「作曲に集中できる」ということで、いわゆる歴史に名前を残す作曲家のように、作曲ソフトを使ってメロディやハーモニーを作ることに特化したい人にはこちらが適しているといえます。
楽器のプレーヤーの中にはパソコンの操作が苦手だという人も多いですが、そのような人にもおすすめできます。
また、そもそも楽譜を読んだり書いたすることに慣れている人は、DAWよりもこちらのソフトの方がより親しみやすいと感じるはずです。
いまいちな点
音声入力ができない
楽譜を作るソフトはDAWと違って音源を作ることを目的としてないため、基本的に音声の入力ができません。
つまり、音楽のすべての情報は「音」ではなく「五線譜」で表現する必要があるのです。
ポップス・ロック系アーティストの間でこれらのソフトが活用されにくいのは、このようなことが理由になっていると考えられます。
音の品質がいまいち
既に述べた通り、楽譜制作系のソフトで聴くことのできる音源はあくまで確認用(五線譜に書かれた情報を音として確認するためのもの)であるため、基本的に音質面でDAWより劣ります。
また、そもそも「エフェクト」や「ミキシング」などの概念がないため、それを完成品の音源とすることにも向いていないです。
そのような点から、作った曲をきちんとした音源にしたい人にはこれらのソフトは不向きだといえるでしょう。
「音声やデータを入力するソフト」の具体例
ここまでに解説した
- 音声やデータを入力するソフト
- 楽譜を作るソフト
のそれぞれにおいて、おすすめできる具体的な作曲ソフト名を以下のとおりご紹介します。
まず、「音声やデータを入力するソフト」のおすすめは以下の通りです。
1.「Cubase」
DAWの二大シェアのうちの一つでもあるのがこの「Cubase」で、Windows、Macのどちらでも使えることからプロのユーザーも多いです。
数あるソフトの中でも特に古くから存在しており、もともとはシーケンスソフトとして誕生していながらも、さまざまな音楽性をカバーできるよう常に進化している印象を受けます。
ソフトとしての安定性にも優れており、ユーザーの多さ、歴史などの面から情報量も多く、初心者が長く使っていくのに最適です。
2.「Logic Pro」
上記「Cubase」とシェアを二分しているのがこちらの「Logic Pro」です。
Macのみに対応しているため使用できる環境が限られますが、その安定性や使いやすさなどから一時期本当に多くプロがこのソフトを使っていた記憶があり、また現在でもその人気は衰えていません。
こちらのソフトも歴史が古く、またApple純正のソフトということでMacの進化にあわせて年々パワーアップしています。
「Cubase」と同じく情報量も圧倒的に多いため、初心者向けとしておすすめできます。
3.「GarageBand」
「GarageBand」は前述した「Logic Pro」の弟分(子供?)にあたるソフトで、同じくApple純正のソフトとしてMacまたはiPad、iPhoneなどのiOS端末のみで使えます。
操作性は「Logic Pro」をさらに簡単にしたようなもので、作曲ソフトに馴染みが無い人でも直感的に使えるような作りとなっています。
MacやiPad、iPhoneさえ持っていれば無料で使うことができ、それでいて使いやすく品質も高いため、このソフトを作曲アイディアのメモ用に活用しているアーティストも多いです。
また、前述したように「Logic Pro」の下位互換ソフトでもあるため、「GarageBand」を入門ソフトとしてそこから「Logic Pro」に移行することも検討できます。
4.「Studio One」
上記でご紹介した「Cubase」「Logic」とはまた違った、新たなファンを獲得しつつあるのがこちらの「Studio One」です。
リリースは2009年で比較的新しく、後発のソフトとしてユーザーのニーズに応えるような開発姿勢が高く評価されています。
「Cubase」「Logic」からこちらのソフトに乗り換えているプロも多いようで、シェアも広がったことでその分情報も増えました。
リリース元の「PreSonus」は音響機器のメーカーでもあるため、機材も含めた一元的なセッティングが可能です。
「楽譜を作るソフト」の具体例
次に、「楽譜を作るソフト」としておすすめできるものを以下の通りいくつかご紹介します。
1.「Finale」
楽譜制作系のソフトもシェアが二分されており、そのひとつとなっているのがこちらの「Finale」です。
商用にも耐えうる楽譜制作ソフトとして最も認知されている存在で、出版されているあらゆる楽譜をこのソフトで作ることができます。
また、近年ではプレイバックの機能強化にも力を入れており、オーケストラのリアルな音を再現した音源も人気を集めています。
2.「Sibelius」
「Sibelius」は、前述した「Finale」に匹敵するシェアを持つ楽譜制作ソフトで、こちらも根強いファンが多いです。
「Finale」が「いろいろなカスタマイズに応えられる」という点を強みとしているのに対し、「Sibelius」はより直感的な楽譜制作を特徴としており、そのような意味からプレーヤー向けの作曲ソフトといえそうです。
近年は、音楽制作ソフトの「Pro Tools」を開発しているメーカー「Avid」の傘下に加わったことから、それらとの親和性にも注目が集まっています。
3.「Dorico」
前述した「Finale」「Sibelius」の二大シェアを覆す存在として注目されているのがこちらの「Dorico」です。
既にご紹介した「Cubase」を開発する「Steinberg」が2016年にリリースしたソフトで、上記二つのソフトで不満とされていた点を解消するような作りによって、楽譜制作ソフトの新たな流れが作られつつあります。
作曲ソフトとしてはまだ進化の過程にあり、上記のような理由から楽譜制作ソフトでありながらもDAWのような親しみやすさ備えており、初心者にもおすすめできます。
その他の機材について
以下のページではPC(パソコン)使って作曲を行う際に、ソフトと共に必要となるその他の機材についてまとめています。
こちらもあわせてチェックしておくと、より作業のイメージが掴みやすくなるはずです。
作曲に必要なものとは?PCを使った作曲・音楽制作に必要なもの(機材)と費用の目安を詳しく解説します。
まとめ
ここまで、作曲用ソフトの分類と、それらの具体的なソフト名についてご紹介してきました。
一般的に「作曲のためのソフト」となると、やはりDAWになってしまうかと思いますが、もう一つの分類として挙げた楽譜制作ソフトで曲作りに集中してみるのもやりがいがありそうです。
作りたい曲や作業スタイルの希望に沿った、魅力的なソフトを是非見つけてみて下さい。
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